トップ > 会員のみなさま > 日本臨床外科学会雑誌 最新号 和文抄録

日本臨床外科学会雑誌 第81巻9号 掲載予定論文 和文抄録


綜説

腹腔鏡下・ロボット支援下膵切除術の現状と将来

東京医科大学消化器・小児外科学分野

永川 裕一 

膵臓領域における内視鏡外科手術(MIS)の難度は高く,導入時の安全性に対する懸念があった.その後,高難度新規医療技術導入プロセスにおけるシステム構築が諸学会を中心に確立され,厳しい施設基準とNational Clinical Databaseへの前向き登録を条件に2020年,リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下・ロボット支援下膵頭十二指腸切除術(LPD・RPD)が保険収載された.膵癌の外科的治療では術前・術後治療が予後改善に重要であることから,体に負担の少ない手術を行うことが必要である.このため膵癌におけるMISが期待される.しかしLPD・RPDは高度な手術技術を要するため,今後は教育システムの構築が重要な課題となる.一方で,内視鏡外科手術では,高画質映像より得られる拡大視効果により微細な解剖学的構造の認識のもと極めて繊細な切除を可能とする.本邦では解剖学的構造に基づく質の高い開腹下での膵切除を行ってきた.今後は, MISで得られる拡大視効果を享受した新たな膵切除の開発が期待される.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

臨床経験

上腸間膜動脈閉塞症14例の治療成績

砂川市立病院消化器外科・乳腺外科・緩和ケア外科

阪田 敏聖 他

 上腸間膜動脈閉塞症は診断治療技術の向上により救命率が向上しているが,術後短腸症候群による中長期予後は未だ不良である.SMA閉塞症の適切な治療方針について2012年から2018年に当院で経験した14例のうち,高齢および全身状態不良で手術に至らなかった1例を除き検討した.経皮的血管内治療(IVR)を先行した5例のうち,2例は腸管切除を免れた.試験開腹を8例に行った(開腹血栓除去5例,腸管切除3例).開腹血栓除去時に2例は腸管切除した.開腹血栓除去を施行した5例のうち2例は再灌流障害により1例で壊死を来し,他1例で蛋白漏出性胃腸症により腸管切除した.治療介入できた症例の救命率は86%であった.IVRや開腹血栓除去を行うことで大量腸管切除を回避できる可能性がある.一方で,血行再建後の虚血再灌流障害による腸管壊死は3/6例(50%)と多く,Second-look手術は施行した方が良いと考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)による日帰り手術の短期成績

東京外科クリニック外科

松下 公治 他

 目的:鼠径ヘルニアに対するtransabdominal preperitoneal repair(以下TAPP)法による日帰り手術の短期成績を検討し,その安全性を検証した.
 方法:2015年11月から2019年12月までに当院で施行された全ての鼠径ヘルニアに対するTAPP法1,408例について後向きに検討した.
 結果:平均手術時間74.6分,平均麻酔時間103.5分,平均術後在院時間66.4分,平均退院時疼痛Numerical Rating Scale 1.8,術中合併症8例(0.6%),術直後合併症101例(7.2%),術後合併症74例(5.3%)であった.日帰りで帰宅できたのは1,405例(99.8%)で,アナフィラキシーショック1例,喘息悪化2例が手術当日に入院した.日帰り手術に関連した重篤な合併症は認められず,安全に施行できた.
 結論:日帰り手術に特化したチーム医療の仕組みを作ることで,日帰りで行うTAPP法は安全に施行可能で,本邦においても治療選択肢の一つになり得ると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

症例

乳房MRIガイド下生検で診断した非浸潤性乳管癌の1例

国立病院機構北海道がんセンター乳腺外科

前田 豪樹 他

 乳房MRIにおける乳癌の検出率はマンモグラフィと超音波を上回っている.その高い検出能と近年の乳房MRIの普及に伴って,超音波やマンモグラフィでは指摘できずMRIでしか検出しえない病変(MR-only visible lesion)を経験する機会も稀ではなくなってきた.欧米ではこうした病変に対しMRIガイド下生検が普及している.本邦でも2018年4月にMRIガイド下生検が保険収載され,これを受け当院でもMRIガイド下生検を開始した.症例は61歳の女性.単孔性血性乳頭分泌を自覚し当院紹介.ステレオガイドならびに超音波ガイド下生検のターゲットとなる病変が指摘できずMRIガイド下生検を行った.生検結果はDCISであり外科的治療を行った.最終病理結果も同様にDCISであり,MRI-detected lesionを認めた場合には,MRIガイド下生検は有効な診断手段であると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

HER2陽性乳腺扁平上皮癌の1例

JA愛知厚生連海南病院乳腺・内分泌外科

石原 博雅 他

 乳腺扁平上皮癌(以下,SCC)は乳癌の特殊型に分類される稀な疾患である.今回,腹腔内リンパ節転移から多彩な臨床症状を呈し予後不良であったHER2陽性SCCの1例を経験したので報告する.症例は55歳女性.乳癌検診異常にて受診し,乳房超音波検査で左乳房CE領域に境界不明瞭な1㎝大の低エコー腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診にて悪性と診断された.CT検査では左腋窩リンパ節の著明な腫脹,癒合を認め,明らかな遠隔転移は認めなかった.左乳癌,cT1N2aM0の術前診断にて左乳房全摘術+腋窩郭清を施行した.術後病理組織学的検査はSCC,ER:陰性,PgR:陰性,HER2:陽性の結果であり,HER2陽性SCCと診断した.術後に多発骨転移,傍大動脈リンパ節転移を認め,術後36ヶ月で原病死となった.HER2陽性SCCは非常に稀で,予後不良な経過となる可能性があり,慎重な経過観察が必要であると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術後早期に局所再発を認め急速な転帰をたどった乳腺紡錘細胞癌の1例

