トップ > 会員のみなさま > 日本臨床外科学会雑誌 最新号 和文抄録

日本臨床外科学会雑誌 第80巻9号 掲載予定論文 和文抄録


症例

妊娠中期に手術を施行した原発性副甲状腺機能亢進症の1例

東京女子医科大学卒後臨床研修センター

長久保 翔子 他

 妊娠中に原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)を合併すると子宮内発育遅延、子宮内胎児死亡、新生児テタニーなどの懸念がある。今回、我々はPHPTの手術待機中に妊娠が判明し、妊娠中期に手術を行った1例を経験した。症例は34歳の女性。健診で高Ca血症(10.7 mg/dL)を指摘された。血中副甲状腺ホルモン値(i-PTH)の上昇とエコーで左上副甲状腺の腫大を認め、PHPTと診断され、手術目的に当院へ紹介された。Ca値の上昇が軽度の無症候性PHPTと判断し、患者の希望もあり経過観察となった。6年後、Caが11.2 mg/dLと上昇し、かつ左上副甲状腺の増大も認め、手術を予定した。手術待機中に妊娠(6週4日)が判明し、安定期の妊娠17週0日で手術を施行した。摘出標本の病理診断は腺腫であった。術後、i-PTH値およびCa値は正常化し、妊娠39週6日に自然分娩で3044gの健常な女児を出産し、母児共に経過良好である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Humoral hypercalcemia of malignancyを呈した同時性両側乳癌の1例

八千代病院外科

桒原 聖実 他

 症例は68歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に受診した.CT検査で左乳房に55mm大の腫瘤と左腋窩リンパ節の腫大を認めた.また右乳房にも15mm大の腫瘤を認めた.両側乳房腫瘤に対し針生検を施行し同時性両側乳癌と診断した.血清Ca値(12.3mg/dl)が高値であったがPET-CT検査では骨を含め遠隔転移は認めず,PTHrP が18.8 pmol/lと上昇していたことから,humoral hypercalcemia of malignancy (HHM)を伴う同時性両側乳癌と最終診断した.血清Ca値をコントロール後に両側乳癌に対する根治術を施行した.術後は血清Ca値,PTHrP値の上昇は認めず,現在術後6ヶ月であるが明らかな再発所見を認めていない.高カルシウム血症を伴う進行乳癌を認めた際は,骨転移ではなくHHMの可能性も念頭に診療にあたる必要があり,根治切除可能であれば原発巣切除が有用である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ハイブリッド手術室を利用し血流改変した正中弓状靱帯症候群の1例

大阪警察病院外科

古川 健太 他

 症例は61歳、女性。後腹膜出血を疑われ、当院に救急搬送された。CTにて、正中弓状靭帯症候群(MALS)に伴う膵頭十二指腸動脈瘤破裂と診断し、同日緊急IVRを施行した。動脈瘤再発や再破裂のリスクがあることなどから弓状靭帯切離の方針とし、靭帯切離後の血流評価や追加治療を考慮しハイブリッド手術室にて手術を施行した。手術は弓状靭帯を切離し圧迫を解除したが、狭窄が残存していたためバルーン拡張術を追加した。術後のCTでは腹腔動脈根部の狭窄や膵頭部アーケードの拡張は改善を認めた。MALSに対する治療はさまざまな報告があるが、血行動態をリアルタイムに評価でき、必要に応じてバルーン拡張等を選択できるハイブリッド手術室での治療は有用であると考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ハイブリッド治療を行った胸腔内左鎖骨下動脈瘤の1例

春日部中央総合病院心臓血管外科

小日向 聡行 他

 胸腔内型の鎖骨下動脈瘤に対する直達手術は,鎖骨上アプローチが困難であり,症例ごとにアプローチ方法や術式の検討が必要である.今回,慢性閉塞性肺疾患を有する胸腔内左鎖骨下動脈瘤に対して,左右腋窩動脈交叉バイパス術を併施した血管内治療を行い,良好な結果を得たので報告する.症例は66歳男性.健康診断の胸部レントゲンで異常陰影を指摘され,CT検査にて左鎖骨下動脈起始部に近接した胸腔内左鎖骨下動脈瘤を認めた.慢性閉塞性肺疾患を合併しているため,直達手術は耐術困難であり,より低侵襲な手術法が望まれた.手術は,まず左右腋窩動脈交叉バイパス術を行い,続けて瘤の末梢側と中枢側をそれぞれAmplatzer Vascular PlugⅡ(AVPⅡ)と胸部ステントグラフトで閉鎖した後に,その間の左鎖骨下動脈起始部に塞栓術を行った.低侵襲な本術式は,胸腔内左鎖骨下動脈瘤のハイリスクな症例に対して有効な治療法と考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

