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日本臨床外科学会雑誌 第81巻5号 掲載予定論文 和文抄録


臨床経験

中心静脈ポート造設時のリアルタイムエコーガイド下内頸静脈穿刺の有用性

厚生連村上綜合病院外科

大渓 隆弘 他

 目的:中心静脈ポート(CVポート)造設時のリアルタイムエコーガイド下(リアルタイム法)内頸静脈穿刺の有用性を検討した.
 方法:2010年1月から2019年12月までに当院でCVポート造設を施行した173例を対象とした.リアルタイム法による内頸静脈穿刺92例(内頸群)とランドマーク法による鎖骨下静脈穿刺81例(鎖骨下群)に分け,臨床所見と合併症を比較検討した.
 結果:内頸群で右側穿刺が多く(P < 0.01),手術時間が長かった(P < 0.01).鎖骨下群で手術時合併症が6例(7%)に認められたが(気胸/動脈穿刺/穿刺困難:3/1/2例),内頸群では認められず,有意に少なかった(P < 0.01).内頸群の方が観察期間は短いものの(P < 0.01),術後合併症も有意に少なかった(P = 0.024).
 結語:CVポート造設時のリアルタイム法による内頸静脈穿刺は手術時合併症を減らし,術後合併症も減らす可能性がある.

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症例

著明な腹腔内遊離ガスを伴った食道癌術後自然気胸の1例

岐阜大学腫瘍外科

畑中 勇治 他

 症例は74歳男性.食道癌に対しESD後追加切除として胸腔鏡下食道亜全摘術,後縦隔経路亜全胃再建の既往あり.術後2年目に感冒症状ありかかりつけ医受診した.胸部X線で横隔膜下に腹腔内遊離ガスが指摘され当院紹介受診した.CTにて右気胸,腹腔内遊離ガスを認めた.消化管穿孔部は同定し得なかった.上部消化管内視鏡検査を行ったが,上部消化管穿孔は認めなかった.試験開腹術も考慮されたが,腹膜刺激症状,炎症所見は認めず,病歴および画像検査,内視鏡検査所見から右自然気胸が経裂孔的に腹腔内に広がったことによる腹腔内遊離ガスと考えられた.同日緊急入院の上,絶食と補液での保存的加療の方針とした.入院後,気胸や腹腔内遊離ガスの増大は認めず,入院7日目に退院となった.検索の範囲では,同様の本邦報告例を2例のみであり,いずれの症例も術前の病態の把握により不必要な外科的治療を避けることができている.考察を加えて報告する.

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摘出手術後にGood症候群をきたした胸腺腫の1例

愛媛県立中央病院呼吸器外科

安達 剛弘 他

 症例は67歳女性。2017年3月に胸腺腫に対して拡大胸腺摘出術を施行された。最終病理結果はtype AB胸腺腫であった。術後1年頃から気道感染症状を繰り返していたが2019年2月に肺炎を発症し低ガンマグロブリン血症が判明し、Good症候群と診断された。低ガンマグロブリン血症に対して免疫グロブリン投与とマクロライド維持療法を継続され外来通院中である。Good症候群は胸腺腫に低ガンマグロブリン血症を合併した比較的稀な疾患である。明らかな病態は解明されておらず繰り返す感染症により予後不良とされる。手術を含めた治療についてもその有効性は議論されており症例の蓄積が必要と思われる。

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術前化学療法中に腫瘍壊死穿通に伴う切迫破裂をきたした胃GISTの1例

堺市立総合医療センター外科

加藤 一哉 他

 症例は64歳男性. 上腹部の膨満感が持続するため近医を受診, 腹部エコー検査にて腹部腫瘤を指摘され当院紹介となった. 上部消化管内視鏡検査では残胃の噴門下前壁に多発潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認め, 生検結果からGISTと診断された. CTでは左上腹部に長径20cmの腫瘤を認め周囲臓器への浸潤も疑われた. 術前化学療法の方針とし, イマチニブ400mg/day投与を開始した. 投与開始19日目のCTでは腫瘍壊死と胃内腔への穿通が認められ, 切迫破裂の危険性が高いと判断し緊急手術を施行した. 術中所見では腫瘍破裂は確認されなかったが, 肝左葉, 横隔膜, 脾臓, 膵尾部との癒着が強固であり, 合併切除となった. 術後経過は良好で術後11日目に軽快退院となった. GISTに対する術前化学療法は完全切除につながるため有用と思われるが, 重篤な合併症も生じ得るので慎重に経過観察すべきである.

