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日本臨床外科学会雑誌 第80巻11号 掲載予定論文 和文抄録


臨床経験

腸管切除が必要な絞扼性腸閉塞の予測因子

三豊総合病院外科

宇高 徹総 他

 腸管切除が必要と判断される絞扼性腸閉塞の術前予測因子を後方視的に検討した.手術を施行して絞扼性腸閉塞と診断された102例を対象した.腸管切除群と非切除群に分けて,臨床所見,血液検査,動脈血液ガス分析,CT画像,SOFA scoreについて比較・検討した.単変量解析では開腹歴の有無,発症から手術までの時間,CRP,LDH,PT-INR,closed-loop obstruction,腸管壁の造影不良,SOFA scoreが腸管切除の予測因子であった.多変量解析ではclosed-loop obstructionと腸管壁の造影不良が独立した腸管切除の予測因子であった.絞扼性腸閉塞は重篤な状態に陥る可能のある疾患であり,腸管切除が必要と判断される症例を術前に予測することが重要である.
 Closed-loop obstructionと腸管壁の造影不良に注目して絞扼性腸閉塞による腸管切除に対応することが重要と思われた.

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症例

Basedow病とSjögren症候群を伴った特発性血小板減少性紫斑病の1例

小畠病院内分泌外科

和久 利彦 

 症例はシェーグレン症候群(SS)の既往のある女性。血小板数0.8X104/µlで当院血液内科へ紹介となった。ウイルス感染やH.pylori感染はなく、SS・自己免疫性甲状腺疾患などに関する抗体価は高値であった。SSとバセドウ病を合併したITPと診断しPSLのみでの治療を行ったがステロイド抵抗性であったため、当院受診から11か月後に腹腔鏡下脾臓摘出術を行った。脾摘後1か月までに口腔・眼乾燥症状の軽快、血小板数、甲状腺機能の正常化、各抗体価の改善が得られた。脾摘後6か月で症状に変化はなかったが甲状腺機能亢進、抗体価の再上昇を認め、甲状腺全摘術を行った。脾摘術後3年5か月の現在、症状に変化なく、抗SS-B抗体価は脾摘前の1/2程度で維持されている。自験例においては、ITP、SS、バセドウ病、橋本病それぞれの発症機序に共通の免疫機構の異常が推測された。

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乳房腫瘤を契機に診断したメトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の1例

済生会中和病院外科

三宅 佳乃子 他

 メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(methotrexate-associated lymphoproliferative disorders:MTX-LPD)は,MTX投与中の患者に発生するリンパ増殖性疾患である.MTX-LPDにおける悪性リンパ腫の節外病変が乳腺に発症することは極めてまれである.
 症例は77歳,女性.左乳房・左腋窩のしこりを主訴に当科を受診した.関節リウマチのため,17年前からMTXを内服していた.乳房腫瘤の針生検で悪性リンパ腫と診断された.PET-CTでは左乳腺・左腋窩リンパ節の他,全身に複数か所の集積を認めた.MTX長期内服中であることからMTX-LPDと診断した.初期治療としてMTXを2ヵ月間休薬したが腫瘍縮小効果を認めなかった.次に化学療法を施行し完全寛解をえた.
 われわれは,節外病変が乳腺に発症したMTX-LPDの1例を経験したので報告する.

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バイアバーンステント留置にて止血した肝胆膵手術後出血の4例

上尾中央総合病院外科

中島 康介 他

 近年, 手術手技の進歩に伴い肝胆膵外科手術の安全性は向上し, 合併症の頻度は減少しているが, 術後出血はいまだに致命的となることが多い. また, その治療法については確立されていないのが現状である. 近年, 術後出血に対して, 経カテーテル的動脈塞栓術が行われているが, 合併症として, 末梢組織の血流障害が問題視されている. 血流障害を防ぐ目的でcovered stent留置による止血術が報告されてはいるが, 以前は保険適応外での使用を余儀なくされていた. しかし, 2016年, 外傷性または医原性の血管損傷症例に, 緊急的な治療で用いるゴアバイアバーンステントが保険収載された. 今回これを用いて止血し得た4症例の経験を提示する.

