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日本臨床外科学会雑誌 第80巻3号 掲載予定論文 和文抄録


原著

80歳以上胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術の成績

大阪赤十字病院消化器外科

中尾 英一郎 他

 目的:高齢者胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術(Laparoscopic Gastrectomy ; 以下LG)の成績を後方視的に検討し,安全性, 有効性を評価した.方法:2011年4月から2015年12月までにLGを施行した胃癌患者535例を対象に, 80歳以上をO群(81例), 80歳未満をY群(454例)として,患者背景因子,手術関連成績に関して比較検討を行った.結果:術前併存疾患罹患率はO群で有意に高く,D2郭清割合はO群で有意に低かったが,手術時間,出血量,リンパ節郭清個数,合併症率(Clavien-Dindo分類GradeⅡ以上)で2群間に有意差を認めなかった.多変量解析の結果,手術時間が術後合併症の独立予測因子であった.3年生存率はO群で83.6%, Y群で89.0%であり,2群間で有意差はなかった.結語:高齢者胃癌に対するLGは安全かつ妥当な術式であると考えられる.

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臨床経験

HER2陽性転移再発乳癌に対するpertuzumab+trastuzumabによる著効例

聖路加国際病院乳腺外科

土田 寧恵 他

 目的:転移再発乳癌の根治はほぼ不可能と言われてきたが,HER2陽性転移再発乳癌に対しては化学療法とペルツズマブ,トラスツズマブ併用療法(PER+HER併用療法)により完全消失例が認められるようになった.当院での経験を報告する.
 方法:2014年3月から2017年8月に当院でPER+HER併用療法により臨床的完全消失(cCR)を認めたHER2陽性転移再発乳癌症例について,治療効果と効果,臨床病理学的因子を検討した.
 結果:PER+HER併用療法を施行した93例中10例(10.8%)でcCRを認めた.10例中,乳房手術を施行した3例はいずれも病理学的完全消失を認めた.手術未施行7例中5例は中間観察期間12ヶ月でcCRを維持していたが,2例では脳転移が出現した.結語:HER2陽性転移再発乳癌においてPER+HER併用療法により完全消失,および長期CRを得る可能性が示された.

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症例

抗甲状腺薬投与によりANCA関連血管炎を発症したBasedow病の2例

小畠病院内分泌外科

和久 利彦 

 症例1は49歳女性。近医でバセドウ病の診断でMMI投与を開始。投与1か月で多関節炎を呈し投与を中止したが、症状悪化のため当院紹介。炎症反応・MPO-ANCA(144EU)の高値を認めたが、入院1週間後に関節炎が改善し、当院受診1か月後には関節炎の消失とMPO-ANCAの低下をみた。当院受診2か月後にMPO-ANCAは正常化し、MMI誘発AAVと診断した。当院受診3か月後に甲状腺全摘術を行ったが、術後に関節症状の発現はない。症例2は64歳女性。10年前バセドウ病の診断でPTU投与を開始。PTUを400mg/dayまで増量した後、炎症反応、紫斑、関節痛、腎機能障害、MPO-ANCA (67.6U/ml)高値を呈したことから薬剤誘発AAV疑われた。APTTの延長、LAC陽性も認めaaPLキャリアも疑われた。PTU中止後甲状腺全摘術を行い、術後1か月で臨床症状が消失し、術後16か月でMPO-ANCA改善・LAC正常化したことより、PTU誘発AAV・aaPLキャリアと考えられた。

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乳頭および皮膚浸潤が疑われた乳腺腺筋上皮腫の1例

JA山口厚生連周東総合病院外科

上田 晃志郎 他

 乳腺腺筋上皮腫は稀な乳腺腫瘍である.基本的には良性腫瘍に分類されるが,摘出標本が良性の腺筋上皮腫と診断されても局所再発や遠隔転移を発症した症例が報告されている.今回,乳頭および皮膚浸潤が疑われた乳腺腺筋上皮腫の1例を経験したので報告する.症例は80歳,女性.右乳腺腫瘤および右異常乳頭分泌を主訴に当科を受診した.右乳腺BDE領域に最大径5.2cmの腫瘤を触知し,乳頭陥凹と皮膚の発赤・浮腫を認めた.マンモグラフィでは境界明瞭平滑な分葉形の高濃度腫瘤を認め,皮膚の肥厚と乳頭陥凹を伴っていた.超音波検査では境界明瞭粗造で内部に嚢胞様構造を伴う分葉状の低エコー腫瘤を認めた.針生検では乳腺腺筋上皮腫と診断されたが,皮膚や乳頭への浸潤が否定できず乳房全切除術を施行した.摘出標本の病理組織診断では,皮膚への腫瘍細胞や炎症細胞の浸潤はなく,嚢胞様構造内の出血や皮下血腫を伴った良性の腺筋上皮腫であった.

