トップ > 会員のみなさま > 日本臨床外科学会雑誌 最新号 和文抄録

日本臨床外科学会雑誌 第81巻2号 掲載予定論文 和文抄録


綜説

骨盤臓器脱に対する治療とそのエビデンス

第一東和会病院女性泌尿器科ウロギネコロジーセンター

竹山 政美 

 骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse: POP)は膣から骨盤内臓器が下垂、脱出してくる疾患であり中高年女性のQOLを悪化させる。本稿ではPOPのコンセプトに続き、手術療法を中心に、膣尖部固定術以降の論文を概観した。欧米と日本では、最近の経腟メッシュ手術について状況が異なるが、日本での術式に関連する論文を取り上げた。国内では、現在、メッシュを用いない従来法(native tissue repair:NTR)、経腟メッシュ手術(tension-free vaginal mesh:TVM)、腹腔鏡下仙骨膣固定術(laparoscopic sacrocolpopexy:LSC)が行われている。NTRとしては子宮摘出と膣尖部を吊り上げる術式が行われているが再発率が高い。TVMにはメッシュ特有の合併症、メッシュ露出や疼痛の問題があり、欧米では行われなくなっている。国内ではpoly-tetra-fluoro-ethyleneメッシュが使用できるが未だエビデンスがない。LSCにはコンセプトの異なるフランス式とアメリカ式の術式があり、日本では主にフランス式術式が行われている。総じて日本での治療はエビデンスに乏しい。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

原著

ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術後に発症した鼠径ヘルニア

我孫子東邦病院外科

澤谷 哲央 他

 (目的と方法)前立腺癌に対するロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術(RALP)は標準術式として増加している.一方,晩期合併症として術後鼠径ヘルニアが指摘されている.当院で2012年4月から2016年12月までのRALP204例の術後鼠径ヘルニアについて検討した.
 (結果)RALP術後経過観察期間は平均645日.術後鼠径ヘルニアは24症例27病変に認められた.ヘルニア修復術を行った20症例23病変は,外鼠径ヘルニアであった.内鼠径輪内側は強固な癒着で剥離困難であり,mesh plug法で修復した.内鼠径輪に解剖学的異常を認め,無処置の場合は17.8%に,予防的に精索周囲剥離術を行っても12.8%に発症した.
 (結論)RALP後鼠径ヘルニアの特徴は外鼠径ヘルニアで,修復にはplug法が妥当である.RALP手術時に内鼠径輪に解剖学的異常が認められる場合は,術後鼠径ヘルニアを発症するリスクが高いが,予防的な精索周囲剥離術の効果は疑問であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

症例

19歳で発症し増大傾向を呈した乳腺偽血管腫様過形成の1例

新潟市民病院乳腺外科

諸  和樹 他

 20歳女性.19歳時より左乳房腫瘤を自覚し,増大傾向を認めたため,精査加療目的に当科を受診した.左BD領域に9.5cm大の弾性軟の腫瘤を触知した.超音波検査では境界明瞭,内部均一の充実性腫瘤を認めた.一部スリット様を呈し,一見して線維腺腫や葉状腫瘍を疑う所見であったが,針生検では萎縮性乳腺組織のみの診断であった.MRI検査では腫瘤はT2強調像にて低信号を呈し,造影効果は軽度不均一であり,線維腺腫や葉状腫瘍の典型像とは異なっていた.確定診断には至らなかったが,診断と治療を兼ねて腫瘤摘出術を施行した.病理組織学的には一部スリット状の間隙を呈する密な間質組織の増生と異型に乏しい乳腺組織から成るほぼ均一な病変であった.間質細胞は免疫染色上,CD34,SMAに陽性,Factor VIII,p63に陰性を示し,乳腺偽血管腫様過形成と診断された.当科での経験を,考察を交えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

人工血管置換および大網被覆により救命した一次性大動脈十二指腸瘻の1例

名古屋市立大学心臓血管外科

髙橋 巴久 他

 一次性大動脈腸管瘻は非常に稀な病態であるが, 未治療では高率で死に至ることで知られている.今回,腹部大動脈瘤による一次性大動脈十二指腸瘻を経験したため報告する.症例は78歳男性.吐血を主訴に受診された.CT 検査で十二指腸に隣接する最大短径65 mm の腹部大動脈瘤および瘤内遊離ガス像を認めたことから,大動脈十二指腸瘻が疑われ,緊急手術となった.術中,瘤内から十二指腸水平脚に瘻孔を認め,瘻孔を直接縫合閉鎖した.また腎動脈下腹部大動脈と両側総腸骨動脈をリファンピシン浸漬人工血管で解剖学的に再建した.さらに大網で瘻孔部を被覆して人工血管との間に介在させ手術を終了した.術後15日目に自宅退院となり,現在も感染兆候なく経過している.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

