日本臨床外科学会本部および各県支部からの提言
会員各位
平成27年11月26日
日本臨床外科学会本部および各県支部からの提言
日本臨床外科学会
会 長 跡見 裕
副会長 炭山 嘉伸
(支部委員会委員長)
日本臨床外科学会(会員数19,333名)には,個人会員に加え,全国各地域において県単位で活動する外科組織が支部として参加している.これにより,臨床現場に根ざした,全国の外科医からの声が届くシステムを有する,唯一の学会である.さらに本学会総会では,その発足当初より「医療経済」に関する企画等が取り上げられており,これも他の医学系学会にない特色である.
今回,福岡市における第77回総会初日の2015年11月26日,学会役員と全国の支部代表者が一同に集結し,わが国の外科臨床の課題について忌憚のない意見交換が行われた.
その結果,次期の平成28年診療報酬改定に向けて,本会は以下の提言をする.
1.医療費抑制策および控除対象外消費税負担について
昨今の報道によれば,今後の医療費抑制策が取りざたされている.これに,導入が決定している消費税10%への上昇による控除対象外消費税負担増が加わり,再び医療崩壊が訪れることを懸念している.このまま進めば,とくに地方の病院は,雪崩を打って倒産の危機に瀕するのは,火を見るより明らかである.また,建築に関する人件費や諸材料などの高騰もあって,病院の新築計画を断念せざるを得ない状況もすでに生じている.
危機的状況によって一度崩壊した体制を元に戻すには,多くの労苦と時間を要する.このことは彼岸の例をみても明かである.
そこで,これ以上の過度の医療費抑制策は,取るべきでないと提言する.
2.評価重心をモノからヒトへ
外科系診療は,一部を内科系に譲ったとは言え,今後も将来に亘って必須の診療分野である.わが国の外科を志望する若手医師の減少傾向は,現在でも歯止めが掛かっておらず,このままでは,社会のニーズに応えられない事態の到来が懸念される.
そこで,モノでなくヒトにより重心を移し,外科医の待遇が改善できるよう,診療報酬における医療従事者の負担軽減策の推進,技術料の一層高い評価を提言する.
最後に,今回の提言を機に,日本臨床外科学会では,医療のあるべき姿を,現場からの声として,今後も発信してゆく所存である.