3.胆石が見つかった時にすること
1)胆石症の検査とは
胆嚢結石があるかどうかという存在診断は、腹部超音波検査(図4)で行います。胆嚢結石に対する超音波検査は診断能力が高い検査ですが、おなかにガスがたまっているときや食事の後などでは難しいこともあります。超音波検査では結石の大きさや数、胆嚢の壁に凸凹や厚さの変化がないかがわかります。胆管結石については超音波検査で分かりにくいこともありますので、MRI検査や内視鏡による胆道造影検査(内視鏡的逆行性胆道造影)が必要になります。
胆嚢の壁が厚くなったり変形したりという変化があれば、造影CT検査やMRI検査、超音波内視鏡検査、内視鏡的逆行性胆道造影など、詳しい検査が必要になります。また、胆管の解剖(構造)を詳しく把握するためには、胆道造影検査を行います。経静脈的排泄性胆道造影(DIC)は胆汁の排泄能や胆嚢への胆汁の流入や濃縮状態を見ますので、胆嚢が機能しているかどうかの目安にもなります。DICとともにCTを撮影することにより、3D画像で胆道の解剖を把握することが可能です(図5)。DICで使用する造影剤に過敏な反応がある人には、MRIを撮影して胆道の画像を作成します。これをMRCPといいます(図6)。MRCPは液体を検出して画像を作成しますので、胆嚢の機能が低下していても胆道の解剖を調べることができます。
胆嚢結石症の症状は上部消化管の疾患による症状とよく似ているので、胃や十二指腸に病変がないことを、胃透視や内視鏡検査で確認しておくとより正確でしょう。
胆嚢炎や胆管炎を疑っているときには、以上のような画像検査のほかに、採血検査や胆汁を採取して細菌検査をすることもあります。
これらの検査のほとんどは外来でできる検査です。ただし、入院して行ったほうが安全であったり、検査と治療を同時にできるようなものもありますので、担当医と相談して決めるのがいいと思います。
2)健診で胆石が見つかったら(無症状の方)
健診や人間ドックで思いがけず胆石が見つかる人もいるでしょう。胆嚢結石の場合は、無症状であれば通常は治療の必要がないことがほとんどです。しかし、治療が必要ないかどうか、胆嚢の壁が厚くなったり変形したりしていないか、胆嚢癌の心配がないか、などについて検査をしておくほうがいいでしょう。一年に一度は定期的に検査して経過観察することをお勧めします。
3)胆石が見つかり、症状もある方
おなかが痛んだり、発熱があったりする胆嚢結石症は手術をうけたほうがいいでしょう。胆嚢結石症の症状は、結石そのものの機械的な刺激(胆嚢の中で動いたり、はまり込んだりすること)や、結石があることによって2次的に引き起こされる胆汁のうっ滞(よどみ)、細菌感染によって引き起こされます。そして、痛みの発作は1回生じると何度も繰り返すことが多いです。治療は、結石ができる場所すなわち胆嚢を切除する必要があります。一度でも胆石ができた胆嚢は結石ができやすい環境になっているので、結石だけ除去しても必ず石が再発するからです。
胆管結石は無症状でも治療が必要です。胆管炎や膵炎をおこす可能性があるからです。特に高齢者は、症状が軽くかつ体調がよいうちに治療をしたほうがいいでしょう。
肝内結石は特別な例(胆道の手術後ではないこと、かつ胆管径に変化がないこと)では経過観察になりますが、ほとんどは治療の対象です。また、肝内結石症には時に肝内胆管癌を合併することが知られているため、経過観察の場合でも定期的に検査することが大切です。内視鏡的な治療のほかに薬物療法や外科治療があります。
4)胆石症の方が気を付けるべきこと
胆嚢結石があっても無症状であれば、ほとんどの場合は日常で気をつけることもなく、定期的に超音波検査などの検査を受けます。
腹痛などの症状がある場合は治療が必要です。腹痛に加えて発熱や黄疸がある時には、すぐに受診しましょう。
胆嚢結石症の腹痛発作は、ストレスや脂肪の多い食事によって引き起こされがちです。不規則な食事時間にならないように気をつける必要があります。また、精神的なストレスも発作に影響します。脂肪の多い食事も避けましょう。卵は胆嚢を収縮させて腹痛発作を引き起こすのでおすすめしません。症状があるときには、食事は腹6分目程度に控えるか、またはおかゆか温めたスポーツドリンクなどにして胃腸を安静にするのがいいでしょう。
肥満にならないように心掛け、さらに急激なダイエットは胆石の形成や疝痛発作につながるので避けましょう。