石切生喜病院乳腺外科

高田 晃次 他

 乳腺紡錘細胞癌自体が稀な乳癌であるが,今回われわれは,術後早期に局所再発を認め急速な転帰をたどった乳腺紡錘細胞癌の1例を経験した.症例は55歳,女性.左乳腺のしこりを主訴に近医を受診し,生検で乳腺紡錘細胞癌と診断されたため,当院へ紹介となった.術前精査にて左乳腺紡錘細胞癌 cT2N0M0 cStageⅡAと診断して左乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検を施行した.アジュバンド化学療法中に左腋窩部のしこりの増大と左乳腺全体の皮膚肥厚を認め,生検にて再発と診断された.画像検査で遠隔転移を認めず完全切除可能と考え,術後64日目に両胸筋を一部合併切除する左乳房全摘術と腋窩リンパ節郭清術を施行した.手術標本の病理検査結果では再発腫瘍は転移性リンパ節と一塊となり,腫瘍径は85mmに及んだ.再手術2週後に皮膚転移やリンパ節転移をが認めた.その後,放射線治療や数種類の化学療法を行うも効果が乏しく,初回手術6カ月後に死亡した.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腋窩郭清を伴う温存術後の対側腋窩リンパ節転移を伴う温存乳房内乳癌の1例

浜松医療センター乳腺外科

綿引 麻那 他

 患者は57歳,女性.46歳時に右乳癌に対して右乳房部分切除および腋窩リンパ節郭清が施行された.術後11年目に温存乳房内に乳癌を認め,同時に対側腋窩リンパ節転移を認めた.それぞれの病変の組織型は同一であり,かつ,46歳時の乳癌と異なっていたため新規に発生した乳癌と診断した.また,リンフォシンチグラフィで対側腋窩がセンチネルリンパ節であったことから対側腋窩リンパ節転移は病態的には領域リンパ節転移に相当すると判断し,根治を目的とした外科的切除を含む集学的治療を施行した.通常,乳癌における対側腋窩リンパ節転移は遠隔転移として扱われ,限られたケースを除き外科的切除は勧められない.しかし乳房温存手術および腋窩リンパ節郭清後の温存乳房内に生じた乳癌の場合,対側腋窩リンパ節転移は病態的に領域リンパ節転移に相当する可能性があり,他に遠隔転移がなければ根治を目的とした外科的切除を含む集学的治療を検討すべきである.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術後17年で脳転移・21年で小腸転移をきたした乳癌oligometastasisの1例

湘南鎌倉総合病院外科

村田 宇謙 他

 乳癌術後17年目で脳転移,21年目で小腸転移を来した乳癌晩期再発の症例を経験したので報告する.症例は71歳女性,21年前に右乳癌にて右乳房切除術+腋窩郭清を施行した.サブタイプはluminal B(ER 60%,PgR 60%,Her2 score0,Ki67 20%)T1N1M0 stage2AでCMF療法4コース,タモキシフェン投与後に,経過観察されていた.乳癌術後17年目で脳転移が見つかり、脳腫瘍切除を施行し他の多発性病変はγナイフ施行とした.脳腫瘍の病理は腺癌の転移でER 80%,PgR 40%,Her2 score0,Ki67 60%,右乳癌の晩期再発と矛盾しなかった.今回,右乳癌術後21年目に腸閉塞になり試験開腹となった.トライツ靭帯から50cmの場所に腫瘤があり小腸部分切除を施行した.摘出標本の病理所見は既往の右乳癌細胞と類似(ER 70%,PgR 10%,Her2 FISH陽性,Ki67 10%-50%)していた.他に原発巣もなく,既往の右乳癌の小腸転移による腸閉塞と診断した.小腸転移から1年が経過し通院中である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

後腹膜転移により十二指腸・尿管狭窄をきたしたstage IV乳癌の1例

虎の門病院乳腺内分泌外科

田中 希世 他

 症例は49才,女性.来院8か月前より左乳房腫瘤を自覚するも未受診。頻回の嘔吐を主訴に来院し、精査にて皮膚浸潤をきたす左浸潤性乳癌(luminal B type)・左腋窩リンパ節転移、十二指腸狭窄・右尿管狭窄を認めた。鑑別として乳癌stage IV(腹腔内・後腹膜転移)、重複癌(乳癌+腹腔内原発癌)、進行乳癌と後腹膜線維症との合併などが考えられた。各種検査・検討するも確定診断に至らず、消化器外科にて十二指腸狭窄解除および診断目的に開腹手術を行った。後腹膜・結腸間膜に播種病変を認め、さらに十二指腸と右尿管を圧迫する硬く一塊となった後腹膜腫瘤を認めた。根治切除は困難と判断しバイパス術を施行した。播種病変の病理検査にて、乳癌の腹腔内・後腹膜転移と診断した。食事摂取可能となり栄養状態が改善された後に、乳癌stage IVに対する全身薬物療法を行い、10か月経過しPRを維持している。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

