日本臨床外科学会雑誌 第83巻6号 掲載予定論文 和文抄録

 

綜説

胆嚢癌の診断・術式選択のupdate

自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科

力山 敏樹

 胆嚢癌の病態は様々であり、進行度や存在部位による診断や術式に関し、いまだ議論の余地がある部分を中心に考察する。
1. CTは、早期の胆嚢癌病変では、感度33%、特異度94%と報告されており、感度が低い事には注意が必要である。
2. EUSは隆起性病変の診断能に優れており、感度、特異度は91.7%、87.7%だが、壁進達度診断の正診率は55.5%とされている。
3. 胆摘後に判明したT1a症例は追加切除不要であり、T1bであっても全割標本で診断されていれば追加切除は不要である。
4. T2症例に対する手術は、胆嚢床切除+領域リンパ節郭清が標準術式である。胆道癌取扱い規約第7版では、T2を腹腔側T2a(SS)、肝側T2b(SS)と分類し、T2aが予後良好である。
5. T3以深症例に対する手術では、その安全性と予後とのバランスを考慮した判断が肝要である。進展様式による判断が重要であり、例え技術的にはR0切除が可能であっても、肝門浸潤型、他臓器浸潤型の手術適応には慎重を期すべきである。

症例

五苓散が有効であった91歳乳房浮腫の1例

住友別子病院外科

杉森 和加奈 他

 症例は91歳、女性。3週間前より右乳房の疼痛、腫脹が出現し、近医受診。抗生剤投与にて改善が見られないため当院紹介受診となった。右乳房の腫脹と乳輪部発赤を認め、明らかなは腫瘤は触知しなかった。マンモグラフィは右乳房の濃度上昇と皮膚肥厚を認め、乳房超音波では皮膚の肥厚と脂肪織の浮腫を認め、乳腺組織は不明瞭であった。炎症性乳癌の鑑別のために針生検を施行したが、悪性所見は認めなかった。心不全を疑う所見がなかったため、利尿剤を使用せず、五苓散を開始した。緩徐ではあるが浮腫の改善を認め、投与後12か月で左右差が見られなくなった。乳房浮腫に対し五苓散を使用し有効であった症例を経験したので文献的考察を加え報告する。

乳房内に発生した血管脂肪腫の1例

国家公務員共済組合連合会浜の町病院外科

溝口 公久 他

 血管脂肪腫は四肢や体幹の皮下組織に好発し,まれに乳房内にも発生する.他の腫瘤と鑑別を要することもある.今回乳房内に発生した血管脂肪腫について報告する.症例は50歳女性.前医の乳房エコーで左乳房内に腫瘤を指摘され精査目的に当科紹介受診となった.左乳房C区域2時方向に圧痛を伴う1cm大の腫瘤を触知し,その他全身に腫瘤を認めなかった.マンモグラフィで左乳房MO領域に境界明瞭な高濃度腫瘤を認め,乳房エコーで左乳房C区域2時方向の皮下脂肪内に17x12x9mm大の境界不明瞭な低エコー腫瘤を認めた.針生検を施行し血管脂肪腫の診断であったため,腫瘤摘出術を施行した.病理結果は非浸潤型血管脂肪腫であった.血管脂肪腫の術前診断は各種画像検査を用いても困難とされている.乳房内に高エコー腫瘤を認めた場合は,血管脂肪腫を鑑別にあげるべきであり,診断と治療を兼ねて外科的切除を行う必要があると考えられる.また術後も慎重な経過観察が必要である.

髄外腫瘤として乳腺に再発した急性骨髄性白血病の1例

総合病院国保旭中央病院乳腺外科

田中 優子 他

 急性骨髄性白血病(Acute myeloid leukemia; AML)の髄外病変として、乳腺腫瘤を形成することは比較的稀である。今回我々は、AMLの乳腺内再発を経験した。症例は39歳女性。AML寛解後1年9カ月が経過していたが、乳腺腫瘤ならびに皮下結節が出現し、病理組織学的にAMLの結節性再発と診断された。超音波画像所見では、他のよく遭遇する乳腺腫瘤とは明らかに異なる所見を呈しており、既往歴からAML再発を疑った。腫瘤形成性AMLは比較的稀ではあるものの、本症例のように背景に造血器悪性腫瘍の既往がある場合には、髄外病変も念頭において検査を進める必要がある。

生存中に組織学的に腫瘍塞栓性肺微小血管症の診断がついた乳癌の1例

日本赤十字社長崎原爆病院乳腺内分泌外科

福嶋 絢子 他

 症例は71歳,女性.左乳癌(T1bN0M0)に対して乳房部分切除術を施行した.術後補助療法は拒否されたため,無治療経過観察となった.術後3年5ヶ月で左腋窩リンパ節再発と多発骨転移を認め,その3ヶ月後に呼吸困難が出現した.胸部CTでは両肺に浸潤影とすりガラス影が多発し,経気管支肺生検では血管内に腫瘍塞栓像を認め,心エコーで右心負荷所見を認めた.以上からpulmonary tumor thrombotic microangiopathy(以下PTTM)と診断したが,進行性に状態が悪化し入院20日目に死亡した.担癌患者が進行性の呼吸困難や右心不全を発症した場合には,本疾患も鑑別にあげて精査を行う必要がある.