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乳癌発症3例にリスク低減卵管卵巣切除を施行した遺伝性乳癌卵巣癌家系

星総合病院外科

長塚 美樹 他

 BRCA2関連乳癌3症例にリスク低減卵管卵巣切除術を施行した遺伝性乳癌卵巣癌症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome:HBOC)家系を経験したので報告する.発端者を含めた3姉妹中2名に乳癌,1名に大腸癌,父方いとこにも異時性両側乳癌が発症した.両側乳癌のいとこの父(父方おじ)は前立腺癌,その妹(父方おば)は卵巣癌であった.発端者が乳癌を発症した時に既にHBOCを疑わせる濃厚な家族歴があったためBRCA遺伝学的検査を行い,BRCA2に病的胚細胞変異を認めた.乳癌患者である妹といとこにも同じ変異を確認した.3症例ともluminal typeで,乳房全切除後,ホルモン療法を受けていた.3症例は遺伝学的にHBOCの診断がついており,子宮良性病変に対する外科療法や外科的内分泌療法としてリスク低減手術を念頭に置き,両側卵管卵巣切除を施行した.

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10年間肺炎を繰り返したのち根治手術を行った低悪性度肺粘表皮癌の1例

鳥取県立厚生病院外科

児玉  渉 他

 10年間肺炎を繰り返した肺粘表皮癌に対して,気管支形成を伴う肺葉切除術を行い,良好な経過をとった1例を経験した.【症例】40歳代女性.2006年に左肺炎と左上葉無気肺にて治療した.当時のCTで左上葉気管支内に0.8cmの結節影があり,その後も肺炎を繰り返したが,気管支鏡検査を拒否していた.2016年に精査を了承し,結節はCTで1.8cmに増大し,左上葉は無気肺だった.気管支鏡検査で,左上葉支口は腫瘍で閉塞していた.生検で悪性所見は検出しなかったが,臨床的にカルチノイド等を疑い手術を行った.術中病理検査で低悪性度肺粘表皮癌と診断し,左上葉切除とリンパ節郭清,気管支形成を行った.術後経過は良好で,術後2年再発は無い.低悪性度肺粘表皮癌の予後は比較的良好で,肺機能温存手術を積極的に選択する事が望ましい.本症例は10年前に気管支鏡で診断されれば,気管支形成は不要であったと考えられた.

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乳児期横隔膜弛緩症縫縮術18年後に発症した横隔膜瘢痕ヘルニアの1例

兵庫医科大学病院上部消化管外科

中西 保貴 他

 乳児期に診断された有症状の横隔膜弛緩症は縫縮術の適応となり,一般にその長期成績は良好である.症例は19歳男性.乳児期に左横隔膜弛緩症のため開胸縫縮術を施行されている.柔道練習中の突然の左上腹部痛をきたし来院した.CT検査にて左横隔膜外側より横行結腸の胸腔側への脱出を認めたため横隔膜ヘルニアと診断し,腹腔鏡下横隔膜修復術を実施.横行結腸と大網を腹腔側に還納すると,横隔膜縫縮部に一致しヘルニア門が確認され,創に沿うように脆弱個所を複数認めた.腹圧上昇による横隔膜瘢痕ヘルニアの嵌頓と判断し,ヘルニア門の縫合閉鎖後に周囲脆弱部を含めメッシュにて修復を実施した.特記すべき合併症なく術後第8病日に退院し,術後18ヵ月の時点で再発を認めていない.乳児期に横隔膜縫縮術を施行された場合,成人期においても腹圧上昇に伴うヘルニア発症を考慮する必要がある.

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Klinefelter症候群に併存したヘルニア嚢を有さないLarrey孔ヘルニアの1例

新久喜総合病院呼吸器外科

比嘉 花絵 他

 Klinefelter症候群に併存したヘルニア嚢を有さないLarrey孔ヘルニアの症例に対し, 腹腔鏡下修復術を行った. 症例は36歳の男性, 検診の胸部X線写真で胸部異常陰影を指摘され, 当院受診. 32歳の時に不妊精査の染色体検査でKlinefelter症候群の診断. 胸腹部CTで, 右の心臓横隔膜角に腹腔内から連続する微小な血管構造を含む脂肪識を認め, 横隔膜ヘルニアと診断. 腹腔鏡下に観察すると, 肝鎌状間膜左側に約6×4cm大のヘルニア門があり, Larrey孔ヘルニアであった. 肝鎌状間膜から連続する脂肪織を摘出し, ヘルニア門をComposix Mesh®で閉鎖し手術終了. 約3週間後の胸部CTではヘルニアの再発は認めなかった. Klinefelter症候群に併存するヘルニア嚢を有さない非常に稀なLarrey孔ヘルニアの症例を経験したため報告する.

