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学会会長挨拶

跡見 裕跡見 裕

(あとみ ゆたか)

学会会長

年頭にあたり

 2016年を迎え,日本臨床外科学会会員の皆様に,新年のご挨拶を申し上げます.

 近年,医療に関する制度上の変化はめまぐるしいものがあります.昨年度は長い間懸案事項となっていた,医療事故に関する制度が立ち上がりました.医療事故調査制度は2015年6月18日に成立した,医療法の改正に盛り込まれた制度で,施行は10月1日でした.医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い,その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで再発防止につなげることを目的とし,医療事故に係る調査の仕組み等を医療法に位置づけ,医療の安全を確保するということが趣旨であります.この制度がしっかりと機能していくには学会の協力も必要であり,日本臨床外科学会も協力体制を検討しています.2014年に設立された一般社団法人日本専門医機構により,2017年から新たな専門医制度の運用が開始されます.この二つの制度は外科医にとってもきわめて重要なものですが,その運用に関しては若手外科医の関心が非常に高いのであります.従って,本年予定されている「第4回次世代の臨床外科医のための特別セミナー」では,医療事故調の木村壮介理事長と,専門医機構の池田康夫理事長に講演をお願いしました.

 一方,医療制度全般をみると,“2018年 大転換する日本の医療”(島崎謙治:医療政策を問いなおす ちくま書房 2015)と指摘されるような制度改革が行われつつあります.この背景には,いわゆる団塊の世代が全て後期高齢者である75歳以上となる2025年を,間近に控えていることがあります.2014年に医療介護総合確保推進法が成立しました.これにより地域包括ケアの推進や,地域医療構想の策定が進められています.その後の国民健康保険法等の改正により,2018年度から国民健康保険の財政運営は都道府県の責任となりました.財政健全化と呼応する形で,社会保障費の抑制を図ろうとする国の姿勢は,必ずしも納得できるものではありません.私たちは国民の健康を守り抜くという姿勢を崩してはならず,国民皆保険制度の意義を良く考えねばならないと思います.

 日本臨床外科学会は発足当時から外科臨床を重視した学会として,また様々な医療的課題に取り組む学会として活動を続けてきました.これは今でもしっかりと守られており,保険医療に関する積極的な取り組みを行い,学術集会の際には政党討論会を催してきました.その一環として,昨年には“日本臨床外科学会本部および各県支部からの提言”を公表しました.これは昨年11月,福岡で開催された第77回総会(山下裕一会長)のおり,支部代表者と学会会長,副会長などの役員が集結し,本年度における“診療報酬改定”に向けて議論した内容です.提言は一部メディアでも報じられましたが,詳細は学会誌第76巻12号の巻頭に掲載されています.

 日本臨床外科学会は支部が重要な役割を果たす会であり,また若手外科医が活躍する場でもあ ります.これに従い様々な取り組みをしておりますが,本年度から“国内外科研修制度”を発足す ることにしました.40歳以下の外科医が国内施設で短期研修する制度であり,研修生と研修先に 一定の補助金をお支払いするものです.この選考にあたり支部の推薦が必要です.各支部にはご 負担をおかけすることになりますが,何卒よろしくお願い申し上げます.

 最後に,日本臨床外科学会の会員の皆様のご多幸をお祈り申し上げます.

(2016年1月)