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日本臨床外科学会雑誌 第82巻2号 掲載予定論文 和文抄録


特別寄稿

新興感染症の経験・対策―With/Afterコロナ

慶應義塾大学医学部外科学、獨協医科大学第2外科

北川 雄光、窪田 敬一 

 新型コロナウィルス感染症(以下コロナ)第二波がグローバルに押し寄せ、わが国でも多くの新規感染者が日々発生し、感染収束の兆しは全く見られていない。このような状況下で、医療は逼迫され、通常診療にも支障が出てきている。多くの医療機関は、感染者を受け入れるのみならず、入院患者、職員の罹患、クラスター発生、など、院内発生が起こり、今まで経験したことが無いコロナ問題への対応を強いられている。この学会特別企画(WEB開催)では、北川・窪田の司会により、コロナの治療経験と対策、新たな外科医の取り組み、に関して6名の先生より御講演頂いた。どの発表も経験に基づいた大変勉強になる内容であった。以下に各発表の要旨をまとめさせて頂く。

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外科医減少に対する具体的な戦略

東京医療保健大学、高槻赤十字病院

小西 敏郎、平松 昌子 

 外科医の減少が叫ばれるようになって久しいが、未だその減少には歯止めがかからない。外科医療を今後も安全に提供し、かつ外科医が疲弊しないためには、早急に具体的な対策を講じる必要がある。このような観点から、第82回日本臨床外科学会において、総会特別企画として「外科医減少に対する具体的な戦略」を6名の先生方とともに討議した。
まず基調講演として上尾裕昭先生に若手外科医に対するアンケート結果をご報告いただいた後、佐野隆一郎先生から働き方改革、医師偏在対策についての厚生労働省の方針を伺った。さらに外科医減少対策の大きな柱であるインセンティブ、タスクシフト、ダイバーシティの3つの観点から、嘉山孝正先生、堀口明彦先生、齊藤光江先生にそれぞれご講演いただいた。最後に、医局員増加の成功例として、東京慈恵会医科大学外科医局の取り組みを、大木隆生先生にご紹介いただいた。
コロナ渦のなか、リモートでの開催とはなったが、非常に有益な討論がなされたので、その内容を総括する。

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外科医の働き方改革

東邦大学医学部医療対策・渉外特任部門、九州大学消化器・総合外科

小山 信彌、森  正樹 

 2019年に労働者の働き方について大きな動きがあった。労働者の超過勤務時間に対する法的規制が実施されたのである。ただ、医師については、その特殊性から5年の実施猶予期間が設けられ、その間に改善を進めることとなった。現在の日本の医療制度を維持したままでは、病院勤務の医師の働き方が改善できるとは思えないので、何らかの改革が急務となった。特に病院勤務の外科医が過酷な勤務環境にあることは、以前より指摘されている。その様な背景を踏まえ、本特別企画では外科医の働き方改革について、5名の演者にそれぞれの立場から講演頂いた。
司会は東邦大学の小山信彌先生と九州大学の森が務めた。初めに小山先生から本特別企画が設けられた主旨が紹介され、昨今の医師の働き方改革にまつわる一連の動きについて概要説明があった。次いで5名の講演者からお話を頂いた。

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原著

大分県外科勤務医の「働き方改革とその方策」に対する意識調査

大分大学医学部総合外科・地域連携学講座

上田 貴威 他

 近年,医療分野にも「働き方改革」が導入されつつある.しかし,地域の外科医療の現場には,その機運が十分に反映されていないとされる.よって,大分県地域の外科勤務医の「働き方改革」やその方策に対する意識を明らかにするために,アンケート調査を行った.質問項目は,①現在の勤務状況,②タスクシフトやタスクシェア,③救急・緩和医療へのかかわり,に関する31項目からなる.有効回答者数は,174名(回答率:66%)であった.
 その結果,超過勤務が80時間以上/月の外科医は28%であった.最も苦労している勤務内容は事務的仕事であり(21%),超過勤務の長い外科医や夜間救急を担当する外科医ほど(共にp<0.05),タスクシフトに繋がる制度の必要性を感じていた.
 「外科医のための働き方改革」には,勤務時間の短縮のみならず,外科医が手術や診療などの外科医本来の業務に邁進できるような環境作りの方策が必須であると思われた.