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腹部鈍的外傷による中結腸動脈仮性動脈瘤の1例

金沢大学消化器・腫瘍・再生外科学

岡崎 充善 他

 症例は85歳、男性。自動車運転中に誤って路上のポールに衝突した。前医救急搬送され、造影CTで膵頭部周囲の大量血腫と中結腸動脈の断裂、仮性動脈瘤を認め、当院へ転院搬送した。血管造影検査を行い背側膵動脈末梢から出血を認め動脈塞栓術を施行した。中結腸動脈は根部で断裂し塞栓術困難と判断し緊急手術を施行した。術中所見で血性腹水は少量であったが、膵頭部周囲から横行結腸間膜に広範囲の血腫を認めた。横行結腸間膜は一部損傷を認め、中結腸動脈根部で断裂、仮性動脈瘤を認めた。活動性出血はなかったが再出血予防目的に動脈根部を結紮処理した。術後は再出血なく経過良好であり、術後21日目にリハビリテーション目的に転院した。腸間膜損傷による仮性動脈瘤は破裂により急性な転帰をたどることや遅発性に発症する報告例もあり、腸間膜内に血腫を認めた際は仮性動脈瘤形成の可能性を念頭におき診療にあたる必要がある。

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食道癌術後に発症した両側緊張性気胸の2例

獨協医科大学埼玉医療センター呼吸器外科

井上 裕道 他

 症例1は70歳男性。食道癌に対し食道亜全摘、後縦隔胃管再建術後。近医から両側気胸で当院に転院するも、経過観察にて改善退院した。1週間後に両側気胸再発にて再入院、左胸腔に胸水貯留を認め左胸腔ドレナージを施行した。両側気胸が改善したため、気胸発生側は左肺と判断し、左肺嚢胞切除術を施行した。しかし退院から2日後に意識レベル低下、両側緊張性気胸にて再々入院となった。両側ドレナージを行い、追加手術として右肺嚢胞切除、胃管と椎体前面胸膜を縫合し胸腔間交通を閉鎖した。症例2は70歳男性。食道癌に対し食道亜全摘胸骨後胃管再建術後。心肺停止で救急搬送され、両側緊張性気胸の診断にて両側ドレナージを施行した。左側の気漏が持続したため、左肺嚢胞切除、胸骨裏面と左縦隔胸膜を縫合し胸腔間交通を閉鎖する手術を施行した。両側緊張性気胸は致死的な病態であり確実な胸腔間交通の閉鎖が重要である。

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胸腔鏡下に摘出した前縦隔気管支原性嚢胞の1例

槇殿順記念病院

槇殿 公誉 他

 症例は63歳,女性.2016年12月に全身倦怠感を主訴に当院受診.胸部CT検査で前縦隔腫瘍を認め,精査・加療目的に2017年1月に入院となった. 胸部CT検査では前縦隔に30×20mm大の嚢胞性病変を認め, 胸部MRI検査ではT1強調画像で筋肉と比較し等信号,T2強調画像でわずかに高信号であった. 胸腺嚢胞または嚢胞性胸腺腫を疑い, 胸腔鏡下に摘出した.病理学的に退縮した胸腺内に嚢胞性病変を認め, 内腔面に気管支腺の存在を認めた. 前縦隔気管支原生嚢胞と診断された.今回われわれは前縦隔に発生した気管支原生嚢胞の1例を経験したので,若干の文献的検討を加え報告する.

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肺癌術後孤発性腸間膜転移の1例

国立病院機構南和歌山医療センター外科

冨永 信太 他

 肺癌の腸間膜転移は非常に稀な転移形式である。今回我々は肺癌術後2年目に孤発性腸間膜転移をきたし切除した1例を経験したため、文献的考察を加え報告する。症例は57歳男性。前医にて、右肺上葉の巨大ブラ感染のため右肺上葉切除術を施行され、切除肺の病理組織検査にて肺腺癌と診断されていた。肺切除1年半後からCEAが徐々に上昇し、腹部CT検査とPET-CT検査にて腸間膜腫瘍を認めたため、手術目的に当科紹介となった。腹腔鏡補助下に腫瘍が存在する腸間膜を含む小腸部分切除を施行した。病理組織検査所見にて肺癌の転移性腸間膜腫瘍と診断された。術後CEAは減少し、現在、再発なく経過している。肺癌の孤発性腸間膜転移は腸間膜原発の腫瘍との鑑別が難しく、切除により診断が可能となり、適切な全身化学療法を行うことが可能となる。