乳頭全摘乳輪部分切除を伴う乳房温存術を行った早期乳癌の4例

公立西知多総合病院乳腺外科

小川 明男 他

 乳頭内に乳癌の浸潤が疑われた早期乳癌に対して乳頭全摘乳輪部分切除を伴う乳房温存術を4例に施行した。
 術前、乳房MRI造影画像で乳頭内への癌浸潤を判定した。症例1はPaget病で、乳頭全体が造影された。症例2は陥没乳頭直下に巨大な腫瘍があり、乳頭基部まで造影された。症例3は乳頭基部を中心に瀰漫性に造影され浸潤巣の存在が疑われた。症例4は乳頭方向に乳管内進展し乳頭内に結節像を認め浸潤の可能性ありと判定した。症例2はductal carcinoma in situを含む被包性乳頭腫であった。病理検索で乳頭内の癌浸潤巣を症例3では認めたが、症例4では確認できなかった。全例断端陰性で術後照射を併用した。
 乳頭を全摘し乳輪下の病変部直上の乳輪皮膚皮下も合併切除し、乳頭乳輪部も含め大胸筋筋膜までを全層切除する乳房温存術とした。紡錘状の皮膚切開創を連続埋没縫合としたため乳輪部にdog earが形成され一見乳頭様に膨隆し、さらに乳輪皮膚の色調が温存された。

ステロイド全身投与が奏効した胃切除後吻合部浮腫性狭窄の1例

JCHO船橋中央病院外科

高原 善博 他

 症例は76歳男性で検診にて見つかった胃癌に対して,腹腔鏡下幽門側胃切除を施行した.再建はデルタ吻合によるBillroth I法で行い,術後食事摂取良好にて術後8日目に退院となった.術後22日目に上腹部膨満の訴えにてCT検査施行したところ残胃の著明な拡張を認め,減圧後に施行した上部内視鏡検査にて吻合部浮腫性狭窄の診断となった.ステロイドの全身投与を開始したところ速やかに症状改善を認め,ステロイド投与開始5日目で経口摂取可能となった.その後はステロイド投与を漸減し合計38日間の投与で終了としたが,術後9ヶ月の現在狭窄症状の再燃は認めていない.デルタ吻合後の浮腫性狭窄に対するステロイドの全身投与は低侵襲でかつ有効であると考えられた.

Wound retractorの二重装着が有用であった毛髪胃石の1例

竹田綜合病院外科

鈴木 博也 他

 症例は18歳女性.腹痛,嘔吐,腹部腫瘤を主訴に受診した.採血でHb 7.7g/dLと貧血を認めた.腹部CT検査で胃内に不均一な含気を伴う巨大な腫瘤と胃角部小弯側に潰瘍性病変を認めた.上部消化管内視鏡検査で胃内に巨大な毛髪塊を認めた.内視鏡的摘出は困難であり,毛髪胃石,胃潰瘍の術前診断で外科的摘出の方針とした.Wound Retractor Sサイズを臍に装着し,Sサイズの中を通してXSサイズを胃内に挿入し二重装着し,胃内手術と鏡視下手術を併用し毛髪胃石を摘出した.従来は大きな皮膚,胃切開による開腹手術が主流であったが,近年では創縁保護具を用いた最小限の手術創で胃内手術を行った報告が散見されるが,創感染を来したとの報告もある.毛髪胃石に対して創縁保護具を二重装着した報告は本邦初であり,創感染や腹腔内膿瘍の予防に有用であると考えられたため,症例提示とともに文献的考察を加えて報告する.

腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を行った出血を伴う胃脂肪腫の1例

済生会滋賀県病院外科

丸中 雄太 他

 症例は63歳,男性.2020年11月に貧血精査の上部消化管内視鏡検査にて胃前庭部後壁に胃粘膜下腫瘤を指摘されたが,胃脂肪腫の疑いで経過観察となっていた.ところが,2021年6月に黒色便が出現し,Hb:5.5g/dlと高度貧血を伴っていたため緊急上部消化管内視鏡検査を施行された.既知の胃粘膜下腫瘤に潰瘍性出血を認め,内視鏡的に止血処置が施された.再出血のリスクが高く,手術以外の方法では確実な出血コントロールは難しいと考えたため腹腔鏡補助下幽門側胃切除術を施行した.術後経過は良好で第12病日に退院した.病理組織学的診断は66×45mmの胃脂肪腫であった.胃脂肪腫は基本的に経過観察されるが,胃脂肪肉腫が疑われる場合や出血や通過障害を伴う場合には切除を要する.治療のアプローチ・術式は多岐に渡り,占拠部位や腫瘍径に応じて選択する必要がある.今回,出血を伴う胃脂肪腫を切除し良好な経過を得た一例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