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胃蜂窩織炎反復後の胃異所性膵癌の1例

済生会福岡総合病院外科

長野 太智 他

 症例は50歳代女性.19年前に発熱, 腹痛を認め, 精査にて胃前庭部の壁肥厚, 嚢胞形成を伴う粘膜下腫瘍様病変が認められ, 胃蜂窩織炎として保存的治療を行い, その後同様の病態を7回繰り返しいずれも保存的治療にて軽快していた.1ヶ月前より食欲低下, 腹痛出現し, 上部消化管内視鏡検査で胃前庭部の粘膜下腫瘍様病変が増大し, CTで大網にも腫瘤を認め, 悪性腫瘍を疑い手術を施行した.術中所見は腹膜播種を有する胃癌と考えられ, 幽門狭窄回避目的に幽門側胃切除術を施行した.術後病理組織検査は粘膜下腫瘍様胃癌の組織型は粘液癌で, 腫瘍内にラ氏島の痕跡を認め, 異所性膵由来の粘液癌が示唆された.本症例は異所性膵が臨床的に繰り返す胃蜂窩織炎の原因で, また長い経過の中で胃癌を発症したと推察された.胃粘膜下腫瘍は確定診断が困難な場合が多く, 長い経過の中で癌化の可能性を考慮したより慎重な経過観察が必要であったと考えられた.

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急激な経過をたどったG-CSF産生多発胃癌の1例

静岡市立清水病院外科

小圷  徹 他

 症例は78歳の男性で, 食思不振を主訴に来院された. 上部消化管内視鏡検査で胃体下部前壁に1型胃癌を認め, 生検で低分化型腺癌と診断された. 術前白血球数は34,700 /μLと高値を示した. G-CSF産生胃癌(cT4aN2M0, StageⅢ)を疑い, 幽門側胃切除術を施行した. 病理組織学的所見は1型胃癌(por1>tub1, SE, N3a, M0, CY0)と0-Ⅱc型胃癌(tub1, M, N0, M0)の多発胃癌でpT4aN3aM0, StageⅢBであった. 免疫組織染色検査で抗G-CSF抗体に陽性を示しG-CSF産生多発胃癌と診断した. 術後, 速やかに白血球数は正常化したが術後76日目に白血球数が50,100/μLと再上昇し, 造影CTで局所再発を認めた. 急激な病状悪化により術後84日目に永眠された. 急激な経過を辿ったG-CSF産生多発胃癌の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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CMV腸炎に続発したCPSによる出血性回盲部炎の1例

東京都健康長寿医療センター外科

三井 秀雄 他

 症例は60歳の男性。サイトメガロウイルス(以下CMV) 腸炎の治療後経過観察中であったが、貧血を主訴に当院紹介となった。下部消化管内視鏡検査にて回盲部に粘膜発赤、浮腫及び潰瘍を認めた。生検の結果CMV抗原陽性細胞は認めず、好塩基性無構造物の沈着を粘膜固有層内に認めた。患者はポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate :以下,CPS)を内服中であった。CMV腸炎再燃を考え抗ウイルス薬投与再開すると共にCPSを中止しとし保存的治療開始した。しかし出血を伴う腸炎は改善せず最終的に腹腔鏡補助下回盲部切除施行した。術後経過良好で貧血も改善し術後10病日にて退院となった。病理組織学的検査で回腸及び盲腸にびらん、潰瘍認め、粘膜から筋層内に好塩基性無構造物の沈着を認めた。核内封入体やCMV抗原陽性細胞は認められず、CMV腸炎に続発したCPSによる出血性腸炎と診断した。