"慢性閉塞症の放置で足趾自然脱落に至りその後破裂した膝窩動脈瘤の1例

自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科

北田 悠一郎 他

 膝窩動脈瘤は血栓塞栓症を契機に発見される場合が多いが, 慢性塞栓症が放置され, 足趾壊死から足趾の自然脱落に至り, かつ膝窩動脈瘤破裂をきたしたとする報告はない. また, 膝窩動脈瘤破裂の治療は外科的血行再建が第一選択であるがその術式に関しては議論がある. 今回我々は膝窩動脈瘤に起因する慢性塞栓症の放置により足趾の自然脱落に至った膝窩動脈瘤破裂に対し, 内側アプローチにより瘤切除+バイパス術を施行した症例を経験したので報告する.
 症例は87歳女性. 意識障害及びショックで当院へ搬送された. 来院時, 右大腿部腫脹, 右第3-5足趾の脱落を認め, 造影CTで膝窩動脈瘤破裂と診断した. 足趾の脱落後も医療機関を受診せず、膝窩動脈瘤が破裂に至るまで放置されていた。内側アプローチによる大伏在静脈を用いた浅大腿-遠位膝窩動脈バイパス+瘤切除術及び足部デブリードマンを施行した. 術後経過は良好で, 第23病日に療養目的で転院した.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

片肺換気困難症例に体外式膜型人工肺併用下胸腔鏡下手術を施行した2例

前橋赤十字病院呼吸器病センター呼吸器外科

大沢  郁 他

 胸腔鏡手術は,呼吸器外科領域において増加傾向で患者負担の軽減に寄与しているが,全身状態等によって施行困難な症例も存在する.今回,術中分離肺換気が困難な症例に対し,体外式膜型人工肺(ECMO)を併用し胸腔鏡手術(VATS)を施行した2症例を経験したので報告する.
 全例全身麻酔下VV-ECMO併用VATSを施行した.症例1は右肺ブラ切除,症例2は両側胸膜被覆術を施行した.症例1ではECMO導入中に抗凝固剤としてNafamostat mesilateを使用し,症例2では抗凝固剤は不使用とした.術後に症例2でECMOカニューレ抜去部の血栓を認めたが内服加療のみで速やかに消退し血栓に伴う合併症は認めなかった.症例1はリハビリ転院,症例2は軽快退院された.
 ECMO管理の進歩に伴い従来の術中呼吸管理では施行困難なVATSの適応が広がったと考えられる.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

両側開胸にて切除した食道神経鞘腫の1例

国立病院機構九州がんセンター消化管外科

香川 正樹 他

 症例は63歳女性,検診の胸部レントゲン撮影で異常陰影を指摘され,食道腫瘍の診断で当科へ紹介となった.上部消化管内視鏡検査で胸部中部食道に粘膜下腫瘍を認め,ボーリング生検にて神経原性腫瘍疑いの診断となった.CTにて最大径7cmの乏血性腫瘤を認め,左肺門部,大動脈を広く圧排し,浸潤も否定できない所見であった.悪性も否定できないため,切除を行うこととした.右開胸からのアプローチは術野の確保が困難と考えられたため,まず左開胸を先行し,左肺門部,大動脈から剥離可能であることを確認した.続いて右開胸を行い,食道亜全摘を施行した.術後経過良好であり,術後12日目に退院した.病理組織診より食道神経鞘腫との確定診断となった.両側開胸にて食道神経鞘腫を切除しえた症例報告はなく,文献的考察とともに報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胃粘膜下腫瘍を呈しLECSでの切除後に診断されたIgG4関連硬化性疾患の1例

近江八幡市立総合医療センター外科

石川 達基 他

 症例は65歳女性、検診の胃透視検査で異常を指摘され、精査加療目的で当院に紹介となった。上部内視鏡検査では胃前庭部前壁大弯よりに15mmの粘膜下腫瘤を認め、超音波内視鏡検査では第4層に主座を置く低エコーで均一な類円形腫瘤であった。造影CT検査では同部位に均一に造影される10mm大の腫瘤を認めたが、周囲のリンパ節の腫大や遠隔転移はなかった。
 Gastrointestinal stromal tumor (GIST)の診断のもと、腹腔鏡内視鏡合同手術(Laparoscopic Endoscopy Cooperative Surgery:LECS)を施行した。摘出組織の病理検査にて固有筋層に多数のリンパ濾胞を形成し、形質細胞の浸潤著明な線維化を認めた。IgG4/IgG陽性細胞率は約40%でIgG4関連硬化性疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)(準確診群)と診断した。胃粘膜下腫瘍を呈した非常に稀なIgG4関連硬化性疾患の1例を経験したので報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胎児消化管類似癌を併発した多発胃癌の1例

