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日本臨床外科学会雑誌 第82巻4号 掲載予定論文 和文抄録


臨床経験

皮下埋め込み型中心静脈ポート造設後創部リンパ漏

県民健康プラザ鹿屋医療センター外科

米盛 圭一 他

 目的:皮下埋め込み型中心静脈ポート(以下CVポート)造設後の創部リンパ漏に関する検討はこれまで報告されていない.今回その実態の把握と発症予測を目的に検討を行った.方法:2016年4月から2020年8月に当科でCVポート を留置した160例を対象とした(前胸部群80例,上腕群80例).患者背景,栄養状態,合併症について後方視的に検討を行った.結果:CVポート造設後のリンパ漏は前胸部群では1例も認めなかったが上腕群で6例(7.5%)に認めた.上腕群をリンパ漏発症群6例と非発症群74例に分けて臨床学的因子の検討を行うと,リンパ漏発症群で有意に年齢が高く,BMI・PNIは低値であった.リンパ漏は全例保存的に消失したが,消失まで2か月以上要した症例もあった.結論:上腕へのCVポート作成の際は術後リンパ漏の可能性を念頭におき,特に高齢で栄養状態不良の症例の場合はより丁寧な造設操作を心掛ける必要がある.

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下部消化管穿通症例に対する加療

佐藤病院消化器・一般外科

奥村 憲二 他

 下部消化管穿孔は、極めて緊急性の高い病態であるが、一方で下部消化管穿通は、保存的加療や待機的手術で治癒する症例も見受けられることがある。今回、当院における下部消化管穿通22症例に対する加療について、検討を行い考察した。下部消化管穿通の原因として、大腸憩室炎が11例、大腸癌が7例、小腸憩室炎が1例、小腸医原性が1例、異物が1例、原因不明が1例であった。保存的に加療を行った症例が5例、緊急手術は3例、待機的手術は14例に施行された。待機的手術のうち、鏡視下手術は12例(86%)で行われ、人工肛門は3例(21%)で造設された。術後1か月以内に死亡した症例は、認められなかった。
 下部消化管穿通症例では、人工肛門造設が少ない、一期的、待機的鏡視下手術を検討することが可能であった。臨床、画像所見にて正確な診断がなされれば、容態の悪化する可能性に常に留意すれば、穿通症例に対しては低侵襲な加療の選択が可能であると考えられた。

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症例

乳腺acinic cell carcinomaの1例

総合病院土浦協同病院消化器外科

谷田部 悠介 他

 乳腺acinic cell carcinoma(AcCC)は1996年に報告された、唾液腺腺房細胞癌と類似した組織像を呈する極めてまれな浸潤性乳管癌である。症例は68歳の女性で、前医で右乳癌術後の経過観察中に左乳房腫瘤を指摘され、当科紹介受診した。左外側上領域に径1cm大、弾性硬可動性良好で表面粗造な腫瘤を触知し、生検で浸潤性乳管癌と診断された。全身検索では唾液腺を含め他に悪性を疑う所見は認めなかった。センチネルリンパ節は陰性で、左乳房温存術を施行した。病理組織学的検査では、類円形の核を有するやや好酸性な異形細胞が、小型腺管状や小胞巣状の浸潤性増殖パターンを呈していた。免疫組織学的検査ではp63およびCD10陽性筋上皮との二相性は見られず浸潤が認められた。S-100、α1-AT、唾液腺アミラーゼ、p53、CEA、EMA、GCDFP-15が陽性、Mammaglobin、ER、PgR、HER2が陰性、Ki67は最大21%陽性であり、AcCCと診断した。術後化学療法は行わずに経過観察中であるが、術後4年7か月の時点で無再発生存中である。

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同側乳房内に浸潤性小葉癌が併存した葉状腫瘍の1例

神戸市立西神戸医療センター乳腺外科

大山 友梨 他

 葉状腫瘍にはときとして乳癌が併存する.今回,同側乳房内に浸潤性小葉癌が併存した葉状腫瘍を経験したので報告する.症例は67歳女性.初診の半年前から自覚していた右乳房腫瘤の急速増大を認め受診した.右乳房CD区域にドーム状に隆起する7cmの腫瘤を認め,超音波検査では円形,境界明瞭平滑で内部不均質な低~等エコーを呈する腫瘤を認めた.針生検で葉状腫瘍と診断,乳房全切除術とレベルIリンパ節郭清術を施行した.病理診断では9cmの境界悪性葉状腫瘍に近接して浸潤性小葉癌が併存していた.葉状腫瘍に乳癌が合併した場合,併存する乳癌に準じた追加治療が必要となる.本症例では同時にレベルIリンパ節郭清術を行い,癌転移陰性であったため追加手術は不要と判断した.術後補助治療として乳癌に準じて内分泌療法を行い,経過観察中である.