大型食道裂孔ヘルニアに伴うCameron lesionの1例

野崎徳州会病院外科

土佐 明誠 他

 症例は,67歳女性.黒色便と重度の鉄欠乏性貧血を主訴に近医を受診した.出血源の検索のため,上下部の内視鏡検査が行われた.大型食道裂孔ヘルニア(LHH)と診断されたが,出血源不明のまま40か月間保存的治療による経過観察が続けられていた.この間2回の大量消化管出血と進行する鉄欠乏性貧血が観察された.また,この間に再度の上下部内視鏡検査が行われていた.近医初診後40か月後に,LHHによるupside down stomachのため当院外科へ緊急入院した.過去の上部内視鏡写真の見直しにより,Cameron lesion(CL)からの消化管出血が疑われ、LHHに対する手術を行った.術後は順調に経過し,術後60か月たつ現在,消化管出血,進行する鉄欠乏性貧血,裂孔ヘルニアの再発はない.
 LHHに発生する胃粘膜の非特異的な糜爛や潰瘍性の病変は,CLと呼ばれ,急性消化管出血や慢性の鉄欠乏性貧血の原因となる.すべてのLHH患者では,消化管出血や貧血があれば,CLを疑うべきである.

十二指腸分類不能紡錘腫瘍の1例

名古屋大学大学院医学系研究科消化器外科学

山中 雅也 他

 症例は45歳,男性.黒色便で近医受診し,上部消化管内視鏡検査で十二指腸腫瘍を認めた.生検結果からは,SYT遺伝子の転座は認めないが,免疫染色や組織像から十二指腸滑膜肉腫と診断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.しかし,術後の切除検体からもSYT遺伝子転座は認めず滑膜肉腫は否定された.EWSR1の転座は認めたが,融合遺伝子までは確定できなかった.組織像からは,Round cell sarcoma with EWSR1-non-ETS fusionsという疾患概念に当てはまる可能性を指摘されたが,最終的には分類不能の紡錘細胞腫瘍との診断に至った.Round cell sarcoma with EWSR1-non-ETS fusionsという疾患概念は2020年に新たにできた分類であり,本邦ではこの分類にかかわる報告はない.貴重な病理結果である十二指腸紡錘細胞腫瘍を経験したので報告する.

回盲弁のlipomatous hypertrophyを伴う回腸憩室穿通の1例

大阪市立総合医療センター消化器外科

福井 康裕 他

 症例は80歳の男性.発熱で近医を受診し,血液検査で炎症反応の著明な上昇を認めたため精査加療目的に当院を紹介受診した.腹部CT(computed tomography)で回腸終末部の脂肪織濃度上昇とfree airを認め,上行結腸に多発する憩室を認めた.上行結腸憩室穿通の術前診断で緊急手術を行った.術中所見では回腸末端の腸間膜に膿瘍形成を来していた.憩室が発生していた上行結腸とともに膿瘍形成部を切除する方針として右半結腸切除術を行い,機能的端々吻合で再建を行った.切除標本を確認すると回盲弁から約3cm口側の回腸に穿通部位を認めた.病理組織診断で回腸憩室穿通および回盲弁のLipomatous hypertrophy(LH)が指摘された.術後経過は良好で術後14日目に退院となった.Meckel憩室以外の小腸憩室は稀な疾患である.また,本症例では回盲弁のLHが随伴しており,回腸末端の憩室の原因となった可能性が考えられた.

壊死を伴う回腸人工肛門重積脱出嵌頓の1例

昭和伊南総合病院外科

瀬原田 魁 他

 症例は90歳,男性.2020年4月に虫垂偽粘液腫による穿孔性腹膜炎で回盲部切除術,単孔式回腸人工肛門造設術を施行した.外来フォロー中の2021年1月に人工肛門先端部の黒色変化を主訴に来院した.整復困難で人工肛門腸管の重積脱出嵌頓及び腸管壊死と判断し,同日緊急手術を施行した.本症例では腹壁を切開することなく,脱出嵌頓した腸管の壊死部~血流不良部を切除して腸管断端同士を層々吻合し,重積は徒手整復した.術後は合併症の発生もなく経過良好で,以後,腸管の再脱出を認めていない.本術式は開腹操作を伴わず低侵襲であり,当該症例に対する術式の選択肢の1つとなり得ると考えられた.今回我々は回腸人工肛門重積脱出嵌頓に対し,人工肛門を再造設することなく,脱出腸管の切除のみで治療し得た症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