頭蓋底骨転移により多発脳神経障害を認めた乳癌の2例

神戸大学医学部附属病院乳腺内分泌外科

曽山 みさを 他

 今回, 頭蓋底骨転移が指摘され, 対照的な経過を辿った乳癌2例を経験したので報告する. 症例1は72歳女性. 頭蓋底骨転移による第Ⅷ, Ⅸ, Ⅻ脳神経障害を伴う右乳癌cT4bN0M1 (OSS), StageⅣと診断され, 放射線治療 (左頭蓋底 39Gy/13fr) 施行にて脳神経症状の著明な改善を認めた. 症例2は67歳女性. 頭蓋底骨転移による第Ⅷ, Ⅸ, Ⅹ, Ⅻ脳神経障害を伴う右乳癌cT4bN3aM1 (PUL), StageⅣの診断で, 化学療法開始予定であったが, 頭痛・眩暈・呼吸困難を主訴に緊急入院となった. 嚥下障害の進行により摂食ができず, 緩和治療目的に転院となった. 乳癌患者の骨転移に起因する脳神経症状を早期に発見し, 治療介入することで, 患者の生活の質(quality of life:QOL) の低下を防げる可能性がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

神経線維腫症1型に合併した動脈破裂の2例

横浜栄共済病院救急科,呼吸器外科

宮崎 真奈美 他

 神経線維腫症1型(Von Recklinghausen disease)は常染色体優性の遺伝病で、血管病変を合併することが知られている。今回、動脈の破綻が原因で大量出血をきたした2例を経験したので報告する。症例1は57歳女性で、右血胸の診断で緊急入院となり開胸手術を施行した。第1肋間に存在する隆起性病変が出血源で、無事止血し救命した。症例2は55歳女性で、左腰動脈からの出血性ショックで入院後心肺停止状態となり、一旦蘇生し血管内治療を行ったが死亡した。2例ともVon Recklinghausen diseaseの診断歴があった。本疾患における動脈破裂は、止血が難しく大量出血につながるケースもあり、早急かつ適切な外科的対応が必要である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

治療方針に苦慮した成人右側Bochdalek孔ヘルニアの1例

山形市立病院済生館外科

大西 啓祐 他

 症例は66歳、女性。前日からの心窩部~右季肋部にかけての痛みを主訴に来院.皮膚は黄染し、高度の炎症反応、意識障害、血圧低下など敗血症状態であった.CTでは肝曲部結腸と肝右葉の一部および高度に腫大した胆嚢が右胸腔内に存在し、右肺下葉の受動無気肺、胸水貯留、総胆管結石、肝内胆管の拡張、肝左葉の腫大と左方変位も認めた.結腸,肝右葉の一部と胆嚢を内容とした右Bochdalek孔ヘルニア状態での急性胆嚢・胆管炎と診断した。治療方針に苦慮したが、ヘルニア内容である肝および結腸の血流は維持されており、通過障害も呈していないことから、緊急手術とはせず胆道炎からの離脱を目的として肝左葉から同日PTCD(percutaneous transhepatic cholangio drainage)を留置した.ドレナージにより胆管だけでなく胆嚢の炎症も速やかに消退し、経口摂取も可能となった.内視鏡的に総胆管結石を採石後、治療開始から58日目に一期的にBochdalek孔ヘルニア根治術および胆嚢摘出術を同時に行った.経過は良好で,術後11日目に退院となった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

幽門狭窄様の画像所見を呈した胃腺腫の1例

名古屋第一赤十字病院一般消化器外科

三澤 尚史 他

 症例は55歳男性で、検診の上部消化管造影での異常を主訴に近医より紹介された。胃二重造影では幽門部に多結節性の不整な隆起性病変を認めた。内視鏡検査では幽門輪の口側に全周性の不整な結節性隆起病変を認め、生検で胃腺腫と診断された。CTでは幽門部に全周性の壁肥厚と内腔に突出する隆起を認め、胃は拡張していた。以上の所見から、生検では胃腺腫だったが幽門狭窄様所見を呈することから、胃癌による幽門狭窄を疑い幽門側胃切除を施行した。切除標本では幽門輪の固有筋層は厚さ9mmと肥厚し、幽門輪口側小弯の不整な結節性隆起性病変の一部は胃腺腫と診断された。また、この隆起性病変の深層にgastritis cystica profunda (GCP)を併存していた。また、幽門輪口側には広範囲に線維化を認めた。幽門狭窄様所見を呈するが生検で胃癌と診断できない場合、肥厚性幽門狭窄、GCPを併存した病態を考慮すべきである。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

リンパ節転移を伴った胃GISTの1例

東京医科大学消化器・小児外科学分野

須田  健 他

 Gastrointestinal stromal tumor(以下:GIST)のリンパ節転移はまれである。リンパ節転移を伴った胃原発GIST の1例を経験したので報告する。症例は68歳男性。近医にて上部消化管内視鏡検査を施行し胃体上部にSMTを認めたため、当院紹介受診。当院でFine Needle Aspiration(以下:FNA)を施行し、胃GISTと診断。腹部造影CT所見では、腫瘍と小弯リンパ節腫大を認めた。以上より胃GISTの診断にて手術を施行。開腹所見では、リンパ節転移を疑う所見も認めたため、胃全摘術、D2郭清を施行した。病理結果は40×30mm核分裂像(63/50HPFs)で、リスク分類はFletcher分類で高リスクであった。術後補助化学療法としてメシル酸イマチニブを開始したが、1か月間の内服で全身倦怠感をきたし、以降中止とした。現在まで再発兆候は認めていない。GISTは、リンパ節転移はほとんどないことからリンパ節郭清の意義は少なく、リンパ節郭清を伴わない局所切除が行われることが多い。しかしリンパ節転移を伴うGISTの場合は、完全切除のためにリンパ節郭清も選択肢の一つとして考慮すべきである。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術中ICG蛍光法で残胃血流を評価し胃全摘を回避した前庭部進行胃癌の1例

