(14-1) 胃切除後の食事のとり方
胃を切除したあとは、以前と同じように食べることはできませんが、食べ方を工夫することで食べる楽しみをとり戻すことはできます。とくに手術後1年くらいは、食品や調理法、食事回数に気を配りましょう。
手術後3カ月くらいは消化のよいものを少量ずつ
胃がんで胃切除術を行った患者さんが、食べていけないものはとくにありません。基本的に何でも食べられますが、手術後1年目くらいまでは無理をせず、回復の程度に合わせて食事の内容や量、回数を変えていきましょう。
食事の内容(食品や調理法)で気をつけたいポイントは、消化がよいか悪いか、油を使うかどうか、しっかり加熱するかどうかなどです。
手術後3カ月くらいまでは消化のよい食品を選び、油を控えめに、よく加熱してやわらかめに調理したものを食べるようにしましょう。
残った胃や、胃のかわりをしている腸に負担をかけないようにするには、ゆでる、煮る、蒸すといった調理法がおすすめです。
胃切除後は少量ずつ食べることが鉄則です。1日の食事の回数は、朝昼晩3食と間食(おやつ)2~3回で、合計5~6回程度を目安にしましょう。
Close-up胃切除後の食事のとり方の例
memoおすすめの間食
コーンフレークがゆ
コーンフレークと牛乳に少量の砂糖を加え、コーンフレークがやわらかくなるまで煮る。
ミニサンドイッチとコンソメスープ
サンドイッチ用の食パンに、クリームチーズと薄切りにしたキュウリをはさむ。コンソメスープは市販のコンソメスープの素でよい。薄切りにしたタマネギを加えてやわらかく煮たり、パセリのみじん切りをうかべて。
クラッカー(クリームチーズ、ジャムのせ)
市販のソーダクラッカーに、クリームチーズやジャムをのせる。
ほかに、ミニおにぎり、ホットケーキと紅茶、カステラとミルクティー、ウエハースとココア、カスタードプリンなども。
徐々に食品や調理法のバリエーションを広げる
脂身の少ない肉やひき肉、えび、かに、納豆、のりなどは、消化するのに少し時間がかかる食品なので、消化のよいものに胃腸が慣れてから食べ始めると安心です。
生野菜や刺身など、生の食品は新鮮なものを少しずつとるようにします。
調理法も、焼いたり炒めたり、バリエーションを広げてみましょう。
知っておきたい胃切除後の食品選びのヒント
早朝に食べて安心な食品
- 主食
- おかゆ、やわらかいご飯、うどん、パン
- 乳製品
- 牛乳、ヨーグルト、チーズ、生クリーム
- POINT!
牛乳はあたためましょう。一気に飲むと下痢の原因になるので注意を。牛乳不耐症についても知っておきましょう。
生クリームはじょうずに調理にとり入れましょう。 - 卵
- POINT!
ゆで卵やポーチドエッグなど、加熱して食べましょう。
- 魚
- 白身の魚
- POINT!
煮たり蒸したりする調理法がおすすめです。
- 肉
- 鶏肉
- POINT!
ささみや胸肉など、脂身の少ない部分を。皮をとり除き、小さめに切ったり、たたいたりして調理しましょう。
- 大豆製品
- 豆乳、絹ごし豆腐
- いも類
- じゃがいも、やまといも
- 野菜
- キャベツ、ほうれん草などの葉野菜、大根、かぶ、トマト
- POINT!
葉野菜は葉の部分を中心に。はじめのうちは加熱して食べるようにしましょう。トマトは皮を湯むきして種をとります。
- 果物
- りんご、桃、洋梨、バナナ、パパイア、メロン
- その他
- 麩、はんぺん、レバーペースト
上記の食品を食べてみて大丈夫だったら、少しずつ食べ始めたい食品
- 青背の魚、えび、かに、カキ
- 脂身の少ない肉、ひき肉
- 納豆、焼き豆腐
- のり、とろろ昆布
- 油脂類(サラダ油、ごま油、オリーブ油、ドレッシング)
気をつけて食べたい食品
- 油分の多いもの
- ベーコン、油揚げ、厚揚げ、揚げ物
- 食物繊維の非常に多いもの
- ごぼう、ぜんまい、たけのこ、れんこん、にら、海藻、パイナップル、柿、ドライフルーツ
- 刺激物
- コーヒー、辛いもの
特に気をつけたい食品
- 消化の悪い食品
- 赤飯、もち、ラーメン、いか、たこ、すし、こんにゃく
- おなかがふくれる食品
- 炭酸飲料、ビール
気をつけたい食べ物とは
こんにゃくや海藻など食物繊維の多い食品、ラーメンやもちなど消化の悪い食品は、手術後1年くらいたって、問題がなければ少しずつ試しましょう。
また、辛いものなど刺激の強い食品は、食べてみて何でもなくてもとりすぎはよくありません。熱すぎるもの、冷たすぎるものにも気をつけましょう。
COLUMN栄養手帳をつけてみませんか?
食事量をメモしておくと体調管理に役立つ
胃切除後の体調管理では、食事や栄養がとても重要です。そこで、何をどれくらい食べたか、専用の手帳にメモしておくとよいでしょう。
食事内容とともに、体重や体温、体調なども書きとめておきましょう。
記録に残すことで、食事と体調との関係がわかりやすくなり、今後の献立や食事の仕方、栄養機能食品をとり入れるべきかどうかといったことが、考えやすくなります。
また、食事や栄養のことで主治医に相談するときも、栄養手帳があると情報が伝わりやすく便利です。
栄養に関する検査値もいっしょに記録しておくとよい
治療後の栄養管理で大切な検査値は、炎症の指標「CRP」と、栄養状態の指標「Alb(血清アルブミン)」です。
■CRP(C反応性たんぱく質)
体の中で炎症が起こっていると、C反応性たんぱく質という物質が増える。CRPは風邪やケガでも上昇するが、がんの患者さんでは、炎症をチェックするのに役立つ。
■Alb(血清アルブミン)
栄養が足りない状態(低栄養)になると、値が下がる。やけどやストレスでも低下するが、基準値よりも下がっているときは栄養の補給が必要。
それぞれの基準値は、病院によって異なります。検査データの用紙に基準値が書いてありますが、主治医に確認してみるとよいでしょう。
ただし、食事量も検査値も、あまり気にしすぎるとつらくなります。あくまでも体調管理の手段と考えましょう。