腹腔鏡下に切除した小腸腸間膜仮性嚢胞の1例

PL病院外科

西山 方規 他

 症例は33歳,女性.主訴は左側腹部腫瘤.腹部CT及びMRI検査にてTreitz靭帯近傍に55mm大の球形嚢胞性腫瘤を認め,腸間膜奇形腫の疑いにて手術を施行した.手術所見では,腫瘤はTreitz靭帯より約20cm肛門側の空腸間膜に存在し腹腔鏡下に腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は単房性嚢胞性病変であった.病理検査では嚢胞壁に上皮を伴わないことから,腸間膜仮性嚢胞と診断された.腸間膜嚢胞性腫瘤に対する術前診断は困難であり穿破することなく完全摘出することが重要である.比較的小さな症例に対する腹腔鏡手術は,低侵襲かつ安全な診断的治療として有用である.

炎症消退後に面積比10%に縮小し腹腔鏡下に切除した腸間膜リンパ管腫の1例

国立病院機構千葉医療センター外科

榊原 舞 他

 症例は腹痛、食欲不振を主訴とした51歳女性。血液検査で高度炎症を、腹部CTで119×154㎜の周囲に炎症を伴った多房性病変を認め腹部リンパ管腫感染と診断した。保存治療が奏功し待機手術を予定した。発症8週目のMRIにてリンパ管腫が28×68㎜と著明に縮小したことを確認し腹腔鏡下手術にて切除しえた。最終診断は嚢胞状腸間膜リンパ管腫であった。
 成人の腹部リンパ管腫はまれであり、同様の報告はなかった。小児領域ではリンパ管腫の急速増大と自然退縮がよくあり、その機序としてリンパ管腫の細々としたリンパ流では感染で増大したリンパ流に排出が追い付かずリンパ腫が急速増大すること、惹起された炎症により自然退縮することや退縮には時間を要することが報告されていた。本症例もリンパ管腫が感染により増大し顕著化したものの、炎症の消退後に著明に縮小したため低侵襲な腹腔鏡手術が可能となったと考えられた。示唆に富む症例と考え、文献的考察を含め報告する。

膿瘍形成性小腸gastrointestinal stromal tumorの1例

高島市民病院消化器外科

髙橋 有和 他

 症例は43歳,男性.食欲低下と発熱を主訴に当院内科を受診,腹部造影CTで左総腸骨動脈内側に小腸壁に接する110×70㎜大の腫瘤形成を認めた.腹腔内膿瘍と診断し抗生剤投与するも症状軽快せず,入院翌日穿刺排膿およびドレナージ目的でカテーテル留置を行なった.小腸造影検査にてカテーテルの先端近傍の小腸内にバリウムの貯留を認め,潰瘍形成が疑われた.クローン病を疑い,小腸ダブルバルーン内視鏡検査を行うも積極的にはクローン病を疑う所見に乏しかった.入院49日目に診断と治療目的で腫瘤を含め一塊として小腸部分切除を施行した.病理所見では,紡錘形の腫瘍細胞の増生が認められ,免疫染色では,c-kit 陽性であり,膿瘍形成を伴った小腸GISTと診断された.術後56日目よりイマチニブの内服を開始し,術後2年1か月無再発生存中である.腹腔内膿瘍を形成する小腸GISTは比較的まれな疾患で,文献的考察も含めて報告する.

単孔式腹腔鏡手術を行った腸管子宮内膜症による腸閉塞の2例

佼成病院外科

近藤 恵里 他

 症例1は32歳女性.間欠的腹痛と嘔吐を主訴に受診した.CT,大腸内視鏡検査で回腸末端の狭窄による腸閉塞を認め,血液検査ではCA125が高値であり腸管子宮内膜症を疑った.イレウス管を挿入減圧後に単孔式腹腔鏡下回腸部分切除術を施行した.術後経過良好で第8病日に退院した.症例2は37歳女性.子宮内膜症にてホルモン療法を行っていたが挙児希望のため中断したところ,月経周期に伴い左下腹部痛を繰り返すようになった.腹痛,嘔吐を主訴に受診され,腸閉塞の診断で内科入院となった.血液検査ではCA125が高値,CT,大腸内視鏡でS状結腸の粘膜浮腫と全周性の狭窄を認め外科紹介となった.腸管子宮内膜症の診断で単孔式腹腔鏡下S状結腸部分切除術を施行した.術後経過良好で第9病日に退院した.2例とも病理診断で腸管子宮内膜症であった.腸管子宮内膜症による腸閉塞に対し低侵襲性と整容性の観点からも単孔式腹腔鏡手術が有用であると考えられた.