横浜市立みなと赤十字病院外科

大矢 浩貴 他

 症例は78歳男性. 心窩部不快感を主訴に前医で施行された上部消化管内視鏡検査で胃癌の診断となり手術目的に当科紹介受診した. 胃幽門前庭部に3型病変を認め, 生検でadenocarcinoma(tub2)と診断した. 幽門前庭部進行胃癌の診断で, 幽門側胃切除術(以下, DG)の方針としたが, 膵尾部への直接浸潤を伴う下行結腸癌穿孔に対する開腹結腸左半切除+膵尾部脾臓合併切除術(以下, DP)術の既往があり, 脾動脈, 短胃動脈切離後であったため, 残胃虚血が危惧された. 術中, 血管処理後にindocyanine green(以下, ICG)蛍光法を用いて, 残胃血流が保たれていることを確認し, 幽門側胃切除を終了した. 術後膵液瘻Grade Aを認めたが, その他大きな問題なく術後11日目に退院した. 通常DG後の残胃血流は主に脾動脈の分枝から補われるため, DP術後の本症例のような場合, 残胃壊死が危惧される. 今回我々はICG蛍光法により, 胃全摘術を回避し得た幽門前庭部胃癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

メシル酸イマチニブ投与後に肝切除を行った再発胃GISTの1例

日野市立病院外科

森本 洋輔 他

 症例は69歳, 女性。胃粘膜下腫瘍に対し2014年7月腹腔鏡下胃部分切除術を施行した。腫瘍径は30mm,免疫組織学的検査では, c-kit陽性, CD34陽性, 核分裂像7~8/50HPFであり, 胃GIST intermediate risk groupと診断し,術後経過観察していた. 2016年11月にS4に95mm大の孤立性肝転移を認め, メシル酸イマチニブの投与を開始した。投与開始直後より食思不振, 口内炎等の副作用が強く,内服開始6ヶ月後の腹部CTでは長径85mmに縮小し内部性状に嚢胞状変化を認め, 完全切除可能と判断し, 2017年5月肝左葉切除術を施行した。切除標本の腫瘍割面は半透明のゼリー状で一部に嚢胞化が見られた。免疫組織学的検査では,c-kit陽性,CD34陽性の細胞が散見され,イマチニブによって腫瘍細胞が著しく減少した転移性のGISTと診断した。現在肝切除術後3年が経過し,無再発生存中である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

25歳難治性十二指腸潰瘍狭窄の1例

東京慈恵会医科大学外科学講座

福島 尚子 他

 症例は20歳代,女性.数年前より嘔吐,腹痛が出現し経過観察していたが,7ヶ月前より増悪した.上部消化管内視鏡検査(EGD)で十二指腸球後部から下行脚の高度狭窄を認め,十二指腸潰瘍狭窄と診断された.カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)導入も効果なく,腹腔鏡下選択的近位迷走神経切断術(LSPV),Toupet噴門形成術,Jaboulay幽門形成術を施行した.術後第9病日に退院したが,2か月頃より腹部膨満,嘔吐を認めた.EGDで,吻合部潰瘍,狭窄を認め,プロトンポンプ阻害薬経口投与では効果が得られないと判断し,点滴で倍量投与した.内視鏡的拡張術施行後,P-CAB倍量投与に変更し,常食摂取可能まで軽快した.現在妊娠が判明し,P-CABの胎児への影響を考慮し,常用量投与に減量し経過観察中である.今回,十二指腸潰瘍狭窄に対しLSPV後に吻合部潰瘍をきたし,治療に難渋した1例を経験した.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下縮小幽門側胃切除術を行った早期十二指腸球部癌の1例

王子総合病院外科・呼吸器外科

小菅 信哉 他

 症例は64歳, 男性. 前医の採血で腫瘍マーカーの上昇を認め, 上部消化管内視鏡にて十二指腸球部に隆起性病変を認めた. また, CTで右肺野に約20 mm大の結節影を認め, 精査目的に当院へ紹介となった. 当院で行った上部消化管内視鏡検査で十二指腸病変の生検では腺癌が疑われ, 壁深達度はSM相当と診断した. 右肺病変は原発性肺癌と診断したが, 遠隔転移やリンパ節腫大を認めなかった. 呼吸器内科, 呼吸器外科と協議の上, 十二指腸腫瘍の治療を先行する方針とし, 各々の進行度を考慮して, 幽門周囲のみの郭清を伴う腹腔鏡下縮小幽門側胃切除術を施行した. 病理ではgastric-type adenocarcinomaと診断され, 深達度SM, リンパ節転移は認めなかった. 原発性十二指腸癌は稀な疾患であり, 統一された治療方針は現段階で示されていない. 進行例では膵頭十二指腸切除を行うことが多いが, 患者への負担や合併疾患等を考慮すると, 早期症例では縮小手術も選択肢の一つとなり得ると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡補助下に治療した真性腸石を伴うMeckel憩室炎の1例