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胸腔鏡下に切除した中部食道憩室(8.8×5cm)の1例

横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター外科

渡邊 勇人 他

 症例は57歳,男性.数年前より夜間のむせこみが出現し,健診の胸部レントゲン写真で食道憩室を疑われ,当院紹介となった.上部消化管内視鏡検査で切歯列35cm,胸部中部食道右壁に巨大食道憩室を認め,また憩室内にヨード不染を呈する0-IIc様病変を認め,生検にてsquamous intraepithelial neoplasiaであった.食道造影検査で同部位に88×50mm大の嚢状の造影剤貯留を認め,基部は22mmであった.CTでは憩室は心外膜,右肺下葉,肺静脈と接していた.症状があり,内腔に上皮内腫瘍の併存を認めたため,手術の方針となった.手術は腹臥位,胸腔鏡下にて施行した.憩室腹側と肺実質との癒着を剥離した後,内視鏡で内腔を確認しながら憩室を自動縫合器で縫合切離した.病理結果は真性食道憩室で,悪性像は認めなかった.巨大胸部中部食道は稀であるため,若干の文献的考察を加えて報告する.

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食道亜全摘後の胸壁前挙上空腸に発生した非閉塞性腸管虚血症の1例

名古屋第一赤十字病院一般消化器外科

水野 宏論 他

 症例は65歳男性、食道胃接合部癌の診断で、食道亜全摘、胃全摘、胸壁前経路有茎空腸挙上、頸部食道空腸吻合、Supercharge/drainage(左頸横動脈-第二空腸動脈吻合、第二空腸静脈-左上甲状腺静脈吻合)を施行した。術後7日目、肺炎を発症し、その翌日、胸壁皮下の空腸の膨隆、血液検査で炎症反応上昇、造影CTでの挙上空腸の壁肥厚と造影不良、周囲脂肪織濃度上昇を認めた。消化管内視鏡検査で挙上空腸に発赤、浮腫と多発びらんを認めた。3D-CT-angiographyにて挙上空腸の辺縁動脈に閉塞を認めなかったことから、肺炎を契機とした、挙上空腸の直動脈の攣縮による非閉塞性腸管虚血症(NOMI)と診断した。保存的治療により、術後13日目には腸管虚血は改善した。食道切除後の再建空腸にNOMIによる虚血性腸炎を合併することがあるが、早期に診断できれば保存的治療で改善することがある。

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胃GIST切除後に発生したデスモイド腫瘍の1例

公立豊岡病院外科

杉山 朋大 他

 症例は79歳男性.4年前に胃穹窿部に発生した28×27×23㎜ GIST(c-KIT陽性,CD34陽性 低リスク群)に対し開腹胃局所切除が施行された.術後は外来にて経過観察となっていた.術後2年4か月のCT画像にて胃切除部位に近接した大網内に28×27×23㎜の腫瘤が指摘された.GIST局所再発の疑いで開腹切除が施行され,fibromatosis(デスモイド腫瘍)の診断であった.
 近年,Gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)切除後の二次発がんの報告が散見されている.デスモイド腫瘍はGIST二次発がんの稀な例と考えられ,本邦では同様の報告はわずかに6例を認めるのみであった.最近の知見等,文献的な考察を加えてこれを報告する.

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切除により長期生存(7年6カ月)が得られた胃癌同時性単独脳転移の1例

国際親善総合病院外科

三島 江平 他

 胃癌の同時性単独脳転移の症例を経験したので報告する.症例は81歳男性で,突然の意識消失と痙攣のため救急搬送となった.頭部CT検査で右前頭葉に周囲浮腫を伴う1cm大の腫瘍性病変を認め,脳腫瘍に伴う症候性てんかんの診断で緊急入院となった.痙攣症状が薬物治療に不応のため準緊急で開頭脳腫瘍摘出術を施行した.病理診断は腺癌であった.原発巣診断目的で施行した上部消化管内視鏡検査及び腹部造影CT検査の結果,体下部小弯に周囲リンパ節の腫大を伴う3型の進行胃癌を認めた.画像上,腹膜播種や肝転移を含むその他の非切除因子は認められず,D2郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した.病理診断はT3(SS),N3aであった.術後経過は良好で4年間の無再発生存が得られた.胃癌の同時性単独脳転移の報告は少なく,外科的切除により長期生存が得られた稀な症例と考えられた.

