更新日:2019年5月27日

2. 症状について

食道がんは、早期には自覚症状がないことがほとんどです。がんの進行に伴い症状が出現します。症状としては、がんの食道内の発育に伴う狭窄(内腔が狭くなる事)症状と、がんの周囲臓器への発育や転移による症状に大別されます。

狭窄症状―飲食時ののど・胸の違和(不快)感やつかえ感。

周囲臓器症状―胸や背中の痛み、咳・痰、声のかすれ(嗄声)。

1)胸の違和(不快)感

飲食物を飲み込んだときに胸の奥に軽い痛みを感じる、熱いものを飲み込んだときにしみる感じ・胸やけがするといった症状があります。これらの症状は一時的に消えることもあります。

2)つかえ感

がんの進行とともに、食道の内腔は狭くなり、飲食物が通りにくくなり、固形物がつかえやすくなります。しかし、内腔が小指程度の細さになってやっと自覚する事が多いので注意が必要です。飲み物は通過するが、固形物は通過しづらい時は要注意です。これらの症状は、がんの場所が食道のどの部位にあっても、のどの違和感・つかえ感として自覚する事もあります。がんがさらに大きくなると、食道をほぼふさいで、水分も通らなくなり吐き出すことが多くなります。

3)胸や背中の痛み、痰・咳、声のかすれ(嗄声)

食道は、胸の中では背中(脊椎)側に位置しており、周囲臓器(気管・肺・大動脈・心臓)と近接しています。がんが進行して食道の外壁を越えて、周りにある肺、背骨、大動脈などに広がると、胸の奥や背中に痛みを感じるようになります。また、肺・気管や気管支などに及ぶと、食事の際に痰や咳が増え、肺炎を起こし易くなります。また、食道がんは声帯の動きを調節している神経(反回神経)の周囲のリンパ節に転移する事が特徴であり、この神経へがんが進行すると、声がかすれ(嗄声)てきて、飲み物を飲み込む時にむせる事が多くなったりします。

3. 特徴(他の消化器がんとの違い)について

1)解剖学的特徴

食道は胃や大腸と同じ消化管ですが、胃や大腸と違い内側の表面が扁平上皮という皮膚と同じ組織の層で薄く覆われており、日本人の多くがこの扁平上皮からがんが発生します(扁平上皮がん)。

2)がんの飛び火(転移)

食道の周りには血管やリンパ管が豊富なため、胃がんや大腸がんよりも飛び火(転移)しやすいと言われており、これが治りにくいがんと言われる由縁です。転移は、リンパ行性転移(リンパ節)と血行転移(肝・肺・骨など)にわかれます。胃がんや大腸がんでは、ある程度深く進行しなければリンパ節転移を生じにくいのに対して、食道はリンパ管が網の目のように豊富であるため比較的早い時期よりリンパ節転移をおこすことが特徴です。また胃がんや大腸がんでは、がんに近いリンパ節より順に転移が広がっていくことが多いのですが、食道は頸部〜胸部〜腹部と細長い消化管でありリンパの流れが豊富であるため、がんの場所と関係なく、頸部〜胸部〜腹部の3つの領域のどこにでも転移をおこします。

3)がんの周囲臓器への広がり(浸潤)

胃や大腸の外側は漿膜と呼ばれる組織の層に覆われていますが、食道にはこの漿膜がなく(形式的に外膜と呼ぶ)、周囲の臓器と密接しているために、食道がんが進行すると簡単に周囲の臓器(気管・気管支や肺、大動脈など)まで広がり(浸潤)やすいと言われています。

4)他のがんとの合併(重複)

食道がんは、他の臓器に発生するがんと合併(重複がん)することが多く、その割合は約20%もあります。この重複がんは、転移とは異なり、全く別の部位(臓器)にがんが発生するものです。同じ時期(同時性)に発生することもあれば、あとから(異時性)に発生することもあります。食道がんの重複がんとして多いのは胃癌、頭頸部癌(咽頭癌、喉頭癌など)、肺癌などがあげられます。

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