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臨床経験

ステロイド治療を行った慢性肉芽腫性乳腺炎の10例

岐阜大学医学部腫瘍外科

浅野 好美 他

 緒言:肉芽腫性乳腺炎(GM:granulomatous mastitis)は原因不明の良性炎症性疾患である。画像上乳癌に類似した所見を呈し治療には確立した指針はなく再発率が比較的高いため治療に難渋することがある。目的:GMと診断された10例の臨床症状、画像所見等を評価しステロイド治療の効果及び転帰を検討した。対象:2011年から2019年に岐阜大学医学部でGMと診断された10例とした。結果:平均年齢40.2歳であった。治療は全例にステロイド治療を行い、10例中8例はPSL 0.5 mg/kgで開始された。治療平均期間は11.43ヶ月であった。現時点で治療が終了した後の症例すべてに再発は認めていない(経過観察期間中央値29.7ヶ月)。結語:当院で経験したGM10例においてステロイド治療は慎重に経過を見ながら約1年程度かけて減量することで再発率が低く有用な治療法である可能性が示唆された。

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Stage IV乳癌の原発巣手術の治療意義

山形県立中央病院乳腺外科

工藤  俊 他

 目的:当院で経験したStage IV乳癌の原発巣手術の意義を治療成績から検討する。対象と方法:2001年~2014年に経験したStage IV 乳癌51例を対象に、手術先行実施その後薬物治療群N=11(22%)薬物療法先行手術実施群N=24(47%)、手術未実施薬物治療のみ群N=16(31%)の3群に分け、治療成績、予後因子などを比較検討した。結果:3群間の治療成績(50%生存期間)は観察期間中央値60ヵ月において、手術先行群27.2ヶ月、薬物療法先行手術群37.8ヶ月、手術未実施群29.3ヶ月(p=0.89)と有為差を認めなかった。治療成績を、バイオマーカー、T4/nonT4 、N2~N4 /N0~N1 、内臓器転移の有無、手術実施の有無、手術方法、薬剤反応について多変量解析した結果、トリプルネガテイブ(p=0.01)と臓器転移(p=0.0001)が予後不良因子に挙がった。手術実施の有無は有意差を認めなかった(p=0.17)。結論:Stage IV乳癌の原発巣手術は、治療成績の改善には至らなかった。予後因子も参考にし、手術適応は慎重に選択すべきと考えられた。

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症例

IVRで治療した乳房針生検後乳房内動静脈瘻の1例

昭和大学医学部外科学講座乳腺外科部門

永田  彩 他

 症例は35歳女性。健診の乳房超音波検査にて左乳房腫瘤を指摘され、2次精査で針生検施行、線維腺腫の診断であった。生検時は大きな出血もなく終了。生検翌日より左乳房表在血管の怒張と違和感を認め、前医受診し同部位にthrillを触知し、定期経過観察としていたが、2年経過した時点で症状増悪認めたため当院紹介受診となった。CTにて乳房表在に多数の拡張血管と乳房内の多数の動脈からの流入血管を疑う所見を認めた。血管造影検査にて3本以上の流入動脈と2本の流出静脈を認め、左乳房内動静脈瘻の診断となった。Schöbinger分類の第Ⅱ期(拡張期)として、進行すると潰瘍形成、出血、心不全などの全身合併症を引き起こし、治療困難となる可能性を考慮し、塞栓術を施行した。術後、shuntは消失し、その後2年再発なく経過している。今回我々は、乳房生検に伴う合併症として乳房内動静脈瘻の1例を経験したので報告する。

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乳癌温存療法術後に発症したデスモイド型線維腫症の1例

聖路加国際病院乳腺外科

笠原 里紗 他

 症例は56歳,女性.51歳時に左乳癌(粘液癌, D区域, pT1cN0M0 StageⅠ)に対し左乳房部分切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した.温存乳房照射後にタモキシフェン内服中であった.術後5年目のUS検査にて左B区域に低エコー腫瘤が出現した.針生検が施行されSpindle cell tumorの診断となり,温存乳房内再発疑いで当院を受診した.画像検査では,内部不均質な腫瘤であった.針生検検体の再顕鏡で核密度,核異型の低い紡錘形細胞の増生を認めた.以上より局所再発は否定的でデスモイド型線維腫症が疑われ,乳腺腫瘍摘出術を施行した.病理結果はデスモイド型線維腫症の診断となった.針生検で確定診断が困難であるデスモイド型線維腫症だが,病理・画像検査を慎重に行い,適切な治療方針を決定することが重要であると考えられた.

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術後2年6カ月で肺転移を認めたStageI乳腺腺様嚢胞癌の1例

自治医科大学附属病院乳腺科

西田 紗季 他

 症例は67歳女性. 乳癌検診異常で受診した. 左乳房に低エコー腫瘤を認め針生検の結果, 腺様嚢胞癌が疑われた. 左乳房温存術およびセンチネルリンパ節生検を施行し, 病理組織学的診断はpT1N0M0 StageⅠA, 腺様嚢胞癌(ER-,PgR-,HER2-,Ki-67 5%)であった. 補助化学療法を考慮する症例であったが, 予後良好と考えられたため, 化学療法は省略し放射線治療のみ施行した.
 術後2年6か月でCTにて左肺結節を指摘されたが, 原発か転移性かの鑑別が困難であったため, 胸腔鏡下左肺上葉切除およびリンパ節郭清を施行した. 病理組織学的診断では腺様嚢胞癌の肺転移と診断された.
 他の特殊型乳癌が通常の浸潤性乳管癌に準じて補助化学療法を行うことが推奨されているが, 乳腺腺様嚢胞癌は多くがtriple negative症例にも関わらず予後良好と言われ, 腋窩リンパ節転移が陰性ならば補助化学療法は必要としないことが多い. 今回, 乳腺腺様嚢胞癌で術後肺転移を認めた症例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する.

