(14-3)栄養を助ける食品を利用する
十分に栄養をとろうと思っても、胃切除後は困難なこともあります。かといって、点滴に頼りすぎるのもよくないことがわかってきました。そこで期待されているのが栄養を助ける食品です。
不足する栄養は栄養機能食品で補う
栄養機能食品とは、病気や症状の特徴に応じて、必要な栄養素をバランスよく凝縮した食品です。公的医療保険が使えるものもあり、また、栄養補助食品(サプリメント)と呼ばれるものもあります。
がん治療の栄養では、炎症を抑制する効果のあるEPA(エイコサペンタエン酸)や、筋肉の原料になる良質なたんぱく質を十分にとることが重要ですが、ふつうの食事だけではむずかしい面もあります。
そんなとき、食事はおいしく食べられる分だけ食べ、不足分は栄養機能食品や栄養補助食品で補うという方法を選ぶこともできます。
「食べなければ!」と思うことで食事がつらくなるより、無理なく食べられるようになるまで、栄養を助ける食品をじょうずに利用してみるのもよいでしょう。
知っておきたい栄養を助ける食品にはこんなものが
がん治療中の栄養を助ける食品として、さまざまなものが発売されています。特定の栄養素を含み、基準を満たしているものを栄養機能食品といいます。また、栄養補助食品と呼ばれるサプリメントの中にも、がん治療中の栄養障害の改善を助けるものがあるので、栄養士などに相談してみましょう。
栄養機能食品の例
1パックでエネルギー300kcal、たんぱく質16g、EPA1gを摂取できます。ビタミンC,ビタミンE、亜鉛で栄養機能食品の基準を満たしています。
栄養補助食品の例
筋肉や皮膚の組織再生を促す、L‐グルタミンやL‐アルギニンなどのほか、分枝鎖アミノ酸のひとつであるロイシンの代謝産物が配合されています。手術の傷や、口内炎の回復を助けます
写真提供:アボットジャパン株式会社
Dr.'sアドバイス抗炎症効果のあるEPAを十分にとるために
EPAは、1日2gとると、がんの炎症による体重減少を抑えられるという米国のデータがあります。しかし、食べ物だけで2gとろうとすると、イワシなら3~4尾、サバの切り身だと3切れ弱も食べなければなりません。これは健康な人でもむずかしいでしょう。
日本人の場合は1日1g程度でも十分だと考えられますが、それでも、栄養機能食品や栄養補助食品(サプリメント)でとるのが無理のない方法です。
一般のドラッグストアなどでも、EPAを含むサプリメントは手に入りますので、利用するのもよいでしょう。
たんぱく質やほかの栄養素もバランスよく、効率よくとりたいという場合は、やはり医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。
医師や栄養士からアドバイスをもらって
栄養機能食品や栄養補助食品を利用したいというときは、医師や管理栄養士に相談しましょう。多くの病院の栄養相談室には、各種サンプルが置いてあります。がん診療連携拠点病院の、相談支援センターでも相談に乗ってくれるでしょう。
栄養機能食品や栄養補助食品は、毎日とるとなると経済的な負担も生じますが、ふつうの食事をどれくらい食べられるか、体の状態はどうかといったことをみながら、無理のない範囲で試すこともできます。
memo経腸栄養も選択肢のひとつ
化学療法の影響などで食べられないからといって、点滴だけの状態が長く続くと、腸の壁が薄くなり、腸内細菌が産生する毒素が体にまわってしまうため、炎症が悪化することがわかっています。
口から食べることがどうしてもむずかしいときは、腸に専用のチューブを入れて栄養剤を流し込む「経腸栄養」が有力な選択肢になります。食べられるようになれば、チューブはとりはずします。チューブが入っていても、入浴などはできますし、口からも食べられます。
腸を活動させることで、栄養状態の改善だけでなく、免疫機能の向上も見込めますが、がんの治療を支える手段として経腸栄養を行っている病院は、まだ少ないのが実情です。