TAEで止血した下膵十二指腸動脈瘤破裂の1例

名古屋第二赤十字病院外科

大原 規彰 他

 症例は71歳男性.上腹部痛のため救急搬送された.来院時,臍部を中心に圧痛を認めた.造影CT検査では膵周囲から後腹膜に広がる低吸収域を認めた.急性膵炎,十二指腸穿通,後腹膜腫瘍などを疑い入院したが,数時間後にショックバイタルとなった.造影CT検査を再度施行すると,低吸収域の拡大と膵頭下部領域に造影剤のpoolingを認めた.下膵十二指腸動脈瘤破裂を疑い,緊急腹部血管造影検査を施行した.下膵十二指腸動脈に10mm大の動脈瘤を認め,金属コイルによるTAEを施行した.TAE施行後,血腫による十二指腸の圧迫,狭窄症状が出現したが,絶食,経鼻胃管留置による保存的治療にて改善し,術後52日目に退院となった.術後再発所見なく経過中である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

肋骨骨折を契機に発症した横隔膜ヘルニアと遅発性血胸の1例

大曲厚生医療センター呼吸器外科

岩井 英頌 他

 転倒4週間後に発症した遅発性血胸と外傷性横隔膜ヘルニアに対し緊急手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は70歳女性.自宅で転倒し左側胸部を打ち,翌日に近医を受診し左多発肋骨骨折の診断にて経過観察となったが, 胸水貯留傾向あり受傷15日後に当科紹介受診.胸腔穿刺にて血性排液550ml認めたが,肺の十分な拡張が得られたため外来経過観察とした.受傷28日後に咳嗽と呼吸苦を主訴に当院再受診.左大量胸水を認め,造影CT検査にて左第9肋骨骨折部周辺に血管外漏出を伴う左血胸増悪を認めたため緊急に胸腔鏡下血腫除去術を施行.8cmの小開胸を追加し,横隔膜に1㎝のヘルニア門と同部より突出する大網組織を認め外傷性横隔膜ヘルニアと診断した.大網を腹腔内に還納し横隔膜ヘルニアを修復した.術後経過は良好で第11病日に退院した.今回の症例は,呼吸変動に伴い骨片が繰り返し横隔膜に接触することで遅発性に横隔膜ヘルニアをきたしたものと考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胸水ドレナージ後の腹水の減少で横隔膜交通症と診断した肝性胸水の1例

東京歯科大学市川総合病院外科

須田 秀太郎 他

 症例は65歳男性.アルコール性肝硬変による難治性腹水のため内科で加療中,労作時の呼吸困難を訴えた.画像診断と胸腔穿刺で右大量胸水貯留を指摘された.利尿薬投与,胸腔ドレナージによる治療では胸水貯留が十分に改善されない一方,胸水排液後に腹水が減少する所見から,横隔膜交通症が疑われ外科へ転科となった.経過から内科的治療法では大量胸水のコントロールは困難と判断し,十分なInformed consentを行った上で胸腔鏡下手術を行った.全身麻酔下に胸腔内を観察すると,右横隔膜の腱中心付近に2ヶ所の瘻孔を確認した.瘻孔2ヶ所を一括して自動縫合器で切除し,ポリグリコール酸(PGA)シートで被覆した.術後経過は良好で,脳出血で死亡するまでの1年8ヶ月胸水再発を認めなかった.今回,横隔膜交通症を診断して胸腔鏡手術を施行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胃穿孔により汎発性胸・腹膜炎となった成人Bochdalek孔ヘルニアの1例

