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日本臨床外科学会雑誌 第81巻7号 掲載予定論文 和文抄録


原著

緩和手術症例における予後予測指標の比較検討

順天堂大学医学部附属浦安病院がん治療センター

吉川 征一郎 他

 【目的】緩和手術の適応では2ヶ月以上の予後が期待できることが望ましいとされるが、終末期における予後予測は困難である。緩和手術症例を対象として、予後予測指標であるPalliative Prognostic Index (PPI)、Prognostic Nutritional Index(PNI)、modified Glasgow Prognostic Score(mGPS)、Controlling Nutritional Status(CONUT)について、60日予後予測指標としての有用性を検討した。
 【方法】緩和手術症例94例における各予後予測指標の術後60日生存率予測精度を比較した。各指標についてカットオフ値を設定し、2群に分類して統計学的検討を行った。
 【結果】PPI、PNI、CONUTは緩和手術後60日生存と有意に相関しており、PPI、PNI、CONUT良好群は、それぞれの不良群との比較において60日生存率が有意に良好であった。予後予測精度はPPIが最も良好であった。
 【結論】PPI, PNIおよびCONUTは、緩和手術症例において60日生存予測指標となり得ることが示された。

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癌性腹水を伴う切除不能進行・再発胃癌に対するKM-CARTの有用性

国家公務員共済組合連合会広島記念病院外科

白川 賢司 他

 大量の癌性腹水を伴う切除不能進行・再発胃癌は薬物療法の施行が困難で予後が悪い.改良型腹水濾過濃縮静注法(KM-CART)は悪化した全身状態を改善し薬物療法の継続やBSCに有益であると報告されている.当科のKM-CART治療の成績と有用性を報告した.対象は2017年1月から2019年9月までに癌性腹水を伴う切除不能進行・再発胃癌患者へKM-CARTを施行した23例(58回)であり,導入時期は,1次治療が4例,2次治療が7例,3次治療以降が5例,BSCが7例であった.施行後の血清Alb値は維持され,血清Cr値は改善した.KM-CARTにより薬物療法の導入が可能となり,KM-CART開始後の生存期間は17~654日であった.症状緩和の効果も大きく,BSCに貢献できた.KM-CARTは癌性腹水を伴う切除不能進行・再発胃癌に対して,薬物療法の継続で予後に,症状緩和でBSCに貢献できると考えられた.

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臨床経験

術前超音波検査による腹腔鏡手術の癒着マッピング

宮崎善仁会病院外科

大西 敏雄 他

 腹部外科領域にて腹腔鏡下手術の発展と普及はめざましく、標準化された術式として腹腔鏡下手術を行う機会が年々と増加している。この際、前回の開腹手術に伴う腹膜への腸管の癒着により腹腔鏡的なアプローチの障害となる可能性がある。当院では腹腔鏡下手術を予定した症例に対し術前超音波検査による腹腔内癒着評価とそのマッピングを行っている。対象は2014年01月から2018年12月までの腹腔鏡手術予定患者のうち、判定が可能であった615例である。超音波検査による術前癒着判定とマッピングは、被験者に腹式深呼吸をゆっくり繰り返してもらい、腹部内臓器の呼吸性移動の状況を確認した。超音波診断は、感度:63%、特異度:92%、正診率:89%となった。腹腔鏡用のtrocarを挿入する際に使用する臍部に限局すると感度:94%、特異度:97%、正診率は97%になる。超音波検査による腹壁癒着の評価によって手術を安全に施行するために広く応用されるべき方法と考える。

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腹部手術後の創部腹壁癒着リスク

長崎みなとメディカルセンター外科

渡海 大隆 他

 目的:腹部手術において、創部腹壁への腸管癒着は再開腹時の腸管損傷リスクとなるため、各種の癒着防止材が使用されている。しかし実臨床において、腹腔鏡手術後に何らかの理由で再度開腹手術を行ったところ、前回手術時に癒着防止策を講じていないにもかかわらず、創部の腹壁に全く癒着を認めないことも少なくない。そこで今回、創部腹壁の癒着のリスクとなる手術因子を検討した。方法:腹部手術既往のある症例で、計画的あるいは偶発的に腹部再手術を行った症例における癒着の有無を手術因子別に解析。結果:創部への腸管癒着において、単変量解析では出血量と手術アプローチ(開腹vs腹腔鏡)が有意な癒着リスク因子であった。多変量解析では手術アプローチのみが有意な因子であり、癒着防止材を含む他の因子との相関はみられなかった。結語:開腹手術は創部腹壁への腸管癒着リスクであるため、何らかの癒着防止対策を考慮する必要があるが、腹腔鏡手術では特段の癒着防止策を講じなくても 再手術の開腹時における腸管損傷リスクは低いと考えられる。