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前胸壁に発生した副乳癌の1例

公立豊岡病院外科

福井 由紀子 他

 副乳癌は稀な疾患であり、その多くが腋窩からの発生で、乳房下溝尾側からの発生は極めて稀である。今回、乳房下溝尾側の前胸壁に発生した副乳癌の症例を経験したので報告する。症例は48歳,女性。左乳房下溝尾側の前胸壁皮下腫瘤を主訴に受診した。摘出生検にて、浸潤性乳管癌の亜分類である硬性型に類似した組織像を呈し、乳管内進展と考えられる所見も認めた。免疫組織化学では、GATA3、PCDFP-15、ER、PgR陽性であった。乳房内に腫瘍を認めず、またmilk line上の乳房下溝に副乳の乳頭を認め、その尾側に腫瘍が位置していたことから副乳癌と診断した。断端陽性が疑われたため、残存腫瘍切除とmargin確保のため追加切除術を行った。術後補助療法としてtamoxifen内服を継続し、術後2年6ヶ月経過した現在、再発は認めていない。副乳癌の治療方針は確立されておらず、今後さらなる症例の蓄積、検討が必要と考えられる。

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腺筋上皮腫から発生した乳腺扁平上皮癌の1例

国立病院機構千葉医療センター乳腺外科

粕谷 雅晴 他

 症例は70歳女性, 検診で左乳房腫瘤を指摘され当院受診. 左乳房AE区域に10mm大の分葉状腫瘤を認め, 針生検で腺筋上皮腫の診断となり経過観察していた. 初診から約1年後, 左乳房腫瘤が10cm大まで急速増大したため, 診断目的に全身麻酔下腫瘤摘出術を施行. 病理診断結果は, 既存の腺筋上皮腫の乳管上皮ないし筋上皮の扁平上皮化生成分を母地として扁平上皮癌が発生したと考えられる所見であった. 術後約2ヶ月で局所再発を認め, 追加の左乳腺全摘出術と腋窩リンパ節郭清術を施行. 病理診断結果は扁平上皮癌の局所再発所見であり, 郭清した腋窩リンパ節には転移を認めなかった. 術後放射線照射(50Gy/25fr)施行し, 化学療法としてEC療法4コース施行. その後約6ヵ月, 明らかな再発所見認めず経過している.
 乳腺扁平上皮癌は稀であり, 予後不良とされる. 確立された治療法がなく, 予後に関しても一定の見解が得られておらず, 更なる検討が望まれる.

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線維腺腫内への特異な浸潤型式を呈した乳癌の1例

東京医科歯科大学医学部乳腺外科

吉野 真穂 他

 症例は59歳女性。悪性リンパ腫治療後、フォロー目的のPET-CTにて既知の線維腺腫(以下FA)内側にFDG異常集積を認め当科紹介受診。触診で右AC区域に直径4cmの腫瘤を触知し、マンモグラフィでは同区域に既知のFAとその内側背部に不均一な石灰化の集簇を認めた。乳房超音波検査では、同区域に陳旧性FAとその内側に不整形低エコー腫瘤を認めた。上記2か所の病変に対し針生検を施行したところ、FA内側の腫瘤は浸潤性乳管癌の診断、FAにも一部に癌の浸潤を認めた。乳房造影MRIでは、右A区域の陳旧性FA内側に不均一な造影効果を呈する不整形腫瘤とFAの辺縁や内部の隔壁に沿うように強い造影効果を認め、病変の拡がりが確認できた。乳房切除術、センチネルリンパ節生検を施行。病理組織所見では、FA内に浸潤する硬性型浸潤性乳管癌を認め、FA結節の周囲を取り巻く疎な間隙部分優位に癌細胞が入り込むように浸潤している所見であり、特異な浸潤型式を呈していた。

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放射線脳壊死に対しbevacizumabが有効であった乳癌脳転移の1例

高槻赤十字病院

坂根 純奈 他

 症例は44歳, 女性. 右季肋部痛の主訴に対し, 腹部USを施行, 転移性肝腫瘍を認めた. CTで左乳房に4cmの腫瘤, 肝S4/8と外側区域に腫瘤を認めた. 針生検で浸潤性乳管癌(HER2タイプ)の診断で化学療法を開始した. 2年後のMRIで左側頭葉・後頭葉, 右小脳に脳転移を認め, 定位放射線照射を施行した. 化学療法をはさみ, 脳転移が再燃し, 再度照射を行い, 化学療法を継続していたが, 突然の構音障害, 右半身麻痺が出現した. MRIで左側頭葉・後頭葉の放射線脳壊死と診断した. その治療としてbevacizumab療法を3コース施行し, 脳浮腫, 神経症状の改善を認めた. 放射線治療の有害事象である放射線脳壊死はQOLやその後の治療に支障をきたす. 放射線脳壊死に対しbevacizumabの有効性が報告されている. 我々の経験した症例でも症状改善に有効であったので報告する.

