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日本臨床外科学会雑誌 第81巻10号 掲載予定論文 和文抄録


綜説

Hirschsprung病およびその類縁疾患の概念と歴史

学校法人福岡学園福岡医療短期大学

田口 智章 他

ヒルシュスプルング病および類縁疾患は腸閉鎖のような明らかな器質的閉塞病変がないにもかかわらず、腸閉塞症状(腹部膨満、胆汁性嘔吐、難治性便秘など)をきたす機能的腸閉塞症である。新生児期早期から腸閉塞症状や難治性便秘で発症するため、新生児のイレウスとして外科医がはじめからかかわることが多い。ヒルシュスプルング病は病変範囲の短いものは手術でほぼ根治するが、無神経節腸管が長く小腸まで広範に及ぶものは、正常小腸が短く、かつ大腸も使えないため、重症の短腸症となり治療に難渋する。一方、ヒルシュスプルング病類縁疾患は、腸管全体にわたり蠕動不全を呈する腸管神経節細胞僅少症、巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症、慢性特発性偽性腸閉塞症の3疾患が重症であり、外科的手術では治癒しない。現在、長期静脈栄養と経腸栄養の併用、消化管の減圧で延命できているが、根治としての小腸移植の成績向上や再生医療による新規治療の開発が待たれている。

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原著

腹腔鏡下胃切除術での膵上縁リンパ節郭清の工夫と術後膵液瘻

長崎大学大学院腫瘍外科

若田 幸樹 他

 目的:膵上縁リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下胃切除術後の膵液瘻を予防する目的で、我々は2017年1月より膵臓を直接的に圧排しない手術手技を採用している。
 方法:2011年1月~2018年12月に当科で胃癌に対して腹腔鏡下胃切除術を施行しドレーン留置した178症例を対象とした。膵臓圧排群の124症例と膵臓非圧排群の54症例の2群にわけ、患者背景、臨床病理学的因子および手術成績に関して後方視的に検討した。
 結果:術後1日目の腹水アミラーゼ値は膵臓非圧排群で低値であり、特に3日目で有意に低値であった(p=0.001)。また、膵臓非圧排群では術後膵液瘻(CD grade≧2)の発生はなかった。
 結論:腹腔鏡下胃切除術において膵臓圧排を回避する手術手技は術後膵液瘻を予防する有用な方法である。

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臨床経験

外科治療介入した直腸神経内分泌腫瘍21例の臨床病理

広島市立安佐市民病院外科

新原 健介 他

 直腸に発生する神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasms : NEN)は比較的まれな腫瘍であり、内視鏡治療後の追加切除適応、リンパ節転移リスクなどについては議論の余地がある。今回我々は2010年1月から2020年4月までに当院で外科治療介入した直腸原発NEN21例を対象とし、臨床病理学的特徴、長期治療成績、リンパ節転移リスクを後ろ向きに検討した。6例(28.5%)にリンパ節転移を認め、再発を生じた症例は認めなかった。腫瘍径10mm以上、腫瘍表面の陥凹形成、MP浸潤、G2以上、ly因子陽性、v因子陽性のリスク因子のうち、単一因子のみの6症例ではリンパ節転移を認めず、2因子以上持つ症例のリンパ節転移は15例中6例(67%)で認め、腫瘍表面の陥凹形成は、唯一有意傾向を示すリスク因子として抽出された。ストーマの忌避や手術侵襲の観点から、追加外科手術を選択されない症例もあり、リンパ節転移のリスクが低い症例の抽出や、より正確なリンパ節転移率の評価が望まれる。

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症例

甲状腺結節の経過観察中に発症したMarine-Lenhart症候群の1例

相良病院乳腺科・甲状腺外科

藤木 義敬 他

 甲状腺機能正常であった甲状腺右葉腫瘤が、Basedow病を契機に機能性甲状腺結節(Plummer病)へと変化し、Marine-Lenhart症候群の診断に至った稀な症例を経験したので報告する。
 症例は47歳の女性。以前より当院で甲状腺右葉腫瘤に対し、悪性所見なく甲状腺機能正常で経過観察していたが、労作時の動悸、易疲労感認め当院受診。右葉腫瘤はわずかに増大傾向であったが、性状に明らかな変化はなかった。血液検査でfree T3、free T4の上昇、TSH低値、抗TSHレセプター抗体(TRAb)陽性を認め、Basedow病と診断した。メルカゾール内服にてTRAbの陰性化を認めたが、甲状腺機能亢進状態が遷延したため、Marine-Lenhart症候群を考慮し99mTcシンチグラムを施行した。シンチで右葉腫瘤に一致した強い集積と左葉に淡い集積を認め、Marine-Lenhart症候群と診断した。甲状腺右葉腫瘤が増大傾向、機能性腫瘍であることより手術の方針とした。手術は甲状腺全摘術を施行。病理所見は、右葉腫瘤は腺腫様結節の所見であり、悪性所見は認めなかった。

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原発性乳房血管肉腫の1例

製鉄記念八幡病院外科

高浪 英樹 他

 原発性乳房血管肉腫の1例を経験した.症例は55歳女性、右乳房腫瘤触知を主訴に受診した.右乳房C領域に3cm程の腫瘤を触知し、超音波検査で同部に長径2.2cmの低エコーと無エコーが混じった混合性腫瘤を認めた.MRIでは境界明瞭な腫瘤と、その周囲を取り囲むような淡い高信号域を認めた.針生検にて血管肉腫の診断がつき広範皮膚切除を伴う乳房切除術を行った.病理結果は中分化型の原発性血管肉腫であった.肉眼的には腫瘍径は4cmであったが、その周囲に広がる浸潤部を認めた.術後11ヶ月を経過し再発なく経過している.今回われわれは稀な原発性乳房血管肉腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.