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症例

乳癌取扱い規約新分類における乳房Paget病の1例

山口県立総合医療センター外科

藤井 雅和 他

 症例は69歳の女性で、主訴は左乳頭発赤。来院時左乳輪は痂皮化していた。理学所見、画像所見上左乳癌を疑って検査を進めていたが、左乳頭の痂皮所見を認めることから左乳頭部の皮膚生検を施行したところ、乳房Paget病と診断された。左乳房切除術+センチネルリンパ節生検を施行した。センチネルリンパ節は陰性であった。病理組織学的検査で乳房Paget病と最終診断された。ホルモンレセプターはER、PgRともに陰性で、Her2は(3+)であった。術後補助療法は施行せず、無再発で経過観察中である。乳房Paget病は確定診断に至るまで時間を有することがあり、乳頭・乳輪病変を認めた場合は積極的に皮膚生検を行う必要がある。確定診断が得られれば治療は一般の乳癌に準じて施行されており、浸潤の有無により予後も規定されるが、発生機序など不明な点も多い。また第18版 乳癌取り扱い規約1)によると1mm以上の間質浸潤を認めるPaget病は浸潤癌に分類されると明確に定義された。

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右前胸部に発生した副乳癌の1例

小笠原記念外来プラザ乳腺外科

田口 和典 他

 副乳癌は全乳癌の0.2〜0.6%を占め,大部分は腋窩に発生するが,前胸部発症例は全乳癌の0.01%と極めて稀である.右前胸部に発生した副乳癌を経験したので報告する.症例は56歳,女性.右前胸部皮下腫瘤を主訴に当科受診.乳腺堤線上に位置する右前胸部に突出する3cm大の硬い腫瘤を触知した.画像検査,針生検により副乳癌の術前診断で局所広範囲切除+センチネルリンパ節生検を施行した.術中迅速病理診断でセンチネルリンパ節に転移を認めなかったが,近傍にやや硬いリンパ節を複数認めたため,level I領域の郭清を追加した.病理組織所見は硬癌で,センチネルリンパ節と郭清したリンパ節に転移はなかった.腫瘍部と正常乳腺組織との連続性はなく右前胸部原発の副乳癌と診断した.ER陽性/PgR陽性,HER2陰性で EC療法を施行後,アロマターゼ阻害剤を投与中である.術後2年6ヶ月の現在,再発の徴候を認めていない.

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左乳頭部に限局する隆起性腫瘤を形成した化生癌(紡錘細胞癌)の1例

愛媛県立中央病院乳腺内分泌外科

宮崎 一恵 他

 症例は68歳女性.7ヶ月前から徐々に増大する左乳頭部腫瘤と出血を主訴に受診.左乳頭部に出血,びらんを伴う5㎝大の亜有茎性腫瘤を認めた.切開生検で低分化な癌胞巣と紡錘形細胞が混在した腫瘍組織を認め,化生癌(紡錘細胞癌)が示唆された.乳房造影MRIでは左乳頭部から一部乳頭直下に進展を認めたが,その他乳房内に腫瘤は認めなかった.PET-CTで左乳頭部および左腋窩リンパ節にFDG集積を認め,左乳頭部乳癌(cT4bN1M0 cStageⅢB)と診断した.左乳房切除+センチネルリンパ節生検を施行し,術中迅速で転移陽性であったため腋窩郭清(LevelⅡ)を行った.最終診断は乳頭部に限局した化生癌(pT4bpN1aM0,pStageⅢB)で乳頭部に限局しており,上皮成分はHER2 タイプ,肉腫様成分は一部ER陽性であった.術後療法として化学療法,抗HER2療法,内分泌療法を施行し,術後2年半再発なく経過している.

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術後内分泌療法中にIgA血管炎を合併した82歳乳癌の1例

市立伊丹病院乳腺外科

野﨑 由夏 他

 症例は80歳代女性.右乳癌の診断で乳房部分切除術とセンチネルリンパ節生検を施行,術後病理学的診断でホルモン受容体陽性であったため,術後内分泌療法としてアナストロゾール(ANA)内服を開始した.内服開始後9か月,両下腿浮腫,上気道炎症状に続き下肢紫斑,下腹部痛が出現したため,精査加療目的に当院入院となった.病歴より血管炎を疑い,下腿紫斑より皮膚生検を行ったところ,IgA, C3の沈着を伴う血管壁の炎症を認め,薬剤性のIgA血管炎と診断した.被疑薬であるANA中止後,速やかに紫斑が消退し始め,CRPも正常化した.現在,内分泌療法をタモキシフェンに変更し,血管炎の再燃なく無再発生存中である.高齢者乳癌において術後ANA内服を契機に発症したIgA血管炎を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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めまい改善目的の体操が原因と考えられたペースメーカー電池部露出の1例

戸塚共立第2病院心臓血管外科

伊藤 篤志 他

 めまい改善目的の体操(「めまい体操」)が鎖骨下ペースメーカー電池部露出の原因と考えられ,延長リードで低侵襲な電池植え込み部位変更が奏功した1例を経験した.
 症例は71歳.女性.めまい等を主訴に完全房室ブロックの診断でペースメーカー植え込み術が施行され,その5か月後に本人が電池部の露出に気付き緊急入院となった.入院後の各種検査などで感染やアレルギー等の関与は否定的であり,ペースメーカー植え込み後も持続するめまい症状に対して,その改善を目的に市販の単行本を参照に自己判断で開始した「めまい体操」が原因で電池部露出に至ったと判断した.準緊急手術で露出した電池のみを除去し,新規電池植え込みは延長リードを用いて皮下脂肪層の豊富な同側乳房下へ変更した.植え込み側の上肢や肩関節の運動あるいは体操が原因でペースメーカー電池部露出に至る症例もあるので,植え込み後の管理では,運動時の創部の観察を行うべきである.