新京都南病院外科

廣間 文彦 他

 症例は29歳女性.3年前から食後に腹痛を頻回に自覚していた.来院2日前から腹痛,嘔気を認め当院に受診した.症状が軽減したため帰宅したが,症状悪化のため同日再度受診となった.CTにて胃が著明に拡張しており,その大半が左胸腔内に脱出していた.入院し治療を開始したが,数時間後にショック症状を呈したために緊急手術となった.左横隔膜に手拳大の欠損があり,そこから胃の大半が左胸腔内に脱出して,腹腔内および胸腔内は胃の内容物にて汚染されていた.脱出した胃を腹腔内に戻すと,胃体上部前壁に虚血による穿孔を認めた.胸腔内と腹腔内を洗浄して,胃の虚血部分を切除して縫合閉鎖した.減圧のために胃瘻を作成し,ヘルニア門は縫合閉鎖した.横隔膜の欠損部は解剖学的にBochdalek孔ヘルニアと診断した.今回我々は成人発症のBochdalek孔ヘルニアに胃穿孔を伴った症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

根治切除後の気管膜様部再発を疑った食道表在癌の1例

千葉県がんセンター食道・胃腸外科

田部 俊輔 他

 症例は85歳男性。胸部食道癌(Ut,cT2N0M0,cStageI)の診断に右開胸食道亜全摘術、頸部リンパ節郭清、胸骨後経路胃管再建術、カテーテル空腸瘻増設術を行った。病理学的にはcarcinosarcomaの診断であり深達度はpT1b-SM3であった。切除断端および剥離面は癌陰性であった。術後24日で退院となりその後外来にて経過観察となっていた。特に大きな問題なく経過していたが術後1年目のフォローのCT画像にて気管内に腫瘍性病変を認めた。喀痰細胞診からは扁平上皮癌が検出され食道癌気管支内転移再発が強く疑われた。気道保護目的に緩和照射のみ施行したが、その後呼吸困難を来たし再発から8ヶ月、術後 1年8ヶ月で永眠となった。食道癌根治切除後に気管内転移再発を来す症例は極めて稀であり、報告も少ない。今回我々は貴重な症例を経験したため文献的考察を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ロボット支援下手術を施行したリンパ節転移を伴う胃GISTの1例

函館五稜郭病院外科

大渕  徹 他

 症例は49歳,女性.黒色便と意識消失を主訴に精査目的に当院へ紹介受診となった.上部消化管内視鏡検査で胃体中部前壁に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を認めた.生検では悪性所見は得られなかったが,胃GISTを疑い手術の方針となった.術中リンパ節転移や遠隔転移を認めず,ロボット支援下噴門側胃切除術を施行し,観音開き法により再建した.合併症は認めず7病日に退院となった.腫瘍は最大径45 mmで,病理結果ではKIT陰性,CD34およびDOG-1陽性であった.核分裂像は3/50 HPFで,腫瘍壊死や腫瘍破壊は認めなかったが,左胃動脈に沿う小彎側リンパ節に転移を認めた.術後,逆流性食道炎症状は認めず無再発で経過観察中である.胃GISTのリンパ行性転移はまれであるが,リンパ節郭清により予後が改善する可能性がある.ロボット支援下手術ではデバイスの自由度が大きく,特に再建で有用であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

長径20cmの腫瘍内膿瘍への内視鏡的ドレナージが奏効した胃GISTの1例

古河赤十字病院外科

片野  匠 他

 症例は63歳男性. CT検査にて胃の背側に最大径20cmの膿瘍を認めた. 上部消化管内視鏡検査で胃体上部後壁に隆起性病変と膿瘍との瘻孔が認められ, 膿瘍形成を伴う粘膜下腫瘍と診断した. 病理組織診でGISTと診断されたが, 腫瘍および膿瘍は横行結腸, 膵体尾部, 腹壁など他臓器を圧排しており完全切除困難と思われた. 内視鏡的に胃内から瘻孔を利用して7Fr, 7cmの両端pig tail typeステントを膿瘍内へ留置し内瘻化し, さらに外瘻として8.5Fr経鼻ドレナージチューブを挿入したところ排膿による減圧と感染のコントロールが得られた. 膿瘍の縮小効果も認め, 開腹胃全摘術+横行結腸部分切除術を行い完全切除可能となった. 術後経過は良好で術後13日目に退院となった. 膿瘍形成を伴う胃GISTに対する術前治療として内視鏡的ドレナージが有効であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

早期に再発した十二指腸未分化多形肉腫の1例

JA山口厚生連長門総合病院外科

田中 裕也 他

 症例は69歳,男性.心窩部痛と食欲不振を主訴に受診.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚に全周性の隆起性病変を認め,生検にて未分化多形肉腫と診断された.明らかな遠隔転移なく,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後2.5ヶ月で施行したCT検査にて,肝転移と局所再発を指摘された.Doxorubicin投与を開始したが,病状が悪化し術後5.5ヶ月で永眠された.未分化多形肉腫の好発部位は四肢や後腹膜であり,十二指腸原発の報告例はこれまでに6例のみである.文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