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原発巣姑息切除術後3カ月で急速に進行した長径36cm乳腺悪性葉状腫瘍の1例

日野記念病院外科

児玉 泰一 他

 症例は39歳女性。右乳房の皮膚浸潤を伴う巨大な腫瘍と疼痛のため、H28年8月に当院救急外来受診となった。Hb6.8 g/dlと貧血を認め、胸部CTでは胸筋浸潤と右肺の多発肺転移を認めた。針生検では葉状腫瘍が疑われた。悪臭を伴う浸出液と出血があり、また疼痛がひどく巨大で歩行困難なため、乳房切除術+広背筋皮弁再建を施行した。腫瘍の重量は約4kgであった。病理検査では悪性葉状腫瘍と診断し、Ki67 labeling indexは70%であった。術後に右肺の転移巣切除を行う方針とするも、胸腔鏡検査で悪性胸水と腫瘍の胸膜浸潤を認めたため、切除不能と判断した。化学療法は希望されず緩和治療となった。術後約2ヶ月目には局所再発病変を認め、肺転移巣も急速に増大し、術後約3ヶ月目に永眠された。今回、我々は術後数ヶ月で急速な増大を示した乳腺巨大悪性葉状腫瘍の1例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。

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乳腺原発リンパ上皮腫様癌の1例

九州労災病院外科

松田 有希 他

 症例は64歳女性.徐々に増大傾向にある右乳房E区域の乳管内病変に対して細胞診と針生検を施行したが診断が困難であったため摘出生検を施行した.病理組織所見では,CK陽性かつE-cadherin陽性の異型細胞が胞巣・索状に増殖し,リンパ球の上皮内浸潤を伴っていた.リンパ上皮腫様癌を疑って乳房全切除術を施行し,最終的に乳腺原発のリンパ上皮腫様癌と診断した.術後薬物療法としてFEC3コースを施行後に内分泌療法を開始し,術後1年7か月が経過したが再発は認めていない.今回,生検での病理組織学的診断がつかず,術前診断が困難であった乳腺原発リンパ上皮腫様癌の1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

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男性乳癌の家族歴を有する同時性両側男性乳癌の1例

埼玉協同病院外科

金子 しおり 他

 症例は60代男性.両側乳房腫瘤を自覚し,当院を受診.マンモグラフィ,乳房超音波検査,乳房MRI検査及び針生検で同時性両側乳癌と診断された.両側乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行し,病理組織検査では両側ともにcT1N0M0の浸潤性乳管癌で,ER陽性,PR陽性,HER2陰性,Ki-67標識率10%未満だった.同胞男子に乳癌既往歴があり,BRCA遺伝学的検査を行ったが変異は認められなかった.

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術後補助化学療法後に治療関連骨髄性腫瘍を発症した乳癌の1例

春秋会城山病院消化器・乳腺センター外科

新田 敏勝 他

 症例は、82歳の女性。5年前に左乳癌術後の補助化学療法としてEC4サイクル(epirubicin 100mg、cyclophosphamide 600mg)、letrozole (2.5mg/day)を5年間、順次投与した。その後、全身倦怠感にて乳腺外来を受診され、採血結果より治療関連骨髄性腫瘍(therapy-related myeloid neoplasms:t-MNs)を疑い、当院血液内科に紹介受診となった。年齢的に強力な化学療法が困難であり、アザシチジン100mgの投与を行なっており、現在も加療中である。
  医学中央雑誌にて「治療関連白血病」「治療関連骨髄異形成性症候群」を検索しその中で詳細な検討ができたものは、自験例を含め90例であった。その一次腫瘍の内訳では、固形腫瘍が65例(72.2%)で、乳癌が9例(13.8%)であった。
  今回は乳癌術後であったが、各種一次腫瘍の生命予後の延長に伴い、今後さらに抗癌剤や分子標的治療薬さらに放射線照射が施行されることが多くなり、より一層、t-MNsの発症が増加する可能性があると考えられた。化学療法の既往がある際は、t-MNsを念頭に置いて診療に当たらなければならないと考えられた。

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術前診断が困難であった乳癌胆管転移再発の1例

国立病院機構水戸医療センター外科

島 正太郎 他

 症例は67歳女性.19年前左乳癌の診断で左乳房全切除術+腋窩リンパ節郭清施行.病理診断は硬癌,pT1cN2M0,pStageⅢA(ホルモン受容体陽性HER2陰性)の診断で術後化学内分泌療法施行も術後5年左鎖骨下リンパ節転移(ホルモン受容体陰性HER2陰性),術後12年で多発骨転移が出現し,再発化学療法中であった.術後19年肝機能障害及び黄疸を発症,画像診断で胆嚢管・総胆管合流部付近の腫瘍および肝内胆管拡張を認めた.原発性胆管癌もしくは乳癌胆管転移が疑われ,肝左葉切除+肝外胆管切除術を施行した.病理組織学的に胆管上皮の既存構造が保持されており,既往の乳癌組織像に類似していることから乳癌再発胆管転移と診断した.ホルモン受容体陽性HER2陰性であり,術後はフルベストラントおよびパルボシクリブ投与を開始し経過観察中である.乳癌胆管転移は極めて稀であるが、今回手術により乳癌再発の正確な診断,後治療の新しい選択,および患者の生活の質の向上に貢献できた.

