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一般のみなさま
投稿写真

都築 英雄 会員(JA高知病院 外科)撮影
2017年11月 夜の駅前(臨床外科学会の帰路)
臨床外科学会の帰りに東京駅前で撮影

更新日:2019年6月3日

②吐血・下血が見られたら

1)まず冷静になるように心がける

 口から血液を吐いたり、肛門から出血があったりすれば誰もが冷静ではいられなくなるでしょう。確かに、大量に出血がみられた場合には、生命の危険に直面している事態もあり、一刻も早く救急車で医療機関を受診し治療を受けなくてはいけません。しかし、その場合も、周囲を含めてパニックにならずに迅速な行動を取る冷静さが必要になります。大量出血によって出血性ショックが引き起こされることがあります。本人よりも周りが気をつけることですが、出血性ショックの状態を示す特徴的な5つの徴候(蒼白、虚脱、冷汗、脈弱、呼吸不全)に気をつけて観察し、救急車の到着を待ちます。ショック体位という、15-30cmほど両下肢を挙上させて、頭を低い位置にする態勢にすると良いでしょう。吐血の場合には、口のなかに残存する吐物や出血が原因で窒息を起こさないように顔を横にむけるなどの配慮も必要です。

2)口から血液が出た場合に確認すること

歯槽膿漏など歯茎からの出血や、鼻出血が口腔内に垂れ込んで口から出血することもあります。このような場合は吐血とは区別されますが、出血している部位に綿球などを押し当てることにより、出血をコントロールすることができることがあります。まずは、出血部位をよく見極めて、できるだけ出血している部位にピンポイントに綿球などを押し当てて出血のコントロールを図りましょう。そして、その後の経過によって、歯科、耳鼻科などを受診するようにしましょう。

また、気管や肺といった呼吸器官からの出血である喀血は、咳と一緒に出てくることが多く、またよく見ると、血液に泡が混じっていることが多いのが特徴です。断定はできませんが、注意して見ておくと良いでしょう。喀血の可能性が高い場合には、呼吸器を専門とする診療科への受診が必要です。

3)出血の量・色調・出方、出血に随伴する症状を確認する

吐血、下血の場合には、更に詳細に出血の量・色調・出方、出血に随伴する症状を確認しましょう。これによって、出血部位や考えられる病気を推測することができます。出血部位に関しては図1、考えられる病気については表2をご覧下さい。勿論、これによって診断が可能であるということではなく、いろいろな検査を行って診断していく必要がありますが、医療機関を受診する際に、出血の量・色調・出方、出血に随伴する症状についてある程度正確に把握ができていることが望ましく、最初にどの診療科を受診すべきかの判断や診療の手助けとなります。その点からも、吐き出した血液の一部をティッシュやガーゼに取っておき、医療機関に持参するとよいでしょう。

表2.代表的疾患における吐血・下血の一般的な特徴および可能性ある随伴症状
臓器 病名 吐血・下血の一般的な特徴 可能性ある随伴症状(進行度、重症度による異なる)
食道 食道静脈瘤 大量の吐血(新鮮血)、下血(タール便) 肝硬変に随伴する症状(手掌紅斑、腹水、皮膚掻痒感、黄疸など)
食道がん 下血(タール便) 嚥下困難・嘔吐・胸痛・食欲低下・体重減少
マロリーワイス症候群 嘔吐後の吐血(新鮮血)、下血(タール便) 嘔気・上腹部痛
胃潰瘍 吐血(コーヒー残渣様)、下血(タール便) 上腹部痛・胃もたれ・げっぷ・胸やけ・嘔気
急性胃粘膜病変(AGML)
胃がん 上腹部痛・背部痛・食欲低下・体重減少
十二指腸 十二指腸潰瘍 上腹部痛(特に空腹時)
小腸 クローン病 下血(血便、粘血便) 腹痛・発熱・体重減少・下痢・肛門病変・腸管外病変
大腸 潰瘍性大腸炎 腹痛・発熱・頻脈・血性下痢・腸管外病変
虚血性腸炎 突然の腹痛
薬剤性腸炎 腹痛・発熱・下痢・腹痛膨満
感染性腸炎(病原大腸菌、アメーバ赤痢) 頻回の下血(粘血便) 発熱、嘔気・嘔吐、腹痛、頻回の下痢(血性)
憩室炎・憩室出血 下血(血便) 腹痛
大腸ポリープ
大腸がん 腹痛・腫瘤触知
肛門 痔核 下血(新鮮血) 肛門痛

4)医療機関を受診する

出血がコントロールできる口腔内や鼻出血でなければ、喀血であっても吐血であっても、医療機関を受診して全身状態を診察してもらい、出血の原因、治療を行っていく必要があります。最初は出血の量が少なくても、時間をおいて大量に吐く場合がありますので安心はできません。下血についても同様です。真っ赤な血液の下血がみられた際に、痔からの出血であろうと勝手に自己判断し市販の痔の薬で対処してしまったが、実はS状結腸や直腸のがんによる出血であり、がんの診断が遅れて進行してしまったというような話は、よくあることです。吐血・下血は、消化管からの出血であるため、内視鏡検査などにより診断が比較的容易であると考えられます。消化管の中ごろにある小腸は、消化器の中でもアプローチし難い部位にありますが、小腸の病変に関しても、近年はバルーン付き内視鏡あるいはカプセル内視鏡などの進歩によって診断がつけやすくなっています。