(11) がん診療連携拠点病院を知っている?
いま、がん医療は、1カ所の病院で行うものから、地域全体で患者さんとその家族を支えるしくみへと変わりつつあります。その中心となるのが、がん診療連携拠点病院です。
複数の病院、診療所がひとりの患者さんを支える
がん医療は、病気の発見に始まり、治療を終えたら退院して自宅に戻り、元の生活に戻っていくという一連の流れをたどります。以前は、がんを発見された病院で治療を受け、退院後の定期検診も、再発したときの治療もそこで受けるというように、1カ所ですべてが行われていました。
ところが、がん医療の進歩に伴い、検査や治療に必要な機器類、最新技術など、すべてを1つの病院で整備するのはむずかしくなったのです。そこで、地域の病院、診療所が協力し合い、それぞれ得意分野を生かして役割分担することで、高いレベルのがん医療を提供するしくみができつつあります。それを、がんの「地域医療連携」といいます。
地域医療連携は、「がん診療連携拠点病院」(以下、がん拠点病院)を中心に、地域の病院や診療所がネットワークを組んで患者さんと家族を支えるしくみです。
たとえば、A病院でがんの専門的な治療を受けたとします。退院後、病状が安定したら、自宅近くのB病院で定期検診を受けますが、年に1~2回はA病院で専門的な検査と診察を受ける、という具合です。
近くの病院に通うほうが患者さんは楽ですし、治療した病院とも縁が切れるわけではなく、定期的に診察が受けられるので安心です。
summaryがん診療連携拠点病院と地域医療連携
memo全国どの都道府県にもあるがん診療連携拠点病院
がん拠点病院には、「都道府県がん診療連携拠点病院」と「地域がん診療連携拠点病院」があります。
これらは、都道府県知事の推薦を受け、厚生労働大臣が検討会の意見のもとに指定したものです。現在、都道府県がん拠点病院51施設、地域がん拠点病院339施設、合計390施設が指定されています。
がん拠点病院の役割は、地域の病院や診療所、自治体などと協力して医療連携の体制を整えるほか、がんの予防対策、がん検診の普及、地域の医療レベルを上げるための教育、在宅医療の質向上と推進など多岐にわたります。
クリティカルパスで治療方針を共有
地域医療連携に欠かせないのが、地域連携クリティカルパスです。クリティカルパスとは治療計画表のことで、クリニカルパスともいいます。
患者さんは、治療をしたA病院から、定期検診を受けるB病院に紹介されるとき、クリティカルパスとともに、病状や治療内容、治療方針などが記された「診療情報提供書」を持って行きます。クリティカルパスと診療情報を、A病院とB病院、そして患者さんが共有することで、同じ治療方針、同じ医療レベルで診療が行えるのです。
がん拠点病院には、地域医療連携のセンターとなる「地域医療連携室」が設置されています。病院によっては、地域医療連携室を通じて、連携先の病院や診療所にクリティカルパスや診療情報提供書を渡すこともあります。
地域医療連携とクリティカルパスによって、質の高いぶれない医療が可能になっています。
将来の不安と向き合うための相談窓口
「相談支援センター」を知っていますか?
患者さんのための相談窓口は、だいぶ充実しつつあります。
将来の不安は、再発のこと、経済的なこと、家族のことなど多岐にわたり、また複数がからみ合って単純ではありません。そうした不安や悩みに総合的にこたえる窓口として、全国のがん拠点病院に「相談支援センター」が設置されています。
相談支援センターでは、がんに関する情報提供はもちろんのこと、心のケア、生活支援や助成制度の紹介など、幅広い相談に応じています。患者さん本人だけでなく、家族への支援も行っているのが特徴です。
相談にあたるのは、がんの専門相談員として研修を受けた看護師、医療ソーシャルワーカーなど病院スタッフです。
相談は、電話、面談、電子メールなど、いろいろな方法で行っています。利用時間などは、各病院で異なりますので、事前に問い合わせておくといいでしょう。
まずは気軽に問い合わせてみましょう
相談支援センターの名称は、「患者相談室」「がん相談支援室」など、病院によっていろいろです。インターネットで検索できますが、地域のがん拠点病院に、直接電話で問い合わせてもよいでしょう。住んでいる地域のがん拠点病院がどこかは、市区町村役場に問い合わせるとわかります。
がん拠点病院以外でも、患者さんのための相談室を設けているところは数多くあります。そうした相談室は、がん拠点病院の相談支援センターや地域医療連携室とも連携しているので、まずは身近な相談窓口を訪ねてみましょう。