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気管支充填とVAC療法を併用した非結核性抗酸菌症に伴う有瘻性膿胸の1例

徳島市民病院外科

宇山  攻 他

 非結核性抗酸菌症(Non-tuberculous mycobacteriosis, NTM)の空洞破裂に伴う有瘻性膿胸は難治性であり, 開窓術を余儀なくされることが多い. 今回NTMに伴う有瘻性膿胸に対し開窓術とEndobronchial Watanabe Spigot (EWS)による気管支充填術を併用することで陰圧閉鎖療法が可能となり, 感染の制御と比較的早期の開窓腔自然閉鎖が得られた症例を経験した. 症例は64歳,男性. NTM症の空洞病変破裂に伴う有瘻性膿胸のため呼吸器外科紹介となった. 胸部CTでは臓側胸膜直下に認めた空洞病変の胸腔内穿破が確認された. 開窓術とEWSを用いた気管支充填術をおこなったところ, 術後から気漏はほぼ消失した. 胸腔内の浄化が得られた術後80日目にVAC療法を追加したところ, 開窓腔の狭小化と肺の拡張, 胸壁への癒着形成がえられた. 追加の閉鎖術を行うことなく開窓腔は自然に閉鎖した.

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完全胸腔鏡併用でチタンプレートによる肋骨外固定術を行った肋骨骨折の1例

東邦大学医療センター大橋病院外科

萩原 令彦 他

 【要旨】症例は71歳、男性。交通外傷で左側胸部を打撲、左気胸が疑われ胸腔ドレーンを挿入、その後の胸部CTにて左血気胸ならびに第8肋骨の骨片が胸腔側へ向いて遊離し、前後に偏移する形での骨折を認めた。遊離骨片が左下葉に陥入している所見を得たためComplete Video-assisted thoracoscopic surgery(以下、Complete VATS)による骨片摘出と肋骨プレート固定術の方針となった。胸腔ドレーン挿入部をカメラポートとし胸腔内を観察したところ、骨折部直下にて2cm大の骨片が左下葉に陥入しているのを認めこれを除去・摘出した。次に骨折部直上に12cmの皮切を置き、ロッキングプレート(Matrix MANDIBLE®,DePuy Synthes社)にて骨折部を固定、その後Complete VATSにて胸腔内を再度観察、エアーリークが無いことを確認ののち手術終了となった。外傷性肋骨骨折においてComplete VATSでの骨片除去と骨折に対してのプレート固定術の併用は、最小限の皮切での胸腔内操作と低侵襲な肋骨固定が可能であり、肺損傷を伴う肋骨骨折症例に有用な治療法の1つとなりうると思われた。

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術後に重症筋無力症を発症した抗アセチルコリン受容体抗体陽性胸腺腫の2例

JA北海道厚生連帯広厚生病院外科

幾島 拓也 他

 背景) 胸腺腫の手術において,術前に重症筋無力症の症状を伴わず術後に症状が出現する症例が報告されている.症例1)54歳女性.術前抗アセチルコリン受容体(AchR)抗体は8.7nmol/lと高値であった.胸腺腫に対して胸腺摘出術を施行,術後経過は良好で外来にて経過観察となっていたが,術後2年の段階で胸腺腫の再発を疑われた.同時期に嚥下障害等を認め,重症筋無力症の診断となった.ステロイドパルス療法・免疫吸着療法にて症状は改善した.症例2)76歳女性. 術前抗AchR抗体は70nmol/lと高値であった.胸腺腫に対して胸腺摘出術が施行されたが,術後早期に筋力低下や呼吸困難等により体動困難となり重症筋無力症の診断となった.ステロイドパルス療法・免疫吸着療法を経て症状は改善した.結論)2症例共に術前抗AchR抗体が陽性であり,術前の抗アセチルコリン受容体抗体陽性例は術後の重症筋無力症の発症により一層留意すべきである.

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難治性両側気胸をきたした乳腺紡錘細胞癌肺転移の1例

仙台市立病院外科

吉田 茉実 他

 症例は55歳女性. 52歳時に検診のマンモグラフィで異常を指摘された.超音波検査で嚢胞所見を認め針生検を繰り返したが悪性所見を認めず,54歳時の針生検により乳腺紡錘細胞癌と診断した. 乳房全摘術および腋窩リンパ節郭清を施行した. 術後化学療法施行中に呼吸苦が出現し,両側気胸を認めた. 胸腔ドレナージでは気漏の停止が得られず,入院11日目に胸腔鏡下両側肺部分切除術を施行した. 病理検査では乳腺紡錘細胞癌の転移疑いであった. 同年両側気胸を2回繰り返し,胸腔ドレナージおよび胸膜癒着療法を行ったが,56歳時に原病の悪化により死亡した. 乳腺紡錘細胞癌は稀な疾患でしばしば診断に難渋するが,乳腺腫瘍が嚢胞化傾向を示した場合には乳腺紡錘細胞癌も念頭において診断・治療にあたるべきと考えられた. また,癌転移による続発性気胸には躊躇なく胸膜癒着療法を行うことが患者のQOLの向上に必要である.