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僧帽弁形成術を施行した,ASDに合併した腱索断裂によるMRの1例

福岡記念病院心臓血管外科

達  和人 他

 症例は45歳,フィリピン人の女性.16歳時にASDを指摘されたが,症状がなく受診していなかった.2011年の健康診断にて心雑音を指摘されたが受診しなかった.2014年11月,心窩部痛が出現した.同年12月初旬,夜間に増悪する乾性咳嗽が出現したため他院受診,心不全を疑われ当院紹介受診.重度僧帽弁閉鎖不全症(MR),重度三尖弁閉鎖不全症(TR),肺高血圧(PH)(65/42 mmHg)を合併した心房中隔欠損症(ASD)と診断した.右心カテーテル検査にてQp/Qs 6.35,左右シャント率は84.5%であった.カルペリチドと利尿剤投与による心不全コントロールを施行後,2015年2月,人工腱索とpartial bandを用いた僧帽弁形成術,De Vega法による三尖弁輪縫縮術に加え,自己心膜パッチを使用したASD閉鎖術を施行した.ASDに合併するMRの僧帽弁病変は僧帽弁前尖後内側に多く認められ,腱索や弁尖自体に明らかな異常を認めないことが多い.本症例のようにASDに合併した,腱索断裂によるMRに対する僧帽弁形成術の報告は少なく,文献的考察を加えて報告する.

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食道穿孔が疑われたZenker憩室内異物(義歯)の1例

金町中央病院外科

宇野 耕平 他

 食道穿孔を疑うZenker憩室内異物(有鈎義歯)を経験したので報告する.症例は84歳,男性.来院の1週間前に義歯誤飲を自覚したが,自然排泄を期待して自己判断で経過観察していた.頸部痛が持続し,食事摂取も困難なため来院した.頸胸部CTで頸部食道に義歯と食道左壁から連続する気腫像を認め,食道穿孔が疑われた.義歯は内視鏡で摘除可能であり,全身状態は安定していたため保存的に加療を行った.穿孔部の評価目的に施行した食道造影検査で咽頭食道憩室(Zenker憩室)が指摘された.有鈎義歯誤飲は,鋭利なクラスプ(鈎)が食道粘膜に刺入することで内視鏡での摘除が困難となり,さらに食道穿孔を併発して外科的治療が必要となることが多い.比較的稀な病態とは考えられるが,食道異物の診療を行う際は,Zenker憩室の併存と憩室内での異物停滞を念頭に置いて診療にあたることで,過大侵襲な治療を回避できる可能性がある.

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胃MALTリンパ腫に対する放射線治療完全寛解後の胃穿孔の1例

小牧市民病院外科

成田 正雄 他

 症例は79歳, 女性. 胃MALT(mucosa associated lymphoid tissue)リンパ腫と診断, H,pylori陽性のため除菌治療を行うも治療抵抗性であったため放射線療法を施行した. その後, 完全寛解となり経過観察としていた. 翌年, 胸痛を主訴に来院し, 上部消化管穿孔の診断で緊急入院となった. 全身状態は安定していたため, 保存的加療を試みたが軽快せず手術方針とした. 開腹すると胃体中部後壁に20×20mmの穿孔部位を認め, 胃全摘術を施行した. 病理所見ではリンパ腫の残存病変は認めなかった. 術後経過は問題なく, 術後15日目に退院となった. 胃MALTリンパ腫の放射線治療後完全寛解例における胃穿孔の報告は稀であるが, 外科手術も必要となる合併症として念頭に置くべきである.

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外科的切除を行った胃原発MANECの2例

国家公務員共済組合横須賀共済病院外科

田村 裕子 他

 胃原発のMANECは非常に稀な疾患である。症例①は胃体中部前壁の2型病変であり、術中所見にて肝腫瘍を認めた。胃切除・肝部分切除を行い、Mixed adenoneuroendocrine carcinoma(MANEC)と診断され急激な肝転移再発を来した。症例②は早期病変であり、ESD治療にて切除後、腹腔鏡下にて追加切除とリンパ節郭清を施行した。MANECは術前診断が難しく、腺癌に比較し予後が不良であるとされている。しかし、早期に発見され、良好な予後を得ている症例も散見される。今回胃原発のMANECの切除例を2例経験したので報告する。

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保存的治療で軽快した門脈ガスを伴う広範囲腸管気腫症の1例

りんくう総合医療センター消化器外科

中上 勝一朗 他

 60歳代女性。幽門狭窄を伴う切除不能進行胃癌に対し、化学療法S-1+CDDP(SP療法)を開始した。化学療法開始日から20日目より下痢、嘔吐が出現し脱水の進行も認めたため入院となった。腹部造影CT検査にて食道から胃、小腸の広範囲にわたり壁内ガスを認め、門脈ガスも認め腸管嚢胞様気腫症と診断した。腹部膨満感はあったが、発熱なく腹痛は軽度であったため保存的治療にて経過観察した。第12病日には気腫像は著明に改善し、第35病日に幽門狭窄に対し胃-空腸バイパス術を施行し退院となった。退院後2クール目のSP療法を追加したが腸管嚢胞様気腫症の再燃は認めなかった。
 門脈ガスや腹腔内遊離ガスを伴う腸管嚢胞様気腫症は、消化管穿孔や腸管壊死を強く疑う所見であり緊急手術を第一選択とする。今回われわれは門脈ガスを伴った広範囲腸管嚢胞様気腫症に症例に対し保存的治療で軽快した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

