4.甲状腺がん検査の流れ
甲状腺がんを診断するステップとしては、まず甲状腺内のしこりの有無を確認し、しこりがある場合には、それが良性腫瘍かがん(悪性腫瘍)かを見極めます。以下で具体的に診断の手順をみてみましょう。
視診、触診
最初に行うのは視診と触診です。甲状腺がある場所(のどぼとけの下)にしこりがないか目で見て、指で触って確認します。正常の甲状腺組織は軟らかく、体の表面からでは触れることができませんが、甲状腺にがんや良性腫瘍ができると、しこりとして触れることがあります。その場合には甲状腺内のどこにあるか、大きさはどの位か、周囲臓器と癒着していないか、などを確認します。
血液検査
甲状腺がんを血液検査で発見することは、ほぼ不可能です。甲状腺がんは一般的にはホルモン異常を起こさないため、甲状腺ホルモン値は参考になりません。他には、濾胞細胞で合成されるサイログロブリンというタンパク質も血液検査で測定でき、甲状腺がんにおいて高値を示すことがありますが、良性の甲状腺腫でも上昇することがあるので、甲状腺がん発見のために有効とは言えません。
ただし、甲状腺がんの約1%を占める髄様がんだけは例外的にふたつの腫瘍マーカーを持っています。ひとつは、人間ドック等でも測定される機会が多い、最も一般的な腫瘍マーカーであるCEA(carcinoembryonic antigen:癌胎児性抗原)です。CEAは髄様がん以外に、胃がん、大腸がん、肺がん等でも上昇することが知られており、CEAが高値となる方のうち髄様がんの方が占める割合は極めて低く、髄様がんを発見するために有効なマーカーとは言えません。もう一つのマーカーであるカルシトニンは髄様がんに特異的なマーカーで、CEAとカルシトニンの両者が高い場合には、髄様がんの存在を強く疑います。
超音波検査(エコー検査)
甲状腺がんの診断において最も有用な検査です。しこり(腫瘍)の有無や部位、サイズだけでなく、良性腫瘍と甲状腺がんの区別、さらには甲状腺がんのタイプまで推測することが可能です。痛みを伴うこともなく、所要時間も5~10分程度で終了する負担の軽い検査で、放射線被ばくもないことから、妊娠・授乳中の女性でも安心して受けて頂けます。
細胞診検査(穿刺吸引細胞診検査)
超音波検査で甲状腺がんを疑うしこりが見つかった場合、次に行うのが細胞診検査です。超音波検査で甲状腺の内部を確認しながら、がんを疑う部分に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で細胞の良悪性を判定します。皮下注射に使用する細い針を使用しており、慣れた施設で行えば1~2分程度で終了する検査で、入院もいりません。上述した甲状腺がんの4つのタイプうち、乳頭がん、髄様がん、未分化がんの3つは、細胞診を行うと高い確率で診断ができます。しかし、濾胞がんに関しては細胞診では診断ができません。理由は濾胞がんと良性腫瘍である濾胞腺腫の細胞は、顕微鏡でみてもほぼ同じ様に見えるからです。従って濾胞がんと濾胞腺腫を区別するためには、診断と治療を兼ねて手術によって甲状腺を摘出し、細胞診よりさらに細かい組織検査を行う必要があります。
CT検査(コンピュータ断層撮影)
レントゲン撮影した多量の画像をコンピュータで再構成して、人体の断面図を作成する検査です。甲状腺がんと良性腫瘍を区別するために有用ではありませんが、甲状腺がんの周囲への広がりを見たり、肺や骨などに遠隔転移を来たしていないかを評価するために使用します。放射線被ばくを伴うため、妊娠中の女性には行うことができません。