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食道胃接合部に発生した神経内分泌癌の1例

中部徳洲会病院外科

江口 征臣 他

 症例は80歳男性.2017年6月に黒色便を認め,近医を受診し貧血を指摘された.7月に上部消化管内視鏡を施行し食道胃接合部に半周性のType2病変を認めた.生検で低分化腺癌,さらに免疫染色でクロモグラニンA,シナプトフィジンなどが陽性であり神経内分泌癌(neuroendocrine carcinoma:NEC)と診断された.画像で遠隔転移はなく,当時の本邦ガイドラインを参考に2017年8月に下部食道噴門側胃切除術を施行した.病理結果はStageIIの食道胃接合部神経内分泌癌で一部に低分化腺癌を認めた.高齢ということもあり,術後は補助化学療法なしで経過を見ているが3年を過ぎた現在でも再発なく経過観察中である.今回,食道胃接合部に生じた比較的稀な神経内分泌癌を経験したので報告する.

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胃癌術後癌性髄膜炎の3例

東京医科大学消化器・小児外科学分野

須田  健 他

 癌性髄膜炎は比較的まれな病態である。全癌患者の約4%に発症し、平均予後は約1ヵ月と極めて不良である。今回我々は胃癌術後に癌性髄膜炎を発症した3例を経験したので報告する。症例1:65歳男性。幽門側胃切除術施行(por, p-T4aN3bCY1M1 StageIV)。術後1年8ヵ月に嘔気、嘔吐、意識障害が出現し頭部造影MRI検査で癌性髄膜炎と診断。入院24日後に永眠。症例2:60歳男性。胃全摘術施行(sig, p-T2N0M0 StageIB)。術後5年5ヵ月に嘔気、嘔吐が出現。頭部CT検査にて小脳転移を認め、造影MRI検査を施行したところ癌性髄膜炎と診断。入院14日後に永眠。症例3:73歳男性。胃全摘術施行(sig, p-T3N3bM0 StageIIIB)。術後4ヵ月に嘔気、嘔吐が出現。頭部CT検査で脳室拡大あり、髄液穿刺を施行し癌性髄膜炎と診断。入院10日後に永眠。癌性髄膜炎の確定診断には髄液検査が必須である。癌性髄膜炎は予後不良であるが、速やかな画像診断・髄液穿刺を施行することで早期診断が可能となる。適切な治療がQOLの向上にも繋がるため術後嘔吐症には癌性髄膜炎も念頭におくべきであると思われる。

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胃全摘Roux-en-Y再建術後の急性輸入脚閉塞症の1例

松下記念病院外科

多田 浩之 他

 64歳, 男性. 残胃全摘(Roux-en-Y再建)術後. 主訴は腹痛, 嘔吐. 腹部CTで, 急性輸入脚閉塞症と診断. 緊急手術時所見でY脚吻合部の捻転, 十二指腸および輸入脚部空腸の著明な拡張, 色調不良を認めた. 術中もshock vitalが継続しており, 腸管切除は妥当で無いと判断し, 輸入脚の減圧術を施行した. 第8および第14病日の造影CTで輸入脚の造影効果および内腔の拡張の改善を認め, 第22病日に内瘻化手術を行い, 第43病日に退院. 緊急手術時の所見で, Y脚吻合部で捻転が起こっていたこと, 術前CT所見から, enteroenterostomy site defectにY脚吻合部よりやや口側のRoux脚が内ヘルニアを起こすことで捻転が起きた可能性があると考えられた. 閉塞性腸炎が腸管虚血の主要因であったため, 減圧術が奏功し救命できたと考える. ショックを伴い一期的手術が困難な症例では, 外瘻術を先行後, 二期的手術を行う方針も考慮すべきと考える.

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亜全胃温存十二指腸憩室化手術を行った外傷性十二指腸損傷の1例

国立病院機構災害医療センター救命救急センター

関  聡志 他

 外傷性十二指腸損傷に対する術式は,損傷部位やその程度,全身状態などにより判断に難渋することもある.症例は46歳女性.自転車を運転中に転倒し,ハンドルにて腹部を打撲し救急外来を受診した.CT検査で外傷性十二指腸損傷の診断にて同日緊急開腹術を行った.十二指腸下行脚の前壁および後壁に穿孔を認めた.穿孔部を縫合閉鎖したが十二指腸狭窄が考慮され,亜全胃温存十二指腸憩室化術を施行した.術後経過は良好で術後第22病日に独歩退院となった.外傷性十二指腸損傷に対する術式として近年では損傷部を単純縫合閉鎖しする場合も増えているが,全身状態が安定し狭窄が考慮される症例に対しては十二指腸憩室化など付加手術も考慮される.今回、亜全胃を温存する縮小手術を施行し現在まで特記すべき合併症は見られていない.複雑な損傷形態を伴った十二指腸損傷において,亜全胃温存十二指腸憩室化手術は選択肢の一つになると考えられる.