国立病院機構小倉医療センター外科

堤  親範 他

 症例は74歳男性で、少量の吐血を認めたため、前医で内視鏡検査を受け、噴門部、胃体部小弯と近傍の小弯後壁に胃癌を指摘された。加療目的で当院を紹介され腹腔鏡下胃全摘術を施行した。病理組織学的所見で胃体部の病変は1つの病変であり、管状・乳頭状に増殖する淡明な細胞質をもつ円柱細胞を認めた。また、SALL4陽性、AFP陰性、Glypican 3陰性を示し、胎児消化管類似癌の所見と判断した。噴門部の病変は高分化型管状腺癌であった。以上より、胎児消化管類似癌と一般型腺癌が併発した多発胃癌と診断した。胎児消化管類似癌は非常に稀で予後不良であるが、術前診断は困難であり、詳細な病理組織学的検索と術後化学療法の検討が重要であると考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

孤立性肺転移再発を切除した胃癌の5例

山形県立中央病院外科

外田  慎 他

 【背景】胃癌の肺転移は癌性リンパ管症や癌性胸膜炎で発症することが多く,胃癌術後の孤立性肺転移の頻度は低い.孤立性肺転移症例に切除が有効との報告があるが,外科的治療の意義が明らになっていない.【対象と方法】当院で胃癌術後に孤立性肺転移を来たし,外科的切除を施行した5症例を対象とした.【結果】肺転移再発までの期間は中央値が22ヶ月で,全例が12ヶ月以上だった.肺切除後の生存期間は中央値が45ヶ月(8-96ヶ月)で,5年生存率が40%だった.胃切除後に肺転移再発までの期間が30ヶ月以上だった2例は再発無く,肺切除後に5年以上の生存期間を認めた.【考察,結語】胃癌切除後の孤立性肺転移症例では肺切除後に良好な予後が得られる症例が認められた.特に,胃癌切除後から再発までが30か月以上の長期間の症例は,良好な予後が望める可能性があるので,積極的に手術を考慮すべきであると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Ladd手術を行い30年に及ぶ食思不振が改善した腸回転異常の1例

永寿総合病院外科

安藤 知史 他

 われわれは, 30年間神経性食思不振症と診断されていた成人腸回転異常症の女性が, 絞扼性腸閉塞を発症し, 緊急手術施行後に腹部症状, 栄養状態が改善した症例を経験した. 症例は思春期から食思不振, 腹部膨満, 便秘等の腹部症状を認め, 病悩期中に神経性食思不振症と診断されていた. 今回, 慢性的な腹痛が増悪し, 入院加療を受けていた近医より当院へ転院となり絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を行った. 開腹すると, 回腸から上行結腸までの軸捻転による捻転した腸管の虚血壊死および回腸の穿孔を認め, 回盲部切除術を行った. さらにLadd靭帯による十二指腸狭窄を認めたため, Ladd靭帯を切離し, 十二指腸狭窄を解除した. 術後18か月経過しており, 栄養状態の改善および体重増加を認めている. 本症例は, 思春期より神経性食思不振症と診断されていたが, 実際は腸回転異常症に起因する食思不振症であった稀な症例であると考えられる.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術前診断した腎細胞癌孤立性小腸転移の1例

JCHO中京病院外科

山本 泰資 他

 症例は76歳, 男性. 3年8カ月前に左腎細胞癌に対して腹腔鏡下左腎部分切除術を施行し, 病理組織学的に淡明細胞癌, pT1aN0M0の診断で当院の泌尿器科に定期通院していた. 1年3カ月前に左腎細胞癌局所再発に対して局所切除を施行した. 腹部CT検査で回腸末端に腫瘤を指摘され, 下部消化管内視鏡検査で回腸末端に1/3周性の1型様隆起性病変を認め, 生検で腎細胞癌の診断であった. PET-CT検査で回腸腫瘤と腸間膜リンパ節に集積を認めた. 腎細胞癌回腸転移と診断し, リンパ節郭清を含めた回盲部切除術を施行した. 術後6カ月現在, 新たな転移再発巣を認めず経過観察中である. 腎細胞癌小腸転移例は, 他臓器へも転移を合併していることが多い. 他臓器転移を伴わない腎細胞癌小腸転移は比較的稀であり報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

