胃癌と診断されたら…
東京大学医学系研究科消化管外科学 奥村康弘
(1) 検査と診断の基礎知識
胃がんの検査の目的は、まず胃がんであることをはっきりさせ、次に病期とがん細胞の悪性度を見極めることです。病期と悪性度は、治療方針を決める重要な手がかりです。
早期胃がんを見つける検査は胃内視鏡検査
胃内視鏡検査はいわゆる胃カメラのことで、胃の内部をモニターで見ながらがんの有無を確認します。内視鏡から細い鉗子を入れ、組織をつまみとって病理学的検査を行うことで、確定診断ができます。同時に、がん細胞の悪性度やがんの範囲もわかります。早期の胃がんを見つけられる検査です。
バリウム検査は、正確には「上部消化管造影検査」といいます。造影剤(バリウム)を飲んでX線撮影を行い、内視鏡検査ではわかりにくい胃全体の形や胃の壁の硬さ、噴門部のがんがどの程度食道に入り込んでいるか(浸潤)などを調べます。胃の壁が厚く硬くなるスキルス胃がんでは有用な検査です。
がんの存在があきらかになったら、次は進行度を調べる検査を行います。
進行度を知るための超音波検査やCT検査
がんの進行度は、がんの深さ、転移の有無や範囲で決まります。これらを見極める検査として、超音波内視鏡(EUS)検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、胸のX線検査などが行われます。
EUS検査では、がんが胃の壁のどれくらい深くまで達しているか、胃の周辺のリンパ節に転移があるかどうかがわかります。
腹部超音波検査は、リンパ節転移や肝臓への転移の有無や腹水の有無を確認する検査です。
CT検査では、がんの深さ、リンパ節転移の有無とその範囲、肝臓をはじめとする他臓器への転移の有無、腹水や腹膜播種性転移の有無などさまざまなことがわかります。
ほかに、肝臓への転移の有無を調べるためのMRI検査、大腸に同時にがんができていないかどうかを調べる注腸検査(大腸のバリウム検査)や大腸内視鏡検査が行われることもあります。
肺への転移の有無は、胸のX線検査や、胸部CT検査で調べます。
これらの検査の結果を総合的に判断して、診断を組み立てます。