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腹直筋皮弁を用いて閉鎖した術後難治性小腸皮膚瘻の1例

東京都立墨東病院外科

清水 篤志 他

 開腹手術後の合併症として稀に生じる腸管皮膚瘻は、治療に苦慮する病態の1つである。保存的治療困難な小腸皮膚瘻を腹直筋皮弁にて閉鎖した1例を経験した。症例は幽門側胃切除Billroth II法再建の手術既往を有する68歳男性。胆嚢結石症および総胆管結石症の診断で、内視鏡的総胆管結石除去術を行った1か月後に開腹胆嚢摘出術を施行した。腹腔内に高度癒着を認め、癒着剥離時に損傷した小腸を修復した。術翌日に汎発性腹膜炎・敗血症となり再手術を行った。十二指腸穿孔を認め、縫合修復した。術後12日目に正中創が離開し腸液の漏出を認めた。創処置および栄養管理による保存的治療を継続したがhigh-outputの唇状空腸皮膚瘻を形成した。自然閉鎖困難と考え、腸液漏発生100日後に非開腹下に腹直筋皮弁による閉鎖術を行った。その後の経過は良好で3週間後に自宅退院となった。難治性小腸皮膚瘻の治療として本術式は有用な治療選択の1つと考えられた。

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腹腔鏡下に解除した乳糜腹水を伴う絞扼性腸閉塞の1例

東京都立多摩総合医療センター外科

横瀬 翔太 他

 症例は53歳,男性.6ヶ月前に胃癌に対して腹腔鏡下噴門側胃切除術を行った.4日前より持続する心窩部痛,嘔気を主訴に当院救急外来を受診した.腹部造影CTでwhirl signを伴う造影効果不良の拡張した小腸を認めた.絞扼性イレウスの診断となり,緊急で腹腔鏡下イレウス解除術を施行した.腹腔内全体に白濁した乳糜様腹水の貯留を認めた.小腸間膜根部と小腸が癒着し形成された小孔に小腸が捻転しながら嵌頓しており,小腸軸捻転,内ヘルニア嵌頓と診断した.嵌頓した小腸の腸間膜は浮腫状でリンパ管が著明に拡張しており表面は乳白色であった.癒着を剥離し,絞扼を解除すると腸管色調は速やかに改善したため腸管切除は行わなかった.術後経過は良好で術後10病目に退院となった.

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腸閉塞症状で発症し乳糜腹水を呈した原発性小腸軸捻の1例

関東中央病院外科

松本 充生 他

 小腸軸捻転の随伴症状として乳糜腹水を呈する症例は稀である. 今回, 腸閉塞症状で発症し乳糜腹水を呈した原発性小腸軸捻転症の1例を経験したので報告する. 症例は, 69歳, 男性. 突然の上腹部痛を認め, 救急搬送された. 腹部造影CT検査で, whirl signを認め, 小腸間膜の動脈血流は保たれていたが, 上腸間膜静脈の血流が途絶し, 広範な小腸間膜のうっ血を認めた. また, 腹水の貯留も認め, 小腸軸捻転による腸管の血流障害が否定できないため, 緊急腹腔鏡手術を施行した. 腹腔内を観察すると小腸の軸捻転は認めず, 自然に解除されていたが, 上部小腸の腸間膜は白色浮腫状に変化し, 乳糜腹水を認めた. 腸管の不可逆的な虚血の所見はなく, 審査腹腔鏡のみで手術を終了した. 乳糜腹水を呈する腸管の血流障害では, 虚血は軽度で, 腸管切除を必要としないことが多く, 腹腔鏡手術はいい適応であると考えられる.

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妊娠中に再発したLadd手術後中腸軸捻の1例

宇治徳洲会病院外科

長野 心太 他

 妊娠27週5日の32歳女性.心窩部痛と嘔吐を主訴に救急搬送された.腹部単純CT検査で中腸軸捻転症が疑われたため新生児科医および産科医の立ち会いのもと,緊急手術を施行した.トライツ靭帯の形成はなく,上腸間膜動脈を中心として小腸・盲腸・上行結腸が時計回りに360度軸捻転していたため,腸回転異常症に伴う中腸軸捻転症と診断し,捻転を解除した.腸管の虚血性変化は軽度で腸管切除は要さなかった.術後は一過性に子宮収縮を認めたものの,経過良好で術後9日目に退院となった.妊娠中に生じる中腸軸捻転症の報告は非常に少なく,国内では2例目である.母児ともに予後良好に治療しえたので報告する.

