更新日:2020年7月13日
9.治療経過
- 治療効果をみるときには、10年無再発生存率や全生存率で検討するので、最低10年間の経過観察が必要と考えられます。
- 定期的な検査としては、診察とマンモグラフィは有用とされています。
- 何らかの症状がない限り、定期的にCT、PET、骨シンチグラフィ、採血を行うことの有用性は立証されていません。
10.治癒後
- 治癒の目安として治療開始後10年ですが、10年以上でもわずかに再発は起こる可能性はありますので、体調に変わったことがあれば、医療機関を受診してください。
- 乳癌検診を継続してください。
- 姉妹や娘には、乳癌を発症するリスクが少し高まるので、乳癌検診を勧めてください。
11.再発
- 再発とは、治療後に再び元の癌が発生してくることです。
- 局所再発と遠隔再発があります。
- 局所再発は主に創部周囲、腋窩リンパ節に発生します。遠隔再発は主に肺、骨、遠隔リンパ節に発生します。
- 局所再発では治癒する可能性はありますが、遠隔再発では一般に困難です。
- 遠隔再発した場合の多くは、多発性に発生し、他臓器にも起こり得ますので、根治を目指して再手術することはほとんどありません。薬物治療が中心的治療で、延命が目的です。
- サブタイプ、再発までの期間、再発臓器、過去の薬剤使用歴、再発癌の特徴などから検討して、薬剤を選択します。
- 担当医と十分相談して治療を計画していってください。
12.乳癌以外の疾患
- 乳腺症
- 30-50歳代で正常乳腺が硬くごつごつ触れる状態で、病気というより生理的名称と考えるべきです。
- 線維腺腫
- 良性腫瘍で、10-30歳でこりこりした腫瘤として自覚します。多発する場合もあります。閉経後は萎縮して縮小します。増大しない限り、切除の適応はありません。
- 乳腺炎
-
- ①授乳期乳腺炎:授乳期に起きる細菌性乳腺炎で最も頻度が多い。膿瘍を形成すれば切開排膿が必要となることが多い。
- ②乳輪下膿瘍:陥没乳頭が原因となる。年齢に関係なく、繰り返して発症する。喫煙との関連が指摘されている。
- ③肉芽腫性乳腺炎:乳頭から離れた部位に発症する。出産後5年以内に起こりやすい。
- ④炎症性乳癌:乳房皮膚の発赤・腫脹を示す。炎症ではなく、乳癌のリンパ管浸潤によるよるもの。
- Tietze病
- 乳腺疾患ではありませんが、第2-5肋軟骨の痛み、圧痛を認める疾患で、ほとんどが自然治癒します。原因は不明です。
13.治療費について
- 入院治療費について、乳癌手術目的の場合は、1週間ほどの入院で、20万円前後(3割負担で)です。
- 外来治療費について、多くは薬剤費になります。薬剤は先発薬品と後発薬品(ジェネリック)があります。近年は後発薬品数が多くなり、薬価が大変安くなっています。後発薬品を選択しても何ら問題がありません。
- 高額医療費控除などのいくつかの公的な減額制度があります。生活に大きく負担になるほどの医療費がかかる場合には、医療機関、または役所の医療相談窓口で相談してみてください。
14.参考図書、情報サイト
- 乳癌取扱い規約 第18版、 日本乳癌学会編、金原出版、2018年
- 乳癌診療ガイドライン ①治療編、日本乳癌学会編、金原出版、2018年
- 乳癌診療ガイドライン ②疫学、診断編、日本乳癌学会編、金原出版、2018年
- 乳腺腫瘍学 第2版、日本乳癌学会編、金原出版、2015年
- 患者さんのための乳がん診療ガイドライン 第6版、日本乳癌学会編、金原出版、2019年
- 国立がん研究センターがん情報サービス http://www.ganjoho.jp/
- 乳がんjp https://www.nyugan.jp/
- 乳がんを学ぶ https://www.ganclass.jp
- 乳がん患者サービスステーションTODAY http://www.v-next.jp
- 乳がんinfoナビ http://www.nyugan-infonavi.jp