小腸穿孔をきたしたIgG4関連硬化性腸間膜炎の1例

北里大学病院外科

坂本 純一 他

 症例は74歳女性で, 間歇的な嘔吐と腹部膨満感があり, 腸閉塞症の診断で3か月前から近医で加療を受けていた. 発熱及び腹部全体痛が出現したために腹部CT検査を施行したところ, 腹腔内遊離ガス及び小腸壁の浮腫状肥厚と小腸間膜リンパ節腫脹を認めた. 精査加療を目的として当院紹介となり, 小腸穿孔による急性汎発性腹膜炎に対して腹腔内洗浄ドレナージ及び小腸部分切除術を施行した. 摘出標本での病理組織像では著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を認めた. 血清IgG4値の上昇 (726 mg/dl)を伴っており, IgG4関連硬化性腸間膜炎による小腸穿孔と診断した. 術後のFDG/PET-CT検査で腸間膜リンパ節にFDG異常集積像を認め, ステロイド治療を開始した. 本症例は病理組織学的な検討に基づいた診断および治療が非常に有用であったと考えられ, 若干の文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

手術侵襲を契機に発症した強皮症続発性偽性腸閉塞症の1例

神鋼記念病院消化器外科

小原 有一朗 他

 全身性強皮症の合併症に慢性偽性腸閉塞症があるが,皮膚病変が軽微な場合,背景にある全身性強皮症の診断に苦慮することがある.今回,手術侵襲を契機に腸閉塞症状が顕在化し,術後麻痺性イレウスとの鑑別に苦慮した強皮症続発性偽性腸閉塞症の1例を経験した.症例は71歳,女性.癒着性腸閉塞に対して手術を施行した.術後,前回閉塞部近傍に新規癒着による腸閉塞を認めたため再手術を施行した.第二回目術後,保存的治療抵抗性の麻痺性イレウスが遷延するため,偽性腸閉塞症を鑑別に挙げた.手指末梢に限局した皮膚硬化,レイノー現象を認め,抗セントロメア抗体が陽性であったため,全身性強皮症と診断した.術後6か月以上に亘り小腸蠕動不良が持続するため,経過から強皮症続発性偽性腸閉塞症と診断した.全身性強皮症続発性偽性腸閉塞症は手術侵襲を契機に発症しえ,診断には手指末梢の皮膚硬化,レイノー現象といった所見が有用であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

憩室炎を発症した成人消化管重複症の1例

公立八女総合病院外科

中根 浩幸 他

 重複腸管に生じた憩室炎の報告は少なく報告する.症例は62歳の男性.臍周囲痛を主訴に救急外来を受診.白血球増多と腹部CT検査で虫垂様構造物の腫大を認め、虫垂炎あるいは虫垂粘液腫を疑い手術を施行した.術中所見は、回腸腸間膜側に盲端を有する管状の炎症を伴う腸管様腫瘤を認めた.同部が責任病巣と判断し切除した.摘出標本の病理所見は、腸管粘膜および筋層を有していたことから回腸重複症と診断された.また、重複腸管内には憩室が存在し、憩室周囲には炎症性細胞浸潤が認められ、重複腸管に生じた憩室炎と診断した.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

急性虫垂炎を契機に発見された異所性組織を有する成人消化管重複症の1例

平塚市民病院外科

原 明日香 他

 症例は22歳女性, 既往歴は卵巣嚢腫及び喘息であった. 心窩部痛を主訴に来院した. 体温38℃であり, 採血では炎症反応の上昇を認めた. 腹部造影CT検査では虫垂の腫大とダグラス窩に腫瘤性病変を認めた. 腹腔鏡下虫垂切除術を予定し, 腫瘤性病変については術中に観察し対応を決定する方針とした. 腹腔鏡所見では腫大した虫垂と, 回腸から連続する嚢胞性病変を認め, 消化管重複症の可能性が高いと判断し, 腹腔鏡下虫垂切除術及び小腸部分切除術を施行した. 病理所見では, 嚢胞様病変は小腸と壁を共有し, 粘膜, 粘膜筋板, 粘膜下層, 固有筋層を認め, 消化管重複症と診断した.また粘膜には消化管粘膜以外に線毛上皮や扁平上皮, 気管支腺に類似した組織も認めた. 消化管重複症は稀な消化管の先天性疾患であり,異所性組織を有する報告は少なく, 文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