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動脈切開部からのICG蛍光血管造影で腸管温存した上腸間膜動脈塞栓症の1例

東京都立墨東病院高度救命救急センター

松永 裕樹 他

 :症例は80歳女性.心窩部不快を主訴に当院に転送された.腹部造影CT検査で上腸間膜動脈塞栓症,小腸虚血があり,緊急手術を施行した.上腸間膜動脈を切開し,血栓除去バルーンカテーテルで赤色血栓を摘出した.中枢側の血流は良好だったが,末梢側からの血液流出がなかったため,血流改善不良が疑われた.残存血栓の有無を確認するために,切開した動脈にカテーテルを挿入し,Indocyanine green(ICG)蛍光血管造影を実施した.上腸間膜動脈本幹と空腸から回盲部の造影は良好だった.血栓摘除し得たと判断し,切開した血管を縫合閉鎖した.一時的閉腹とし,翌日に腸管の性状を確認して閉腹した.良好な食事摂取を確認して術後20病日に自宅退院とした.上腸間膜動脈塞栓症に対して,切開した動脈内に挿入したカテーテルよりICG蛍光血管造影検査を実施し,腸管を温存し得た1例を経験したので報告する.

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小腸壊死をきたした97歳特発性小腸重積の1例

新潟市民病院消化器外科

上原 拓明 他

 症例は97歳の女性.多発脳梗塞,アルツハイマー型認知症の既往があり,経口摂取はどうにか可能だが,寝たきりの状態であった.食欲低下で入院したが,経過観察中に下血を認めた.CT検査で小腸にtarget signとその口側腸管の拡張を認めた.小腸重積の診断で,緊急開腹手術を施行した.開腹すると,回盲弁から40㎝の回腸が重積していた.整復困難であり、回腸を部分切除して吻合を行った.重積した回腸は多発性に菲薄化しており,一部に穿孔,壊死を認めた.術後は,循環不全で術後2日目まで集中治療室での加療を要した.4日目より経口摂取困難に対して経管栄養を導入し,23日目に退院した.病理所見では特発性小腸重積の診断であった.成人発症の本症は比較的稀であり,本邦報告においては最高齢であったものの手術で救命しえた1例を経験したので報告する.

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術前超音波診断したDe Garengeot herniaによる穿孔性虫垂炎の1例

名古屋第一赤十字病院一般消化器外科

今瀧 裕允 他

 症例は71歳男性で,2ヶ月前から右鼠径部に直径約1㎝の無痛性の腫瘤を認めていたが,徐々に増大したため当院を受診した.来院時,右鼠径部に鶏卵大の腫瘤を固く触れ,用手還納はできなかった.超音波検査(US)では大腿静脈の内側に腹腔から連続する径約2.5cmの嚢状構造物を認め,その中に盲端に終わる細長い管腔構造物,網状領域,無エコー域を認め,それぞれ大腿ヘルニア内の虫垂,大網,腹水と診断した.また,カラードップラー法では虫垂先端付近には血流シグナルを認めず,虫垂壁の一部に欠損を認めたため虫垂穿孔が疑われた.US診断の25時間後に手術を行った.虫垂は穿孔を認めたので切除し,大腿ヘルニアはMcVay法で修復した.自験例ではUSによってDe Garengeot herniaの診断だけでなく,同時に虫垂炎の穿孔も診断できた.

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BMI56.7の高度肥満患者に腹腔鏡下切除術を行った急性虫垂炎の1例

春日井市民病院外科

森山 瑞紀 他

 症例は身長184cm, 体重192kg, Body Mass Index(以下BMI) 56.7 kg/m²と高度肥満の42歳の男性である. 4日前からの腹痛で前医を受診した. 抗菌薬治療が行われたが, 改善しなかったため当院受診となった. 血液検査ではWBC 10800 /μl, CRP 20.35 mg/dLと高度な炎症所見を認めた. 腹部CT検査では虫垂の腫大と膿瘍形成を疑う所見が見られた. 急性虫垂炎による限局性腹膜炎と診断し, 腹腔鏡下虫垂切除術を施行した. ランプ体位をとり, 陰圧型体位固定具や固定支持器を使用して体を固定した. 第1ポートは臍上10cmの左腹直筋経由にてオプティカル法で挿入した. 気腹圧を15mmHgとし, ポートを追加することで視野確保を行った. 炎症が波及した脂肪垂と虫垂との区別が困難であったため, 術中迅速病理検査を行い,切除組織が虫垂であることを確認した. 術後経過は良好で, 術後10日目に軽快退院となった. 今回, BMI 56.7 kg/m²の高度肥満患者の急性虫垂炎に対して, 腹腔鏡下虫垂切除術を施行した1例を経験したため報告する.