熱中症による壊死型虚血性腸炎の1例

三和会永山病院外科

小北 晃弘 他

 症例は68歳男性.高血圧症あり,内服加療中.7月の猛暑日,屋外労働後に著明な発汗,起立不可,低血圧,徐脈となり当院へ搬送された.搬送時はJCS Ⅰ-3,脈拍42回/分,血圧72/44 mmHg,SpO2測定不可とショックバイタルで,病歴と身体所見から熱中症と診断し乳酸リンゲル液を投与しバイタルは速やかに安定,症状も改善傾向となった.血液検査でBUN 36.0mg/dL,クレアチニン 2.32mg/dLと中等度の腎障害を,腹部CT検査では肝内門脈ガスを認めた.以上より,熱中症Ⅲ度と肝内門脈ガス血症と診断,入院加療となった.翌日には腎機能障害は改善したものの腹痛が増強しCTを再度施行,左側横行結腸に限局性の腸管気腫,周囲の脂肪組織の濃度上昇と腹水貯留を認めた.腸管壊死と診断し同日,横行結腸部分切除術を施行した.熱中症から壊死型虚血性腸炎を発症し腸管切除を要した症例は比較的稀で,若干の文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

23歳のDuchenne型筋ジストロフィー患者に併存した横行結腸癌の1例

大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院外科

西谷 健太 他

 症例は23歳の男性で,気管軟化症,拡張型心筋症,デュシェンヌ型筋ジストロフィーの既往があった.6年前に喀痰による気道閉塞で心肺停止をきたし蘇生したが,後遺症に無酸素脳症を認め,意思疎通は困難となった.胃瘻造設,気管切開も行い人工呼吸器から離脱できない状態であった.今回,腹部膨満感を認めたため,精査を行い,横行結腸癌による腫瘍性イレウスと診断した. 上部イレウス管と大腸ステント留置により腸管の減圧を得たため,年齢と家族の手術希望を考慮し,待期的に手術を行う方針とした.結腸右半切除術,D2郭清を施行した.筋ジストロフィーの患者に手術を行う際は,筋弛緩薬の効果発現に時間がかかることがあり,注意を要する.術後合併症は特に認めず,術後第11日目に退院となった.筋ジストロフィー患者に合併した横行結腸癌の手術症例は非常にまれであり報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ポリスチレンスルホン酸ナトリウム服用中に発症したS状結腸憩室穿孔の1例

宮崎市郡医師会病院外科

麻田 貴志 他

 症例は81歳女性。高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸ナトリウム(sodeium polystyrene sulufonate ,以下SPS:製品名ケイキサレート®)を内服していた。SPSの内服から23日後、急激な腹痛が出現したため近医受診し、急性腹症の診断で当科へ紹介された。腹部所見では下腹部全体に強い圧痛と筋性防御を認め、急性汎発性腹膜炎が疑われた。腹部CTで、S状結腸と上行結腸に多発する憩室を認め、腹腔内及びS状結腸間膜内に遊離ガス像と少量の腹水を認めた。ガストログラフィンによる注腸造影で、S状結腸から腸管外への漏出を認めた。S状結腸憩室穿孔の診断で、同日緊急手術を施行した。術中所見ではS状結腸に2ヶ所の仮性憩室の穿孔を認め、S状結腸切除術及び人工肛門造設術を行った。術後の病理所見で、穿孔部の憩室壁にSPS結晶の沈着を認め、SPS服用がS状結腸憩室穿孔の発症に関与している可能性が示唆された。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腋窩リンパ節孤立性再発切除後13年生存しているS状結腸内分泌細胞癌の1例

立川相互病院外科

高橋 雅哉 他

 症例は、58歳男性。S状結腸癌にて、切除術施行。病理は、type2 11.0×8.5cm SS endocrine  cell carcinoma  ly0 v0 n0 T3N0M0 pStageⅡa。9カ月後に、右腋窩に孤立性リンパ節転移を生じ、局所麻酔下に切除した。5年間にわたって内服化学療法をおこなった。転移切除後13年を経て再々発をみとめない。予後不良な内分泌癌が腋窩リンパ節への孤立性転移を生じ、これを切除したことにより長期生存を得た報告は、これまで見あたらなかった。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

診断に苦慮した肝乏血性腫瘍の1例

高山赤十字病院外科

上谷  遼 他

 症例は64歳、男性.肝S7領域にある1.5cm大の増大傾向な腫瘤の精査加療目的で当科へ紹介となった。超音波検査および造影CT検査では、異型結節や早期肝細胞癌などの鑑別以上の確定診断が困難だった.Gd-EOB-DTPA造影MRI検査では早期濃染は無いものの、肝細胞相で造影剤の取り込み低下があり、Chemical phase shiftでは位相による信号変化はなかった.いずれにしても悪性腫瘍が否定できないため肝後区域切除術を施行した.病理組織学的検査所見で被膜形成のない境界不明瞭な結節であり、ミクロ像では細胞異型が無く、密度が高く類洞が若干拡張した柵状構造が見られ、軽度異型結節と診断した.異型結節を生ずる背景肝はアルコール性変化があることが多く、非常に診断が難しいがChemical phase shiftなど脂肪含有評価が有用である可能性がある.その上で腫瘍径や臨床経過、複数の画像モダリティを使用して総合的に判断することが必要である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下肝部分切除を行った高度脂肪化を伴い鑑別に苦慮した肝細胞癌の1例