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原発性肺癌と鑑別が困難で肺葉切除を行った早期胃癌肺転移の1例

聖フランシスコ病院外科

白藤 智之 他

 症例は79歳男性。2013.11月体重減少にて近医受診、原因不明で2014年1月当院内科紹介。胃内視鏡にて体上部後壁にⅡc、体下部にⅡcの多発病変認め生検にていずれも中分化型腺癌診断、当科紹介となった。術前の胸部CTにて右下葉に約4.0cmの腫瘤及び肺門リンパ節腫大を認めた。喀痰細胞診にて腺癌、PET-CTでは肺腫瘍本体とNo7,11i に集積がみられたが、その他には転移所見認めなかった。3か月前の近医胸部CTにて右下葉の同部位に1cmの腫瘤を認めたがリンパ節腫大はなく早期胃癌及び原発性肺癌の診断を行った。まず2014.2月に胃全摘術を施行、病理所見では中分化型腺癌でstageⅠa早期であった。続いて2期的に6週後胸腔鏡補助下右下葉切除術を施行、病理所見にて中分化型腺癌で肺胞置換型の所見はなく免疫染色で胃癌転移と診断した。切除するに至ったまれな早期胃癌の同時性肺転移症例を経験したため文献的考察を加えて報告する。

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術前化学療法中に高アンモニア血症による意識障害を生じた食道癌の1例

旭川医科大学外科学講座消化管外科学分野

堀川 大介 他

 5-FUによる高アンモニア血症は,稀であるが,重篤な副作用である.大腸癌での報告は散見されるが,食道癌では少ない.食道癌の術前化学療法である5-FU+シスプラチン療法(以下:FP療法)中に高アンモニア血症を伴う意識障害をきたした症例を経験したので報告する.
 症例は67歳,男性.受診3ヶ月前より嚥下時閉塞感,嘔吐を自覚し,前医で食道扁平上皮癌と診断された.LtAe, 70×30 mm, 3型, SCC, cT3,cN3,cM0, cStage Ⅲと診断し,術前化学療法(FP療法: 5-FU 第1-5病日,CDDP 第1病日)の方針となった.治療開始後,第3病日早朝より傾眠傾向であった.その後,徐々に意識レベルが低下しJCSⅢ-200まで増悪した.血液検査で血中アンモニア濃度132μg/dlと高値であり,5-FUによる高アンモニア血症を伴う意識障害と診断した.治療として,5-FU投与を中止し,補液,分岐鎖アミノ酸製剤を開始した.結果,速やかに意識レベルは改善した.2コース目は,5-FUを50%減量,ラクツロース内服と分岐鎖アミノ酸製剤を併用することで施行可能であった.胸腔鏡下食道亜全摘術および胃管再建術を行うも,転移リンパ節(No.106tbL,106recL)の気管浸潤を認めR2切除となった.術後1日目より経腸栄養を開始し,術後7日目で食事開始となり,術後19日目に退院した.本症例は,貧血,低アルブミン血症および骨格筋量低下が高アンモニア血症の誘因となった可能性が考えられた.

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腹腔鏡下胃空腸バイパス術を行った腐食性胃炎後幽門前庭部狭窄の1例

鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科学

小田原 晃 他

 腐食性胃炎は組織障害性の強い物質の飲用により生じ,粘膜びらんから瘢痕狭窄まで様々な病態を呈する.保存的加療が有効であったとの報告もあるが,外科的治療が必要となる症例も少なくない.今回,洗濯用洗剤の服用により幽門前庭部狭窄をきたした腐食性胃炎に対し,外科的介入を行った1例を経験したので報告する.
 症例は45歳,女性.コーヒー色嘔吐を主訴に前医受診した.上部消化管内視鏡検査を行い,急性胃炎の診断で同日入院となった.入院翌日に自傷目的で弱アルカリ性の洗濯用洗剤を多量服用したことが判明し,腐食性胃炎の診断で当院転院となった.保存的加療で胃体部の炎症は改善したが,幽門前庭部に高度の瘢痕狭窄が残存したため受傷後43日目に不完全胃離断を伴う腹腔鏡下胃空腸バイパス術を施行した.腐食性胃炎に伴う高度の瘢痕狭窄は保存的治療に抵抗性であることも多く,腹腔鏡下バイパス術は有効な治療選択肢の一つと思われた.

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診断に苦慮した胃全摘後十二指腸癌の1例

富山赤十字病院外科

吉村 隆宏 他

 症例は61歳男性。10日前からの黄疸と全身倦怠感を訴え受診した。5年前に当院で胃癌に対して胃全摘術を行った。pT4aN1 stageⅠⅠⅠAで術後補助化学療法施行後、無再発経過中であった。採血検査でトランスアミナーゼの上昇と閉塞性黄疸を認め、造影CTで下部胆管の狭窄と十二指腸球部に漸増性に造影される30mm大の腫瘍性病変を認めた。術前診断として十二指腸原発腫瘍、十二指腸断端再発などが鑑別としてあげられた。他の転移性病変などを認めないため、経皮経肝胆道ドレナージ後、膵頭十二指腸切除を行った。腫瘍は十二指腸球部に位置し、胆管側へ浸潤していた。再建は今永法で行い、術後経過は良好であった。病理組織学的に腫瘍は粘膜下層を首座とする低分化腺癌で、前回の胃癌の組織像とは異なっており十二指腸原発の腫瘍と考えられた。胃全摘後の十二指腸の精査は困難であることが多く、注意深い観察などが必要になる。胃全摘後の十二指腸原発の腫瘍は稀であり、今回我々は文献的考察を加えて報告する。