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周囲臓器とともにR0切除した横隔膜上憩室発生進行食道癌の1例

愛知県がんセンター消化器外科

國友 愛奈 他

 症例は68歳男性。18歳頃より左横隔膜上憩室を指摘。3か月前より嘔吐と体重減少を認め前医受診、食道癌の診断で当院紹介となった。消化管造影検査および内視鏡検査では、食道LtAeG領域の左前壁に粘膜下主体の7cm大の腫瘍を認め、生検は扁平上皮癌であった。CTでは心囊、横隔膜脚、左肺下葉への浸潤が疑われた。①腫瘍の中心が以前の横隔膜上憩室の位置と一致、②大型腫瘍だが粘膜下病変主体で粘膜病変は左前壁に限局、以上より横隔膜上憩室発生食道癌と診断、術前化学療法後に手術の方針とした。術中所見では左横隔膜、左肺下葉、肝外側区に腫瘍が強く固着、各々合併切除を要したが、左開胸開腹中下部食道切除でR0切除を遂行した。切除標本の肉眼所見では腫瘍はほぼ粘膜下に存在、術前画像検査と併せて憩室発生食道癌と診断した。腫瘍の横隔膜への浸潤は認めたが、左肺と肝臓とは炎症性の癒着のみであった。

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胃びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に併存した胃GISTの1例

太田綜合病院附属太田西ノ内病院外科

松本 拓朗 他

 症例は77歳男性. 近医での上部消化管内視鏡検査で, 胃体下部小彎側後壁に頂部に周堤を伴う平皿状潰瘍を認め, 生検でびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断された. 同時に胃体上部小彎側に胃壁に接する腫瘤を認め, リンパ節と考えられた. 当院血液内科でR-CHOP療法を5コース施行され, 胃体下部の粘膜下病変は消失したが, 胃体上部小彎側の腫瘤は大きさや性状に変化なく, FDG-PETでも集積を認めないため消化管間質腫瘍(GIST)が疑われた. EUS-FNAでは播種の危険性もあるため, 開腹腫瘍切除術を施行した. 胃壁から小網内へ突出する腫瘍を損傷することなく切除し, 術後8日目に退院した. 病理組織学的検査では, 腫瘍径33mm, CD34+, c-kit+であり, 低リスクの胃GISTと診断された. 術後補助化学療法は施行せず, 術後17ヵ月無再発で経過している.

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胃癌の異時性孤立性脾転移の1例

JA愛知厚生連豊田厚生病院外科

関本 晃裕 他

 症例は76歳女性.貧血を主訴に当院を受診され,精査にて胃前庭部小弯側に3型の胃癌を認め,開腹幽門側胃切除術を施行した.進行度はT4a(SE)N1M0 pStageⅢAで,術後化学療法を希望されず定期フォローのみとしていた.術後2年目に腫瘍マーカーの上昇を認めPET-CTを施行したところ,孤立性に脾臓に集積亢進を認めたが,積極的治療を希望されなかった.術後3年目で脾腫瘍の増大を認め手術希望があったため,横隔膜合併切除を伴う開腹脾臓摘出術を施行した.病理組織学的に胃癌の転移であった.再手術後3年0か月の現在,無再発生存中である.胃癌からの脾転移は遠隔転移の1つとされるが,異時性孤立性脾転移は切除により長期生存の報告もあり,積極的切除が望ましいと考えた<

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切除後に有茎空腸粘膜パッチ再建した神経線維腫症1型合併十二指腸GISTの1例