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小腸腸間膜粘液性嚢胞腺癌の1例

西陣病院外科

平島 相治 他

 症例は63歳男性.上部直腸癌精査時のCT検査で,腸間膜に長径70mm大の不整形,内部に石灰化を伴い造影効果のある嚢胞性腫瘤を認めた.リンパ管腫,GISTを鑑別診断として,直腸癌手術と同時に嚢腫摘出術を施行した.嚢腫は終末回腸から130cm口側の小腸間膜に不整形の腫瘤として存在し,小腸との連続性は認めなかった.小腸間膜の血管を温存する格好で完全切除は容易であった.摘出した嚢腫は80mm×45mm×25mmで内部には黄色の粘液性物質と透明の漿液性物質が混在していた.病理検査で嚢腫壁に粘液を有する円柱上皮を認め腸間膜粘液性嚢胞腺癌と診断された.腸間膜嚢腫は比較的まれな疾患であり,嚢腫に悪性所見を伴うことはきわめてまれである.我々は上部直腸癌術前に偶然発見された無症候性小腸腸間膜粘液性嚢胞腺癌を経験したので報告する.

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異時性副腎転移を契機に卵管原発と判明した転移性脾弯曲部結腸癌の1例

愛仁会亀田第一病院外科

中平 啓子 他

 原発巣不明の転移性大腸癌切除3年半後に出現した右副腎腫瘍をきっかけに,左卵管が原発巣と判明した症例を報告する.症例:61歳,女性.主訴:発熱と左側腹部痛.CTで脾彎曲部付近に10cm大の充実性腫瘤を認め,炎症をともなう結腸悪性腫瘍の診断で結腸左半切除術を施行.切除標本の免疫染色でCK7 (+),CK20 (-)を示し転移性大腸癌(低分化腺癌)と診断されたが,原発巣は特定されなかった.術後3年半後のCTで右副腎に径7cmの充実性腫瘍が出現.PET-CTでは左卵巣にも1cm大の集積を認めた.右副腎摘出術,両側卵巣および付属器切除術を施行した.いずれも低分化腺癌であったが,免疫染色PAX8が陽性,卵巣関連腫瘍マーカーの上昇を認めたことから左卵管癌原発の同時性右副腎転移および異時性先行性大腸転移と診断した.臨床像が特殊な悪性腫瘍の場合,病理組織検査の慎重な検討と密な経過観察が重要であると思われた.

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脾浸潤により脾膿瘍および脾静脈腫瘍栓をきたした脾彎曲部結腸癌の1例

国立病院機構信州上田医療センター外科

吉澤 隆裕 他

 症例は93歳,女性.3週間前から食欲不振,全身倦怠感あり近医で輸液加療されていた.起き上がり困難になり40℃の発熱も出現したため当院に救急搬送された.血液検査や単純CTにて精査されたが原因は不明であり,内科に入院され抗生剤加療された.入院時に施行した血液培養検査から大腸菌が検出されたため施行した腹部造影CTで,脾弯曲部結腸癌の脾浸潤,脾膿瘍,脾静脈腫瘍栓と診断され同日当科紹介,緊急手術を施行した.脾弯曲部結腸癌は脾臓と一塊となっており,一部左横隔膜まで浸潤していた.脾静脈腫瘍栓を認めたため脾臓摘出術,結腸部分切除術,横隔膜合併切除術に加えて膵体尾部切除術を施行し検体を一塊に摘出,横行結腸で人工肛門を造設した.術後経過は良好であった.結腸癌脾浸潤に伴う脾膿瘍および結腸癌に伴う脾静脈腫瘍栓の報告例は本邦でそれぞれ11例,1例と極めて少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.

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ポリスチレンスルホン酸塩の関与が疑われた反復性S状結腸穿孔の1例

鳥取大学医学部附属病院消化器外科

高橋 朋大 他

 84歳男性,糖尿病性腎不全,高K血症のため,ポリスチレンスルホン酸カルシウム(CPS)の内服あり.左下腹部痛で救急外来を受診した.CT検査でS状結腸周囲に遊離ガス像を認め,S状結腸穿孔による汎発性腹膜炎と診断し,緊急手術となった.術中所見でS状結腸に硬便が露出する母指頭大の穿孔を認め,ハルトマン手術を行った.術後6日目に腹痛の再燃あり,CT検査から人工肛門脚部の再穿孔と診断した.再開腹すると人工肛門の10cm口側結腸に再穿孔を認めた.人工肛門から再穿孔部まで切除し,人工肛門を再造設した.組織学的に穿孔部には炎症性細胞浸潤を伴った好塩基性多角形結晶様異物が析出しており,CPSによる修飾が強く疑われた.CPSを内服している患者の大腸穿孔は慢性腎不全と併存する全身性疾患から致命的となりやすく,再穿孔を回避するために積極的な硬便摘出や腹壁貫通部を大きくとるといった外科的工夫が肝要である.