横須賀共済病院外科

笹本 真覇人 他

 症例は57歳男性。20××年〇月□日午前2時頃からの腹痛を主訴に当院救急外来を受診した。腹部造影CTで小腸から連続する嚢胞状構造物内に直径25㎜大の結石様の高吸収域を認めた。腸石を伴うMeckel憩室炎が疑われた。腸管壁の造影効果不良あり、虚血性変化が疑われ、経過中に腹部症状の増悪も認めたことから、腹腔鏡下に緊急手術を施行した。腹腔内所見では、骨盤内に血性の腹水を認め、回腸末端より80cm口側の回腸に暗赤色の嚢胞状構造物を認めた。腹部の創を4㎝へ延長し小開腹し、腹腔外へ引き出し観察すると、Meckel憩室内の腸石が陥頓し壊死を来している状態であった。Meckel憩室を自動縫合機で切除し、手術を終了とした。病理組織学的には、憩室粘膜に異所性胃粘膜が存在した。腸石は、シュウ酸カルシウムによる真性腸石であった。真性腸石を伴う成人の Meckel憩室炎は比較的稀な疾患であり、本邦報告例も少ない。貴重な症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に解除したS状結腸間膜窩ヘルニアによる小腸閉塞の1例

済生会横浜市南部病院外科

角田  翔 他

 症例は腹部手術歴のない44歳女性、持続する腹痛と嘔吐を主訴に当院を受診した。腹部CT検査で左下腹部にclosed loopを認めたが、血流障害の所見は認めなかった。内ヘルニアによる腸閉塞と診断し、イレウス管で保存的加療を施行した。その後も腸閉塞の所見は改善せず、イレウス管留置後3日目に手術を施行した。腹腔鏡下に観察すると、S状結腸間膜の背側に膨隆とS状結腸間膜窩に小腸の嵌入を認めた。S状結腸間膜窩ヘルニアと診断し、直径約2cmのヘルニア門を開放し嵌頓解除を行った。腸管切除は施行せず、再発防止のためにS状結腸間膜窩からS状結腸外側の解剖学的癒着を剥離、授動した。術後経過は良好で術後第5病日に退院した。S状結腸間膜窩ヘルニアは稀な疾患であり、認知度が低く、術前に確定診断に至った報告は少ない。今回、腹腔鏡下手術で嵌頓解除を行ったS状結腸間膜窩ヘルニアの1例を経験したので報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

上行結腸の瘢痕狭窄をきたし腹腔鏡下手術を行ったアメーバ腸炎の1例

国立病院機構仙台医療センター外科

深瀬 正彦 他

 症例は59歳, 男性.転落外傷により胸椎骨折, 外傷性クモ膜下出血を来して入院となった. 胸椎固定術2日後より高熱と水様下痢症状を生じたため下部消化管内視鏡検査を行い, 全結腸に不整な潰瘍病変を認めた. 生検でアメーバ虫体を確認し, アメーバ腸炎の診断でメトロニダゾールを投与したところ症状は改善した. 6か月後の下部消化管内視鏡で上行結腸に全周性の瘢痕性狭窄を認め, 腹満などの症状も認めたため腹腔鏡下回盲部切除を行った. 腹腔鏡下回盲部切除術を行った. アメーバ腸炎後に難治性の瘢痕性狭窄を生じ, 手術を要した稀な症例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腸重積の原因となった回盲弁lipohyperplasiaの1例

滋賀医科大学外科学講座消化器・乳腺一般外科

仁科 勇佑 他

 症例は60歳代の男性。右下腹部痛で近医を受診された。腹部CT検査で回盲部に腸重積を認め、保存的加療で改善した。その後のCT検査で上行結腸に35mmの低吸収腫瘤を認めた。症状の再燃を繰り返し、手術の方針で当科紹介となった。下部消化管内視鏡検査で回盲弁肛門側に表面平滑で広基性、正常粘膜を有する30mm大の黄色調粘膜下腫瘍を認め、上行結腸脂肪腫と診断した。腹腔鏡下に手術を行い、術中所見で病変部は周囲と境界不明瞭であったことから回盲部切除術を行った。摘出標本で回盲弁上唇に34x24mmの舌状に隆起した黄色調粘膜下腫瘍を認めた。病理組織検査で病変部に成熟した脂肪組織を認め、核分裂像や細胞異型は認めなかった。回腸末端の粘膜下脂肪組織との境界は不明瞭で、一部の脂肪組織内には固有筋層の巻き込みを認め、被膜形成を欠いていることから、回盲部lipohyperplasiaと診断した。回盲部lipohyperplasiaにより腸重積を来した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ICG蛍光法を用いて適切な腸管切離を行った壊死型虚血性腸炎の1例

横浜市立大学消化器・腫瘍外科学

窪田 硫富人 他

 症例は70歳の女性で,慢性腎不全で当院通院中であった.左下腹部痛と嘔吐を認め,内科外来を受診した.大量の血便から虚血性腸炎を疑い,入院とした.同日,症状が増悪しCT検査・下部消化管内視鏡検査で壊死型虚血性大腸炎を疑い開腹結腸亜全摘を施行した.肉眼では血流不良域は下行結腸から横行結腸までと診断していたが,術中にICG蛍光検査で血流を評価した.血流良好な部分を確認し,最終的に回腸末端まで切除し,回腸人工肛門を造設した.術後経過は良好で合併症なく退院した.本疾患は虚血性大腸炎の中でも4.4%と比較的稀で,多臓器不全を容易に併発し,致死率は30-60%と報告されている.予後の改善のためには早期の外科治療が必要である.術中にICG蛍光法を用いて,血流評価を行うことが有用である可能性が示唆された.文献的考察を加え,これを報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胃バリウム検査を契機に腸閉塞を発症したS状結腸子宮内膜症の1例