富山県立中央病院外科

東  友理 他

 症例は神経線維腫症1型(NF1)の57歳女性.55歳時に子宮筋腫・空腸gastrointestinal stromal tumor(GIST)に対し,腹式子宮全摘・両側付属器摘出および空腸楔状切除術が施行された.術後2年5か月目に十二指腸下行脚にGISTを認めたため,切除する方針とした.十二指腸局所切除を行ったが,壁欠損部が大きく一次縫合閉鎖では変形・狭窄を来す可能性が高いため,有茎空腸を作成し空腸粘膜パッチによる再建を行った.術後透視で再建部位に変形・狭窄は認めず,経過良好であった. NF1患者の7%にGISTが合併し,多発しやすく低悪性と報告されている.その多くは小腸に発生すると報告されているが,病変が十二指腸の場合はその術式や再建法が問題となる.今回われわれはNF1に合併した十二指腸GISTに対し,局所切除および有茎空腸粘膜パッチを用いた再建を行い,良好な結果が得られたので報告する.

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p16免疫染色で確定診断した十二指腸原発扁平上皮癌の1例

岡谷市民病院外科

田中 宏和 他

 p16免疫染色にて確定診断した十二指腸原発扁平上皮癌の1例を経験した。症例は81歳、女性。定期受診にて胸部単純CT施行し、偶発的に十二指腸下行脚に腫瘍を指摘された。上部消化管内視鏡検査の結果、2型進行癌を疑う所見を認めた。病変から4ヶ所生検施行し、いずれからも浸潤性増殖する角化を伴った扁平上皮癌を認めた。造影CT、PET-CTでは明らかな遠隔転移は指摘できなかったことから、膵頭十二指腸切除施行した。病理では形態学的に膵扁平上皮癌も鑑別に挙げられたが、p16 免疫染色の結果十二指腸原発扁平上皮癌と判断された。
 十二指腸原発扁平上皮癌は稀な疾患である。確定診断に免疫染色が有用であり、今後の診断の一助となると期待される。

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開腹歴がない成人小腸間膜裂孔ヘルニアの1例

さいたま赤十字病院外科

髙野 祐樹 他

 症例は48歳女性. 突然の腹痛にて当院に救急搬送された. 開腹歴はなく, 腹痛を来すような持病もなかった. 強い間欠痛を認め, 筋性防御陽性であった. 腹部造影CTにて小腸全体の造影不良と腹水貯留を認め, 絞扼性腸閉塞の診断で緊急試験開腹を施行した. 開腹すると腹腔内に血性腹水の貯留を認め, 小腸は全体に暗赤色を呈して血流障害が疑われた. 絞扼の原因は回盲部から約70cm口側の小腸腸間膜に存在した直径約20cmの小腸間膜裂孔に小腸がはまり込んで絞扼された小腸間膜裂孔ヘルニアであった. 絞扼を解除後, 時間をおいて腸間膜動脈の拍動と腸管の色調を観察して小腸切除は約40cmにとどめることができた. 成人の小腸間膜裂孔ヘルニアの報告は少なく, 術前診断は困難であることが多いが, 絞扼性腸閉塞の原因の1つとして本疾患の可能性を想定できるかどうかが重要と思われる.

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劇症1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスに併発したNOMIの1例

青梅市立総合病院外科

藤井 学人 他

 症例は64歳女性。全身倦怠感、嘔吐を主訴に近医受診。血糖値 854mg/dl、pH 7.032、アニオンギャップ29.9mmol/lと劇症1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis : DKA)が疑われ当院内科に入院となった。右下腹部痛も認めCT検査で終末回腸の気腫像および門脈ガスを認めた。腸管壊死の疑いで同日、緊急手術を施行。終末回腸に分節状の虚血性変化を認めた。DKAによる末梢循環不全が予想され、一期的には吻合せず小腸切除、人工肛門造設術を施行した。病理学的所見は非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia : NOMI)と考えられた。劇症1型糖尿病にDKAを併発し急激な末梢循環不全によるNOMIを発症した症例を経験した。意識障害で発見が遅れる可能性もありNOMIを念頭に置きフォローする必要がある。