上尾中央総合病院外科

船水 尚武 他

 症例は70歳男性.1ヵ月前より背部痛を自覚し,当院消化器内科を受診した.腹部造影CTで左横隔膜下に5cm大の腫瘤を認め,腫瘤は肝外側区域,左横隔膜,および脾臓に接していた.内部は不均一で脂肪成分が多くを占めていた.早期相で不均一に造影効果を認め,後期相でその効果は遷延した.MRIでも腫瘍の内部に脂肪成分が示唆され,拡散強調画像で高信号であった.以上の所見から,肝外病変であれば脂肪肉腫,肝内病変であれば血管筋脂肪腫,または肝細胞癌が疑われた.診断,および治療目的で当科紹介となり,手術を行う方針となった.腹腔鏡下に腹腔内を観察したところ,肝由来であることが判明し,腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.病理組織学的に高度な脂肪化を伴う中分化型肝細胞癌と診断された.高度脂肪化を伴う5cm大の中分化型肝細胞癌は比較的稀で,また肝外発育する例は少ない.高度な脂肪化を伴い鑑別診断に苦慮した肝細胞癌に対して腹腔鏡下に切除術を施行した1例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

結核性腹膜炎後に2回の完全腹腔鏡下肝切除術を施行した肝細胞癌の1例

奈良県総合医療センター消化器・肝臓・胆のう・膵臓外科

高木 忠隆 他

 症例は60歳男性で,C型慢性肝炎にて経過観察中であった.腹部造影CTで肝S4に10mm大腫瘤を認め,肝細胞癌と診断されたため当科へ紹介となった.結核性胸腹膜炎の既往があり腹腔内全体の癒着が想定されたが,肝表面の単発病変であったため,腹腔鏡下肝S4部分切除術を施行した.肝周囲から臍下まで癒着を認めたが,腹腔鏡下に剥離して手術行い,合併症なく術後7日目に退院となった.8か月後,肝S7領域,右横隔膜下に新たな12mm大肝細胞癌が出現した.今回も肝表面の小病変であり前回肝切除部から離れていたため,腹腔鏡下肝S7部分切除を施行した.肝切除後の癒着は高度であったが,同部位の剥離は最小限とすることで安全に手術を行えた.合併症なく術後9日目に退院した.初回手術より1年9か月を経過した現在,無再発生存中である.結核性腹膜炎による癒着症例において,安全に2回の腹腔鏡下肝切除術を施行することができた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

重複結腸癌手術時に門脈結紮を先行させ二期的に根治切除した肝細胞癌の1例

広島記念病院外科

久原 佑太 他

 症例は82歳の男性で,血便を主訴に当院紹介となる.下部消化管内視鏡検査で全周性3型のS状結腸癌を認め,内視鏡の通過は困難であった.腹部造影CTで肝S4/5/8を主座とした10 cm大,肝S7に5 cm大の早期濃染wash outされる腫瘍を認め,肝細胞癌と診断した.S状結腸癌の切除を先行し,二期的に右三区域切除術の方針とした.腹腔鏡下S状結腸切除術の際に,腹腔鏡下門脈右枝結紮術を施行した.予定残肝容積は521 mL と約17% 肥大し,予定残肝容積割合63%,予定残肝ICG-K 0.072と改善を認めた. 門脈結紮術後32日目に右三区域切除術を施行した.術後合併症なく,結腸癌に対する術後補助化学療法施行中である.結腸癌および肝細胞癌の重複癌に対して,腹腔鏡下門脈右枝結紮術を施行し,右三区域切除術を施行した.本症例のように,重複癌で複数回の開腹手術が必要な場合,腹腔鏡下門脈結紮術は簡便で安全に施行可能で経皮経肝門脈塞栓術の代替の治療選択になりうると考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ヒストアクリル®充填にて治癒した術後離断型胆汁漏の1例

公立福生病院外科

石井 政嗣 他

 75歳男性。C型肝炎、肝細胞癌に対して肝部分切除の既往のある肝細胞癌門脈腫瘍栓に対して肝左葉切除を施行した。術後、肝離断面に留置したドレーンから術後5日目に胆汁様の排液があり、ドレーン造影にて尾状葉枝の胆管が造影され、離断型胆汁漏の診断となった。ドレナージを継続したが、術後20日目のドレーン造影にてドレーン腔から十二指腸への瘻孔が確認され、上部消化管内視鏡で十二指腸球部にA1 Stageの潰瘍を認めた。PPI投与にて十二指腸潰瘍は改善傾向にみられたが、瘻孔が残存した。術後55日目に十二指腸潰瘍側からヒストアクリル0.4ml+リピオドール1mlを注入した。翌日にドレーン造影にて十二指腸との瘻孔が閉鎖し、胆管も造影されなかった。その後、胆汁漏も軽快しドレーン排液も減少、ドレーン抜去に至った。離断された胆管枝にヒストアクリルを充填する方法は低侵襲で離断型胆汁漏には有効な治療法の選択肢の一つと考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術後病理組織検査で判明した遠位胆管原発いわゆる癌肉腫の1例