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S状結腸憩室炎による結腸子宮瘻および子宮留膿腫の3例

深谷赤十字病院外科

藤田 昌久 他

 症例1は61歳女性、腹痛で受診した。CTでS状結腸は子宮と近接し、S状結腸憩室と子宮内ガスを認め、S状結腸憩室炎による結腸子宮瘻と診断し、S状結腸切除を行った。症例2は81歳女性、膿性帯下で前医を受診、子宮留膿腫の診断で経膣ドレナージを行った後、貧血精査目的に紹介となった。CTで子宮内にガスを含む液体貯留を、注腸でS状結腸憩室と造影剤の腸管外流出を認め、S状結腸憩室炎による結腸子宮瘻から生じた子宮留膿腫と診断し、S状結腸切除と瘻孔縫合閉鎖を行った。症例3は85歳女性、腹痛で受診した。CTで遊離ガス、S状結腸憩室、骨盤内膿瘍を認め、S状結腸憩室穿孔と診断したが、手術所見はS状結腸憩室炎による結腸子宮瘻から生じた子宮留膿腫穿孔であり、S状結腸切除と子宮両側付属器切除を行った。大腸憩室炎による結腸子宮瘻は極めてまれであり、大腸憩室炎による結腸子宮瘻から生じた子宮留膿腫の報告は本邦で初めてである。

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Tolvaptanによる腹水治療を行い切除した下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌の1例

静岡県立総合病院消化器外科

高木 哲彦 他

 下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌(Vv3 HCC)の切除成績は不良であるが,切除が求められるOncological emergencyな病態である. 今回,腹水を有する肝機能不良なVv3HCCに対して肝動注化学療法(HAIC)およびTolvaptanによる腹水治療を行い,腹水消失後に根治切除し, 良好な予後を得た1例を報告する.
 症例は56歳男性.肝硬変の治療中にVv3HCCと診断され,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を受けたが,治療効果に乏しく,当科紹介となった.切除予定であったが, 術直前に腹水出現を認め,手術中止しHAICおよびTolvaptanによる腹水治療を行った. 1か月後腹水消失, 新規病変や腫瘍栓伸展を認めず,切除可能と判断し,肝右葉切除 下大静脈腫瘍栓摘出術を施行した. 術後肝・肺転移再発を認めたがHAICおよびTACE, 放射線治療を施行し2年6か月経過現在, 生存中である.

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腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行したshockに至った胆嚢内破裂動脈瘤の1例

徳島赤十字病院外科

枝川 広志 他

 症例は74歳の男性.心窩部を主訴に前医を受診し,黄疸を認め当院に紹介となった.血液検査で閉塞性黄疸,腹部単純CTで胆石性胆嚢炎・胆道出血を認めた.上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部から出血を認め,ドレナージ目的に乳頭切開を施行した.その後,shock状態となり腹部造影CTで胆嚢内に動脈瘤を認めた.破裂胆嚢動脈瘤の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.病理結果では動脈瘤は壊死していた.動脈瘤からの出血が持続している場合,全身状態の安定を優先し動脈塞栓術が推奨されているが,本例はshock 状態に至ったため手術を選択した.今回われわれは破裂胆嚢動脈瘤に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

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術前に診断した大腸癌肝外胆管転移の1例

福山市民病院外科

籠浦 正彬 他

 症例は73歳の男性. 2015年11月にS状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行し, 病理診断はpT3N0M0, pStageⅡであった. 2017年2月に異時性肝転移を認め, 同年5月に肝拡大後区域切除及び6ヵ所の肝部分切除を施行した. 病理検査ではS状結腸癌の肝転移であり, 転移巣周囲に組織学的胆管侵襲を認めた. 同年11月にCEA上昇があり, 造影CTで三管合流部の総胆管に14mm大の結節影を認めた. ERCPとIDUSでは, 腫瘍が胆管壁から胆管内に発育する所見を認めた. 胆管擦過細胞診の免疫組織染色はCK7(-), CK20(+), CDX2(+)で, S状結腸癌の胆管転移と診断し, 肝外胆管切除及び総肝管空腸吻合を施行した. 摘出標本では, 胆管壁を主座とし内腔に突出する腫瘤を認め, HE・免疫染色共に原発巣と肝転移巣の病理所見と類似しており, 大腸癌の肝外胆管転移と診断した.