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成人小腸間膜リンパ管腫の1例

国家公務員共済組合連合会平塚共済病院外科

大沼 静音 他

 症例は25歳女性.突然の上腹部痛を主訴に当院救急外来を受診.腹部造影CT検査では左側腹部に多房性嚢胞性腫瘤を認めた.MRI検査で腫瘤の位置が変化していることから小腸間膜リンパ管腫が疑われた.腹腔鏡で観察し,多房性嚢胞性腫瘤が小腸間膜内に存在し,可動性が良好であることを確認した.小開腹し,同病変を含めて小腸部分切除術を施行した.病理所見で小腸間膜リンパ管腫と診断した.成人の小腸間膜リンパ管腫は稀な疾患であり報告する.

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転移性両側卵巣腫瘍で発見された小腸癌の1例

山形大学医学部外科学第1講座

川村 一郎 他

 症例は44歳女性.両側卵巣腫瘍の疑いで左付属器切除術+右卵巣嚢胞核出術を施行し,腺癌{CK7(+),CK20(+),CDX2(-),ERα(-)}の診断となった.CT,上下部消化管内視鏡検査で病変を指摘できないため,卵巣原発の粘液性腺癌として追加切除を施行した.術中に小腸腫瘍を指摘され,小腸部分切除術を併施した.小腸病変からも腺癌を認め,前医卵巣腫瘍の組織所見と類似していることから,最終的には小腸癌の卵巣転移(Krukenberg腫瘍)の診断となった.2年後に播種再発したが,Hartmann手術+播種切除術+小腸部分切除術を行い,根治切除となった.現在初回手術から4年2ヶ月が経過したが,新たな再発は認めていない.予後不良な病態でありながら長期生存を得ている稀な症例であり,病理組織学的考察を加えて報告する.

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後腹膜膿瘍を伴う虫垂炎の待機的虫垂切除後に診断された重複虫垂の1例

市立三次中央病院外科

田妻  昌 他

 症例は64歳,男性.右下腹部痛と発熱を主訴に来院した.腹部CT検査で後腹膜膿瘍を伴った急性虫垂炎と診断され,後腹膜経路でCTガイド下ドレナージ術を施行した.膿瘍消失後に待機的に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後病理組織学的検査所見で虫垂に並行して存在する非交通性の重複虫垂を認めた.重複虫垂は極めて稀であり,本邦においても文献的に報告されているものの,後腹膜膿瘍形成を契機に発見された報告は認められない.また自験例は後腹膜膿瘍形成に対し,経皮的ドレナージを施行したうえで 待機的腹腔鏡下虫垂切除術(laparoscopic interval appendectomy:LIA)が有効であった1例であり,文献的考察を加えて報告する.

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肝円索腫瘤を呈したIgG4関連疾患の1例

山口大学大学院医学系研究科消化器・腫瘍外科学

西田 裕紀 他

 症例は75歳, 男性. 膵管内乳頭粘液性腫瘍フォローのため施行された造影CTで肝鎌状間膜内に20mm大の腫瘤を指摘された. 超音波ガイド下生検施行されたが, 病理学的診断は困難であった. 腫瘤は緩徐に増大傾向であり, FDG-PETで腫瘤にSUVmax=4.4の軽度集積を認めた. 外科的診断目的で当科紹介となり, 肝鎌状間膜由来の平滑筋肉腫や間葉系腫瘍を疑い腹腔鏡下腫瘤切除術を施行した. 腫瘤は肝円索の肝流入部に存在しており, 腫瘤に近接していたG4を処理し, 阻血域となった肝S4を部分切除した後に腫瘤を摘出した. 切除標本の病理組織学的所見では, 肝円索に多数のIgG4陽性形質細胞浸潤および線維化を認めた. 血液検査で高IgG4血症を認めたため, IgG4関連疾患と診断した. 肝円索病変を呈するIgG4関連疾患はこれまでに報告を認めない, まれな病態であると考えられた.