旭川医科大学外科学講座肝胆膵・移植外科学分野

水上 奨一朗 他

 癌肉腫は同一腫瘍内に癌腫成分と肉腫成分を併せ持つ悪性腫瘍であり,癌が発生する全臓器で発生するとされる.しかし消化器系における癌肉腫のうち,遠位胆管に原発した癌肉腫の文献報告は稀である.症例は78歳男性,顕性黄疸のため当院を受診した.Dynamic CTで中部胆管に長径18 mmの全周性狭窄を認め,生検で中~高分化型腺癌を検出,遠位胆管腺癌cT2N1M0cStageⅡB(胆道癌取り扱い規約第6版)の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した.術後病理組織検査ではクロマチンの増量した不整の核をもつ紡錘形の異型細胞が線維化を伴い胆管壁全層に渡って浸潤しており,免疫染色でpancytokeratin陽性であったことから「いわゆる」癌肉腫の診断となった.術後補助療法は施行せず,現在術後6ヶ月無再発生存中である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

"鈍的外傷を契機に発見された16歳膵solid-pseudopapillary neoplasmの1例

日本赤十字社医療センター肝胆膵移植外科

島田  恵 他

 症例は16歳男性.鈍的外傷後に腹痛が出現し近医を受診.精査にて膵頭部腫瘍ならびにそれに連続する後腹膜血腫を認めた.出血に対しては保存的に経過観察を行い,その後膵頭部腫瘍に対する精査加療目的に紹介となった.CT,MRIでは膵頭部に5cm大の腫瘤を認めた.膵頭十二指腸切除を行い,術後病理にて膵Solid-pseudopapillary neoplasmの診断であった.本疾患は若年女性に多い疾患であり,男性症例の場合は女性よりも発症年齢が高いことが知られており若年男性においては稀な疾患である.また無症状で発見されることが多い疾患である.今回鈍的外傷後の後腹膜出血で発覚した若年男性の膵Solid-pseudopapillary neoplasmの症例を経験したため報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

"主膵管内腫瘍進展を伴った膵尾部MiNENの1例

大阪国際がんセンター消化器外科

藤井  渉 他

 症例は61歳男性.心窩部痛にて紹介受診され,精査加療を行った.画像検査では膵尾部に50×30mm大の造影効果の乏しい腫瘤影を認め,膵癌が疑われた.一方,膵頭部主膵管内に膵尾部腫瘍と連続しない主膵管内結節が認められた.膵尾部腫瘍生検では腺房細胞癌成分を伴うMixed neuroendocrine-non-neuroendocrine neoplasm (MiNEN)と診断され,主膵管内結節は擦過細胞診にて膵尾部組織と類似した高異型度細胞集塊を認めた.膵尾部MiNENとMiNENに由来する膵頭部主膵管内腫瘍栓と診断し,両病変に対して膵全摘術を施行した.病理検査の結果,膵尾部MiNENを認め,膵頭部の主膵管内腫瘍は主腫瘍から主膵管内へIntraductal polypoid growth (IPG)しているものであった.Ki-67は50%を呈しており,術後4か月時に肝転移再発を認め,エベロリムスを開始したが術後1年で死亡した.IPGを伴うMiNENの報告は非常に稀であり,文献的考察も含めて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

下部胆管癌に対する亜全胃温存膵頭十二指腸切除後残膵癌の1例

JA岐阜厚生連久美愛厚生病院外科

高木 健裕 他

 胆管癌に対する亜全胃温存膵頭十二指腸切除術後4年8か月目に診断された残膵癌に対して膵体部温存膵尾部切除を施行した1例を報告する.症例は75歳の男性で,下部胆管癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行し,高分化管状腺癌StageⅡであった.術後4年8か月目にCA19-9上昇を認め,CTで残膵尾部に2cm大の造影効果の乏しい不整形腫瘤を認めた.主膵管は拡張しており膵空腸吻合部近傍の主膵管内には膵石と思われる粒状影を認めた.残膵癌及び膵石による慢性膵炎と診断し,膵体部を温存した膵尾部切除,脾臓摘出術およびリンパ節郭清を施行した.胃空腸吻合の肛門側で空腸を切離して拳上し,繰り返す膵炎に対する膵管のドレナージとして尾側膵断端に対し空腸吻合を施行した.組織学的には管状腺癌StageⅠBであった.術後はインシュリンを使用せず血糖は安定している.胆管癌切除後の異時性残膵癌は非常にまれであり,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