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Humoral hypercalcemia of malignancyを発症した再発乳癌の1例

香川県立中央病院乳腺・内分泌外科

戸嶋  圭 他

 症例は45歳,女性.右乳房に6cm大の腫瘤,右腋窩に1cm大のリンパ節を触知し,針生検の結果は,浸潤性乳管癌, 核Grade3, ER(-) PgR(-) HER2(1+) Ki-67:85%であった.画像検査では遠隔転移を認めず,cT3N1M0 StagesⅢAの乳癌と診断し,術前化学療後に手術を施行した.組織学的治療効果はGrade 1aであった.術後1ヶ月で局所,腋窩リンパ節再発,多発肺転移を認め,Eribulinを開始した.1コース終了時に血清Ca値が15.3 mg/dlと高Ca血症を認めたが,造影CT検査,PET-CT検査で骨転移は認めなかった.Intact PTHは5 pg/mLと正常値で,PTHrPが19.5 pmol/Lと上昇していたことから,humoral hypercalcemia of malignancy(HHM)と診断した.ビスホスホネート製剤により血清Ca値は正常となったが, 病勢進行が速く全身状態が悪化したため,乳癌に対する治療を再開することができなかった.

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ゲフェチニブ投与中に腸管嚢腫様気腫症を発症した肺腺癌の1例

能代厚生医療センター外科

高橋 眞人 他

 症例は80歳女性.切除不能肺腺癌に対しゲフェチニブ内服加療中,効果判定にて施行したCT検査にて腹腔内遊離ガス像と腸管気腫像を認めた.腹水は認めず腸管血流が保たれていたこと,腹痛および腹膜刺激症状も認めなかったため,ゲフェチニブによる腸管嚢腫様気腫症の診断で,ゲフェチニブ休薬と保存的加療を行った.第10病日のCT検査では腹腔内遊離ガス像および腸管気腫像の消失を認めた.経口摂取開始後も腸管気腫の再燃は認めなかった.近年,上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるゲフェチニブによる腸管嚢腫様気腫症が少数例報告されている.自検例はゲフェチニブ投与により腸管粘膜の脆弱化および透過性の亢進が生じ,腸管気腫を発症,その破裂により腹腔内遊離ガスを生じたと考える.

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術後にCOVID-19陽性が判明した胃癌の1例

所沢明生病院外科

森﨑 善久 他

 当院では2020年4月初旬にCOVID-19の院内感染が発生した. 院内感染の状況が不明確な初期に胃癌に対して胃全摘を施行し、 術後にCOVID-19感染症の陽性が確認された1症例を経験した. 感染源は手術前後に同室であった陽性患者と考えられた. 術後は発熱が散発し、胸部CTにて肺炎所見を認めたためCOVID-19感染が疑われたが, 3回目のPCR検査でようやく陽性が確認された. 陽性確認後はファビピラビル投与のためか良好に経過し, 術後24病日(COVIID-19陽性確認後9日後)に退院した. COVID-19院内感染が発生した病院においてやむなく手術を行う場合には術前後に個室管理が基本であると考えられた.

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粘膜下腫瘍様形態を呈した胃癌壁内転移の1例

新座志木中央総合病院外科

松本  萌 他

 症例は79歳男性.右側腹部の違和感を主訴に受診,腹部CT検査にて胃前庭部より発生し,膵体部浸潤を伴う粘膜下腫瘍を指摘された.その後の上部消化管内視鏡検査にて胃角部後壁に3型病変を認め,病理組織学的に中分化型管状腺癌であった.以上より進行胃癌と胃粘膜下腫瘍の合併と診断し外科的切除の方針となった.術中所見で胃粘膜下腫瘍は膵体部と横行結腸間膜に浸潤しており,幽門側胃切除,膵体部分節切除,横行結腸間膜合併切除術,リンパ節郭清を施行し,尾側膵を残胃後壁に吻合し,Billroth Ⅰ法にて再建した.病理組織学的には胃角部の3型病変は固有筋層に浸潤する高分化型管状腺癌で,胃粘膜下腫瘍は胃角部腫瘍と類似の組織像からなり,胃癌の壁内転移と診断された.今回,胃粘膜下腫瘍様形態を呈し,術前に胃癌の壁内転移の診断が困難であった一例を経験したので報告する.