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横行結腸の虚血性腸炎が先行した小腸非閉塞性腸管虚血症の1例

みやぎ県南中核病院外科

秋重 尚貴 他

 症例は86歳,男性.20XX年7月(2週間前)に腹痛と血便が出現し,横行結腸の虚血性腸炎(ischemic colitis:以下ICと略記)と診断され,当院消化器内科で9日間の入院加療を行った.退院6日後,強い腹痛を主訴に救急外来を受診した.身体所見上明らかな腹膜刺激症状を認めなかったが,腹部造影CT検査で小腸と大腸の広範な拡張と門脈気腫像,および小腸の造影不良と腸管気腫像を認めたため,非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia:以下NOMIと略記)を疑い,緊急手術を施行した.開腹所見ではTreitz靱帯から270cm肛門側の小腸が150cmにわたり非連続性の腸管壊死に陥っており,壊死部の小腸部分切除および機能的端々吻合術を行った.術後経過良好であり,術後23病日に転院し,その後2年1ヶ月,再発なく経過している.本症例では上腸間膜動脈の支配領域である横行結腸と回腸に短期間で異時性にICとNOMIを発症した.右側型ICは左側型ICと比較して予後不良と言われているが,快復期間中に異時性の腸管虚血を発症する場合もあるので,慎重に診断,治療,経過観察を行う必要がある.

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上腸間膜動脈閉塞症に対する血栓摘除後に発症した蛋白漏出性胃腸症の1例

砂川市立病院消化器外科・緩和ケア外科・乳腺外科

石川 倫啓 他

 症例は74歳女性で突然の激しい腹痛を主訴に来院.上腸間膜動脈閉塞症と診断し緊急手術を施行.広範囲に虚血を認めたが,腸管壊死はないと判断し血栓摘除のみを行い,翌日second-look operationを施行.腸管壊死はなく腸管温存した.術後間欠的な腹痛と下痢を繰り返し,低アルブミン血症と全身浮腫が進行した.約3か月間の保存的治療では改善せず,腹部造影CTで上部空腸の浮腫と造影の不整を認め,蛋白漏出シンチグラムで同部位に一致した集積があり,蛋白漏出性胃腸症と診断,再々手術を行った.審査腹腔鏡でTreitz靭帯より20cmの小腸の壁肥厚と暗赤色調変化を認め,腹腔鏡で切除断端から観察すると,漿膜面の変化より広範囲に潰瘍と狭窄を認め,追加切除と合わせて計60cm切除した.術後は腹部症状なく,血清アルブミン値の上昇を認めた.上腸間膜動脈閉塞症で血栓摘除後の温存腸管に蛋白漏出性胃腸症を併発し,切除範囲の決定に術中内視鏡が有用だった1例を経験した.

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成人小腸軸捻の3例

新宮市立医療センター外科

中村 匡視 他

 症例1. 57歳男性, 心窩部痛と嘔気で救急受診. CTで上腸間膜動脈を中心として腸間膜が渦を巻く所見 (whirl sign) を認め, 絞扼性イレウスを疑い開腹下に緊急手術を施行した. 小腸間膜全体の捻転を認めたが腸管壊死はなく, 捻転解除のみ行った. 症例2. 92歳男性, 腹痛と嘔気で救急受診. CTでwhirl signと一部小腸の造影不良, 腹水を認めた. 絞扼性イレウスの診断で開腹下に緊急手術を施行した. 小腸間膜の捻転を認めたが腸管壊死はなく, 捻転解除のみ行った. 症例3. 81歳男性, 嘔気・嘔吐で救急受診. CTでwhirl signと小腸間膜全体の浮腫状変化と腹水を認め, 小腸軸捻及び絞扼性イレウスを疑い腹腔鏡下に緊急手術を施行した. S状結腸と大網の癒着部を起点として小腸間膜が1080度回転していたが腸管壊死はなく, 癒着剥離術及び捻転解除を行った. 成人発症の小腸軸捻は比較的稀な疾患である. 捻転解除のみで改善し得た成人小腸軸捻を3例経験したので報告する.