JA北海道厚生連帯広厚生病院外科

和田 秀之 他

 症例は40歳女性.胃バリウム検査後から腹痛が出現した.精査にてS状結腸の全周性狭窄と口側結腸の著明な拡張を認め,S状結腸癌による大腸閉塞症が疑われた.バリウム損傷による結腸穿孔を危惧し経肛門的イレウス管による減圧を試みるも挿入できず,翌日,腹腔鏡下にS状結腸切除および回腸人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好で第11病日に退院となった.病変は病理組織学的に腸管子宮内膜症と診断され,現在ホルモン療法を施行中である.バリウムを契機に腸閉塞を発症したS状結腸子宮内膜症に腹腔鏡手術を施行し良好な経過を得たので,文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腸間膜内穿通にて発症したS状結腸大細胞内分泌細胞癌の1例

東京都立墨東病院外科

古家 俊作 他

 症例は76歳の男性.主訴は発熱と腹痛.前医にて単純CTでS状結腸に腫瘍性病変と周囲の腸管外ガス像を認め,S状結腸腫瘍穿孔に伴う急性腹膜炎の診断で,当院へ転院搬送となり,同日緊急手術を行った.術中所見ではS状結腸に手拳大の腫瘍性病変を認めた.腹腔内に汚染腹水を認めたが,明らかな腸管内容物の漏出は認めず,S状結腸癌の腸間膜内穿通と診断し,ハルトマン手術・D2郭清を施行した.摘出標本の肉眼所見で腫瘍の潰瘍底から腸間膜内への穿通を認めた。術後の病理組織学的診断はS状結腸大細胞内分泌細胞癌,pT4a(SE),INFb,Ly0,Vac,BD3,Pn1a,pN0, pStageIIb(大腸取扱い規約第9版)であった.術後3日目で試験開腹,洗浄ドレナージを行ったがその後の経過は良好で術後25日目に退院した.腸間膜内穿通という形で発症したS状結腸内分泌細胞癌の稀な1例を経験したので,報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

急性虫垂炎を契機に発見された石灰化を伴う14歳男児の結腸印環細胞癌の1例

宮崎大学医学部外科学講座

長友 謙三 他

 症例は14歳男児. 右下腹部痛を主訴に紹介受診した. 来院時39.8℃,血液検査で高度の炎症反応上昇を認めた. 造影CTで虫垂腫大と腹水を認め, S状結腸に石灰化を伴う壁肥厚を認めた. 虫垂炎穿孔による汎発性腹膜炎を疑い緊急手術を行った. 開腹所見で腹腔内広範に播種性結節を認めS状結腸は固く触知し悪性腫瘍と思われた. 虫垂は腫大していたが穿孔所見は認めなかった. 腫瘍は骨盤壁へ浸潤しており切除不能と判断し, 虫垂切除術と横行結腸人工肛門造設術を施行した. 播種結節の病理組織診断は粘液癌で, 印環細胞を伴っていた. 術後化学療法をFOLFOX+Bevacizumabを14クール, FOLFIRI+Bevacizumabを3クール施行したが, 術後350日目に癌死した. 小児の大腸癌は非常に稀であり, 本邦では1983年以降、自験例を含め29例の報告をみるのみである. 小児といえども悪性疾患を念頭におく必要と思われた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

間欠洗浄型陰圧閉鎖療法で早期治療介入できたFournier壊疽合併直腸癌の1例

桑名市総合医療センター外科

成田  潔 他

 症例は44歳男性,主訴は全身倦怠感,臀部痛.左臀部の壊死と肛門から癌の突出を認め,CTで高度な局所浸潤を認める直腸癌およびガス像を認めた.直腸癌が原因のFournier壊疽と診断し,緊急にデブリドマンおよび人工肛門造設を施行した.術後,感染を伴う広範囲の組織欠損となった会陰創に対し間欠洗浄型陰圧閉鎖療法(NPWTi-d)による局所治療を行い,3週間で分層植皮術が可能となり,術後65日目より術前化学療法を開始した.腫瘍縮小効果を認め根治切除可能と判断し,術後199日目,尾骨合併骨盤内臓全摘術を施行し,会陰創は右大殿筋皮弁にて閉創した.病理組織学的検査でR0切除であった.
 直腸癌によるFournier壊疽の治療では,腫瘍学的治療介入までの時間が予後に直結する.今回,NPWTi-dを導入し可及的早期に創部治療を完結し,癌治療が開始できた1例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

消化管穿孔部に好塩基性無構造物を認めた維持透析患者の1例

千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学

岩田  萌 他

 症例は71歳男性. 多発性嚢胞腎で20年間の維持透析を行っており,高K血症に対しケイキサレート®︎を内服していた. 突然の下腹部痛から消化管穿孔の診断となり緊急手術を行った.術中所見では直腸に穿孔部を認め,Hartmann手術を行った.病理では穿孔部に一致して好塩基性無構造物(crystalline material)を認め,穿孔部対側には2cm大の直腸癌を伴っていた.術後は遺残膿瘍に対して穿刺ドレナージを要したが,第43病日に退院となった.補助療法は行わず経過観察の方針とし,現在術後16ヶ月,無再発生存中である.ポリスチレンスルホン酸塩の内服は消化管穿孔に関与する可能性があり,透析患者においては,憩室などの他の穿孔リスク因子の把握や厳重な排便コントロールが望まれる.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Pull through法を用いて一時的人工肛門造設を回避した下部直腸癌の1例