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溶血を伴い急激な経過で死亡したClostridium perfringens肝膿瘍破裂の1例

神戸赤十字病院外科

猿渡 和也 他

 症例は54歳男性,2型糖尿病の既往があった.前日から続く腹痛と発熱のため来院,黄疸と腹部圧痛を認めた.血液検査では強溶血,炎症所見,多臓器不全を呈し,CTにてfree airと肝S5にガスを伴う腫瘤を認め,ガス産生性肝膿瘍破裂による急性汎発性腹膜炎が疑われた.急激な呼吸状態増悪を認める中,緊急手術を施行,悪臭を伴う腹水および穿破した肝膿瘍を認め,洗浄ドレナージを施行した.術後は敗血症・多臓器不全に対し,集中治療を開始した.術後3日目に腹水培養よりClostridium perfringens(以下:C. perfringens )が検出され,Clindamycinの投与を開始したが,術後4日目に死亡した.C. perfringensによる肝膿瘍は極めて稀であるが,急激な経過で死に至る.溶血を伴う敗血症,ガス産生性肝膿瘍の際には,C. perfringensを念頭に治療することが重要である.

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30歳正常肝に発生した肝細胞癌(最大径12cm)の1例

横須賀共済病院外科

阿部 有佳 他

 症例は30歳男性.健康診断の腹部超音波検査で肝右葉に腫瘤を指摘され,精査目的に当院紹介となった.肝機能異常は認めず,血中HB ,HCウィルスマーカーは陰性だった.常用薬は無く,肝疾患を有する家族歴も認めなかった.腫瘍マーカーは陰性だった.CTでは肝後区域に10×11×12cmの腫瘤を認めた. MRIではT2強調で不均一な高信号,T1強調で低信号を呈し,脂肪成分の含 有を認めず,充実部分は拡散低下を呈していた.肝原発の悪性腫瘍が疑われ,診断治療目的に手術の方針とした.手術は肝右葉切除術を行なった.病理組織学的検査では低分化型の肝細胞癌の診断であり,非癌部は正常肝だった.術後10ヶ月を経過した現在も再発なく外来フォロー中である.背景にHCCリスクを持たない若年肝細胞癌の症例は非常に稀である.その病因や予後に関しては解明されていないのが現状であり,文献的考察を加えて報告する.

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腹腔鏡下胆嚢摘出後に発症したMycobacterium abscessusによる臍部膿瘍の1例

公立昭和病院外科

吉澤 奈央 他

 開腹と比較し腹腔鏡下の胆嚢摘出術での手術部位感染は少ないが、臍創部は時折感染が見られる。今回Mycobacterium abscessus subsp. abscessusによる遅発性膿瘍をきたした一例を経験したので報告する。
 症例は既往歴のない45歳女性。心窩部痛、発熱を主訴に来院。胆石、急性胆嚢炎の診断で、抗菌薬による保存的加療を行った。待機的手術の方針となり、1ヵ月半後腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術後とくに問題なく退院したが、およそ2か月目ごろ臍下に腫瘤を自覚し再来した。採血にて炎症所見は認めなかったが、CTにて膿瘍の所見であったため切開排膿した。排膿後、連日洗浄していたが、治癒経過は緩慢であり、およそ1ヶ月の創処置を要した。その後培養結果でMycobacterium abscessus subsp. abscessusと判明した。文献的考察を加え報告する。

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門脈輪状膵を伴った遠位胆管癌の1例

佐賀県医療センター好生館消化器外科

木村 直也 他

 門脈輪状膵は膵頭部鈎部と膵体部背側とが癒合し、膵が門脈を輪状に巻き込んだ稀な膵の形態異常である。今回われわれは、門脈輪状膵を伴う遠位胆管癌に対して亜全胃温存十二指腸膵頭切除術を施行した一例を経験したので報告する。症例は70歳男性。心窩部の不快感と掻痒感を主訴に当科を受診された。精査の結果、遠位胆管癌の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行した。術中、門脈直上での膵切離時に主膵管が見られないことを契機に門脈輪状膵であることが判明した。背側の膵組織を門脈左縁で切離し、膵再建法は膵胃吻合で行った。術後は臨床的膵液瘻は認めず、軽快退院した。術後にCTを見直すと門脈輪状膵を指摘することは可能であった。門脈輪状膵は稀な形態異常ではあるが手術手技や再建において注意を要するため、術前に念頭に置くべきであると考えられた。