有毛細胞白血病の進行による非外傷性脾破裂の1例

藤沢市民病院消化器外科

中堤 啓太 他

 症例は41歳,女性.血液検査で白血病が疑われ精査目的に入院した.左側腹部痛の増悪と貧血の進行を認め,造影CTで活動性出血を伴う非外傷性脾破裂と診断された.カテーテル治療で脾動脈にコイル塞栓を行うも,出血を制御することが出来ず,脾臓摘出術の方針とした.術中所見では,25cm大に腫大した脾臓を認め,複数箇所で被膜が裂け,出血が持続していた.脾臓摘出術を施行し,摘出標本の病理検査により有毛細胞白血病と診断された.術後9日目に退院し,術後30ヶ月後現在,病勢の進行なく,外来で経過観察中である.今回,有毛細胞白血病に伴う非外傷性脾破裂に対し脾臓摘出術を施行した稀な1例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

脾sclerosing angiomatoid nodular transformationの1例

静岡県立静岡がんセンター肝・胆・膵外科

上村 将夫 他

 症例は40歳男性.検診の腹部超音波検査で脾腫瘤を指摘された.自覚症状はなく,血液検査ではCRPの上昇を認めた.腹部造影CTで脾内に8 cm大の八頭状の腫瘤を認め,動脈相では腫瘤の辺縁が淡く造影された.門脈相から平衡相にかけて内部の一部が車軸様に造影されるものの,内部の多くの領域では造影効果を認めなかった.MRIで腫瘤はT1強調像,T2強調脂肪抑制像ともに低信号を示し,PET-CTでは腫瘤に一致してFDGの集積を認めた.画像検査での良悪性の鑑別は困難であり,診断と治療目的に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.摘出標本では,脾臓に8 cm大の境界明瞭な充実性腫瘤を認め,病理組織学的検査では,異型の乏しい血管腫様結節と線維成分の増生を認めた.CD31,CD34,CD8を用いた免疫組織化学検査では異なる3種の血管成分を認め,Sclerosing angiomatoid nodular transformation (SANT) と診断した.これまでSANTの本邦報告例は27例であり,自験例を加えた28例の臨床的特徴を検討し報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に切除した後腹膜気管支原性嚢胞の1例

総合病院国保旭中央病院外科

田中 元樹 他

 症例は67才, 女性. 膀胱癌術前精査のCTにて左横隔膜下に21mm大の嚢胞性病変を偶発的に指摘された. MRIやPET検査を追加したが術前診断困難であり, 後腹膜腫瘍として診断的治療目的に腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行した. 病理組織で後腹膜腫瘍は22×17×5mm大, 線毛上皮に内腔が裏打ちされた嚢胞状病変であり, 壁に平滑筋, 粘液腺, 軟骨を認めることから気管支原性嚢胞と診断された. 気管支原性嚢胞は胎生期の前腸由来の病変で, 気管支形成期に生じる先天性嚢胞の一種である. 大多数は肺内や後縦隔に発生し, 後腹膜に発生することは稀である. 今回我々は偶発的に左横隔膜下に発見され, 腹腔鏡下手術にて切除した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腫瘍熱を契機に発見された後腹膜脂肪肉腫再発の1例

東京医科大学八王子医療センター消化器外科・移植外科

郡司 崇裕 他

 症例は64歳の女性で,22年前に他院で後腹膜脂肪肉腫に対して腫瘍および右腎臓摘出術を施行され,術後10年間再発なく終診となっていた.今回38度台の遷延する発熱と炎症反応高値を契機にCTを施行したところ,右後腹膜に8cm大の腫瘤影を認め後腹膜脂肪肉腫の再発にて当科紹介受診となった.発熱に対する精査を行ったが腫瘍熱以外の原因は否定的で,外科的切除の方針となった.後腹膜腫瘍・結腸右半・肝部分切除術を施行し,摘出検体の病理組織学的検査は脱分化型脂肪肉腫の所見であった.術後発熱・炎症反応は速やかに消失し,術後13日目に退院となった.術後2年の時点で再発は認めていない.後腹膜腫瘍は解剖学的に臨床症状が出現しづらく腫瘍増大による圧迫症状で発見されることが多いが,本症例では腫瘍熱を契機に発見されたため,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

メッシュを用い腹腔鏡下修復術を施行した肋間ヘルニアの1例

大分大学医学部消化器・小児外科学講座

藤永 淳郎 他

 症例は55歳男性。3ヵ月前に咳嗽時に右第9肋骨を骨折した。外来にて鎮痛薬内服による保存的加療中、徐々に右側腹部の膨隆を認めたため、当科を受診した。腹部CT検査にて第9肋間の開大と同部位からの回腸、肝臓の脱出を認め、肋間ヘルニアと診断し、腹腔鏡下に修復術を施行した。メッシュを用いてヘルニア門を十分に被覆し、手術を終了した。術後経過は良好で、術後8ヵ月の時点で再発を認めていない。肋間ヘルニアは稀な疾患であり、定型的な手術法は確立されていないが、腹腔鏡下アプローチによるメッシュを用いた修復術が、安全性および術後再発予防の観点から有用であると考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Hybrid手術による神経切除術を行った鼠径ヘルニア術後慢性疼痛の1例