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3カ所の回腸瘻を形成した直腸S状部癌の1例

馬場記念病院外科

中本 健太郎 他

 症例は68歳、女性。便秘の精査目的で近医にて施行された腹部単純写真、大腸内視鏡検査で直腸S状部の腫瘍と腫瘍による腸閉塞と診断され、当院に紹介となった。腸閉塞に対し経肛門的イレウス管による減圧を行い、また腫瘍部の生検にて直腸S状部癌と診断された。手術所見では腫瘍が回腸の3ヵ所にわたり浸潤しており、開腹高位前方切除術、回腸部分切除術、回腸人工肛門造設術を行った。摘出標本で回腸浸潤部の3ヵ所で瘻孔形成も認めた。最終診断はpT4b(回腸) pN1a cM0 StageⅢcであった。術後補助化学療法を行い、術後1年で無再発生存中である。大腸癌による小腸瘻は比較的稀な病態であり、同時に複数ヵ所の小腸瘻を形成することは極めて稀である。今回、われわれは3ヵ所の回腸瘻を形成した直腸S状部癌の1例を経験したため、若干の文献的考察を加え報告する。

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腹腔鏡下S状結腸癌切除術機能的端々吻合部に生じたblind loop syndromeの1例

がん・感染症センター都立駒込病院大腸外科

小野 智之 他

 症例は82歳男性.S状結腸癌に対し腹腔鏡下S状結腸切除術を施行し,再建は機能的端々吻合を行った.術後経過は良好で特に合併症なく術後第8病日に退院となった.その後外来経過観察中であったが,術後1年3ヶ月後の腹部造影CTから吻合部の嚢状拡張を認め,術後3年7ヶ月に10日前からの便秘と腹部膨満感を主訴に受診.腹部造影CTにて機能的端々吻合部の著明な拡張と口側腸管の便貯留を認め、blind loop syndromeと診断した.禁食,経過観察にて排便を認めたものの症状改善を認めなかったため,吻合部が原因と考え腹腔鏡下吻合部切除術,DST吻合を施行した.Blind loop syndromeは機能的端々吻合の合併症としては稀であるが,留意すべき合併症であり,腸閉塞症状を認める際には手術を検討する必要がある.

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直腸腸間膜に生じた最大径30cmの悪性末梢神経鞘腫の1例

太田西ノ内病院外科

松本  亮 他

 症例は49歳女性、神経線維腫症I型(NF1)と診断されていた。急速に増大した骨盤内巨大腫瘍のため腸閉塞症状を呈し、当科紹介となった。緊急入院とし、入院翌週に後方骨盤内蔵全摘術を行い直腸腸間膜にある300mm×250mm×250mm、2370gの腫瘍を摘出した。病理組織検査でS-100蛋白はびまん性に陽性であり、c-kitとCD34は共に陰性であることから、類上皮型悪性末梢神経鞘腫(eMPNST)と診断した。術後3カ月で腹腔内に多発する再発腫瘍を認め、手術から6カ月後に永眠された。悪性末梢神経鞘腫(MPNST)は悪性軟部腫瘍の5~10%を占める比較的稀な腫瘍であるが、腸間膜に生じることは非常に稀であり本邦での報告も少ない。今回われわれは急激に進行した直腸腸間膜由来のeMPNSTの一例を経験したため、これを報告する。

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肝外発育型単発性肝膿瘍を併発した中分化型肝細胞癌の1例

済生会西条病院外科

伊藤 千尋 他

 肝細胞癌治療に関連して肝膿瘍を発症することは知られているが,治療開始前に肝細胞癌と肝膿瘍が併発する症例は本邦での報告が13例とまれであり,肝細胞癌の診断に難渋することも多い.今回我々は,肝外発育型の単発性肝膿瘍と肝細胞癌が併発した症例を経験した.C型慢性肝炎の治療目的に紹介された70歳代女性で,初診時の腹部CTにて肝外側区域から尾側に突出する内部低吸収領域を伴う腫瘤を認めた.数日後に心窩部痛と発熱を認め入院し,抗菌薬治療で症状は軽快した.画像上も腫瘤が縮小したため肝膿瘍を疑ったが,一部に造影される充実部分が残存していたため肝悪性腫瘍の併存も疑った.肝左葉切除後の病理組織診断で肝膿瘍を併発した肝細胞癌と診断された.文献的考察を加えて報告する.

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組織学的に胆嚢腺筋腫症との関連性が示唆された無症候性胆嚢壁解離の1例

国立病院機構京都医療センター外科

益本 貴人 他

 症例は57歳の男性.2012年頃から健診で胆嚢の壁肥厚を指定されていたが,無症状であり血液検査で異常がないことから経過観察となっていた.2018年に,肝機能異常を契機に診断的治療を勧められ,同年8月に腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.通常の外観を呈する胆嚢を開放したところ,本来の胆嚢と思われた嚢状構造内側壁の一部に管腔構造が付属しており,この管腔構造のみが胆嚢管に連続していた.嚢状構造と管腔構造の間には交通があったと思われ,両者の間には胆汁と思われる淡緑色で混濁した漿液性の液体貯留が観察された.肉眼的には重複胆嚢1)が考えられたが,組織学的には嚢状構造と管腔構造との癒合部だけに通常の胆嚢の全層構造を認め,嚢状構造部には漿膜および漿膜下層だけが観察された.細い管腔構造の諸処に,増生・破綻したRokitansky-Aschoff sinus2)が観察されたことより,胆嚢腺筋腫症を契機に胆嚢壁解離を来したものと推察された

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原発性肝細胞癌の胆嚢転移を契機に発症した急性出血性胆嚢炎の1例