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小腸切除を行ったサイトメガロウイルス腸炎による空腸出血の1例

NTT東日本関東病院外科

高山 真秀 他

 サイトメガロウイルス(CMV)腸炎による小腸出血に対して小腸部分切除術を必要とした症例を経験した.症例は57歳男性.Human immunodeficiency virus(HIV)関連非ホジキンリンパ腫に対してCHOP療法施行中に著明な血圧低下と下血があり,消化管出血が疑われた.腹部造影CT検査で近位空腸に造影剤の血管外漏出像があり,空腸出血と診断した.Interventional Radiology(IVR)で症状改善は得られず,緊急手術を施行,病変部を含め20cmの空腸を切除した.切除検体では免疫組織学的にCMV陽性細胞を認め,CMV腸炎による出血と診断,合併症なく退院した.CMV腸炎による出血で手術に至る症例は稀であり報告する.

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腹腔鏡下手術を行った腸重積合併小腸リンパ管腫の1例

東京都立墨東病院外科

木谷 優介 他

 症例は30歳,女性.1ヶ月前に出現した間欠的な腹痛の増悪,嘔気を主訴に当院救急外来を受診し,腹部CTで回腸・盲腸が上行結腸肝弯曲部まで陥入する腸重積の所見を認めた.内視鏡的整復を試みるも困難であり緊急手術の方針とした.腹腔鏡補助下に手術を施行しHutchinson手技にて腸重積を整復,バウヒン弁より70cm口側の回腸に腫瘍性病変を認め小腸部分切除術を施行した.術後経過は良好であり術後7日目に退院した.病理組織学的検査では回腸嚢胞性リンパ管腫と診断された.成人腸重積の原因として腫瘍性のものが多いことから腹腔鏡下手術は腹腔内検索をおこないやすいという点で有益であり,また消化管原発のリンパ管腫は稀な疾患ではあるが腸重積の原因として念頭におく必要があると考えられた.

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小腸平滑筋肉腫の1例

一宮市立市民病院外科

高島 幹展 他

 症例は51歳女性. 貧血, 倦怠感の精査のため近医より紹介され当院を受診.小腸内視鏡検査にて下部空腸-上部回腸に3/4周を占める腫瘤性病変を認め, 悪性リンパ腫あるいはGISTの疑いにて手術方針となった. 術中, 小腸に径12cmの腫瘤認めた.同部位の腸管を分節切除し腸管吻合を施行した. 術後経過は良好で術後7日目に退院となった. 組織学的に固有筋層から連続する病変で, 腫瘍細胞が錯綜配列を示していた. 免疫染色ではα-SMA陽性, S-100, CD34, c-kit陰性で, 平滑筋肉腫と診断した. 退院後のフォローCTにて肝転移を認めたため, 腹腔鏡下肝部分切除を行い, 病理検査にて小腸平滑筋肉腫の肝転移と診断された. その後腹膜播種再発に対して化学療法を施行したが. 初回手術から2年8か月後に永眠された.小腸平滑筋肉腫は稀であり, 極めて悪性度が高く, 臨床的に注意を要する.

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出血性ショックを呈した腸間膜原発平滑筋肉腫破裂の1例

桑名市総合医療センター外科

成田  潔 他

 腸間膜原発の平滑筋肉腫は非常に稀である.今回,同腫瘍の破裂により出血性ショックを呈した極めて稀な症例を経験したので報告する.
 症例は79歳男性.4日前からの腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来へ搬送された.搬入時血圧は72/49mmHg,腹部は膨満し板状硬,右側腹部に小児頭大の腫瘤を触知した.造影CTで長径23cmの境界不明瞭な腫瘤性病変および多量の腹水を認めた.腹腔内腫瘍破裂による出血性ショックと診断し,緊急手術を施行した.術中所見では腫瘍は回盲部から上行結腸に浸潤する形で腸間膜に存在しており,前壁で破裂し多量の凝血塊を伴っていた.腫瘍を含めた腸間膜は後腹膜下筋膜前面の層で授動可能であったため腸間膜原発と診断し,回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査で紡錘型細胞の増殖を認め,免疫染色結果より平滑筋肉腫と診断した.術後慎重な経過観察を続けていたが,術後11ヶ月目に再発し,術後13ヶ月目に逝去した.

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腹腔鏡下回盲部切除を行った腸重積合併盲腸子宮内膜症の1例

東京都済生会中央病院一般・消化器外科

大平 正典 他

 症例は46歳女性。腹痛を主訴に当院救急外来を受診した。精査目的に施行した腹部造影CT検査にて回盲部に腸重積を認め、原因として腫瘍性病変の存在が疑われた。切除目的に腹腔鏡下に緊急手術を施行した。3ポートで回盲部を授動し小開腹創から重積腸管を体外に誘導した。体外操作で用手的に重積の解除を行い、悪性の可能性も懸念されたため回盲部切除術およびリンパ節郭清を施行した。術後の経過は良好であり7日目に退院となった。術後病理結果にて盲腸子宮内膜症と判明したため、現在婦人科にてホルモン治療を継続している。腸管子宮内膜症の多くはS状結腸および直腸であり、盲腸は比較的まれである。さらに腸重積で発症し、腹腔鏡下で治療した症例は極めてまれであり報告する。