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胃原発胎児消化管上皮類似癌の2例

JCHO久留米総合病院外科

緒方 奈々恵 他

 胃癌の特殊組織型の一つである胎児消化管上皮類似癌は、胎生初期の消化管上皮に類似した組織形態を示す腺癌であり,AFP, Glypican3(GPC3), SALL4のいずれかの発現が陽性であるものと定義される.今回,われわれは当院で経験した2症例を文献的考察とともに報告する.
 症例1:84歳,男性.前医でC型肝炎加療中にAFP上昇と食思不振が出現,精査で胃角部小弯後壁に2型病変認め,胃癌の診断で幽門側胃切除術を施行した.病理では淡明でロゼット状の管状構造が目立つ中〜低分化腺癌,AFP+/SALL4+であり胎児消化管上皮類似癌と診断した.術後7ヶ月無再発生存を確認している.
 症例2:76歳,男性.前医で肝細胞癌術後フォロー中にCEA上昇あり,精査で胃体上部小弯後壁に3型病変認め,胃癌の診断で胃全摘術を施行した.病理では胎児消化管に類似した淡明な胞体を有する円柱状細胞が管状から乳頭状,深部では充実性に増殖し,SALL4+であり胎児消化管上皮類似癌と診断した.現在術後補助化学療法中である.

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CA19-9産生胃癌・直腸癌の同時性重複癌の1例

日本鋼管福山病院外科

満吉 将大 他

 症例は72歳,男性.心窩部痛を主訴に当院内科を受診,CTで上腹部に軽度free airを認めたが,心窩部痛は改善傾向であったため保存的加療となった.その後CTでfree airは消失し,上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に2型病変を認め,生検にて腺癌と診断,胃癌穿孔がfree airの原因と考えられた.また,下部消化管内視鏡検査では直腸Rbに2型病変を認め,生検にて腺癌と診断した.術前血清CA19-9値は5525U/mlと高値であった.胃癌穿孔,直腸癌と診断し,開腹幽門側胃切除+肝部分切除+直腸低位前方切除術を施行した.術後血清CA19-9値は488U/mlと低下し,胃癌のCA19-9染色所見では癌細胞と近傍間質を中心として強陽性を示すstromal typeであったことから,CA19-9産生胃癌と診断した.また,直腸癌でのCA19-9染色は弱陽性であった.
 CA19-9産生胃癌の報告例は本症例を含め45例であるが,CA19-9産生胃癌と直腸癌の同時性重複癌の報告はなく,若干の文献的考察を加え報告する.

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腹腔鏡下局所切除術施行時に標本回収袋が有用であった十二指腸GISTの1例

日本赤十字社医療センター胃・食道外科 

加藤 岳晴 他

 十二指腸gastrointestinal stromal tumor(以下, GIST)は稀であり, 術式は腫瘍径や局在, 発育形式によって様々である. 本症例は70歳, 男性. 健康診断の腹部超音波検査で膵近傍に腫瘤性病変が指摘された. 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を施行したところGISTが検出され, 十二指腸GISTの診断で手術の方針となった. 腹腔鏡で腹腔内を観察し, 十二指腸球部遠位外側に管外発育型腫瘍を認めた. 標本回収袋で腫瘍を被覆牽引し, 腫瘍根部を十二指腸短軸方向に自動縫合器で切離した. 病理結果はlow risk GIST, 断端は陰性であった. 管外発育型十二指腸GISTは, 標本回収袋を切除時から用いることで腫瘍の偽被膜を損傷することなく, 腹腔鏡下十二指腸局所切除術が安全かつ簡便に行える可能性が示唆された.