厚生連高岡病院外科

加藤 嘉一郎 他

 症例は78歳男性.門脈および下大静脈への浸潤・腫瘍栓と多発リンパ節転移を伴う肝細胞癌に対し,ソラフェニブ投与にて加療中であった.2日前からの食欲低下,背部痛を主訴に受診し,出血性胆嚢炎と診断して緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.摘出した胆嚢の頚部には内腔に突出する腫瘤があり,これにより閉塞・炎症・出血を来したものと思われた.また,抗血小板剤を内服中であり,出血を助長した可能性が考えられた.胆嚢腫瘤は病理検査にて肝細胞癌の転移であることが判明した.術後は順調に回復し,肝細胞癌の治療を早期に再開しえた.肝細胞癌の胆嚢転移は頻度の高い病態ではないが,さらに出血性胆嚢炎を合併して緊急の対応を要する稀な症例を経験した.

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胆管癌肉腫の1例

上尾中央総合病院外科

岡本 知実 他

 症例は64歳の男性で,黄疸と倦怠感を主訴に当院を受診した.造影CT所見で遠位胆管に25 mmの造影効果の乏しい占拠性病変を認め,ERCP所見で狭窄像を認めた.胆管生検で非上皮性異型細胞を認め,胆管原発性悪性腫瘍の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理学的所見で胆管癌肉腫と診断された.胆管癌肉腫はこれまでに邦文と英文で32例の報告があり極めてまれである.今回われわれは文献学的考察を加え,胆管癌肉腫と胆管癌を比較した.胆管癌肉腫は胆管癌と比較して発症年齢,性別,症状,血液生化学検査値,画像所見で治療前に鑑別することは困難であると考えられた.胆管癌肉腫は胆管癌と比較して予後は不良であり,さらなる報告例の集積により,胆管癌肉腫の診断・治療の標準化が望まれる.

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胆嚢扁平上皮癌の1例

東京医科大学消化器・小児外科学分野

近藤 翔平 他

 症例は66歳,女性.心窩部痛を主訴に近医を受診し,十二指腸に腫瘍性病変を認め当科紹介となった.上部消化管内視鏡検査では十二指腸に潰瘍を伴う隆起性病変を認めた.同部位から行った生検結果はSquamous cell carcinomaであった.腹部造影CTでは胆嚢に腫瘍性病変を認め横行結腸,肝床部,十二指腸への浸潤を認めた.胆嚢癌cT4aN0M0 stageⅣaと診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術+肝S4,5部分切除術+右半結腸切除術+D2リンパ節郭清を施行した.病理組織診断は胆嚢扁平上皮癌であり,腺癌成分は認めなかった.術後補助化学療法は行わず,再発無く経過観察中である.胆嚢癌の組織型は大半が腺癌であり,純粋な扁平上皮癌は稀である.今回われわれは胆嚢扁平上皮癌の一例を経験したので報告する.

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膵・肝転移を切除した右上顎部悪性黒色腫の1例

大阪警察病院外科

門  威志 他

 症例は56歳,女性.2014年に右上顎悪性黒色腫に対し腫瘍切除術を施行した.術後局所再発に対し2度の腫瘍切除とINF-β局所療法を施行した.2018年2月のCTにて膵鈎部に腫瘤を認め,転移を疑った.PETにて膵以外に遠隔転移を疑う集積はなく根治切除可能と判断し膵頭十二指腸切除術(PD)を予定した.開腹時,肝S4表面に2か所の結節を認めたが,他に播種,転移を認めず肉眼的根治切除可能と判断し肝部分切除及びPDを施行した.病理組織診断では悪性黒色腫の膵,肝転移であった.悪性黒色腫の膵転移は予後不良とされているが,近年では抗PD-1抗体の有効性が報告されており,手術と化学療法を組み合わせることで長期生存が得られたとの報告もある.本例でも術後より化学療法を導入し,術後2年が経過した現在も生存中である.本例のように膵・肝に転移があっても完全切除可能と判断出来る症例では、切除を行い化学療法を追加することが予後改善につながる可能性がある.

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腹腔鏡下左副腎摘除術を行った膵体尾部欠損症合併左副腎腫瘍の1例

労働者健康安全機構旭労災病院外科

中川 陽史 他

 症例は64歳男性で増大傾向を認める左副腎腫瘍に対して手術目的で当科紹介となった.腹部造影 CT で左上腹部に50mm大の比較的境界明瞭な腫瘤を認めた.膵は頭部のみ描出され体尾部を認めず膵体尾部欠損症と診断した.腹腔鏡下左副腎摘除術を計画するにあたり比較的大きな副腎腫瘍に対して通常側方到達法を選択するが,脾臓授動時に脾動静脈の屈曲による還流障害が生じる可能性を否定できず前方到達法を選択した.手術所見として副腎腫瘍の認識,視野確保および脾動静脈を含む周囲との剥離は比較的容易に遂行することが可能であった.膵体尾部欠損症合併左副腎腫瘍に対する腹腔鏡下手術の到達法として腫瘍径が比較的大きい場合においても経腹的前方到達法は妥当であると考えられた.