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魚骨による下部消化管穿孔・穿通の3例

東京都保健医療公社荏原病院外科

金子 由香 他

 消化管異物の多くは自然排泄され、消化管穿孔などの合併症を生じる頻度は1%以下といわれているが、消化管穿孔、穿通を生じた場合、腹膜炎を発症したり腹腔内膿瘍を形成することがある。今回2016年1月から2017年9月までに、当院にて魚骨により下部消化管穿孔または穿通により加療を行った3例について検討した。平均年齢 90.3歳、男性2人、女性1人。魚骨の穿孔、穿通部位はすべてS状結腸で、全例急性炎症型であった。1人は汎発性腹膜炎を呈していたため緊急手術を施行したが、2例は腹部所見が限局しており内視鏡下の摘出、保存的治療にて治療した。汎発性腹膜炎を呈した症例も、開腹所見では混濁した腹水を少量認めたのみで、穿孔部も小さかったため単純閉鎖、洗浄ドレナージ術のみ施行した。以上の経験から、急性腹症の鑑別疾患として魚骨の穿孔、穿通は念頭におくべき疾患であり、魚骨の穿孔、穿通が疑われる症例であっても腹部所見が限局している場合は、保存的治療が可能な場合もあり、汎発性腹膜炎を呈していても急性期であれば侵襲の少ない手術にて治療が可能である場合もあることを考慮すべきと思われた。

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乳房転移巣を契機に診断された上行結腸癌の1例

虎の門病院乳腺内分泌外科

栗川 美智子 他

 症例は64歳女性. 左乳房腫瘤を自覚し当院受診. マンモグラフィ検査,超音波検査にて左乳房に40㎜大の分葉状腫瘤と腋窩リンパ節腫大を認め, 乳房の針生検にて腺癌と診断された. PET-CT検査にて回盲部にFDG異常集積を伴う80mm大の腫瘤を認め, 下部内視鏡検査を施行した. 上行結腸に全周性の隆起性病変を認め, 生検にて腺癌と診断された. 画像, 病理所見から上行結腸癌とその乳房と腋窩リンパ節転移cT2N1M1b, cStageⅣbがまず考えられたが, 重複癌も否定できなかった. 乳房の病変が急速に増大したため, 左乳房部分切除術, 左腋窩郭清及び腹腔鏡下右半結腸切除術, D3郭清が施行された. 手術病理所見から進行大腸癌とその乳房転移と診断された. 大腸癌の遠隔転移診断において, 単発の乳房転移は極めて稀であり, 文献的考察を加え報告した.

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COVID-19肺炎経過中に腹腔鏡下手術を行ったS状結腸癌の1例

医仁会武田総合病院外科

大塚 一雄 他

 症例は80歳男性,発熱,呼吸苦を主訴として近医受診し,肺炎を指摘されて当院に紹介,入院となった.単純CT上,両肺野にびまん性に広がる肺炎像に加え,結腸SD移行部に腫瘤性病変を疑わせる所見を認めた.COVID-19のPCR検査にて,新型コロナウイルス肺炎と診断された.ファビピラビル,ステロイドパルス療法などにて酸素化は改善し,入院から4週間後に3回のPCR陰性を確認し,隔離を解除した.胸腹部造影CTにて,肺野異常陰影の不明瞭化と結腸の腫瘍性病変を確認した.入院から10週間後に下部消化管内視鏡検査を行った.SD移行部に2/3周性の2型病変を認め,生検結果は高分化型腺癌であった.手術2日前にPCR検査を施行し,陰性を確認した後,腹腔鏡下に結腸左半切除術を施行した.病理組織所見は,pT4a,pN2a(5/23),pM0,Stage IIIbであった.術後経過は良好で肺炎の再燃なく,関わった医療者に新型コロナウイルス肺炎の発症を認めていない.

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腹腔鏡下脾彎曲部結腸癌切除後に発症した吻合部肛門側慢性虚血性腸炎の1例

住友別子病院外科

垣生 恭佑 他

 症例は,61歳男性.脾彎曲部横行結腸癌に対して,腹腔鏡下脾彎曲部結腸部分切除術、D3郭清を施行した.動脈系の血管処理は中結腸動脈左枝と左結腸動脈で行い,下腸間膜動脈は温存し,静脈系は下腸間膜静脈を処理した.最終病理は,fT3N1M0 fStageⅢa(大腸癌取り扱い規約第8版)であった.術後補助化学療法でUFT/UZELを5コース施行した.初回手術後1年7ヶ月頃より,腹痛,腹部膨満,嘔気が出現し,精査の結果,慢性虚血性腸炎と診断した.2ヶ月半保存的加療を行うも改善せず,用手補助腹腔鏡下壊死腸管切除,横行結腸-直腸吻合,diverting ileostomyを施行した.病理組織学的には,粘膜固有層から粘膜下層にかけての壊死や,静脈の壁肥厚,細血管の増生が見られた.術後3ヶ月目で,人工肛門閉鎖術を施行した.2年経過現時点で経過良好である.下腸間膜動脈を温存し,左側結腸のdrainage veinである下腸間膜静脈を切離したことで腸管鬱血を生じ,慢性虚血性腸炎を生じたと考えられた.