化学療法中に穿孔性腹膜炎を発症した消化管原発Burkittリンパ腫の1例

久留米大学医学部外科学講座

片桐 光浩 他

 症例は66歳男性.腹部膨満と血便を自覚し前医受診し,CTにて回盲部付近に著明な壁肥厚を伴う腫瘤像を指摘された.下部消化管内視鏡を行ったところ回腸末端部に全周性の腫瘍を認め,同部位からの生検でBurkittリンパ腫StageⅡ2(Lugano病期分類)と診断され当院血液内科に紹介となった.R-EPOCH療法が導入されたが,4コース終了後にイレウスを発症しイレウスチューブにより減圧処置が行われた.一時的にイレウスは改善したが急激な右下腹部痛が出現し,CTにて腹水と回盲部周囲のfree airを認め穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術となった.術後43日目に化学療法を再開し,治療効果判定はCRとなり現在も経過観察中である.
  消化管悪性リンパ腫は化学療法中に消化管穿孔を発症するなど緊急手術が必要になる症例報告が散見され,内科・外科が情報共有しつつ治療に当たることが必要と思われる.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡補助下に切除したMeckel憩室癌の1例

国家公務員共済組合連合会浜の町病院外科

久留  裕 他

 症例は69歳、男性。心窩部痛を主訴に精査を行い、腹部CTで回腸腫瘤を指摘された。PET-CTで腫瘤およびリンパ節にFDGの異常集積を認め、回腸悪性腫瘍を疑い腹腔鏡補助下に手術を行った。手術所見ではMeckel憩室に母指頭大の腫瘤を認め、Meckel憩室を基部で切除した。術中迅速診断で腺癌と診断され、回腸部分切除術・リンパ節郭清を行った。術後は化学療法(mFOLFOX6)を施行し、術後2年6ヶ月再発なく経過している。Meckel憩室内に発生する癌は極めて稀で、その解剖学的特性から術前診断は困難な事が多い。今回、腹腔鏡補助下に診断し切除を行ったMeckel憩室癌の1例を経験したため、文献的考察を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

繰り返す腸閉塞で発見された回盲部endosalpingiosisの1例

国立国際医療研究センター病院外科

和氣 仁美 他

 今回, 回盲部の狭窄による腸閉塞を繰り返すため, 腹腔鏡下回盲部切除術を行ったところ, 病理にて腸管endosalpingiosis(卵管内膜症)の診断を得た. 症例は42歳女性. 既往に腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術, 左傍卵巣嚢腫摘出術がある.腸閉塞の診断で3回入院加療を繰り返し, 当科に紹介された. 術前検査では回盲部に狭窄を認め, 癒着以外にも悪性疾患も否定できず外科手術を施行した. 手術時, 回盲部に硬結を認め, 腹腔鏡下回盲部切除を行った. 摘出標本の病理所見からendosalpingiosisと診断された. Endosalpingiosisは卵管内膜上皮に類似した腺上皮が異所性に存在するものと定義されている. 本症例のように①有症状で発見されるもの, ②腸管に発生するendosalpingiosisは極めて稀であり, 文献的考察を含めて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下結腸切除術後のポートサイト再発が疑われた炎症性偽腫瘍の1例

桑名市総合医療センター外科

野口 智史 他

 症例は89歳女性.左下腹部痛を自覚し,当院に受診した.CTで左下腹部腹壁に,φ50×40mm大,境界不明瞭で,不均一に濃染する腫瘤を認めた.6年前に上行結腸癌(stage I)に対して腹腔鏡下結腸右半切除術を施行されていたことから,ポートサイト再発を疑い,腫瘤摘出術を施行した.病理組織学所見では核異型を伴わない紡錘形の非上皮性細胞の非腫瘍性の増生を認め,高度の炎症細胞浸潤を伴っていた.免疫染色ではサイトケラチン,ç-kit,S-100,ALK陰性であり炎症性偽腫瘍と診断した.術後1年経過し再発は認めていない.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