8年間空置した小腸・大腸に多発したCrohn病合併炎症性腸疾患関連癌の1例

JCHO東京山手メディカルセンター大腸肛門病センター

古川 聡美 他

 症例は36歳女性。18歳時にクローン病を発症し、痔瘻を含む大腸病変の増悪のため28歳時に回腸人工肛門造設を施行されている。8年後、大腸病変および直腸周囲膿瘍の再燃のため大腸全摘術を施行したところ、回腸断端~結腸・直腸全域にわたって無数に重複する同時多発性のクローン病関連癌が診断された。クローン病の長期経過に伴い炎症性病変を母地とした癌が発生することは周知されているが、潰瘍性大腸炎の場合のように多発癌に関しては本邦ではまだ議論がなされていない。本邦におけるクローン病関連癌の疫学が著しく欧米と異なるため、癌に対するサーベイランス方の確立途上であることも一因と思われる。疫学や治療法に対する欧米と本邦の差異を考察に加え報告する。

腹腔鏡下S状結腸切除術後に発症したDST吻合部腸重積の1例

栃木県立がんセンター大腸骨盤外科

豊田 尚潔 他

 症例は64歳、男性。S状結腸癌(S, cT3N0M0, cStageⅡa)の診断で腹腔鏡下S状結腸切除術(DST吻合)を施行した。特に合併症なく第7病日に退院されたが、第24日病日に腹痛を主訴に当院を受診された。来院時に施行した腹部単純X線写真では下行結腸を起点に著明な結腸の拡張を認めた。腹部造影CT検査では吻合部口側の結腸が吻合部に嵌頓していたため、DST吻合部の腸重積と診断した。内視鏡的整復も困難であったため、同日腹腔鏡下で緊急手術を行った。術中所見では口側結腸が吻合部に強固に嵌頓していたため、吻合部の切除・再吻合(DST吻合)を行なった。再手術後は合併症なく第31病日に退院となった。術後病理検査では粘膜面の浮腫や線維化を認めたものの、腸重積の先進部となる器質的病変はなかった。腹腔鏡下S状結腸切除後のDST吻合部腸重積の症例は稀な病態であると考えられ、若干の文献的考察を加えて報告する。

WHO第5版で新規に提唱されたappendiceal goblet cell adenocarcinomaの1例

米沢市立病院外科

東 孝泰 他

 症例は85歳,男性,大腸がん検診での便潜血陽性で当院へ紹介となった.虫垂開口部にI型腫瘍を認め,生検で印環細胞癌を疑ったため腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.術後病理診断で虫垂杯細胞カルチノイド(Goblet cell carcinoid:以下,GCC)を考えたが,組織学的所見と免疫組織染色所見との不一致に苦慮していた.しかしこれまで神経内分泌腫瘍に軸足を置いてきたGCCをむしろ腺癌側に重点を置いた診断の転換のもとにWHO第5版で新提唱されたAppendiceal goblet cell adenocarcinoma(以下,虫垂GCA)ならば本症例の病態・病理像がよく合致することを知り最終の診断とした.虫垂腫瘍は,虫垂切除を契機に発見されることが比較的多いが,本症例では当初より悪性腫瘍を疑ったため一期的に腹腔鏡下に切除することできた.今回,我々は非常に稀な原発性虫垂腫瘍に対してWHO第5版から改められた新分類により,虫垂GCAと診断し得た症例の概要を報告した.

腸重積で発症した骨形成を伴う下行結腸癌の1例

互恵会大阪回生病院外科

北浦 良樹 他

 症例は83歳の高齢男性。左側腹部痛を主訴に当院紹介となり、下行結腸癌腸重積と診断された。腹部症状が軽度であったため、待機的に腹腔鏡下結腸切除術を行った。術中所見で重積は自然解除されていた。機能的端々吻合で再建し、術後経過に問題なく退院となった。最終診断はStage Ⅱであり、術後補助療法は行わずに経過観察の方針となった。現在まで、特に再発なく経過している。術前の画像評価で腫瘍部に石灰化を有していたが、術後病理検査で同部に骨形成が確認された。骨形成を伴う大腸癌は全体の0.4%程度と非常に稀とされる。また成人の腸重積は全腸重積症例の6%と報告されており、中でも後腹膜に固定された臓器である下行結腸の重積は少ない。これまでに下行結腸癌の腸重積に骨形成を伴った症例は報告されていない。貴重な1例と考えられたため、報告する。

腹腔鏡下Hartmann手術を行った髄膜瘤併存直腸癌の1例

春日部中央総合病院外科

小西 健斗 他

 髄膜瘤は,脊椎欠損部を通って内部に髄液を含み嚢胞構造を呈する硬膜とくも膜が脊柱管外部に突出する病態を指す.今回,巨大髄膜瘤を伴う直腸癌患者に対し腹腔鏡下ハルトマン術を施行した1例を経験した.
 症例は77歳女性.前医での下血精査にて直腸癌を認め,手術目的に紹介となった.出生時から指摘されている腰臀部の巨大髄膜瘤の為,日常生活において仰臥位や頭低位は不能であったが,手術台の工夫や,術前体位変換のシミュレーションを行い,全身麻酔での腹腔鏡手術が安全に施行できた.
 髄膜瘤を合併した悪性腫瘍に対し腹腔鏡手術を施行した報告は前例が無く,希少な症例として報告する.