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Aeromonas hydrophilaによる小腸壊死の1例

福井県立病院外科

木戸口 勇気 他

 症例は64歳の男性で、既往に糖尿病、高血圧、陳旧性心筋梗塞を有していた。2017年9月、心窩部痛、嘔吐、水様便を主訴に当院を受診した。腹部造影CTでは軽度の小腸拡張を認めるのみであった。経過より感染性腸炎が疑われ、経過観察目的に入院となった。第3病日、腹痛が増悪し、血液検査ではCRP 50.6mg/dlと炎症反応高値を認め、腹部造影CTでは小腸に限局した壊死を認め、小腸壊死に伴う汎発性腹膜炎と診断した。緊急開腹手術を行ったところ、回腸末端より20cm口側の回腸が15cmに渡り壊死していた。壊死腸管を切除し、機能的端々吻合にて再建し、手術終了とした。後日、便培養にてAeromonas hydrophila(以下A.H.)を検出し、A.H.を起因菌とした感染性腸炎と診断した。術後経過は問題なく、術後15日目に退院した。A.H.感染例の中には、少なからず感染が重篤化する症例が報告されている。今回、A.H.による感染性腸炎から小腸壊死をきたし、手術により救命した1例を経験したので報告する。

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家族性大腸腺腫症に対する大腸全摘術23年後の人工肛門に生じた回腸癌の1例

獨協医科大学第2外科

西  雄介 他

 患者は56歳男性。33歳時に家族性大腸腺腫症の診断で大腸全摘術と回腸人工肛門造設術を施行されている。52歳時に回腸人工肛門に生じた腺腫性病変の切除術を行い回腸癌の診断となった。今回、同部位に腫瘍の再発、増大を認め腹壁合併切除を伴う腫瘍切除術を施行した。その後、腹壁と右鼠径部リンパ節に再発を認めたため大腸癌に準じた化学療法を施行したが、最終的に脳幹転移が原因で63歳時に死亡した。本症例は家族性大腸腺腫症での大腸全摘術後の回腸に生じた癌腫であり、長期的なサーベイランスの意義を再認識させる症例であった。

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小児虫垂神経内分泌腫瘍の1例

神戸市立西神戸医療センター外科・消化器外科

森  彩 他

 虫垂神経内分泌腫瘍について膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン(第2版)では腫瘍径が2 cm以上もしくはリスク因子あり(脈管侵襲あり、G2以上、虫垂間膜への浸潤ありのずれか)の症例において回盲部切除術が推奨されている。しかし小児に限った症例での検討は少なく一定の見解が無い。
 虫垂炎を契機に診断された小児虫垂神経内分泌腫瘍の1例を経験したので報告する。患者は12歳女児、右下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した。造影CTで腫大した虫垂を認め、急性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を行った。病理組織診断で虫垂根部にsynaptophsin(+)/chromogranin A(+)の腫瘍を認め、虫垂神経内分泌腫瘍 G1と診断された。腫瘍は切除断端陽性であり、追加治療として腹腔鏡下回盲部切除術を行った。現在再発・転移所見無く経過観察中である。

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腹腔鏡下に摘出した歯科治療中の誤飲による上行結腸内異物の1例

昭和大学横浜市北部病院消化器センター

栗原 亜梨沙 他

 症例は44歳男性.5日前に歯科治療中に歯科器具(ピーソ-リーマ-)を誤飲し経過観察していたが,歯科医師に促され当院を受診した.自覚症状はなく,腹部X線検査で右下腹部に4cm長の鋭利な異物を認めた.腹部単純CT検査で上行結腸起始部に異物を認めたが,腸管の穿孔や膿瘍形成は認めなかった.2日後の腹部X線検査を施行したところ前回と異物の移動がないことから,腸管穿孔が生じる可能性を考慮して手術の方針とした.手術は腹腔鏡手術で行った.腹腔内には膿瘍や腹水はなく,盲腸に突起状の隆起を認め,術中にX線透視を併用し異物部位を確認した.異物先端に接する腸管を鏡視下手術用剪刀で1cm切開し異物を体外へ摘出し,切開部位は腹腔内結紮で仮閉鎖した後に自動縫合機で閉鎖した.術後経過は良好で術後5日目に退院した.今回,歯科治療中の誤飲による上行結腸内異物を腹腔鏡下手術で回収し得た1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.