S状結腸平滑筋肉腫による腸重積の1例

市立三次中央病院外科

原田 拓光 他

 症例は88歳女性.血便を主訴に当院受診.血液検査で貧血を認め,下部内視鏡検査ではS状結腸に潰瘍を伴う1型の隆起性病変を認めた.2週間後の再診時の腹部造影CT検査所見ではS状結腸の腫瘤を先進部とした腸重積を認め,S状結腸腫瘍による腸重積と診断,緊急で開腹S状結腸切除,回腸瘻造設術を施行した.肉眼的所見では,S状結腸に10㎝x5cmx3cmの大きな1型腫瘍を認めた.病理所見では,紡錘形の異型細胞の増生を認め,錯綜状の配列を示しており,また免疫組織化学染色では,C-kit陰性,CD-34陰性,α-SMA陽性,caldesmon陽性でありS状結腸平滑筋肉腫と診断した.術後経過は良好であり,現在術後11か月経過し無再発生存中である.今回我々はS状結腸平滑筋肉腫により腸重積をきたした1例を経験したので若干の文献的考察を踏まえて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に同時切除したS状結腸癌併存小網GISTの1例

久留米大学医学部外科学講座

四方田 隆任 他

 症例は71歳男性. 左下腹部のしこりを契機にS状結腸癌と診断され, 精査目的のCT検査にて胃小弯側に47mm大の腫瘤を指摘された. 胃GISTを疑い腹腔鏡下S状結腸切除および腫瘤摘出術を施行した. 腫瘍は左胃動脈と胃小弯の間に存在し, 胃壁との連続性はなかった. 病理組織検査では不規則に配列・増殖した紡錘形細胞からなり, 免疫組織染色ではc-kit陽性, CD34陽性, S100 protein陰性, αSMAは陰性で, 核分裂像数は5個以下/50 HPF, Ki-67陽性率は2-3%であった. 以上より小網原発GISTと診断し, modified Fletcher分類における低リスク群であった. 術後経過は良好でS状結腸癌に対する術後補助化学療法を施行し経過観察中である. 消化管外に発生したGISTは稀な疾患であるが, 手術の際にはGIST再発を念頭に置いた術式選択が必要である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

肺癌に対する免疫チェックポイント阻害薬使用による直腸S状部穿孔の1例

岐阜大学医学部腫瘍外科

近石 和花菜 他

 症例は88歳男性. 他院でStageⅣA肺腺癌に対して免疫チェックポイント阻害剤のペムブロリズマブで加療していた. 6コース投与後に血便・下痢をきたし,下部内視鏡検査で直腸S状部に潰瘍を認め大腸炎と診断された. プレドニゾロン投与で軽快したが,治療開始31日後に強い腹痛が出現しCT検査で腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔の疑いで当院救急搬送された. 緊急下部内視鏡検査で直腸S状部に深い潰瘍を認め,同部位の穿孔を疑い緊急手術を行った. 直腸S状部の穿孔部位はピンホール状であり便汁の漏出は認めず,腸切除なく穿孔部を縫縮し人工肛門を造設した. 術後18日目に転院した. 免疫チェックポイント阻害剤は様々な進行癌の治療に有効な一方,免疫関連有害事象(irAE)という特有な副作用をもたらす. 大腸炎・下痢も代表的であり,ステロイド治療で軽快したにも関わらず,大腸穿孔を来した症例を経験したため報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

直腸原発機能性paragangliomaの1例

日本赤十字社長崎原爆病院外科

原  亮介 他

 直腸原発のparagangliomaは非常に稀であり他に報告を見ない。今回我々は直腸に発生した機能性paragangliomaを経験したので報告する。症例は60歳、女性。下血と右下腹部痛を主訴に近医を受診。下部消化管内視鏡検査にて直腸に腫瘍性病変を認めたため、精査・加療目的に当院紹介となった。術前の生検でparagangliomaの診断となり、低位前方切除術を施行した。術後2年4か月以降、2度のリンパ節再発を来たし、それぞれ大動脈周囲リンパ節郭清術を施行した。その後もリンパ節転移をきたし、初回手術から6年後に永眠された。直腸paragangliomaは非常に稀な疾患であり、治療方針には慎重な検討が必要であると考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