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虫垂腫瘍との鑑別が困難であった虫垂間膜デスモイド腫瘍の1例

愛知県がんセンター消化器外科部

前田 真吾 他

 孤発性の腹腔内デスモイド腫瘍は非常にまれな疾患である. 今回, 虫垂間膜発生の孤発性デスモイド腫瘍を経験したので報告する. 患者は58歳, 男性で, 胃癌術後のフォローアップCTで虫垂に接する腫瘤を指摘された. 下部内視鏡下に生検を試みたが腫瘍細胞は採取できず, 虫垂腫瘍の術前診断で手術の方針となった. 腹腔内所見は, 盲腸・虫垂の背側に漿膜の白色変化を伴う腫瘤が確認され, D3郭清を伴う腹腔鏡下回盲部切除術を施行した. 病理組織学的検査でデスモイド腫瘍と診断された. 術前画像診断, 術中所見から虫垂間膜原発と考えられた. 腹腔内デスモイド腫瘍は小腸間膜発生が多く, 虫垂間膜発生の報告は非常に少ない. デスモイド腫瘍の治療の基本は手術による完全切除である. 完全切除後であっても局所再発のリスクがあり, 術後の定期的なフォローアップが必要である.

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右鼠径ヘルニアに合併した鈍的外傷による横行結腸穿孔の1例

高山赤十字病院外科

小塩 英典 他

 患者は51歳,男性.数年前から右鼠径ヘルニアを認めていたが,容易に還納が可能であったため放置していた.水路に転落し右鼠径部を打撲,腹痛の増強を認めたため近医医療機関を受診した.造影CTにて腹腔内遊離ガスを認めたため消化管穿孔の診断で当院へ救急搬送,同日緊急手術を施行した.手術所見では,腹腔内は便汁で汚染されており,右鼠径ヘルニア嚢内に大網が脱出しヘルニア嚢と強固に癒着していた.また,横行結腸に約1cm大の穿孔を認めた.穿孔部を含む横行結腸を切除し腸管吻合を行った.内鼠径輪は腹腔内より縫縮し手術終了した.術後5か月経過した時点で前方アプローチにて人工メッシュを用いた右鼠径ヘルニア修復術を施行した.右鼠径ヘルニアに合併した鈍的外傷による横行結腸穿孔は非常に稀であるため報告する.

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異なる治療方針を取った魚骨によるS状結腸穿孔(穿通)の2例

富山市立富山市民病院外科

中山  啓 他

 魚骨による消化管穿孔は本邦の異物穿孔の中で最多で,下部消化管穿孔の場合は緊急手術となることが多かった.今回,手術加療と保存的加療を行った2例の魚骨によるS状結腸穿孔の症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.【症例1】96歳,女性.発熱,意識レベルの低下を主訴に救急搬送.腹部所見は認知症のため評価困難であったが筋性防御は認めず,CTで魚骨によるS状結腸穿孔と診断,緊急手術を施行した.魚骨はS状結腸を貫き周囲は瘢痕組織で覆われており,穿孔したS状結腸を切除し,人工肛門を造設した.【症例2】73歳,男性.1日前に出現した腹痛を主訴に救急外来を受診.左下腹部に限局する圧痛を認め,CTでS状結腸間膜内へ穿通した魚骨と少量の気腫,脂肪織濃度の上昇を認めた.腹部所見・全身状態が安定していたため保存的加療の方針とし,翌日に下部消化管内視鏡を用いてS状結腸の魚骨を除去した.

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腹腔鏡下手術を行った完全内臓逆位症併存S状結腸癌の1例

日本赤十字社和歌山医療センター外科

伊東 大輔 他

 症例は81歳、女性。以前より完全内臓逆位症と診断されていた。検診で便潜血陽性を指摘され、近医にて施行した下部消化管内視鏡検査でS状結腸癌と診断された。胸部X線検査、胸腹部CT検査にて完全内臓逆位症を認めた。腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した。術中所見では腸回転異常や血管奇形の合併は認められなかった。周術期合併症なく術後7日目に退院となった。病理組織学的にはpT2, N0, M0, stage Iと診断された。完全内臓逆位症における手術では術中の解剖学的位置関係の誤認に注意が必要であるが、解剖学的位置が左右鏡面像となることを十分認識することで安全に腹腔鏡下手術を施行することが可能であった。

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直腸癌術後縫合不全加療中に発症した血球貪食症候群の1例

国立病院機構岡山医療センター外科

高橋 達也 他

 症例は41歳女性で前医にて直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術が施行された。術後7日目に縫合不全発症し開腹ドレナージ及び回腸双孔式人工門造設されるも遺残膿瘍のため術後25日目に当院へ転院となった。来院時は腹腔内にドレーンが留置されていた。熱発及び炎症反応の上昇を認め、ドレーン培養でMRSA検出したためバンコマイシンを追加すると徐々に改善した。しかし術後37日目より熱発の再燃を認めた。術後42日目に汎血球減少を認め血球貪食症候群(以下HPS/HLH)を疑ったため骨髄検査を施行し貪食像が認められた。HPH/HLHと判断しプレドニゾロンを開始した。早期に汎血球減少の改善を認め術後72日目に療養目的に転院となった。消化器癌術後のHPS/HLHは手術関連の感染症などを誘因に発症し,急性増悪で死亡した症例の報告もあることから早期の診断及び治療介入をすることが重要である。