静岡市立静岡病院外科・消化器外科

小林 敏樹 他

 症例は,63歳,男性.右外鼠径ヘルニア嵌頓に対し,前方到達法による嵌頓解除術およびヘルニア修復術(anterior iliopubic tract repair)を施行された.術翌日から,陰部大腿神経陰部枝領域に疼痛の訴えを認め,鎮痛薬にて経過観察の方針となった.しかし症状の改善なく,歩行にも支障をきたすようになったため,初回手術から1年4か月後にhybrid手術によるtriple neurectomyを施行した.まず鼠径部切開法にて,腸骨下腹神経および腸骨鼠径神経を同定し,切除術を施行した.続いて腹腔鏡下に陰部大腿神経を確認し,切除術を施行した.併せて,メッシュによる鼠径床の補強を行った.術後,疼痛は改善し,術後2日目に退院となった.再手術後1年11か月が経過した現在,疼痛の再燃・ヘルニアの再発なく,外来にて経過観察中である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ASOに対するF-Fバイパス術後に腹腔鏡手術を施行した鼠径ヘルニアの1例

済生会熊本病院外科

小川 克大 他

 症例は83歳, 男性. 下肢閉塞性動脈硬化症に対してF-Fバイパス術の既往がある. 右鼠径部膨隆を主訴に受診した. 超音波検査では人工血管の直下にヘルニア内容物を認めた. 右鼠径ヘルニアと診断し、3ポートを用いた腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術を施行した. 術前に人工血管走行のマーキングを行い, トロッカー挿入部は人工血管が露出しない様に十分距離を置くことに留意した. 術後経過は良好であり合併症なく退院した. 下肢動脈硬化症に対する非解剖学的バイパス術の既往を有する患者に対する腹部手術では人工血管による手術創の制限, 人工血管損傷や感染等のリスクがある. 非解剖学的バイパス術後の鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡手術は, 人工血管による創の制限を最小限にできる点, 人工血管損傷および感染防止の点から有用であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下ヘルニア根治術を行った直接型の外鼠径ヘルニア嵌頓の1例

島根県立中央病院外科・消化器外科

服部 晋明 他

 鼠径(部)ヘルニアの分類において,一般的に外鼠径ヘルニア=間接ヘルニア,内鼠径ヘルニア=直接ヘルニアと認識されている.しかし本来ヘルニア門の位置(内,外)と逸脱経路(直接,間接)は別の概念の分類様式である.今回我々は下腹壁動静脈外側に内鼠径輪とは別のヘルニア門を持ち,かつ横筋筋膜の破壊を伴って逸脱する鼠径部ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は,75歳男性,左下腹部痛にて当院紹介受診.CT等にて左鼠径ヘルニア嵌頓として緊急手術を行った.鏡視下に確認すると下腹壁動脈の外側にヘルニア門を認め小腸のRichter型嵌頓を認めた.嵌頓をきたしたヘルニアとは別に内鼠径輪をヘルニア門とするde novo 型Ⅰ型のヘルニアの合併も認め,併せて鏡視下にポリプロピレンメッシュにて修復を行った.本症例は日本ヘルニア学会の分類によるとⅤ型(分類不能)と分類されるが,病態としては「直接型の外鼠径ヘルニア」とも呼べるまれな疾患であると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

交通事故による外傷性腹膜炎と鑑別を要した家族性地中海熱の1例

宮崎大学医学部外科学講座

北村 英嗣 他

 症例は41歳女性.自動車運転中に自損事故を起こし,胸腹部を打撲し当院へ救急搬送された.来院時,激しい腹痛の訴えがあり,腹部は板状硬を呈していた.外傷性腹膜炎が強く疑われたため緊急でCT検査を施行したが,腹腔内の臓器損傷を疑う所見は認めなかった.試験開腹術も考慮したが,病歴を詳しく聴取すると家族性地中海熱(Familial Mediterranean fever:FMF)の既往があった.同疾患による腹痛と判断し,入院下で保存的に経過をみたところ,腹痛は速やかに軽快した.FMFは周期性の発熱・漿膜炎(胸・腹膜炎)を主徴とする疾患で,ストレスなどにより発作性に発症するとされる.今回,交通事故というストレスで発症したと考えられるFMF症例に対して,適確な診断をすることで試験開腹術を回避することができた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る