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手術7年後の胆嚢癌腎転移再発の1例

秀和総合病院外科

佐藤  拓 他

 症例は初診時73歳、女性。胆嚢癌に対して拡大右葉尾状葉合併切除、肝外胆管切除を施行。病理診断はtub1>2, CGnB, 結節浸潤型, 3.0×2.5×2.5cm, ss, pHinf0, pPV0, pA0, pN1, pDm2, pHm1, pEm1, fStage IIIb。術後、TS-1による補助療法を1年間行った。初回手術から5年後、造影CTで膵頭部に境界不明瞭な腫瘤を認め、内視鏡的逆行性胆管造影にて膵内胆管に占拠性病変を認めたため、膵内胆管再発と診断して亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行。腫瘍は2.5×2.0×1.8cm大で、前回と類似した組織型であった。2年後、右腎に2.5cm大の乏血性、辺縁不整な腫瘤性病変が出現した。DUPAN2高値のため転移再発を疑い、経腰的右腎摘を施行して病理組織学的に胆嚢癌腎転移と診断した。胆嚢癌の腎転移再発は稀であるため、文献的考察を加えて報告する。

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自然発生性parasitic leiomyomaの2例

鹿児島市立病院消化器外科

吉川 弘太 他

 Parasitic leiomyomaは,子宮から完全に分離した状態で発育する異所性平滑筋腫である.有茎性漿膜下筋腫が周囲臓器や腹膜,腹壁と癒着して栄養血管を獲得した後に子宮から茎部で離断される場合や自然脱落あるいは医原性に腹腔内に生着する場合がある.今回,稀な自然発生性parasitic leiomyomaの2例を経験した.(症例1)46歳,女性.稽留流産手術を契機に可動性のある骨盤内腫瘤を指摘された.大網からの栄養血管を有する腫瘤に対し,腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.(症例2)78歳,女性.小腸壁に固着した石灰化を伴う腫瘤を機転とした絞扼性イレウスに対し,緊急手術を施行した.2例ともに画像および病理組織検査により,parasitic leiomyomaと診断された.成人女性,特に子宮筋腫やその手術既往がある場合は,腹腔内腫瘤の鑑別診断として本疾患も考慮すべきである.

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虫垂腫瘍と鑑別が困難であった鼠径ヘルニア術後遅発性メッシュ感染の1例

大垣市民病院外科

岡本 和浩 他

 67歳男性.主訴は右鼠径部膨隆.1年前に他院にてKugel法による両側鼠径ヘルニア手術が施行された.術後は右側で皮下血種を認めたが保存的に軽快した.右鼠径部膨隆を主訴に当院を受診した.血液検査所見では炎症反応や腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.造影CT検査では虫垂先端が腹壁に接して腫大し周囲の軟部陰影増強を認め,FDG-PET検査では同部位に異常集積を認めた.虫垂腫瘍の診断で腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.腫大した虫垂は腹壁およびメッシュと一体化していた.感染ではなく悪性腫瘍と判断したためメッシュは可及的切除にとどまった.病理組織所見では虫垂は組織構造が保たれており,悪性所見や炎症所見を認めずメッシュ周囲には高度な好中球浸潤を認め,遅発性メッシュ感染による膿瘍形成と診断した.本症例は遅発性メッシュ感染により炎症が虫垂に波及し,FDG-PETで高集積を示したと思われた.

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待機的鏡視下腹膜外経由根治術を行った閉鎖孔ヘルニアの1例

JCHO中京病院外科

吉野 将平 他

 症例は75歳女性.既往歴:C型肝炎,くも膜下出血.急激な腹痛を主訴に近医受診し,大腿ヘルニアを疑われたため4時間後に当院へ搬送となった.圧痛は軽度で腹膜刺激症状は認めなかった.CTを施行し,右閉鎖孔ヘルニアRichiter型嵌頓と診断した.血液検査では腸管虚血を示唆する所見はなかった.発症から早期であり腸管壊死には至っていないと考え非観血的用手整復を超音波検査下に行った.整復後にCT撮影し腸管の還納を確認した.整復3日後に待機的に鏡視下腹膜外経由ヘルニア根治術(TEP法)を施行した.腹膜外経由で右閉鎖孔のヘルニア嚢を反転し,円靭帯を結紮切離してメッシュを展開しヘルニアを修復した.術後経過良好で術後3日目に退院した.閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対して非観血的用手整復後に待機的TEP法で治療し良好な結果を得られたため考察を加えて報告する.

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