藤沢市民病院消化器外科

川島  淳 他

 症例は74歳,女性.直腸癌の診断で当科を紹介され受診した.子宮頸癌と膀胱癌の既往があり,それぞれに対して広汎子宮全摘術と,膀胱全摘術,両側側方リンパ節郭清術,回腸導管造設術を施行されていた.下部直腸癌の診断で,経肛門的直腸間膜切除術併用の腹腔鏡下括約筋間直腸切除術,一時的回腸人工肛門造設術を予定した.既に回腸導管を造設されており,一時的人工肛門造設部位が限定されていることに加え,術中所見で回腸,横行結腸の癒着が強固であり,人工肛門造設に伴う副損傷の可能性が高いと判断した.また,術前からダブルストーマに対する拒否感が強かったことをふまえ,一時的人工肛門造設は施行せず,Pull through法を用いて二期的に結腸肛門管吻合術を行った.術後は合併症なく経過し,初回手術より15日目に退院となった.
 Pull through法は二期的に結腸肛門管吻合を行う肛門温存術式であり,一時的人工肛門造設をせず縫合不全を回避する術式として,近年欧米で注目されている.今回われわれは,Pull through法を用いて一時的人工肛門造設を回避しえた症例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

気道狭窄をきたした直腸癌甲状腺転移の1例

登米市立登米市民病院外科

中川 智彦 他

 症例は72歳女性で2010年9月直腸癌にて低位前方切除術を施行した。2013年7月左肺転移巣を切除し、術後に化学療法を施行した。2019年6月甲状腺腫瘍が急速に増大し、気道狭窄にて呼吸困難となったため、気道確保を目的に甲状腺全摘を伴う気管切開術を施行した。術後にはQOLの著明な改善を認め、短期間ながらも自宅療養できたが、手術4か月後に死亡した。病理組織学的検討により、直腸癌甲状腺転移と診断した。直腸癌の甲状腺転移はまれで、しかも顕微鏡的転移が大部分で、臨床的所見を呈することはごくまれである。今回われわれは直腸癌の甲状腺転移増大による気道狭窄に対して甲状腺全摘を伴う気管切開を行い、QOLが著明に改善した症例を経験した。全身状態や他臓器転移などを評価した上であるが、転移性甲状腺癌による気道狭窄例に対してはQOL改善目的での外科的治療も検討する意義があると考える。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

坐骨直腸窩tailgut cystの1例

高知医療センター消化器外科・一般外科

稲田  涼 他

 Tailgut cystは胎生初期に一時的に出現する尾腸(Tailgut)が遺残した稀少な疾患であり,好発部位は仙骨前面とされている.今回,坐骨直腸窩に発生したTailgut cystに対して経会陰的に切除した一例を経験したので報告する.
 症例は74歳の女性で,胆石症に対して,胆嚢摘出術を行う際に撮影した腹部CT検査にて直腸右側に約40mmの腫瘤影を指摘された.MRI検査にて坐骨直腸窩に存在するT2で高信号を示す多房性の嚢胞性病変を確認し,Tailgut cystの診断となり,手術の方針となった.Jack knife位による経会陰的アプローチで,尾骨及び一部肛門挙筋を合併切除しつつ,腫瘍を摘出した.術中腫瘍内容物の露出は認めなかった.病理診断の結果,切除検体は36x35㎜の内腔に粘液を伴う境界明瞭な多房性嚢胞性病変であった.嚢胞壁は重層扁平上皮や円柱上皮に覆われており,Tailgut cystの診断となった.悪性所見はなく,切除断端は陰性であった.術後は大きな合併症無く経過し,第5病日に退院し, 13ヶ月経過するも無再発生存中である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

原発巣切除後13年目に残肝多発再発巣切除を行ったガストリノーマの1例

横須賀共済病院外科

工藤 孝迪 他

 症例は76歳男性.2005年5月検診にて膵腫瘍を指摘され来院.当院にて膵尾部腫瘍に対して膵体尾部切除,脾摘術施行.病理の結果はガストリノーマ(2017年WHO分類ではPanNET G2)の診断. 外来にて経過観察中にCTで低吸収域を示す腫瘤を認め肝S4転移と診断し2008年1月に肝S4部分切除術を施行した.病理結果はガストリノーマ肝転移(PanNET G1)の診断.その後10年間再発なく経過していた.突然の腹痛にて来院し,単純CTにて肝に低濃度腫瘤をみとめたため,ガストリノーマの再発が疑われた.上部消化管内視鏡検査では,十二指腸下行脚に多発潰瘍を認めた.造影MRI施行し肝S2,S3,S5,S8にガストリノーマの肝転移の診断で肝部分切除術(4か所)を施行した.病理組織学的検査で増殖する異型細胞を認め,免疫染色にてガストリン陽性であったため,ガストリノーマ(PanNET G1)と診断した.術後2年,十二指腸潰瘍は改善し,無再発で経過している.今回,ガストリノーマ術後10年以上経過してからの再発症例は稀であり手術し得た1例を経験したので文献的考察をふまえて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胃瘻造設患者に発生し腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った急性胆嚢炎の3例

さいたま記念病院外科

箱崎 悠平 他

 近年では高齢化が進み,胃瘻造設状態患者の急性胆嚢炎に対する治療が増えると推測される.急性胆嚢炎を発症した胃瘻造設状態の患者では,鏡視下手術はポート配置や術野確保の困難性から敬遠される.今回,我々は胃瘻造設状態患者の急性胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行したので,その治療成績について報告する. 症例の平均年齢は78.3歳,男性2例,女性1例で,全例入院あるいは施設入所中であった.1例は無石胆嚢炎,他の2例は胆石胆嚢炎で,後者に対し術前にPTGBDを施行した.全例,胃瘻部位に影響なく,通常の4ポート留置にて腹腔鏡下胆嚢摘出術が完遂された.平均手術時間,術中出血量および術後在院期間はそれぞれ143.3min,33.3mlおよび4.7日であった.術中偶発症および術後合併症は認められず,全例経過良好で以前の状態に回復した.胃瘻造設状態患者の急性胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術は安全に施行可能と思われた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

