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学会会長挨拶

跡見 裕跡見 裕

(あとみ ゆたか)

学会会長

年頭にあたり

 新しい年を迎え,日本臨床外科学会会員の皆様にご挨拶を申し上げます.

 以前の年頭の挨拶では,日本臨床外科学会の今後について,Moving global,staying local.を目指そうと述べました.東京都に本部があり,全道府県に支部がある大きな学会は本学会が唯一ともいえるもので,まさにlocalに根付いた活動が可能であります.一方globalな動きとして,本年度の総会は高山会長が主催し,これと同時に高山会長がPresidentとなりアジア外科学会(Asian Surgical Association)が開催されます.日本臨床外科学会はアジア外科学会とコラボレートし,外科診療に関する様々な問題を検討していきたいと考えております.会員の皆様の積極的なご参加を期待しております.

 近年,グローバリズムに関して様々な議論がなされています.昨年,イギリスのEU離脱,アメリカでトランプ氏が次期大統領に選出されるなど衝撃的ともいえる出来事が発生しました.これをnationへの回帰としてとらえる考えもあり,その根底にはglobalization fatigueともいえる現象の存在を指摘する社会科学者(エマニュエル トッド)もいます.我が国でもそうですが,グローバリズムは当初はどちらかというと経済界から強く主張されてきたといえるでしょう.つまり金融の自由化であり,資本が国境の制限なく動き回れるようになることです.利があるところに資本が集中し利の蓄積と再配分(特定の少数者)の結果,格差がどんどんひらきます.これは必然ともいえる動きであるので,これに対して公益資本主義的な動きがありますが,見通しは厳しそうです.一方好むと好まざるとに関わらず,グローバル化は必然の流れです.世界的な感染症の問題への対応,多くの患者さんに利をもたらす新薬の利用などはグローバルな取り組みが必要です.また昨年度我が国への外国人観光客が2,000万人を超えましたが,この観光客を通じての交流はまさにグローバル化の促進となります.日本の漫画,アニメーションは世界の多くに普及しています.グローバル化は実は,社会(学)的な側面が強く,市民レベルでは急速に進行しているのであり,今後はますます加速していくと思われます.

 一方,医学,医療の分野でもnationを意識するのは,医療制度をはじめ多くあります.我が国が誇る(少しずつ形骸化していますが)国民皆保険制度はまさにnationとして取り組まねばならないものです.日本臨床外科学会は外科臨床を重視した学会として,また我が国における様々な医療的課題に取り組む学会として活動を続けてきました.医療制度や外科医の労働環境について今後も積極的に発言していきたいと考えます.

 日本臨床外科学会は活発に事業を展開しています.その一つ,新たな取り組みとして,国内研修制度が発足しました.第一回の昨年は,各支部に国内外科研修の希望者を募っていただき,推薦を受けた14名の方が様々な施設で2〜4 週間の研修を行いました.この制度は本学会が研修希望者を選考し各施設に依頼するもので,研修者,施設両方に研修費として若干の費用を補助するものです.個人的なつながりがなくても研修したい施設を希望される方は,ホームページをご覧いただいたり各支部に問い合わせてください.また研修生の結果報告は日本臨床外科学会雑誌に掲載されておりますのでお読みください.本学会は,本年度も様々な活動を展開する予定です.会員の皆様のご指導,ご援助を期待しております.

 2017年度が日本臨床外科学会会員の皆様によい年であることをお祈り申し上げます.

(2017年1月)