S状結腸癌術後吻合部より口側に腸間膜リンパ節転移をきたした直腸癌の1例

京都府立医科大学外科学教室消化器外科学部門

小城 正大 他

 症例は85歳,女性.S状結腸癌(pStage IIa)に対して腹腔鏡下S状結腸切除術,DST再建を施行した.術後4年目の外来フォロー中に右側方リンパ節転移を伴う局所進行直腸癌を認めたため,腹腔鏡下直腸切断術,右骨盤神経叢,右内腸骨動静脈合併切除を伴う右側方リンパ節郭清(D1LD1(Rt-2, Lt-0))を施行した.病理結果はpT3N3M0 pStage IIIcであり,前回吻合部より口側の腸間膜リンパ節(#241)に転移を二つ認めた.異時性大腸癌において吻合部を越えてリンパ節転移を来すという報告は乏しく,郭清範囲についても定まった基準はない.今回われわれは,過去の手術でリンパ管の交通が途絶えたにもかかわらず,吻合部を越えて腸間膜リンパ節転移を来した症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

肝円索膿瘍との鑑別に苦慮した線毛性前腸性肝嚢胞の1例

健和会病院外科

本田 晴康 他

 症例は47歳女性.5日前から心窩部痛が出現したため当院来院.同部に圧痛を認めたが発熱なく,血液検査でもCRP軽度上昇以外は異常なかった.画像検査で肝円索部に厚い被膜を有する45mm大の嚢胞あり.感染性嚢胞を疑い抗生剤を投与したところ腹痛は数日で消失した.肝円索膿瘍の術前診断で手術を施行したところ,肝円索に5cm大の腫瘤が認められ,約1.5cmにわたって肝表面に接していた.摘出標本は55×33mm大の単房性嚢胞で,内腔には乳白色調の液体が貯留しており,病理組織学的に肝円索との連続性はなかった.嚢胞壁の内面は線毛を有する多列円柱上皮で被覆され,上皮下は疎性結合織,平滑筋層を有する線維性結合織からなり,線毛性前腸性肝嚢胞と診断された.本症例は,その発育が通常例のように肝被膜直下つまり内方向ではなく,肝円索への外方向であったため,肝円索膿瘍との鑑別に苦慮した1例であった.

R0手術とGEM/S-1療法により術後6年生存中の肝原発腺扁平上皮癌の1例

佐賀県医療センター好生館

古賀 浩木 他

 症例は67歳男性で心窩部不快感を主訴に近医を受診し、精査の結果、肝内胆管癌の診断で2015年10月肝左葉切除術+リンパ節郭清を施行した。病理組織検査結果、リンパ節転移を伴う肝原発腺扁平上皮癌の診断となり、術後補助化学療法としてGEM/S-1(GS)療法を導入した。貧血の進行のため術後5か月で一旦中止としたが、術後1年で吻合部近傍に再発病変を認めた。再度GS療法を再開したところ再発巣は不明瞭化した。現在術後6年が経過しているが明らかな再発の所見なく生存中である。

化学療法が奏効した胆管原発神経内分泌癌術後肝再発の1例

JA岐阜厚生連飛騨医療センター久美愛厚生病院外科

加藤 真司 他

 症例は78歳,男性.近医で肝胆道系酵素の著明な上昇を認め,精査目的に当院紹介となった.造影CTで胆管拡張と,下部胆管の壁肥厚と造影効果を認めた.内視鏡的逆行性胆道膵管造影で下部胆管の狭窄と上部胆管の拡張を認めた.同部位の生検にて,胆管原発small cell neuroendocrine carcinomaと診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後12か月のCTで2か所の肝転移が出現したため,化学療法としてEtoposide(ETP)+Carboplatin(CBDCA)を施行したところ,転移巣の縮小を認めた.術後20か月が経過した現在,経過観察中である.胆管neuroendocrine carcinoma(NEC)は極めて稀であり,予後は非常に不良である.本症例では胆管NECの術後肝再発に対して化学療法が奏功した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

十二指腸下行脚に嵌頓した胆石イレウスの1例

大津赤十字病院外科

甲津 卓実 他

 症例は93歳,女性.嘔吐を主訴に受診した.腹部CTで胆嚢と十二指腸球部の瘻孔形成,十二指腸下行脚に55mm大の結石を認めた.胆嚢十二指腸瘻,胆石イレウスの診断で入院とし,第2病日に内視鏡的摘出を試みるも困難であった.保存的加療の長期化を避けるべく,経鼻的に減圧治療および経管栄養を開始し,第6病日に手術を施行した.術中十二指腸下行脚に嵌頓した結石を認め, 用手的な移動を試みるも水平脚までの移動しかかなわなかった.十二指腸水平脚を切開し結石を摘出し,十二指腸減圧目的に胃空腸バイパス術を併施した.術後経過は良好で第31病日に転院となった.十二指腸に嵌頓した胆石イレウスはまれであり,明確な治療方針は定まっていない.近年内視鏡的治療成功例の報告もあるが多くは手術加療を要する.高齢に多いとされる本疾患では,全身状態や併存疾患といった患者背景に加え,嵌頓部位も踏まえ個々の症例ごとに治療法を検討する必要がある.

