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一般のみなさま
投稿写真

都築 英雄 会員(JA高知病院 外科)撮影
2017年11月 夜の駅前(臨床外科学会の帰路)
臨床外科学会の帰りに東京駅前で撮影

更新日:2019年6月3日

③医療機関受診後のこと

1)全身状態の診察

医療機関を受診後、どのようなことが行われていくか、つまり医療者は、吐血あるいは下血の患者さんに対してどのようなことを考えて何を行っていくか、について説明しましょう。まずは、全身状態を把握することから始めます。バイタルサインと呼ばれる呼吸回数、血圧、脈拍、体温などを測定し、呼吸状態(誤嚥や窒息はないか?)、循環動態(血圧低下、ショックをきたしていないか?)に問題が無いかを確認します。必要に応じて、早急に点滴、輸血、酸素吸入などを行います。特に、出血に伴うショック状態かどうかを特徴的な5つの徴候(蒼白、虚脱、冷汗、脈弱、呼吸不全)に気をつけて診断し、ショック状態と診断された場合には早急な処置によってショック状態からの改善を図ります。

2)検査・診断

1.出血の原因である病気の予測

全身状態の診察、処置をまず優先に行いますが、ほぼ同時進行で、出血の量・色調・出方、出血に随伴する症状(悪心・嘔吐、腹痛、発熱、下痢など)から、出血部位、出血を起こしている病気を予測しながら必要な検査を行っていきます。また、既往歴(消化性潰瘍、肝疾患、腸疾患、動脈硬化性疾患、心疾患など)や服薬歴、特に非ステロイド系消炎鎮痛剤(ロキソプロフェン等)、副腎皮質ステロイド、抗生物質、抗凝固薬などについての情報が診断を推定して検査を進めていく上で大変重要となります。最近、内視鏡検査をいつ行い、どのような所見があったかも非常に参考になります。そして何よりも大切なのは、以上の情報をもとに、まずは頻度の高い病気から考えていくということです。

消化管からの出血は、70-80%が上部消化管(食道・胃・十二指腸)からの出血で、原因となる病気として頻度が高いのが胃潰瘍・十二指腸潰瘍、急性胃粘膜病変(AGML)、食道静脈瘤、胃がん・食道がん、マロリーワイス症候群です。下部消化管(大腸・肛門)は20-30%で、原因となる病気として頻度が高いのが痔核、大腸がん・大腸ポリープ、大腸憩室出血、虚血性腸炎、薬剤性腸炎、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患です。小腸からの出血は5%ほどです。

2.検査・診断

各々の病気によって行われる検査は異なってきます。検査によっては診断と治療の両方を目的として行われるものもあります。吐血・下血において行われる検査として以下のようなものがあります。
1. 採血

採血は、吐血・下血においては必須の検査です。どの程度貧血(赤血球値、ヘモグロビン値低下)が認められるかを判断し、結果によって輸血の適応を決めます。またプロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)、GOT/GPTなど肝機能を示す数値によって背景にある肝疾患や血液凝固系の問題などを知ることができます。
2. 内視鏡検査(上部、小腸、下部)

診断を確定するためには必要な検査であり、凝固やクリッピングなど止血術により治療を同時に行うことができます。上部消化管の出血を疑えば上部消化管内視鏡検査、小腸出血を疑えばバルーン内視鏡あるいはカプセル内視鏡、下部消化管の出血を疑えば下部消化管内視鏡検査を施行することになります。
3. 血管造影検査

主に出血が急速または重度の場合に行う検査で、造影剤を血管内に注入し、X線画像上で出血の部位を同定します。塞栓術や血管収縮薬の注入によって治療を行うことも可能です。
4. 出血シンチグラフィー(核医学検査)

この検査も、主に出血が急速または重度の場合に行う検査です。放射性マーカーで標識した赤血球を注射する検査で、出血のおおよその部位が分かることがあります。

3)処置・治療

1. 全身状態の安定化を図る

出血性ショック状態を含めて、呼吸状態、循環動態など全身状態が不安定な状況下では、まずは点滴、輸血等によって全身状態の安定化を図ることが最優先となります。

2. 出血が軽度の場合

大抵の消化管出血は止血操作などの治療を行わなくても止まりますので、点滴を行った状態で絶食とし消化管を安静にします。病状に応じては輸血、止血剤、鉄剤、制酸剤などを投与します。血液凝固に異常がある場合は、血小板、新鮮凍結血漿、血液凝固因子の輸血、またはビタミンKの注入が必要な場合があります。

3. 出血が中等度~高度の場合

状態によって、出血に対する治療が必要であると考えられる場合には、以下のような治療を行います。
(1) 内視鏡的止血術

内視鏡下に、薬剤の注入(硬化療法)、クリッピングや結紮、電気焼灼、レーザー治療などを行い、出血部の止血を行います。
(2) 内視鏡的ポリープ切除術

ポリープからの出血に対しては、内視鏡的にワイヤースネアあるいは電気焼灼術などにより切除します。
(3) 血管造影下塞栓術、血管収縮薬の注入

血管造影下に、ゼラチンでできたスポンジ状の小片やらせん状の針金を挿入して血管を塞いだり(塞栓術)、血管収縮薬を注入して出血血管の血流を減らしたりします。
(4) 手術

上記のような処置でも止血がなされない場合には、出血病変を含めた切除を外科的に行う必要があります。