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先天性胆道拡張症術後の後天性血友病Aの1例

JCHO東京新宿メディカルセンター外科

松崎 裕幸 他

 症例は57歳女性.腹痛を契機に他院より紹介となり,CTで先天性胆道拡張症と診断し待機的に肝外胆道切除術を施行した(出血量759ml,術中輸血なし).術前には貧血や凝固異常を認めていなかった.3POD,急激な貧血の進行を認め,CTで腹腔内出血が判明し再手術を行った.腹腔内に多量の血腫を認めたが出血点は判然としなかった.帰室直後にドレーン刺入部から再出血を認め,再手術を行い皮下からの出血を焼灼止血した.4POD,再出血に対し,さらに2回の再手術を行った.凝固第Ⅷ因子活性低下およびAPTTクロスミキシング試験より後天性血友病が疑われる所見であり,第Ⅷ因子インヒビター陽性により後天性血友病Aと診断確定した.創部・消化管などから重篤な出血が続き,創部血腫による著しい創部離開や腸瘻も併発し治療に難渋したが,陰圧閉鎖療法,内視鏡的止血術なども併用し何とか寛解を得た.

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二葉胆嚢の2例

青森厚生病院外科

渡邉 伸和 他

 まれな形態異常である隔壁型二葉胆嚢を2例経験したので報告する。症例1:65才、男性。急性膵炎の診断で入院、保存的に治療した。画像検査で胆嚢結石を認め、胆嚢内腔に隔壁があるように見えたが、胆嚢の屈曲と判断し、腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)を行った。術中所見では胆嚢の外見上の形態は正常で胆嚢管は1本だった。摘出標本の胆嚢内腔は二分されており、それぞれに結石を認め、隔壁型二葉胆嚢と診断した。症例2:67才、男性。胆石膵炎の診断で、内視鏡的胆管結石切石術を施行した。画像検査で胆嚢結石および胆嚢内腔に隔壁を認め、症例1の経験から二葉胆嚢と診断し、LCを施行した。術中所見では、胆嚢の外観上の形態は正常で胆嚢管は1本だった。摘出標本の検索にて、胆嚢内腔は二分され、一方の内腔にだけ結石を認める隔壁型二葉胆嚢だった。隔壁型二葉胆嚢というまれな形態異常の存在を念頭に入れることで、術前診断および安全な手術が可能となる。

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右肝動脈の分岐破格を伴う膵頭部癌の1例

愛媛大学医学部附属病院肝胆膵・移植外科

船水 尚武 他

 症例は74歳の女性.食思不振と体重減少を主訴に,前医より当科へ紹介となった.腹部造影CTで膵頭部に19㎜大の腫瘤を認め,門脈に接していた.膵頭部癌(cT3N0M0 cStageIIA)の診断で膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy,以下PD),および門脈合併切除・再建術を施行した.術前の3D血管構築では右肝動脈が胃十二指腸動脈より分岐していたため,右肝動脈から中枢側に剥離し,胃十二指腸動脈との分岐を確認した.その分岐からさらに胃十二指腸動脈を膵に向かって剥離した。クランプテストを行い超音波で肝血流を確認後に,胃十二指腸動脈を右肝動脈の分岐より末梢側で結紮切離した.自験例でみられた青木らの分類のtypeDに相当する走行異常の頻度は0.28%と稀な走行パターンである.術前から肝動脈の走行を把握と,術中に胃十二指腸動脈をクランプテスト後に切離することは安全に手術を行う上で肝要であると思われた.

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内膀胱上窩ヘルニアの1例

柏崎総合医療センター外科

岩城 孝和 他

 症例は63歳,男性.開腹手術歴なし.左橈骨遠位端骨折と左仙骨翼骨折で整形外科に入院し橈骨骨折の手術を受けた.術後11日目に腹痛を訴え,術後14日目に腹部骨盤造影CTで腸閉塞の診断で外科へ紹介された.軽度の腹部膨満を認めたが,鼠径部の膨隆や筋性防御は認めなかった.腹部骨盤造影CTでは左腹直筋背側で,頭側にヘルニア門を有する嚢状の小腸ループが膀胱を圧排していた.絞扼性腸閉塞と診断し緊急手術を行った.下腹部正中切開で開腹すると,左膀胱上窩の小孔に小腸が嵌頓していた.ヘルニア門は示指頭大で,腸管の嵌頓長が約7㎝であった.腸管切除はせず,2-0吸収糸でヘルニア門を縫合閉鎖した.術後経過は良好であった.内膀胱上窩ヘルニアは,小腸ループによる膀胱圧排のCT所見が術前診断に有用とされる.本例は,術前診断には至らなかったが,特徴的なCT所見を示す内膀胱上窩ヘルニアであることから文献的考察を加え報告する.