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双茎皮弁で閉腹した腹部コンパートメント症候群合併急性膵炎の2例

市立釧路総合病院外科

宮崎  大 他

 症例1は78歳の女性.胆石性膵炎の診断で当院に救急搬送され,入院翌日に腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome: 以下ACS)を発症し開腹減圧術を施行した.術後14日目に胆嚢摘出および両側腹部の双茎皮弁を正中に移動することで腹壁形成術を行い閉腹した.症例2は39歳のロシア人男性.重症急性膵炎の診断で当院に救急搬送され,入院翌日にACSを発症し開腹減圧術を施行した.術後52日目に同様な方法で腹壁形成術を行い閉腹した.ACSに対するopen abdominal management後の閉腹は腹壁の離開が大きいと困難となるが,本法を用いれば対応可能である.

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腹腔鏡下瘻孔切除術を行った先天性恥骨前瘻孔の1例

気仙沼市立病院外科

武田 哲人 他

 症例は38歳女性。幼少期から年に数回、下腹部から浸出液の流出と疼痛を認めていた。初診時、臍下部7 cmに瘻孔を認めたが、感染兆候は認めなかった。C T検査では、皮膚瘻は腹腔内に連続し正中臍索と連続していた。尿膜管遺残との関連の可能性も考え、臍から膀胱までの正中臍索と瘻孔とを腹腔鏡下に切除した。術中所見では、正中臍索と連続した索状物は白線を貫き皮膚瘻に繋がっていた。病理組織学的所見では、正中臍索から瘻孔深部にかけての内腔は、平滑筋に覆われた尿路上皮であったが、皮膚瘻開口部付近では角化層を有する重層扁平上皮に移行していた。術後経過良好で、1年を経過した現在、再発を認めていない。

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急性陰嚢症を契機に発見された大網原発デスモイド腫瘍の1例

国立病院機構仙台医療センター外科

齋藤 雄佑 他

 症例は23歳, 男性. 起床時に左鼠径部から陰嚢にかけての痛みが出現し, 徐々に疼痛と陰嚢腫大が増悪してきたため, 当院に救急搬送された. 腹部CT検査で左外鼠径ヘルニアを認め, ヘルニア嚢内に大網と径65mmの充実性腫瘤を認めた. また陰嚢超音波検査にて左精巣捻転も疑われたため緊急手術を施行した.
  陰嚢縫線を切開して精巣鞘膜を開くと, 鞘膜内に大網と連続した腫瘍を認めた. 左精管と左精巣動静脈が大網と共に720°捻転し, 左精巣の色調不良を認めた. 捻転解除後, 色調は改善したため左精巣は温存した. 大網を結紮処理して腫瘍を摘出した後, 前方アプローチでUltraPro® Hernia Systemを用いたヘルニア修復術を行った. 摘出標本は95×60×60mmの充実性腫瘍で, 病理組織検査では大網原発デスモイド腫瘍と診断された. 今回われわれは急性陰嚢症を契機に発見された比較的稀な疾患である大網原発デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する.

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22歳に発症した原発性後腹膜膿瘍の1例

宗像水光会総合病院外科

白水 良征 他

 症例は22歳男性, 2週間前から発熱と右側腹部痛を認め近医受診し抗生剤処方されたが, 症状改善ないため当院へ紹介となる. 腹部造影CTにて後腹膜にガス像を伴う長径65mmの低吸収域を認め, 後腹膜膿瘍と診断した. 膿瘍の原因疾患となるような尿路感染, 虫垂炎, 憩室炎, 膵炎などは認めなかったため, 原発性後腹膜膿瘍と診断し, 超音波ガイド下に経皮的ドレナージ術を施行した. 抗生剤投与とドレナージ施行後, 第8病日のCTにて膿瘍腔は消失し, 第10病日にドレーンを抜去, 第13病日に自宅退院となった. 基礎疾患のない若年者に発症した原発性後腹膜膿瘍は稀な病態であり, 経皮的ドレナージで治癒した1例を経験したので報告する.

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腹腔鏡手術を行った下行結腸嵌頓を伴う左上腰ヘルニアの1例

石川勤労者医療協会城北病院外科

古田 浩之 他

 今回我々は上腰ヘルニア嵌頓による腸閉塞に対して腹腔鏡下嵌頓整復及び上腰ヘルニア修復術を行った症例を経験したため報告する.症例は95歳女性で腹痛のため近医を受診し,腸閉塞の診断にて当院紹介受診された. 左腰背部に約10cm大の膨隆を認め,腹部CT検査で下行結腸の左上腰ヘルニア嵌頓による腸閉塞の診断となり,用手的還納できず手術の方針となった.全身麻酔下に右半側臥位,3ポートの腹腔内アプローチによる腹腔鏡手術を行った.下行結腸を受動,牽引し体外から用手圧迫併用にて腹腔内に脱出臓器を還納した.ヘルニア門を全周性に確認,周囲約3cm程度追加剥離し,円形メッシュを留置,ダブルクラウン法にて固定し,手術終了した.上腰ヘルニアはまれであり,鏡視下手術の報告は少なく,腹腔内アプローチ,腹膜外アプローチなど報告があるが,どの術式が適しているかは決まっていない.若干の文献的考察を加え報告する.

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