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総胆管結石の主膵管内迷入による急性膵炎の1例

浜の町病院外科

溝口 公久 他

 急性胆石性膵炎は胆石が十二指腸乳頭部に嵌頓し膵管を閉塞することで引き起こされるが,胆石が主膵管内に迷入する例は非常に稀である.今回われわれは,総胆管結石が主膵管へ迷入し急性膵炎を発症した1例を経験した.症例は61歳男性で心窩部痛を主訴に当院を紹介受診し,胆嚢・総胆管結石症の診断で後日内視鏡的切石予定であった.4日後再度心窩部痛が出現し当院へ救急搬送され,急性胆石性膵炎の診断で入院となった.CTで総胆管結石が膵管内へ移動している所見が疑われた.内視鏡的逆行性胆管膵管造影を施行したところ,胆管内に明らかな陰影欠損像は認めず,膵頭部主膵管内に陰影欠損を認め胆管結石の膵管内迷入と診断した.膵管ステント留置により徐々に膵炎所見は改善し,腹腔鏡下胆嚢摘出術後に内視鏡的切石を行った.自然経過での膵管内迷入胆石は非常に稀でありこれまでに報告例はないが,急性膵炎の原因の一つとして常に念頭に置く必要がある.

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胃・空腸・結腸・左腎合併膵体尾部切除を行った膵管内乳頭粘液性腺癌の1例

国立国際医療研究センター病院外科

齋藤 範之 他

 症例は74歳男性.膵管内乳頭粘液性腺癌(Intraductal papillary mucinous carcinoma : IPMC),結腸浸潤による単純性腸閉塞状態に対し,横行結腸人工肛門造設術を施行.以降,Gemcitabine(+nab-paclitaxel),FOLFIRINOXによる化学療法を継続.腫瘍縮小も本人希望で化学療法を継続したが,初回手術より3年3ヶ月後,膵周囲の仮性嚢疱感染を繰り返し,化学療法継続困難にて外科紹介.胃・空腸・結腸・左腎合併膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的には,Invasive IPMC,pT3,S1,RP1,OO1(小腸,結腸),N1a,pStageⅡB,RP陽性であったが剥離面への癌の露出を認めず.術後補助化学療法としてS-1を投与しており,現在9ヶ月無再発生存中である.左腎合併切除を要する膵癌の報告は少なく,若干の文献的考察を加え報告する.

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単孔式腹腔鏡下に切除した腹壁内神経鞘腫の1例

JAとりで総合医療センター外科

村瀬 芳樹 他

 神経鞘腫は末梢神経のSchwann細胞に由来する腫瘍であり、腹壁内の発生は比較的稀である。症例は76歳男性で、糖尿病で近医通院中に腹壁腫瘤を指摘され紹介受診された。腹部超音波検査で肝表面に接する円形の腫瘤を認め、腹部CT検査で右側腹部に23×20×18mmの境界明瞭で造影効果のある類円形の充実性腫瘤を認めた。10年前に行ったCTと比較すると、緩徐に増大していることから手術の方針とし、臍からの単孔式腹腔鏡下切除術を施行した。術中所見では、右上腹部腹壁に半球状の腫瘤が腹腔内に突出しており腹腔鏡下に切除可能であった。摘出した腫瘤は20×20×16mm大の黄白色であり、病理組織では長紡錘形細胞の増殖が見られ、免疫染色ではS-100蛋白陽性、c-kit陰性と神経鞘腫の所見であった。近年では自験例のように本疾患に対して腹腔鏡下手術の報告もあり、条件によっては単孔式腹腔鏡での切除が有用であると考えられた。

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腹腔鏡下修復術を行った縦隔炎に対する大網充填後剣状突起下ヘルニアの1例

