(12) 医療費の負担を軽くする制度
がんの治療では、お金の問題とも直面します。新しい薬や最新の医療技術など、治療の内容によっては高額になることも。医療費の負担を軽くする社会的な制度を知っておきましょう。
一定の金額を超えたら戻ってくる「高額療養費」
ひと月に支払う医療費の自己負担額が高額になったとき、ぜひ利用したいのは「高額療養費制度」です。
これは、医療費が一定の金額(自己負担限度額)を超えたとき、超えた分が払い戻される制度です。公的医療保険に加入している人なら、だれでも利用できます。
ただし、同一医療機関で計算し(医療科が異なる場合は分ける)、入院と外来は分けて考えます。また、次のような条件があります。
- 自己負担、保険適用外の薬剤や医療技術は対象にならない
- 同一月内に、同一世帯で21000円以上の自己負担が複数あるときは、合算して自己負担限度額を超えた分が払い戻される
- 同じ人が、同一月内に2つ以上の医療機関にかかり、それぞれの自己負担額が21000円以上あるときは合算し、自己負担限度額を超えた分が払い戻される
自己負担限度額は、年齢や収入よって異なります。
※全国健康保険協会のホームページを参照
高額療養費の手続きと活用法
高額療養費制度を利用するための手続きは、加入している公的医療保険の窓口で行うのが原則です。
通常は、医療施設で請求された額を支払ったあと、書類をそろえて申請し、対象となる医療費の、自己負担限度額を超えた分の金額の払い戻しを受けます。
所属する会社で手続きをしてくれる場合や、自動的に申請書を送付してくれる保険団体もありますが、念のため自分で申請したほうが安心です。
ふつう、払い戻しには申請から約3カ月かかりますが、「高額療養費の現物給付化」といって、医療機関ごとの窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめることができる制度もあります。この制度を利用したいときは、事前に各保険の申請窓口(全国健康保険協会の各都道府県支部、国民健康保険は市区町村の国民健康保険課、組合健康保険は各健康保険組合)に「健康保険限度額適用認定申請書」を提出すると、「健康保険限度額適用認定証」の交付を受けられます。医療機関の窓口に、その認定証と被保険者証を提出すれば、支払は自己負担額限度額内になります。
65歳未満でも「介護保険」が利用できる人とは
介護保険といえば、65歳以上の人が利用するものと思い込みがちですが、40歳~65歳未満の人でも、条件を満たせば利用することができます。
それは、脳血管疾患や関節リウマチなど老化が関係する病気をもっている人、あるいはがんで、医師が「治癒困難・不可能」と診断した末期の状態にある人です。
利用するときは、65歳以上の人と同じように、「要介護認定」を受ける必要があります。手続きは<介護保険申請から利用までの流れ>の図のとおりです。
要介護度によって支給額が異なる
要介護認定されれば、原則1割負担で介護サービスを受けることができます。利用できるサービスには、自宅で受ける「居宅サービス」と介護施設などに入所して受ける「施設サービス」があります。
がんの人の場合、居宅サービスがメインになることが多いようです。居宅サービスには、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問入浴介護など、ホームヘルパー、看護師、理学療法士などが自宅を訪問するものだけでなく、日帰りで施設を利用するデイサービスや、施設に短期間入所して利用するショートステイがあります。
そのほか、車椅子や電動介護ベッドなどの福祉用具の貸与や購入費の支給、手すりやスロープのとりつけなど、自宅を改修するための費用の支給といったサービスも利用できます。
ただし、要介護度(要支援2段階、要介護5段階)に応じて、利用できるサービスの内容や支給額の上限が決められています。限度額を超えた場合は、自己負担となりますが、「高額医療・高額介護合算療養費制度」を利用することで、自己負担限度額を超えた金額の払い戻しを受けることができます。
知っておきたい介護保険申請から利用までの流れ
- 1 申請
- 本人または家族が、市区町村の介護保険窓口あるいは地域包括支援センターに要介護認定を申請する
- 2 訪問調査
- 市区町村の認定調査員が、自宅を訪問して本人の状態を調査する
- 3 審査・認定
- 訪問調査に基づいたコンピューター判定の結果と、主治医の意見書をもとに、市区町村介護認定審査会で審査後、要支援1・2、要介護1~5のいずれかに、要介護度が判定される
- 4
- サービスの事業者と契約し、担当ケアマネージャーとともにケアプランを作成して、介護サービスを利用する