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腸回転異常症が併存した小腸多発真性憩室穿孔の1例

千葉西総合病院外科

赤嶺 洸太 他

 症例は44歳,男性.生来1日に数回の下痢便と腹部膨満を伴う生活を送っていた. 3日前より腹痛と腹部膨満感が増悪し当院を受診した.下腹部を最強点とする腹部全体の自発痛と圧痛を認めた.血液検査での炎症上昇と, 腹部CTにおいて小腸間膜内ガス像と膿瘍形成を認めたため小腸穿孔の診断で緊急手術を施行した.また盲腸は右上腹部に位置しており術前より腸回転異常を認識していた.術中所見としては, 穿孔部位と思われる小腸は一塊となっており, 口側腸管に白色硬化した狭窄部位やねじれを伴うような小腸と小腸憩室を多数認め, 150cmの空腸を切除した. 病理組織学的所見では複数の真性憩室を認め一部周囲に膿瘍形成を認めた.以上より空腸憩室穿孔による汎発性腹膜炎と診断した.小腸憩室は稀な疾患であり,なかでも真性憩室の頻度は少ないが穿孔症例の死亡率は高く術前診断困難な腹膜炎症例を診た際に鑑別診断の一つとして挙げることは重要である.

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膵鉤部合併切除を行った成人小腸間膜リンパ管腫の1例

東京都済生会中央病院一般・消化器外科

前田 祐助 他

 症例は60歳,男性.2012年に大腸憩室炎を発症した際の腹部超音波検査で9cm大の嚢胞性腫瘤を指摘され当院を紹介となり,リンパ管腫の疑いで数回の画像検査を行ったのち,経過観察されていた.2018年に健診で,腫瘤が11cm大と増大傾向を認め,精査加療目的に当院を再度受診した.腹部造影CTにて右側腹部に最大径11cmの嚢胞性病変を認めた.腹部症状は認めなかったが,増大傾向にあり,悪性腫瘍の可能性も否定できず手術を施行した.開腹所見では,空腸間膜に腫瘤を認めたが,腫瘤は膵鉤部と高度癒着があり,境界が不明瞭で膵原発も否定できなかったため,膵部分切除を含む腫瘤摘出術を施行した.腫瘤の内腔にはリンパ液が充満しており,病理組織学的に腸間膜リンパ管腫の診断であり,膵周囲脂肪組織への進展も認めた.膵鉤部合併切除を行った小腸間膜リンパ管腫はこれまで報告がなく,本邦報告例を含めた文献的考察を加え報告する.

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術後15カ月無再発生存している回腸間膜原発Ewing肉腫/pPNETの1例

総合病院土浦協同病院消化器外科

八木 健太 他

 症例は18歳, 男性. 心窩部から右下腹部にかけての疼痛を主訴に受診. 腹部造影CTにて右下腹部から骨盤腔にかけて上腸間膜動脈から血流を得る150mm×70mm大の巨大な腫瘤を認め, 精査目的に入院となった. 血管分布から回盲部の腸管や腸間膜由来の腫瘍などを疑い, 診断的治療目的に手術を施行した. 開腹すると中等量の血性腹水を認めた. 腫瘍は腹膜, 膀胱, 30cm程度の回腸にそれぞれ強固に癒着しており, 回腸を合併切除する形で腫瘍を摘出した. 術後経過良好であり術後8日目に退院した. 病理組織検査にて, 腫瘍は回腸間膜由来のEwing’s sarcoma/peripheral primitive neuroectodermal tumor(以下ES/pPNET)と診断された. 腫瘍自体は切除できたが術中腹水細胞診で腫瘍細胞を認め, 腹腔内微小転移の可能性を考慮し高次医療機関へ紹介, 補助化学療法が施行された. 術後15ヶ月経過した現在, 肉眼的再発なく経過している. 腸間膜原発のES/pPNETは非常に稀な疾患であるため報告する.