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腹腔鏡下に切除した上行結腸MALTリンパ腫の1例

多摩南部地域病院外科

林  隆広 他

 症例は77歳女性,近医下部消化管内視鏡検査にて,上行結腸に腫瘤を認め,精査のため当院受診となった.精査にて,上行結腸に4㎝大の粘膜下腫瘤を認め,生検では,MALTリンパ腫疑いであったため,PET-CT検査を行い遠隔転移がないことを確認した.診断的治療として腹腔鏡下結腸右半切除を施行した.病理組織学所見は,形質細胞分化を伴った小型から中型の異型なリンパ細胞と核内封入体を認め,免疫染色は,CD79a陽性で,CD3,CD5,CD10,cyclinD1はいずれも陰性でありLugano分類Ⅱ-1期の上行結腸MALTリンパ腫と診断した.追加治療としてHelicobacter pylori除菌療法を行い,術後3年再発所見は認めていない.大腸MALTリンパ腫に対する腹腔鏡下手術は,根治的かつ低侵襲な治療法と考えられた.

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NET G2と腺癌が混在した直腸MiNENの1例

東京医科大学消化器小児外科学分野

笠原 健大 他

 症例は70歳男性.胃癌術前の下部消化管内視鏡にて偶発的に直腸に腫瘍を指摘され,生検を施行したところmixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm (以下MiNEN)が疑われた同腫瘍に対して内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した.病理所見は垂直断端陽性,深達度sm1050μm以上,腺癌及びG2相当のneuroendocrine neoplasm(以下NEN)が混在するMiNENの診断となった. その後根治手術を施行したところ,腫瘍の遺残及びリンパ節転移は確認されなかった.MiNENは過去にMixed adeno-neuroendocrine carcinoma(以下MANEC)と同じ疾患概念であり,多くはneuroendocrine tumor(以下NET)G3に相当する高悪性度のNETと腺癌の混在する予後不良な疾患群であった。2019年の本邦の規約においてNETはNENに,MANECはMiNENに呼称が変更となっている.今回我々は低悪性度(G2)のNENが混在するMiNENを経験したので報告する.

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側方リンパ節転移を認めた脈管侵襲陰性の直腸SM癌の1例

福岡大学医学部外科学講座消化器外科

橋本 恭弘 他

 症例は66歳の男性で,便潜血陽性精査の下部消化管内視鏡検査で直腸Rb左壁に20mm大の0-IIa+IIc病変を認めた.通常光観察で襞の集中,NBI観察では表面構造が消失し,微小血管構造が不整であった.超音波内視鏡検査では,腫瘍エコーによる3層への塊状浸潤を認め,SM深部浸潤の診断であった.骨盤MRI検査で左閉鎖領域に長径10mmのリンパ節腫大と拡散強調画像で高信号を認めたため,左側方リンパ節転移陽性と判断した.T1bN3M0 cStageⅢbの診断で腹腔鏡下括約筋間直腸切除術,左側方リンパ節郭清,回腸人工肛門造設を施行した.経過良好で術後16日目に退院となった.病理結果では,pT1b(1750μm), ly0, v0, sprouting(-), N3[(#251(1/4),#283(2/4) ],pStageⅢbであった.術後補助化学療法としてCapeOX療法を開始し,経過観察中である.