膵管内乳頭粘液性腺癌術後5年目に残膵発症したIPMN由来膵腺扁平上皮癌の1例

JA長野厚生連長野松代総合病院外科

梅村 謙太郎 他

 症例は68歳女性. 膵頭部の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対して, 膵頭十二指腸切除術(SSPPD-Ⅱ-A-1)を施行した. 病理組織学的検査では膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC) invasive, pT1N0M0, pStageⅠの診断で, 切除標本には分枝膵管内を中心にIPMAを広範に認めた. S-1療法を施行し無再発で経過したが, 術後5年目に腹部造影CT, MRIで膵空腸吻合部に35mm大の腫瘤を認めた. FDG-PETでは腫瘤に一致した異常集積を認めたが, 遠隔転移は認めなかった. 残膵再発の診断で残膵全摘, 空腸合併切除術を施行した. 病理組織学的検査では様々な分化度の腺癌成分と扁平上皮癌成分が領域性に増殖して腫瘤を形成していた. 主膵管内にIPMCと考えられる異型細胞の増殖を認め, 腺癌及び扁平上皮癌成分への連続性が認められIPMN由来膵腺扁平上皮癌と診断した. IPMNに由来した膵ASCの報告はこれまで6例のみで, IPMC切除後残膵に生じた膵ACSは本例が初の報告であった. 本症例経過から, IPMN切除後の長期フォロ-アップの必要性が示唆された.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

HIV患者に発症した非外傷性脾破裂の1例

国立病院機構名古屋医療センター外科

宮﨑 麻衣 他

 症例は70歳、男性。HIV陽性患者。腹痛とふらつきを主訴に受診し、CT検査で脾破裂が疑われた。外傷歴はなく、非外傷性脾破裂の診断で入院、精査した。画像所見では脾臓に血腫が多発しており、動脈瘤を疑う所見を認めた。HIV感染症を背景とした脾破裂であることを考慮して原因検索と再発予防目的に開腹脾臓摘出術を施行した。手術所見では血性腹水と脾臓表面に最大径5 cmの破裂した血腫の他、複数個の未破裂血腫を認めた。病理組織学的検査では結核等の感染症や腫瘍性病変を示唆する所見は認めなかった。また、HIV感染症関連血管障害によって形成された動脈瘤の破裂を疑っていたが、動脈瘤や血管内膜障害の存在は病理学的には証明されなかった。HIV患者における脾破裂の報告は稀ではあるが、HIV感染症によって脾腫、結核、腫瘍性病変、HIV感染症関連血管障害等を合併することで非外傷性脾破裂の病因となることから留意が必要である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に切除したガーゼによる異物肉芽腫の1例

住友病院外科

奥野 倫久 他

 症例は38歳、男性。10歳時に他院で虫垂炎に対し、虫垂切除術の既往がある。30歳時、検診の腹部超音波検査で右下腹部に36mmの腫瘤を認め、当院を紹介受診したが、通院を自己中断されていた。今回、右下腹部腫瘤の増大傾向を認め、再度当院を紹介受診した。腹部超音波検査で71mmの辺縁平滑な内部石灰化を認める腫瘤を認めた。腹部造影CT検査では、腫瘤壁の造影効果と内部High density areaを伴っていた。腫瘤増大傾向で、問診からガーゼによる異物肉芽腫を強く疑い手術の方針となった。腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した。手術所見としては、右下腹部回盲部付近に大網、腹壁と癒着した腫瘤を認めた。鏡視下に癒着剥離を施行し、腫瘤を摘出した。切除標本内部からガーゼを認め、異物肉芽腫と診断した。本症例はガーゼによる異物肉芽腫を腹腔鏡下に摘出し得た症例で、若干の文献的考察を含め報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ヘルニア嚢内で膀胱壊死をきたした腹壁瘢痕ヘルニアの1例

愛媛県立今治病院外科

宇都宮 大地 他

 症例は86歳,女性.腹痛及び嘔吐を主訴に当院を受診した.子宮筋腫摘出術の既往があり下腹部正中に手術創瘢痕を認め,同部位に一致して腹部腫瘤を認めた.腹部造影CTで下腹部正中に2cm大の腹壁瘢痕ヘルニアを認め,ヘルニア内には小腸と膀胱が脱出していた.小腸・膀胱ともに造影効果に乏しく,特に膀胱は壁在ガスを認め虚血・壊死を強く疑う所見であった.腹壁瘢痕ヘルニアの小腸・膀胱嵌頓に対して,緊急手術を施行した.膀胱は破裂までは至っていなかったものの,壊死に陥っており壊死部の切除及び縫合閉鎖を施行した.小腸も同様の所見で,小腸部分切除術を施行した.腹壁瘢痕ヘルニアへの膀胱嵌頓及び壊死は稀な疾患だが,本症例は術前診断が可能であった.下腹部の腹壁瘢痕ヘルニアへの臓器脱出を有する場合には膀胱嵌頓壊死も鑑別診断に入れた上で患者の状態に応じた術式を選択する必要があると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る