KIT遺伝子exon9に変異を認めた直腸GIST(径10cm)の1例

埼玉県立がんセンター消化器外科

風間 伸介 他

 症例は54歳女性で、膣入口部の腫瘤を自覚し、当院婦人科紹介受診。穿刺吸引細胞診の結果、直腸gastrointestinal stromal tumorが疑われ、消化器外科紹介となった。骨盤CT、MRI検査から骨盤内で膣壁と直腸前壁の間に矢状断で長径10cmにわたる充実性腫瘍を認めた。術前化学療法が検討されたが、遺伝子検査でKIT遺伝子のexon 9に変異を認め、本人、家族とも相談して、術前化学療法を施行せず外科切除の方針となった。開腹腹会陰式直腸切断術、膣後壁合併切除を施行し、膣後壁は形成外科医師らにより左臀溝皮弁を用いた再建術を施行した。術後合併症なく15病日に退院され、現在再発兆候を認めない。直腸gastrointestinal stromal tumorに対し、遺伝子検査を施行して治療方針を決定し、膣後壁の欠損部に対する再建術として臀溝皮弁が有用であった一例を経験したので報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下肝Spiegel葉切除を施行した転移性肝癌の1例

国際親善総合病院外科

三島 江平 他

 症例は81歳女性で,80歳時にS状結腸癌(T4aN2M0 StageⅢB)に対して開腹S状結腸切除術(D3郭清)を施行した.術後9カ月で腫瘍マーカー上昇を認め,CTで肝尾状葉(Spiegel葉)に18mm大の腫瘍を認めS状結腸癌の肝転移の診断に至った.その他に明らかな非切除因子を認めず手術施行の方針とした.手術は腹腔鏡下肝Spiegel葉切除を施行した.手術時間3時間27分,出血量100gであった.術後合併症なく4日目に退院した.尾状葉単独切除は解剖学的特徴により難易度は高いが,腹腔鏡下肝Spiegel葉切除では尾側からの安定した視野が得られ,拡大視効果によりグリソン枝及び短肝静脈を安全に処理することが可能である.腹腔鏡下肝Spiegel葉切除は腹腔鏡手術の利点を生かした有用な術式であると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

孤立性に右心室転移をきたした肝細胞癌の1例

北海道大学大学院医学研究院外科系部門外科学分野消化器外科学教室Ⅰ

齋藤 智哉 他

 症例は60代男性.検診を契機に肝内側区に17㎝大の腫瘤性病変を指摘され,肝細胞癌の診断で肝左葉切除を施行した.1年4か月後,労作時呼吸困難あり近医を受診,右室に3㎝大の充実性腫瘤を認め,肝細胞癌の右心室内転移疑いの診断となった.心不全を呈し,頓死の危険性もあるため、右室腫瘍切除術および三尖弁置換術を施行した.術後経過は良好で術後15日目に退院となった.病理は肝細胞癌の右心室転移の所見であった.術後3か月目のCTで第四腰椎骨転移・右肺転移・右横隔膜角転移を認め,ソラフェニブによる分子標的療法を開始したが,間質性肺炎などの副作用が生じたため中止し,以後緩和医療の方針となった.転移巣摘出から1年1ヶ月経過した現在も生存中である.肝細胞癌フォロー中に,心不全兆候を呈した場合には,心転移を念頭においた精査の必要がある.肝細胞癌の孤立性心転移に対して確立された治療法はなく今後も検討が必要である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術前に緊急バルーン大動脈弁形成術を施行した胆嚢捻転の1例

浜松医科大学外科学第2講座

木内 亮太 他

 大動脈弁狭窄症(Aortic stenosis, AS)は左心室に慢性的圧負荷をもたらし、心不全などの症状発症後には急激に生存率が低下する。そのため非心臓手術時にASが認められる場合、周術期死亡の大きなリスクになる。今回重症ASに対する緊急バルーン大動脈弁形成術(Balloon aortic valvuloplasty, BAV)後に胆嚢捻転症に対して開腹胆嚢摘出術を施行した1例を報告する。
 症例は93歳女性、最大圧較差154mmHgの重症ASで経カテーテル大動脈弁留置術の適応であったが、患者希望で保存的加療を行っていた。今回、慢性心不全の急性増悪に対する薬物治療の入院中に腹痛が出現し、精査の結果胆嚢捻転症と診断され紹介となった。ASによる周術期死亡を回避すべく、全身麻酔導入後循環器内科医によりBAVを施行し、その後開腹胆嚢摘出術を施行した。術後経過は良好で術後26日に退院となった。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