名古屋第二赤十字病院一般消化器外科 

村田 悠記 他

 症例は77歳,女性.食後の前胸部膨隆を主訴に受診.既往に冠動脈バイパス術後の縦隔炎に対し大網充填術を受けている.術後より前胸部の膨隆を自覚していたが,最近になり,食後の前胸部膨隆と圧迫感が増悪したため受診した.胸腹部CTでは剣状突起下から胸骨前にかけて大網および胃の脱出を認めた.開心術後縦隔炎に対する大網充填術後の剣状突起下ヘルニアと診断し,開腹でヘルニア修復術を施行した.手術は充填された大網を温存し,メッシュにkeyhole を作成し,ヘルニア門を被覆した.術後約2ヶ月で再発し,腹腔鏡下に再手術を施行した.前回手術時に作成したkeyhole部がヘルニア門となっていた.大網を離断し,ヘルニア門全体をメッシュで覆い,修復した.術後,再発や大網壊死の所見は認めていない.縦隔炎に対する大網充填術後の合併症として瘢痕ヘルニアは知られているが,腹腔鏡下修復術を施行した報告例は少ない.文献的考察を踏まえて報告する.

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腹腔鏡下直腸固定術術後に生じた5mmポートサイトヘルニアの1例

聖マリアンナ医科大学消化器・一般外科

土橋 篤仁 他

 症例は89歳, 女性. 直腸脱による排便困難に対して腹腔鏡下直腸固定術を施行した. 手術は臍下部12 mm, 左右上下腹部に5 mmの計5ポートでwells法を施行した. 術後第3病日に嘔吐を認め, 麻痺性イレウスと診断し絶飲食にて経過観察とした. 翌日に左側腹部痛が出現し腹部CTにて左上腹部5 mmポートサイトヘルニアによる小腸嵌頓を認め緊急手術を行った. 左上腹部5 mmポート孔から腹腔外へ脱出し腹直筋と腹直筋前鞘間に黒色変化した壊死腸管を認め小腸部分切除を施行した. ポートサイトヘルニアの頻度は文献的に約1 %と報告されており, なかでも5 mmポートサイトヘルニアは稀な合併症である. 診断が遅れれば腸管壊死を来す可能性があり術後合併症として十分念頭に置いておく必要がある. 今回術後早期に5 mmポートサイトヘルニアを来した症例を経験したので、文献的考察を加え報告する.

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術前診断し腹腔鏡下に修復した鼠径ヘルニア偽還納の1例

函館厚生院函館中央病院外科

山本 寛之 他

 症例は77歳,男性.10年前より右鼠径ヘルニアを認め,自己整復を繰り返していた.受診日当日の朝に自己整復したが,昼より腹部膨満と腹痛,嘔吐を認め近医を受診.腹部単純X線で小腸の拡張とニボー像を認め,腸閉塞の診断で当院紹介となった.腹部CTにて右下腹部に壁側腹膜から連続する嚢状構造と,内部に腹水と浮腫状の小腸を認め,鼠径ヘルニア偽還納による腸閉塞と診断.同日緊急で腹腔鏡下手術を施行した.術中所見では小腸がヘルニア嚢に嵌頓した状態で腹膜前腔に陥入しており,鉗子による牽引のみで容易に還納された.小腸に明らかな壊死は認めず,メッシュを用いて腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.鼠径ヘルニア偽還納は脱出臓器がヘルニア嚢に嵌頓した状態のまま腹膜前腔に還納されるという比較的稀な病態であるが,十分な問診と画像診断で術前診断可能であり,低侵襲に確実な診断と治療ができる腹腔鏡下手術は有用であると考えられた.

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根治切除を行った同時性三重複癌(胆管・肺・腎臓)の1例

東海大学医学部呼吸器外科

武市  悠 他

 症例は77歳、男性。生来健康であったが、閉塞性黄疸を主訴に来院。来院時のCT検査で遠位胆管癌に加え、右上葉肺癌、右腎癌を疑わせた。胆道ドレナージ後4ヶ月の経過で、胸腔鏡下系統的右上葉切除術、膵頭十二指腸切除術、腹腔鏡下右腎摘除術の順で手術を施行した。最終的に肺癌(pT1aN0)、胆管癌(pT3aN0)、腎淡明細胞癌(pT1a)といずれも根治的手術を行い、現在術後2年経過し、無再発経過観察中である。

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