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腹腔鏡下に肝切除したDAA治療後肝原発悪性リンパ腫の1例

上尾中央総合病院外科

船水 尚武 他

 症例は72歳の女性.C型慢性肝炎に対して当院消化器内科でDirect acting antivirals(DAA)治療によりSustained virological response(SVR)が得られた.SVRから10ヶ月後,フォローアップのCTで肝右葉に35㎜大の肝腫瘍を指摘された.画像所見で診断がつかず,その2か月後に切除目的で当科紹介となった.紹介時のCTでは腫瘍は急速に増大し65㎜大へ増大していた.腹腔鏡下肝S5・6の亜区域切除術を施行し,合併症なく術後7日目に退院となった.病理学的に異形円型リンパ球のびまん性増殖を認め,かつCD3染色陰性,CD20染色陽性を示した.以上の所見より,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫と診断した.DAA治療後に診断に苦慮した肝腫瘍に腹腔鏡下肝亜区域切除を施行した1例を経験した.肝原発悪性リンパ腫は稀であり,文献的考察を加えて報告する.

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腹腔鏡下にbarbed suture糸で胆嚢頸部断端を処理した合流部結石の1例

厚生連高岡病院外科

加藤 嘉一郎 他

 CorletteⅡ型を来した慢性胆嚢炎症例に対し,腹腔鏡下で胆嚢を亜全摘した胆嚢頚部をbarbed suture糸(V-LocTM Covidien社)を用い縫合閉鎖した.縫合後は胆汁漏,その他胆管閉塞・狭窄なく経過した.
 急性期および慢性期の腹腔鏡下胆嚢亜全摘出術において頚部処理にbarbed suture糸を用い縫合することは状況に応じて選択しうる手技と考えられた.体腔内で結紮を行うことによる弊害がないという利点があるものの,縫合自体が修練を要する手技であること,barbed suture糸は縫い直しがきかないため局所の損傷や周辺の胆道・脈管等への誤操作を生じると修復が極めて困難になると考えられることから,その適用には慎重な検討が必要と思われた.また短期的な問題はないと考えられたが,長期的な適否に関しては今後の症例の蓄積,観察が必要であると考えられた.

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胆管空腸吻合に至ったStanford A大動脈解離術後胆嚢壊死の1例

康生会武田病院外科

古元 克好 他

 症例は77歳、男性。Stanford A型大動脈解離に対して血管置換術後1か月で発熱があり、胆嚢穿孔・周囲膿瘍と診断された。胆嚢は壊死し周囲に胆汁が貯留した無石壊疽性胆嚢炎であった。胆嚢摘出、腹腔ドレナージ後2日目、腹腔ドレーンより胆汁がみられた。ENBDチューブ造影で膵内胆管から造影剤の流出があり胆管壊死と診断した。ERBDチューブに交換し3日後、ドレーン排液が血性となり仮性動脈瘤の診断でコイル塞栓を行った。ドレーンは術後2か月で抜去したがその2か月後発熱があり胆管結石を認めた。コイル部の胆管狭窄で採石できずERBDチューブを入れ替えたが、2度のERBDチューブ閉塞、胆管炎を生じたため、腹腔ドレーン抜去4か月後に胆管空腸吻合を行った。大動脈解離に伴う臓器壊死の報告はあるが、文献検索でStanford A型解離術後の胆嚢壊死の報告はなかった。大動脈解離術後のまれな胆嚢壊死に胆管壊死、仮性動脈瘤破裂、胆管狭窄による胆管結石を生じて胆管空腸吻合を要した症例を報告する。

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胆嚢捻転症の4例

八尾市立病院外科

今村 宏輝 他

 胆嚢捻転症は頻度は非常に少ないが緊急手術を要する疾患である。当院では2012年から2019年に4例の胆嚢捻転症を経験した。症例1:88歳女性。胸背部痛を主訴に当院を受診。胆嚢捻転症の診断で同日腹腔鏡下胆嚢摘出術(Laparoscopic cholecystectomy:以下LCと略)を施行。症例2:90歳、女性。右下腹部痛を主訴に当院を受診。胆嚢捻転症の診断で同日LCを施行。症例3:83歳、女性。腹痛を主訴に当院を受診。急性胆嚢炎の術前診断で同日LCを施行。術中所見にて胆嚢捻転症の診断となった。症例4:47歳、男性。心窩部痛を主訴に当院を受診。胆嚢捻転症の診断で同日LCを施行した。今回我々が経験した胆嚢捻転症4例に本邦での報告216例も加えて検討すると、胆嚢捻転症に対するLCの割合およびその術前正診率は直近10年間(2010~2019年)で57.7%および70%であり、CTにて特徴的な所見を追求することで術前正診率を上昇させることができると考えられた。