治療方針決定に超音波内視鏡下穿刺吸引法が有用であった乳癌膵転移の1例

岐阜市民病院乳腺外科

中田 琢巳 他

 乳癌の膵転移は稀であり,治療方針の決定に当たっては原発性膵癌との鑑別が必要となる.そのため転移巣の再生検による組織型の確認は有用と考えられる.今回,乳癌術後に判明した膵腫瘤に対して超音波内視鏡下穿刺吸引法を施行し乳癌膵転移と診断できた1例を経験した.症例は70歳 女性,61歳時に左乳癌で乳房切除術の施行を受けた.
 術後補助療法はEC 4クール後,レトロゾール内服を5年間施行した.術後8年目に膵尾部に腫瘤出現を認め,超音波内視鏡下穿刺吸引法により経胃的に生検が施行された結果,初発時の乳癌組織像と類似した組織で,乳癌の転移として矛盾のない所見とされた.これにより乳癌の膵転移と判断し,内分泌治療を再開した.
 生検に際しては利益と不利益を十分考慮し,患者の苦痛や合併症を最小限にする必要があるが比較的低侵襲な手技による組織診断が治療方針の決定に有用であった乳癌膵転移の1例を経験したので報告する.

尿路感染症に起因するFournier壊疽に合併した脾膿瘍破裂の1例

高知大学医学部外科学講座

上村 直 他

 症例は70歳、男性。前立腺癌に伴う尿路感染症に対して前医で治療中、Fournier壊疽を認め当院泌尿器へ紹介された。造影CTで陰嚢内部にガス像を伴う液体貯留と、最大径78mmの脾膿瘍を認め緊急入院した。Fournier壊疽に対して膿瘍ドレナージ術と、抗生剤で保存的治療を開始し、感染制御後に直腸狭窄を伴う前立腺癌のため人工肛門造設術が計画された。入院5日目に左上腹部痛が出現し、造影CTで脾膿瘍の増大と脾周囲に液体貯留を認め、脾膿瘍破裂による急性汎発性腹膜炎と診断し当科で緊急手術の方針とした。開腹時白色膿汁を認め、脾臓周囲の剥離途中脾臓内から大量の膿汁の噴出を認めた。脾臓摘出術、腹腔内洗浄ドレナージ術後、S状結腸人工肛門造設術を施行した。術後門脈血栓を認めたが抗凝固治療で改善し術後28日目に前医へ転院した。本症例のように大型の脾膿瘍では破裂の危険性を認識し、外科的処置の早期介入が肝要である。

併存型鼠径部ヘルニアを併存した内膀胱上窩ヘルニアの1例

桜ヶ丘中央病院外科

榎本 義久 他

 症例は62歳,男性.左鼠径部の膨隆を主訴に受診された.血液検査所見では,特記事項は認めなかった.CTでは,左内鼠径ヘルニアが疑われ,嵌頓や腸閉塞はなく,内膀胱上窩ヘルニアに特徴的な所見は明らかではなかった.術前には内鼠径ヘルニアが疑われていたが,術中に内膀胱上窩ヘルニア,内鼠径ヘルニア,外鼠径ヘルニアの併存を認め,transabdominal preperitoneal approach(TAPP)を施行.術後経過は良好であった.今回,稀な疾患である内膀胱上窩ヘルニアに併存型鼠径部ヘルニアを併存した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

副腎に発生した後腹膜chronic expanding hematomaの1例

岐阜大学医学部附属病院消化器外科

横井 亮磨 他

 症例は76歳,女性.腹部エコーで右上腹部腫瘤を指摘された.CTで右上腹部に14cm大の腫瘤性病変を認め,右腎や肝臓を著明に圧排し辺縁に右副腎を認めた.内部は斑状に低吸収を呈し,造影にて辺縁に濃染を認めた.MRIではT2強調像で辺縁が低信号,内部は高信号と低信号が混在していた.副腎に発生した後腹膜chronic expanding hematoma(以下CEH)を疑った.5カ月後のCTで増大傾向を認めたため手術を施行した.周囲組織との癒着は剥離可能で,被膜を損傷することなく摘出した.標本は線維性被膜を伴う20cm大の巨大な嚢胞で,内腔に新旧混在する血腫と壊死組織,嚢胞壁に副腎を認めた.右副腎に発生した後腹膜CEHと診断した.CEHは手術や外傷を契機に発生し緩徐に増大する血腫であり,副腎原発はまれである.非常に巨大な腫瘤であったが,安全に被膜を含めた完全切除が可能であった.