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腹膜播種を伴った骨形成直腸癌の1例

大腸肛門病センター高野病院消化器外科

鈴木 崇文 他

 症例は67歳, 女性. 腹痛を主訴に近医から紹介され, S状結腸内視鏡を施行したところ, 直腸癌を指摘された. 精査の後, 低位前方切除(D3)+ 一時的人工肛門造設を施行された. 摘出標本は2型病変であり, 腫瘍内に著明な骨形成が見られた. また腫瘍周囲の腹膜に播種が見られたが, 播種組織に骨形成は認めなかった. 術後補助化学療法(Tegafur/Gimeracil/Oteracil potassium + Oxaliplatin)を行い, 現在術後一年間無再発生存中である. 骨形成性大腸癌は,頻度が約0.4%以下と低く,脈管侵襲の見られない, 比較的低悪性度な癌といわれているが, 遠隔転移を伴う症例や必ずしも予後が良いとは言えない症例が報告されている. 本症例では進行癌かつ腹膜播種を伴い, 骨形成大腸癌が必ずしも低悪性でないことが示唆されたので報告する.

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直腸癌に対する腹会陰式直腸切断術後35年目の人工肛門部粘液癌の1例

京都桂病院消化器センター・外科

豊田 有紀 他

 症例は86歳,男性.35年前に下部直腸癌に対し腹会陰式直腸切断術,人工肛門造設術を施行されたが,血便の増悪を主訴に近医を受診し,当科紹介となった.生検で粘液癌を認めたため,外科的切除を行った.その後再発なく経過良好である.人工肛門部癌の発生は稀とされ,皮下に浸潤している症例もあるが,根治切除により予後良好となりえるため, 外科的切除を行うことが重要である.

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肛門エコーが診断に有用であった肛門顆粒細胞腫の1例

平塚胃腸病院

星野 敏彦 

 症例は41歳女性.肛門腫瘤で当院受診した.直腸診では、肛門皮膚部5時方向に硬い腫瘤を触知し、肛門エコーでは、肛門5時方向に、肛門管と連続しない低エコー病変を認め、エラストグラフィーでは、周辺とは明らかに性状の異なる、硬い腫瘤として描出された.悪性の可能性が否定できず腫瘍切除の適応とした.手術は腰椎麻酔下に肛門腫瘍切除を行い、病理では、細胞質の豊かな大型の細胞が密集する病変で、免疫組織学的染色では、S-100が陽性、顆粒細胞腫と診断された.
 肛門顆粒細胞腫は、極めて稀で、悪性例の報告はないが、浸潤性に発育する場合もあり、切除にあたっては、機能を温存しつつ、確実に切除する必要がある.肛門では内肛門括約筋付近を主座とする例も報告されており、術前に周辺臓器との関係を正しく把握することが重要である.今回術前肛門エコーを施行したが、簡便で、局所の拡大視効果と良好な空間分解能を持ち、非常に有用であった.

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肝原発MALTリンパ腫の1例

聖隷三方原病院外科

山川 純一 他

 症例は69歳男性.増大する肝S4の腫瘤に対する切除目的に当科紹介となった.前医で行われた生検結果はNASH(Non-Alcoholic Steatohepatitis)で肝機能異常無く,HBs抗原,HCV抗体は共に陰性,腫瘍マーカーはCEA,CA19-9,AFP,PIVKAⅡは正常範囲内であった.腹部超音波検査では肝左葉にhypoechoicな腫瘤を認め,CTとMRIでは乏血性腫瘍だが,腫瘍内部を貫通する血管像を認めた.肝悪性リンパ腫もしくは胆管細胞癌の診断で肝切除術を施行した.免疫染色から肝MALT(Mucosa-Associated Lymphoid Tissue)リンパ腫と診断した.術後7ヶ月現在無再発生存中である.
 肝MALTリンパ腫は比較的稀な疾患であり,病因,治療方針など不明なことも多く,今回切除例を経験したので報告する.

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PTGBD後に待機的に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った気腫性胆嚢炎の1例

汐田総合病院外科

長谷部 行健 他

 症例は73歳の男性で,下腹部痛と発熱を主訴に受診し急性胆嚢炎と診断され入院した.入院4日目に腹痛の増強,血液検査の悪化を認め腹部CTで胆嚢壁に気腫性変化を認めPTGBDを施行した.施行後に状態は改善しPTGBD施行9日目に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.炎症が高度で周囲組織,肝床と胆嚢との癒着が強固であったが,丁寧,慎重な操作のもと胆嚢を摘出した.術後軽度の肺炎を併発するも軽快し術後10日目に退院となった.本症例は急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2018(以下,TG18)で中等度急性胆嚢炎に分類され手術時期の検討が必要な症例であった1).手術危険因子,その他の要因からPTGBD施行後の待機的手術を選択した.気腫性胆嚢炎は経過中に壊死し穿孔するリスクが高いが,PTGBD施行後の厳重な経過観察と,慎重,丁寧な手術操作による安全性が確保されていれば待機的な腹腔鏡下胆嚢摘出術を実施することに大きな問題はないと思われた.