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多発腎嚢胞を誘因とした横行結腸宿便性腸閉塞による閉塞性大腸炎の1例

大垣市民病院外科

坂下 勝哉 他

 症例は68歳男性.既往に多発腎嚢胞あり.腹痛,腹部膨満を主訴に当院を受診した.腹部は膨満しており,右下腹部に圧痛を認めたが腹膜刺激徴候は認めなかった.腹部単純CTでは巨大な多発腎嚢胞を認め,横行結腸に6cm大の糞石とその口側腸管の拡張を認めた.血液検査所見では白血球数7420/µl,好中球比率89.3%,CRP 32.6mg/dLと著明な炎症反応の上昇を認めた.宿便性腸閉塞による閉塞性腸炎を疑い,緊急手術を施行した.まず視野確保のために左の巨大な腎嚢胞を穿破した.横行結腸に硬便を触れ口側腸管の拡張および漿膜の虚血性変化を認めたため結腸右半切除術を施行した.術後は集中治療を要したが,合併症なく術後11日で軽快退院した.横行結腸を起点とした宿便性腸閉塞による閉塞性大腸炎は極めて稀であり,腎嚢胞による腸管の圧排により硬便が形成されたと考えられた.また血液検査で炎症反応の上昇を認めた場合は,閉塞性大腸炎の併発を念頭に置き,手術を考慮する必要がある.

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腹腔鏡下に手術した結腸間膜動脈破裂をきたした分節性動脈中膜融解症の1例

関東労災病院外科

関  裕介 他

 症例は43歳, 女性. 突然の強い腹痛・下痢のため救急搬送された. 来院時ショック状態で, Hb値 10.7 g/dl値と貧血を認めた. 腹部造影CTで中結腸動脈左枝に数珠状変形を認め, 横行結腸間膜から網嚢にいたる巨大血腫形成および腹水貯留を認めた. 中結腸動脈左枝破裂に伴う腹腔内出血を疑い緊急手術の方針とした. 腹腔鏡下手術にて血腫除去の後,中結腸動脈左枝からの分枝血管の破綻をクリッピング止血した. 術後経過は良好で術後第15日に軽快退院となった. 術後の腹部血管造影で中結腸動脈左枝の他, 脾動脈・左結腸動脈・S状結腸動脈に数珠状変形・多発動脈瘤を認めた. 内山らの臨床的診断基準にSegmental arterial mediolysis (SAM) と診断した. SAMは腹部動脈破裂による腹腔内出血を引き起こす比較的稀な疾患であるが, SAMに対する腹腔鏡下手術の報告はこれまできわめて少ない. 自験例では良好な術後経過が得られたことから, 腹腔鏡下手術が有効な治療であったと考えられた.

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脳室-腹腔シャント経路に腹壁再発をきたした横行結腸癌の1例

高松市立みんなの病院外科

篠原 永光 他

 症例は71歳,女性.57歳時にクモ膜下出血後の続発性水頭症に対し脳室‐腹腔(V-P)シャント術を受けた.63歳時に横行結腸癌で横行結腸切除術(D3)を施行した. V-Pシャントは無処置で周術期管理を行った.病理診断は中分化腺癌でpT4(SE)N2M0stageⅢbであった. 8年後に右下腹部腫瘤で受診し,CTで右下腹部腹壁にV-Pシャントチューブが貫通している腫瘤を認めた.針生検で結腸癌の腹壁再発と診断し,腫瘍縮小効果を目的に術前化学療法を施行した.縮小効果を認め,腹壁腫瘤とV-Pシャントチューブを一塊にして摘出し,シャント変更術を行った.腹膜播種所見は認めず,切除標本で腫瘍内を貫通するシャントチューブを確認した.病理診断は結腸癌の腹壁再発で,チューブを介したimplantationと考えられた. V-Pシャント経路腹壁への大腸癌の再発報告は例がなく極めて稀と考えられたため報告する.

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直接穿刺による硬化療法が有用であった結腸ストーマ静脈瘤の1例

厚生連高岡病院外科

金谷 瑛美 他

 症例は82歳の女性, 進行S状結腸癌と早期直腸癌に対し腹腔鏡下ハルトマン手術を施行し人工肛門を造設した. C型肝硬変に伴う門脈圧亢進症のため, 術後4カ月で人工肛門部にストーマ静脈瘤を生じた. たびたび出血を呈し, 輸血を要する貧血を認める様になったため硬化療法を施行した. 超音波ガイド下に静脈瘤を直接穿刺し, 円筒状器具を用いた体壁圧迫とバルーンによる血流遮断を併用することで相応の止血効果が得られた. また, 他疾による死亡時に剖検が得られたので, 病理学的所見とともに報告する.