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反復性膵炎に対し膵頭十二指腸切除術を行った膵管癒合不全の1例

大垣市民病院外科

三品 拓也 他

 症例は41歳男性.2010年に膵管癒合不全に伴う膵炎と診断され内視鏡的副乳管切開を施行した.2018年3月重症壊死性膵炎を発症し,他院で治療後経過観察目的に2018年8月に当院紹介となった.その後も膵炎,胆管狭窄に伴う胆管炎,仮性膵嚢胞を発症し,2018年9月から10月にかけて内視鏡下にドレナージ,ステントの挿入・交換を繰り返し施行した.2018年12月,内科的治療の限界と考え,反復性膵炎に対し膵頭十二指腸切除術を施行した.広範な炎症に伴う線維化を認め,手術時間は427分,出血量は3570mL,赤血球濃厚液8単位の輸血を要した.術後は膵液瘻(ISGPF Grade B)を認めたが軽快退院した.その後11ヵ月で一度軽症膵炎(造影CT Grade 1,予後因子スコア:0点)を発症したが保存治療のみで改善している.膵管癒合不全に伴う反復性膵炎に対して,外科的治療も一つの選択肢と考えた.

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膵管走行を術前に把握し膵頭十二指腸切除術を行ったⅠ型門脈輪状膵の1例

札幌医科大学消化器・総合,乳腺・内分泌外科

吉田 瑛司 他

 症例は69歳の男性。糖尿病にて前医通院中に胆管拡張を指摘され、当院へ紹介となり、遠位胆管癌(cT1aN0M0, Stage ⅠA)と診断された。術前CT所見では、門脈は膵実質に囲まれ、主膵管(Wirsung管)は門脈の背側を、副膵管(Santrini管)は門脈腹側を走行しており、Ⅰ型門脈輪状膵と考えられた。遠位胆管癌に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術中、膵頭部を門脈系から分離するために門脈腹側の膵実質を切離し、副膵管が同定された。膵頭部切除のため、膵床の授動を尾側に進め、門脈輪状膵癒合部尾側の膵体部を切離し、主膵管を含んだ一面の膵切離端とした。術中所見はⅠ型門脈輪状膵に矛盾しない所見であった。残膵再建はBlumgart変法による膵管空腸吻合にて施行した。術後は膵液瘻等の合併症なく経過し、術後9ヶ月無再発生存中である。

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膵頭十二指腸切除術を行った稀な動脈走行変異を伴う膵頭部癌の1例

関東中央病院外科

浅川 愛里 他

 症例は72歳,男性.肝機能障害を主訴に当院紹介受診となった.造影CTにて膵頭部に主膵管,総胆管の拡張を伴う15×10mm大の不整形,乏血性の腫瘤を認め膵頭部癌と診断した.術前の画像評価において,上腸間膜動脈から総肝動脈と置換右肝動脈が別個に分岐し,さらに置換右肝動脈から第一空腸動脈と下膵十二指腸動脈の共通幹が分岐していることが確認された. 非常に特異な動脈変異を伴う膵頭部癌と考えて,置換右肝動脈より分岐する下膵十二指腸動脈を処理し,肝動脈血流を損なうことなく亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後3か月の造影CTにて温存した置換右肝動脈の血流は維持されていた.今回我々は, Adachi分類やMichels分類などの国際的な分類に記載のない,極めて稀な動脈の分岐走行変異を伴う膵頭部癌に対し, Multi detector row CT(以下, MDCT)により術前に血管の分岐走行を把握し,臓器血流を損なうことなく安全に膵頭十二指腸切除術を施行し得た.若干の文献的考察を加えて報告する.