経仙骨アプローチ併用腹腔鏡下腫瘍摘出術を行った仙尾部奇形腫の1例

富山県立中央病院外科

竹中 俊介 他

 仙尾部成熟奇形腫は小児期発症が多く,成人発症例は非常に稀であるが,悪性転化の可能性も指摘されているため発見後は早期切除が望ましい.今回,成人女性の仙尾部奇形腫に対して経仙骨アプローチを併用した腹腔鏡下腫瘍摘出術が有用であった1例を経験したので報告する.
 症例は52歳女性.検診で骨盤底に7㎝の多房性嚢胞性腫瘍を指摘され,診断的治療目的に外科的切除の方針となった.手術は経仙骨アプローチから尾骨を合併切除して深部から背側の剥離を行った後に,腹腔鏡下でのアプローチに移り、直腸授動と腫瘍周囲の剥離を行うことで良好な視野のもと腫瘍切除が可能であった.病理組織学的に成熟嚢胞性奇形腫と診断された.術後経過は良好で,術後1年5ヶ月時点で再発は認めていない.
 仙骨前面の後腹膜腫瘍では腹腔内アプローチのみでは腫瘍深部から背側の剥離にしばしば難渋するが,経仙骨アプローチを併用することで安全な腫瘍摘出が可能であった.

用手的整復後に鼠径法手術を行った高度円背・閉鎖孔ヘルニアの1例

JCHO徳山中央病院外科

須藤 優太郎 他

 症例は66歳,女性.右下肢と腹部の痛みにて救急搬送された.当直医にて経過観察入院の方針とされた.翌日のCTにて右閉鎖孔ヘルニア・小腸イレウスと診断され外科に紹介された.患者は脊椎カリエスの既往があり,胸部と恥骨が近接する程の高度円背を有していた.腸管壊死を疑う所見はなく,まずはエコー下にヘルニアの整復を行った.高度円背のため経腹的手術は困難であり,待機的に鼠径法での根治術を行った.文献的考察を加えて報告する.

Poland症候群に併存し停留精巣を合併した成人鼠径ヘルニア嵌頓の1例

練馬光が丘病院外科

帖地 健 他

 症例は出生時に右胸部、右手指の手術歴がある82歳男性。腹痛、嘔吐を主訴に近医受診し右鼠径ヘルニア嵌頓、腸閉塞の診断で嵌頓整復後当院紹介となった。画像検査、身体所見では上記診断に加えて右陰嚢内に精巣を認めず、ヘルニア嚢近傍の皮下に精巣と思われる腫瘤を認めた。また右手指、右胸郭の変形、異常骨、左片腎、腸回転異常を認めた。以上よりPoland症候群、右停留精巣、右鼠径ヘルニアと診断した。術中所見ではヘルニア嚢は陰嚢方向に延びず、外鼠径輪を出て頭外側に走行し、外腹斜筋腱膜の腹側の皮下で停止していた。精巣はヘルニア嚢の盲端付近に認め、精巣摘出術、ヘルニア修復術を施行した。停留精巣は男性において多く認められる先天異常であるが、多くは1~2歳までに手術加療されており成人で認めることは少ない。成人停留精巣を合併する鼠径ヘルニアも少なく、Poland症候群という先天異常も合併するのはさらに稀と考えられる。

2期分割手術により切除した食道癌肉腫・胃癌・大腸癌の3重複癌の1例

滋賀医科大学外科学講座

前川 毅 他

 症例は60歳代、男性。Body Mass Index : 12kg/m2の低体重があり、既往歴に糖尿病を認めた。2019年11月、つかえ感と体重減少を主訴に受診し、上部消化管内視鏡検査で胸部中部から下部食道にかけて約8cm大の巨大腫瘤性病変を認めた。同時に早期胃癌と進行S状結腸癌を認め、3重複癌と診断し、手術侵襲を分散する目的で2期分割手術の方針とした。1期目に胸腔鏡下食道亜全摘、腹腔鏡下S状結腸切除、腹腔鏡下胃全摘、頸部食道瘻造設術、腸瘻造設を施行した。35日後に胸骨後経路回結腸再建を施行し、術後経過良好で20日後に退院した。病理組織学的診断は、食道癌肉腫pT3N0M0 pStageⅡ、胃癌pT1aN0M0 pStageⅠa、S状結腸癌pT3N1bM0 pStageⅢbであった。まれな3重複癌に対し、鏡視下手術と2期分割手術を選択することで手術侵襲を軽減し、安全に根治切除が可能であった症例を経験した。鏡視下手術、2期分割手術はハイリスク症例に対して有用な治療選択と考えられた。

ページトップ