4. 必要な検査について
食道がんの検査は、
1)食道がんを確定診断するための検査
2) 治療方針(がんの進み具合:進行度)を決めるための検査に分かれます。
さらに、手術治療の方針となった場合には
3)手術・麻酔に耐えられるかどうか(耐術能)を確認するための検査を行います。
1)食道がんを確定診断するための検査
上部消化管内視鏡検査と上部消化管造影検査があります。
2)治療方針(がんの進行度)を決定するための検査
治療方針を決めるためには、がんが食道の壁のどのくらいの深さまで進行しているのか(壁深達度)、がんが他の部位に飛び火していないか(転移)の有無を調べて、がんの進行度を決定する必要があります。
そのためには、1)の検査に加えて、CT検査、MRI検査、超音波(エコー)検査、超音波(エコー)内視鏡検査、気管支内視鏡、PET検査などを行います。
上部消化管造影検査
バリウムを飲んで、食道を通過するところをX線で撮影する検査です。がんの場所や大きさ、食道の狭さなどの全体像を確認することができます。この検査では、早期のがんはみつけにくいです。
上部消化管内視鏡検査
内視鏡(カメラ)を挿入して咽頭(のど)から食道、胃、十二指腸まで、モニターをみながら消化管の内腔を観察します。がんの場所や大きさだけでなく、広がり、表面の凹凸などの性状、色調などから深達度を見極めます。内視鏡検査で早期がんは90%近くわかります。組織を採取して、がん細胞があるか・どのような組織型か確認(確定診断)します。また、合併する事が多い咽頭がん・喉頭がん・胃がんが無いかも確認します。
CT、MRI検査
CTはX線を、MRIは磁気を使って体の内部の断面をみる検査です。食道の周囲の臓器(気管、肺、大動脈、心臓)への広がりや、リンパ節・肝臓・肺などへの転移の有無の状況を調べます。
超音波(エコー)検査
体の表面から超音波で腹部と首(頸部)を観察します。腹部では肝臓への転移や腹部のリンパ節転移を調べます。頸部では頸部のリンパ節転移を調べます。頸部食道がんの場合は、がんと気管、甲状腺、頸動脈などの周囲臓器との関係も調べます。
超音波(エコー)内視鏡検査
内視鏡の先端についた超音波装置を用いて、がんが食道の壁のどのくらい深く(深達度)まで広がっているか、周りの臓器まで広がっていないか、食道の周りにあるリンパ節に転移していないかについて情報がわかります。
気管支内視鏡
がんの部位(頚部~胸部中部)が気管に近く、CT等で気管へのがんの広がりが疑われる場合は、気管支内視鏡を行います。気管内へがんが顔を出していないか、押されて隆起していないか確認します。
PET検査(陽電子放射断層撮影検査)
がん細胞は正常な細胞よりも活発に増殖するため、そのエネルギー源としてブドウ糖を多く取り込みます。PET検査では放射性ブドウ糖を注射し、その取り込みの分布を撮影し、がん細胞が全身へひろがっていないかを調べます。
3)耐術能の確認するための検査
食道がんの手術は消化器がんの手術の中では最も身体への負担(侵襲)が大きい手術といわれています。全身麻酔および手術に耐えられるかどうかを確かめるための検査を行います。検査としては、呼吸機能検査、心電図、心臓超音波(エコー)検査があります。
呼吸機能検査
大きく呼吸したり、勢いよく息を吐き出したりして、肺の機能(肺活量、1秒率等)を調べます。呼吸機能が悪いと全身麻酔をかけられず手術ができないこともあります。また、無理をして手術をしても術後に人工呼吸器から離脱できない(自分で呼吸できない)こともあります。
心電図
心臓のリズムを調べて心臓の筋肉の障害がないか、不整脈がないかを調べます。食道の手術の合併症で多いものの1つとして不整脈があげられます。
心臓超音波(エコー)検査
超音波(エコー)を心臓にあてて、心臓の大きさや動き、心臓の中の血液の流れに異常がないかを調べます。この検査で、狭心症や心筋梗塞の原因となる冠動脈狭窄が疑われる場合は心臓カテーテル検査が行われ、狭窄の程度によっては、先行して心臓カテーテル治療が必要となります。