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出血を繰り返し腹腔鏡下に切除した小網動静脈奇形の1例

国立病院機構名古屋医療センター外科

山家  豊 他

 症例は30歳女性.5か月前に突然の腹痛を主訴に受診し,胃小弯側を主座とする非外傷性の腹腔内血腫と診断した.血腫は1か月で消退傾向となり経過観察の方針とした.今回,同様の症状で受診し,腹腔内血腫の再発と診断して入院となった.腹部造影CT検査では胃小弯側に高吸収域を伴う3 cmの腫瘤性病変を認めたが,造影剤の血管外漏出像は認めず.腹部血管造影検査では血管病変は認めなかったが,右胃動脈は描出されなかった.繰り返す出血は右胃動脈領域の血管病変や腫瘍性病変が原因と考え,腹腔鏡下での切除を行うこととした.術中所見では小網からの血管茎の先端に鶉卵大の腫瘤性病変を認め,同部を責任病変と考え切除した.病理組織学的検査では病変部に異常血管構造の増生と出血の痕跡を認め,小網動静脈奇形と診断した.非外傷性の腹腔内出血では稀ではあるが腹腔内動静脈奇形を念頭におき,診断的治療として低侵襲な腹腔鏡手術も考慮すべきである.

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初療室下開胸開腹手術にて救命した腰背部刺創の1例

藤沢市民病院消化器外科

川島  淳 他

 症例は49歳男性.腰背部より包丁で刺され,包丁が遺残したまま左側臥位で当院に搬送された.切迫心停止と判断し,初療室にて蘇生的開胸術,開腹止血術の方針とした.右側臥位へ体位変換し,左前側方開胸,下行大動脈遮断を施行した.続いて右側臥位のまま開腹し,包丁を抜去して,仰臥位にした.腹腔内出血に対し縫合止血,ガーゼパッキングを施行した.循環動態の安定を確認し,open abdominal managementとした.術後に計画的interventional radiologyを施行し,右腎動脈,右腰動脈の出血に対してtranscatheter arterial embolizationを行った.翌日にsecond look operationを施行し閉腹した.術後11日目に独歩退院した.
 今回われわれは,初療室下開胸開腹手術にて救命した腰背部刺創の1例を経験した.背部刺創は穿通創の中でも稀であり,体位変換のタイミングや損傷臓器の予測が重要と考えられた.

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腰部鍼治療を契機に発症したMSSA菌血症を伴う多発膿瘍の1例

大分三愛メディカルセンター外科

白水 良征 他

 症例は78歳, 女性. 高熱と腰痛の増悪を認め当院へ救急搬送された. 血液検査にて著明な炎症反応の上昇と凝固異常を認め,腹部CT検査にて梨状筋膿瘍を認めた. 検査後, 問診にて針治療歴があることが判明した. 膿瘍による全身性炎症反応症候群(SIRS), 播種性血管内凝固(DIC)の診断に至り, 抗菌薬投与, 経皮的ドレナージを施行した. 血液培養検査と膿瘍培養検査からMethicillin sensitive Staphylococus aureus(MSSA)が検出された. 第6病日のCT検査では, 腸腰筋と脊柱起立筋に新たに膿瘍を認め,再度経皮的ドレナージを施行した.鍼治療後の疼痛と感染の時系列の一致から,鍼治療を契機に発症したMSSA菌血症を伴う多発膿瘍と考えられた. 2回目のドレナージ後,炎症反応は速やかに低下し膿瘍の再燃は認めず,第42病日に転院となった.鍼治療後の膿瘍の原因菌はMSSAが最も多いとされ,不十分な感染管理では感染が成立するとされる.鍼治療後の膿瘍報告例は稀であり, これまでの報告例と文献的考察を加えて報告する.

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緊急手術を行った91歳下腹部白線ヘルニアの1例

岩手県立千厩病院総合診療外科

石岡 秀基 他

 症例は91歳,女性.排便後に失神したため,救急外来を受診した.下腹部正中に手拳大の膨隆を認め,CT検査で同部に小腸の脱出を認めた.用手的な還納が不能であり,腹壁ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を実施した.ヘルニア内に大網と小腸が嵌頓しており,小腸の一部に壊死を認めた.ヘルニア嚢および血流不良な腸管を切除し,ヘルニア門の縫合閉鎖を行った.術後3か月が経過したが,再発はみられていない.
 白線ヘルニアのほとんどが上腹部に発生し,下腹部の発生例は極めて稀である.下腹部白線ヘルニアの過去の報告例は大部分が初診時に嵌頓しており,特に高齢者ではヘルニア嵌頓で腸管切除を要した場合に術後の死亡率が上昇するため,高齢者であっても手術を検討するべきである.

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