会長挨拶

万代 恭嗣万代 恭嗣

(ばんだい やすつぐ)

学会会長

年頭所感
新たな年を迎えて ~学会活動の進展と医療の展望~

 新年明けましておめでとうございます.

 会員の皆さまにおかれましては,お健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます.

 学会の重要な機能のひとつである学術集会は,昨年11月21日から23日までの3日間,宇都宮市にて現地参加形式のみで盛大に開催されました.多くのテーマが取り上げられ,とりわけ主催校の特色である「地域」をキーワードに,各所に工夫を凝らした示唆に富む内容で,多くの参加者を魅了する盛会となりました.佐田尚宏学術集会会長,北山丈二準備委員長をはじめ,全ての関係者の皆さまに深く敬意を表するとともに,改めて御礼と慰労を申し上げます.

 本学会の中心的事業である若手外科医の支援や,各都道府県支部との連携・関係強化については,新たな構想を取り入れながら引き続き推進してまいります.具体的には,各支部での学術集会開催時に学会本部役員が現地を訪問し,交流を深めつつ情報交換を行う新たな事業がスタートしました.また,当該委員会の重要な取り組みである「次世代の臨床外科医のための特別セミナー」は,第13回を迎える本年度,2月初旬に開催予定です.前回に引き続き,若手医師の皆さまに講演発表の機会を提供し,セミナータイトルにふさわしい,さらに充実した内容となるよう準備を進めております.多くの方々の積極的なご参加を心よりお待ちしております.

 学会誌のオンライン化については,編集委員会を中心として推進いただき,昨年4月より完全オンライン化となりました.紙媒体での閲覧に少しでも近づけるよう冊子をめくるようにして目を通せる機能も併せて実現しておりますので,会員諸氏には是非ご活用いただきますようお願い申し上げます.これに伴い,これまでも折に触れて述べてきたように,会員数減少などからの収入減に対しても,安定的な学会運営が可能となり,2024年度は黒字決算を達成できる見通しとなり,2025年度においても黒字予算を確保できる見込みです.これを機に,学会予算の使途について改めて見直し,より効果的かつ有意義な運用を目指してまいります.

 これまで重点課題として掲げてきた女性会員の増加や,評議員・役員への積極的な登用については,より広い視点で会員数減少への対応策を検討するための委員会を新たに立ち上げました.今後の進展に大いに期待しております.役員の世代交代についても,一層の推進をしてまいります.

 医療を取り巻く環境については,2040年を見据えた各種審議会が並行して開催されています.ここでは,昨年3月19日に発足した「新たな地域医療構想等に関する検討会」について触れたく思います.この検討会の目的は,2025年までを視野に策定された現行の地域医療構想を基盤とし,85歳以上の高齢者人口の増加や現役世代の減少に対応するため,病院機能に加え,かかりつけ医,在宅医療,医療・介護連携などを含めた地域医療提供体制の見直しを図ることです.検討会では,新たな地域医療構想の策定および施策の実施に加え,医師偏在対策なども議論されています.本稿がお手元に届く頃には,最終取りまとめが公表されている見込みです.その中で,特に注目すべきは2024年に求められる医療機関機能として提示された3つの類型です.すなわち,1)高齢者救急の受け皿として地域復帰を目指す機能,2)在宅医療を提供し,地域の生活を支える機能,3)救急医療を含む急性期医療を広く担う機能,が挙げられています.これらの方針だけで将来の少子高齢化に完全に対応できるわけではありませんが,重要な視点は,軽症の高齢救急患者を受け入れる体制の整備と,入院後の早期退院を実現するための在宅医療の充実です.もちろん高難度手術や急性心筋梗塞に対する経皮的冠動脈拡張術など医療資源を多く必要とする症例がなくなるわけではありませんが,それらの患者数は頭打ちとなり,むしろ増大する高齢者の軽症救急疾患や標準的手術への対応が模索されています.これら疾病構造の変化は,現場で働く外科医にとっても無関係ではなく,今後のキャリア形成にも大きな影響を及ぼすと考えています.

 2025年は十干十二支では「乙巳」の年にあたります.「乙」は未だ発展途上の状態を,「巳」は植物が最大限まで成長した状態を意味するとされ,これまでの努力や準備が実を結び始める時期を示唆しています.このような成長と結実の年となる可能性が高い年を迎え,会員の皆さまのご支援とご協力を賜りながら,本年度も日本臨床外科学会としての成果を形にしていきたいと考えておりますので,本年もどうぞよろしくお願い申し上げます.

(2025年1月)

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