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Campylobacter jejuni による胆嚢炎の1例

武蔵野赤十字病院外科

西野 将司 他

 90歳男性. 発熱及び右季肋部痛にて当院に救急搬送され, 胆石性急性胆嚢炎と診断し開腹胆嚢摘出術を施行した. 術中に採取した胆汁培養検査にてCampylobacter jejuni(以下, C. jejuni)が単一菌として検出されたためC. jejuniによる胆嚢炎と診断した. 患者は救急搬送25日前に, 魚介の刺身の生食後に生じた上行結腸炎にて抗生剤加療をされた経緯があり, 上行結腸炎の際にC. jejuniが, bacterial translocationにより門脈を経由して胆汁中に排泄されたことによる胆道感染と考えられた. 術後7日目に患者は軽快退院された.
 C. jejuniに起因する腸炎の頻度は高いが, 胆嚢炎は稀であり報告例は海外も含めて13例である. 今回われわれは, C. jejuniによる胆嚢炎の一例を経験したので文献的考察に加えて, 当院で施行した胆汁培養699例の培養結果も併せて報告する.

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腹腔鏡下脾臓摘出を先行し術前化学療法を行った肝硬変併存膵頭部癌の1例

佐賀大学医学部一般・消化器外科

井手 貴雄 他

 症例は73歳女性。C型肝硬変で近医加療中に背部痛及び膵頭部腫瘤性病変を認め、当院紹介となった。造影CT及びMRIで膵頭部に漸増性に増強される径4cm程の不整形腫瘤を認め、上腸間膜静脈浸潤が疑われた。膵頭部腫瘤はPETで高集積を呈し、膵液細胞診はclass Ⅳで、cT3N0M0, cStageⅡAの進行膵頭部癌であった。初診時肝機能はChild-Pugh Aであったが、血小板数6.5x104/μLと低値で、脾腫を認めた。腹腔鏡下脾臓摘出術を先行し、血小板数の速やかな上昇を確認後、術前化学療法としてGEM+S-1を2クール施行した。その後に根治切除として亜全胃温存膵頭十二指腸切除、門脈合併切除再建術を施行した。術後経過は良好で、術後補助化学療法を6ヶ月間完遂した。脾機能亢進を伴う肝硬変合併膵癌において、脾臓摘出術は安全に周術期補助化学療法を遂行する有用な補助手段と思われた。

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左腎静脈原発平滑筋肉腫の1例

中頭病院消化器・一般外科

林  圭吾 他

 症例は68歳, 女性. 左腰痛の精査目的に行われた造影CTで, 大動脈左側に約20mmの腫瘤を認めた. 半年後のCTで28mmに増大を認め, 当院紹介となった. 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を施行した所, 平滑筋肉腫が疑われ, 明らかな転移所見はなく, 切除術を施行した. 腹腔鏡下アプローチにて左腎静脈, 左卵巣静脈を確認した. 腫瘍は左腎静脈から剥離できず, 開腹移行したのち左腎静脈合併切除とした. 左卵巣静脈は温存できたため, 左腎は温存した. 術後病理検査で異型を伴う紡錘形細胞の増殖を認め, 免疫染色ではα-smooth muscle actine, caldesmonおよびdesminは陽性であり, 左腎静脈原発平滑筋肉腫の診断であった. 術後経過は良好であり, 術後8日目に退院となった. 腎静脈原発の平滑筋肉腫は非常に稀な疾患であり, 若干の文献的考察を加え報告する.

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緊急手術を要した傍直腸窩内ヘルニアの1例

日本赤十字社和歌山医療センター外科部

室谷 知孝 他

 症例は79歳,女性.腹痛を主訴に前医を受診され,腸閉塞の診断にて入院加療されたが改善を認めなかったため当院へ救急搬送となった.当院で再度精査するも腸閉塞の原因は不明であった.子宮全摘の手術歴があったことなどから癒着性腸閉塞であろうと考え,まずはイレウス管にて保存的加療の方針とした.しかしながらその後も症状の改善を認めず状態悪化したため,入院6日目に緊急開腹手術を施行した.術中所見にて小腸が直腸S状部右側の傍直腸窩に嵌頓していたため,傍直腸窩内ヘルニアと診断した.手術では絞扼を解除し壊死腸管を切除した.今回我々は内ヘルニアの中でも極めて稀である傍直腸窩内ヘルニアを経験し,診断および治療に難渋した.本疾患は診断が困難な疾患の一つであると思われるが,自験例でもなかなか確定診断がつかず,そのため緊急手術とするまでに時間を要した.本疾患について,文献的考察を加えて報告する.

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停留精巣を合併した84歳鼠径部interparietal herniaの1例

国立病院機構熊本南病院外科

林  尚子 他

 症例は84歳,男性.右鼠径部膨隆を主訴に近医受診.右鼠径ヘルニアの診断で当院紹介となった.右鼠径部に膨隆あり,右陰嚢は空虚であった.CTで右陰嚢に精巣は認めず,停留精巣合併鼠径ヘルニアと診断し,前方到達法で手術を施行した.ヘルニア嚢は,内鼠径輪より脱出し,外腹斜筋を貫き,外腹斜筋上の皮下脂肪織内に存在していた.右精巣は陰嚢内になく,萎縮した精巣がヘルニア嚢先端に固着しており,停留精巣を伴うinterparietal herniaと診断した.高齢で,悪性腫瘍の合併の可能性を考慮し,右精巣摘除術,ヘルニア根治術(Marcy法)を施行した.
 停留精巣合併の成人鼠径ヘルニアは稀で,また,鼠径部のヘルニアの中でもinterparietal herniaは極めて稀な疾患である.本邦において,停留精巣を伴った,鼠径部interparietal herniaの成人報告例はなく,自験例が初の報告である.

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