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NBCAで選択的塞栓を行った膵液瘻による仮性動脈瘤出血の1例

市立宇和島病院外科

宇都宮 健 他

 症例は83歳,男性.十二指腸水平脚~上部空腸に及ぶ悪性リンパ腫病変に対し病巣部腸管切除術および消化管再建術を施行した.術後膵瘻を合併し,術後9日目にドレーンから多量の血性排液を認めた.緊急血管造影検査では,膵頭部の動脈アーケードに仮性動脈瘤形成が疑われたが,コイル塞栓は困難と判断し,活動性出血も認めなかったことから止血剤点滴による保存加療を開始した.術後15日目に再び,ドレーンから多量の血性排液を認め,再度血管造影検査を施行したところ,明らかな仮性動脈瘤形成を確認した.NBCAを用いて仮性動脈瘤を含む膵頭部動脈アーケードを選択的に塞栓し,良好な経過を得た.
 本患者は高齢で,2度の仮性動脈瘤からの出血を来し,膵瘻を合併しており,再手術による止血は多くのリスクを伴うものと考えられた.コイル塞栓困難な全身状態不良症例において,NBCAによる止血治療は有力な治療選択肢となりうると考えられた.

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膵管癒合不全を背景として尾側膵切除術後に遅発性膵液瘻を認めた膵癌の1例

東邦大学医療センター大橋病院外科

渡邉 隆太郎 他

 今回,われわれは尾側膵切除術(distal pancreatectomy: DP)を施行した後に,膵管癒合不全を背景とした遅発性膵液瘻による膵仮性嚢胞を認め,副乳頭切開を併施した経乳頭的および経胃的ドレナージ術が奏功した1例を経験したので報告する.症例は72歳の女性で,膵尾部癌に対してDPを施行した.術後経過は良好で,13日目に退院となった.術後6ヶ月目の腹部CTで膵切離断端に術後遅発性膵液瘻に伴う仮性嚢胞を認めた.EUSガイド下経胃的ドレナージを施行し嚢胞は縮小したが,その後に施行したERCPにて膵管癒合不全の併存を確定診断した.膵液瘻の原因として膵管癒合不全による膵液流出障害が考えられ、副乳頭切開および膵管ステント留置術を施行した.その後,外来にて経過観察を行っていたが,嚢胞の増大は認めなかった. DP術後に膵管癒合不全を認めた場合には,副乳頭切開による膵管減圧を併施することで遅発性膵液瘻の発生を予防し得ると考えられた.

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側副血行路を温存しSMV非再建の膵頭十二指腸切除を行った膵癌の1例

千葉大学大学院医学研究院臓器制御外科学

芦澤 陽介 他

 症例は60歳女性。上腸間膜静脈に広範囲浸潤を認める局所進行膵頭部癌の診断にて切除不能と判断され当科紹介。上腸間膜静脈に中結腸静脈,下腸間膜静脈が流入する部位の末梢側では,癌の広範囲かつ高度浸潤により血流がほぼ途絶し,代償として中結腸静脈・下腸間膜静脈を介する発達した側副血行路を認めた。術中にまず側副血行路が温存できることを確認, 上腸間膜静脈合併切除・非再建,膵頭十二指腸切除を施行した。術後経過良好にて,第34病日に退院となった。本症例は発達した側副血行路が温存可能であり,膵頭十二指腸切除での上腸間膜静脈切除・非再建による治癒的切除が可能であった。このような症例は非常にまれであり,若干の文献的考察を加え報告する。

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術前に診断したNuck管水腫に発生した子宮内膜症の1例

泉大津市立病院外科

栄 由香里 他

 症例は34歳,女性で,10年ほど前から繰り返す右鼠径部膨隆を主訴に受診した.来院時は右鼠径部に軽度の疼痛を伴う索状物を触知した.腹部超音波検査で右鼠径部に28㎜大の嚢胞性腫瘤を指摘した.症状の変化からNuck管水腫に発生した子宮内膜症を疑い,月経時にMRIを施行し診断を得た.鼠径部切開法で腫瘤を摘出し,病理組織学的検査では水腫内に子宮内膜と間質成分を認めた.挙児希望があったため術後薬物療法は施行せず,術後3カ月目の現在無再発で経過している.

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