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脾臓に発生し短期間に増大を認めたchronic expanding hematomaの1例

JA岐阜厚生連中濃厚生病院外科

武田 洋平 他

 症例は79歳,女性.食欲不振、全身倦怠感の精査で脾臓に直径26㎜の腫瘍を指摘された.造影CTでは脾臓内に不均一な造影効果を伴う境界不明瞭な腫瘤を認めたが,PET-CTでは集積が乏しく患者希望もあって経過観察となった.その後 腫瘍は増大を認め,PET-CTでも集積が亢進したことから手術を施行した.腫瘍は白色・弾性軟であり周囲への浸潤所見はなく,脾摘術を施行した.病理組織学的検査で腫瘍性変化を示唆する所見はみられず,脾臓中心部に広範な壊死および出血を認め脾臓原発の慢性拡張型血腫(chronic expanding hematoma;以下,CEH)と診断した.CEHは慢性的に増大する血腫に対して提唱された概念で,脾臓原発は極めて稀である�

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前方後方components separation法で修復した20cm大の腹壁瘢痕ヘルニアの1例

九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科

松吉 隆仁 他

 症例は45歳女性.3年前に穿孔性腹膜炎に対してハルトマン手術を受け,後にストーマ閉鎖術を受けた.正中創,ストーマ閉鎖部に巨大な腹壁瘢痕ヘルニアを認め,加療目的に当科を紹介となった.CTでは正中に20x15cm,左側腹部に10x8cmのヘルニア門を認め,小腸と膀胱の脱出を認めた.前方・後方components separation(CS)法と meshのsublay留置法による腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した.子宮筋腫で子宮が腫大し腹腔内容を圧排していたため,子宮単純摘出術も同時施行した.腹直筋鞘後葉(以下後鞘)を剥離後に横筋筋膜付着部近傍を切離し, 後方CS法を行った.後鞘を閉鎖後に腹直筋背側の後鞘前面にpolypropylene meshを留置し固定した.外腹斜筋を腱膜付着部近傍で切離し内外腹斜筋間を剥離し,前方CS法を行った.術後合併症は認めず,再発無く術後半年経過した.巨大な腹壁瘢痕ヘルニアは再発率が高く,腹壁の緊張を軽減する前方・後方CS法とmeshによる補強は再発リスクを軽減しうる有用な修復法と考えられた.

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腎移植後の移植側内鼠径ヘルニアの1例

鹿児島市立病院消化器外科

永田 祐貴 他

 症例は53歳の男性. 38歳時に慢性腎不全に対して生体腎移植が施行されている.10ヶ月前から右鼠径部の膨隆を自覚し, 歩行時の疼痛も出現してきたため当科を受診. 右鼠径ヘルニアと診断した. 腹部CTでは移植尿管が鼠径管背側の近傍を走行しているのが確認された. 手術はLichtenstein法を施行し, 合併症なく術後5日目に退院した. 腎移植後の移植側鼠径ヘルニアでは移植尿管の保護を考慮する必要があり,腹膜前腔を操作しないLichtenstein法は有用な術式である.

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術前に診断した鼠径部interparietal herniaの1例

ひろつおなかクリニック

広津  順 他

 症例は67歳の男性。2年前より間欠的な疼痛を伴う左鼠径部の膨隆を主訴に来院した。左鼠径部の膨隆とともに左下腹部の膨隆も認めた。腹部CT検査では左内鼠径ヘルニアに加え、内鼠径輪の開大と内鼠径輪から頭側の筋層内に進展するヘルニア嚢を確認した。日本ヘルニア学会分類Ⅳ型かつinterparietal herniaと判断した。手術は腹腔鏡下ヘルニア修復術を選択した。ヘルニア嚢は抜去でき、通常通りTAPPを行った。Interparietal herniaは、鼠径部ヘルニアの亜型でまれであるが、腹腔鏡下手術では正確な評価と治療を行うことができる。

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