リンパ節転移を伴う散在性多発非機能性膵神経内分泌腫瘍の1例

国家公務員共済組合連合会虎の門病院消化器外科

井形  悠 他

 症例は33歳女性。既往歴なし。遺伝性疾患関連腫瘍の家族歴なし。健診の腹部超音波検査で膵体部に1cm超の腫瘤性病変を指摘された。ホルモン関連症状は認めず、血液検査では各種ホルモン値はいずれも正常範囲内であり、副甲状腺機能亢進症は認めなかった。超音波内視鏡検査にて膵体部から膵尾部にかけて2mm~20mm大の占拠性病変を計6個認めた。多発する膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:pNET)が疑われ、手術を施行した。手術所見では、膵体部腹側に20mm大の主病変を認め、膵体尾脾切除を行った。術後経過は良好で12日目で退院。術後1年7ヶ月無再発で経過観察中である。病理診断はNET grade2であり、主病変周囲に5mm未満の腫瘍が多発し、所属リンパ節1個に転移陽性を認めた。散発性に多発する非機能性pNETの報告は稀であり、若干の文献的考察を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

X線透視併用下腹腔鏡手術で摘出した腹腔内伏針の1例

中東遠総合医療センター外科

茂野 佐弓 他

 症例は28歳,女性.交通外傷時の腹部X線にて右上腹部に線状の不透過物を指摘され,腹腔内異物の疑いとして当院を紹介受診した.本人に自覚症状は皆無であり,手術歴,鍼治療歴は無かった.腹部CTでは腸管外に長径40mmで線状の高吸収物を認め,腹腔内伏針の診断にて腹腔鏡下異物摘出術を施行した.術中X線透視を併用し横行結腸肝弯曲付近の大網組織ごと異物を摘出した.異物は金属針で,本人家族に侵入の心当たりはなく,侵入経路は不明であった.術後経過は良好で,第2病日に退院した.腹腔内伏針は発見後早急な摘出が望ましく,術中破損や遺残のリスクを低減する方策が求められると考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

単孔式腹腔鏡手術で摘出した腹膜下異物の1例

獨協医科大学第2外科

清水 崇行 他

 症例は69歳,女性.自宅で転倒後,腰痛と下腹部痛を認め,尿路感染症の診断で前医入院となった.入院時の腹部単純X線で骨盤内に線状の異物を認め,精査加療目的で当科紹介となった.CT所見では膀胱子宮窩に縫い針と思われる約5cm長の異物を認めた.異物による腸管損傷の可能性を考慮し,単孔式腹腔鏡下異物摘出術を施行した.全身麻酔下に臍からSILS™ ポート挿入し気腹観察下に頭低位とし,小腸を頭側へ移動させると,膀胱子宮窩腹膜に索状物を認めた.索状物直上の腹膜を切開すると縫針を認め,鉗子で針先と対側の針頭を把持し,ポート経由で針の回収を行った。さらに膀胱内に注水して膀胱損傷がないことを確認後,手術を終了とした。術後経過は良好で,術翌日に前医へ転院となった.単孔式腹腔鏡下手術は低侵襲であるため,今回のような異物摘出術において試みる術式であると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

同時性4多発進行大腸癌と食道癌との同時性重複の1例

福岡県済生会二日市病院外科

川畑 方博 他

 症例は76才, 男性. 以前より下痢症状があったが, ここ3か月前より症状著明となり近医受診. 同院にて下部消化管内視鏡検査施行され, 直腸及びS状結腸にほぼ全周性の腫瘍を指摘. 生検を施行され, 各々の腫瘍は比較的分化度の高い腺癌であった. 当院へ精査加療目的にて紹介入院. 画像上明らかな遠隔転移は認めなかったが, 横行結腸及び下行結腸にも造影効果の強い不整形の壁肥厚像を認め横行結腸部分切除及び広範囲左側結腸を含む腹会陰式直腸離断術を施行. 病理組織学的に4箇所に発生した腫瘍は,すべて3型で, それぞれ漿膜下(直腸では固有筋層を超える)に達する管状腺癌で, 高分化型主体であった.
 今回結腸に同時性4多発進行癌の1例を経験した. 術前に確定診断には至らなかったが, 同時性早期食道癌との多重がんであった. 術後比較的良好な経過をたどっており, 若干の文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る