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日本臨床外科学会雑誌 第80巻2号 掲載予定論文 和文抄録


臨床経験

地域連携ネットワークを用いた電子化胃がん連携パスの現状と課題

福山市民病院外科

淺海 信也 他

 かかりつけ医療機関と計画策定病院が協力して同じ診療方針の下に治療経過を共有しながら、より安全で質の高い医療を提供するためのツールとしてがん地域連携クリニカルパスが作成され運用されている。当院のある広島県東部の府中・福山圏域においても5大がんを中心に運用され、胃がんに関してはfstage Iの術後症例を対象とし、2012年4月から紙ベースで運用を開始し2016年4月からはより利便性を高める為に広島県で推進されている共通ネットワークインフラ(HMネット)を利用してかかりつけ医と計画策定病院の双方がリアルタイムに確認でき、紙ベースに比べてよりメリットのある新しい電子化地域連携パスシステムの構築を模索している。我々が進めているネットワークインフラを利用した地域連携パスの現状と課題を報告する。

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腸閉塞に対する高気圧酸素療法

東北大学消化器外科学

小野 智之 他

 目的:腸閉塞に対する高気圧酸素療法(Hyperbaric oxygen therapy : HBO)の効果を検討する。方法:当院において、2012年1月から2015年9月までに腸閉塞に対してHBOを施行した28例について患者背景ごとに奏功率、安全性を検討した。結果:全奏効率は75%であり、食事開始日数中央値はHBO開始後7日であった。奏功率は減圧チューブ併用群が42.9%、非併用群が85.7%と非併用群で良好であった。また麻痺性イレウスでは、奏効群では発症からHBO開始までの日数が早かった。合併症は安静困難と中耳スクイーズを6例に認めたのみであった。結論:腸閉塞に対するHBOは有効な症例が多く、安全に施行可能であり、麻痺性イレウスでは発症早期の開始にて効果を得られる可能性がある。

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症例

穿孔性十二指腸潰瘍を併発した甲状腺クリーゼの1例

みやぎ県南中核病院外科

嶋 健太郎 他

 症例は30歳女性. 全身浮腫, 心窩部痛を主訴に当院救急外来を受診した. 精査で上部消化管穿孔, うっ血性心不全を認め外科紹介となり同日臨時手術を施行した. 十二指腸に潰瘍穿孔を認め大網充填, 腹腔ドレナージを施行した. 術後にみられた高度の頻脈, 採血検査などから甲状腺クリーゼが疑われ無機ヨードを経鼻胃管より投与した. その後も循環動態が安定しないため, 大学病院高度救急救命センターへ転院搬送された. 全身状態の管理, 抗甲状腺薬の調整を行ない治療が継続された. 状態改善の後, 初回手術後18日目に当院へ帰院し, 48日目でリハビリ目的に他院に転院した. 甲状腺クリーゼは甲状腺機能亢進症が極端に増悪した状態で早期に治療を開始しなければ致死的となる疾患である. 今回我々は未治療の甲状腺機能亢進症患者が甲状腺クリーゼを発症すると同時に十二指腸潰瘍穿孔を合併したが救命し得た症例を経験した.

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乳腺線維腺腫内に発生した浸潤性乳管癌の1例

富士病院外科

伊藤 紗綾香 他

 症例は41歳、女性。左乳房にしこりを自覚して自治体検診を受診し、マンモグラフィーで石灰化の集簇を認めた。針生検を行い線維腺腫内に発生した浸潤性乳管癌と診断した。通常の乳癌に準じて左乳房部分切除術+センチネルリンパ節生検を行った。病理組織診断では線維腺腫内に増生する浸潤性乳管癌でER陽性、PgR陽性、HER2 0、Ki67 low(<10%)であった。術後はタモキシフェン内服を実施している。線維腺腫内に癌が発生することは非常に稀であり、今回われわれは線維腺腫内に発生した浸潤性乳管癌の症例を経験したので報告する。

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乳腺低異型度腺扁平上皮癌の1例

日本鋼管福山病院乳腺外科

藤井 清香 他

 乳腺の低異型度腺扁平上皮癌は化生癌に分類されるが,予後は良好な疾患である.今回,右乳癌に対し温存術を行い,8年後に同側乳房に低異型度腺扁平上皮癌を発症した1例を経験したので報告する.
 症例は43歳女性.右乳癌術後の経過観察中,超音波検査にて右乳房手術創近傍に低エコー腫瘤を認めた.針生検で浸潤性乳管癌と診断されたため,手術治療を行った.術後病理組織診断で低異型度腺扁平上皮癌と診断された.右乳癌と同時に左乳房にもDCISを認め,同時に手術を行った.術後,補助療法は行わず,経過観察中である.本疾患は,BRCA1遺伝子変異との関連が示唆されているため,遺伝性乳がん・卵巣がん症候群を念頭に置き,診断後のサーベイランスには注意を要する.

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乳頭部に発生し皮膚浸潤をきたした乳腺浸潤性小葉癌の1例

公立豊岡病院外科

福井 由紀子 他

 乳頭部乳癌はまれであり、そのほとんどが浸潤性乳管癌で、浸潤性小葉癌の国内報告はない。今回、乳頭部に発生し皮膚浸潤きたした浸潤性小葉癌を経験したので報告する。症例は62歳、女性。右乳頭部の出血を主訴に受診した。乳頭部に一部びらんを認めたが、マンモグラフィ、超音波では腫瘤を認めなかった。びらん部分の擦過細胞診はClass IIの診断であった。16ヵ月後の再受診時、右乳頭は初診時より硬く、悪性の可能性を考え乳頭部の皮膚パンチ生検を施行した。病理診断は浸潤性小葉癌の皮膚浸潤であり、右乳房全切除術+腋窩リンパ節郭清(level I)を行った。切除標本の病理組織診断は浸潤性小葉癌、T1N1M0 Stage IIAであった。術後1年3ヵ月経過した現在、無再発生存中である。

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脳梗塞を初発症状とした肺動静脈奇形の1例

北播磨総合医療センター呼吸器外科

小濱 拓也 他

 肺動静脈奇形(PAVM)は肺動静脈間に異常短絡を有する疾患で,右左短絡による奇異性脳塞栓症を呈することが知られている.症例は44歳女性.突然の頭痛,眩暈,構音障害を主訴に救急搬送された.頭部MRIで超急性期脳梗塞と診断され,遺伝子組み換え組織プラスミン・アクティベーター投与および抗凝固療法を施行し,神経症状の改善を得た.コントラスト経食道心エコー図検査を行い,マイクロバブルの左房への移動を確認した.胸部造影CT検査で左肺S10末梢に単発のPAVMを認めたので完全胸腔鏡下にPAVMの摘出術を施行し,良好な結果を得た.PAVMの治療はコイル塞栓術が第一選択といわれてきたが,再発の報告も散見される.末梢発生の単発病変であれば,簡便で確実,かつ低侵襲の胸腔鏡下手術も選択肢に加えられるべきである.若年者の脳梗塞症例に本疾患は鑑別診断の一つとして重要である.

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ステントグラフト内挿術を行った胸部大動脈瘤関連大動脈食道瘻の2例

松原徳洲会病院外科

平田 裕久 他

 【緒言】大動脈食道瘻はまれな疾患であるが、発症した場合は致死的となる。しかし未だ治療法は確立されていない。今回、ステントグラフト内挿術後に異なる経過をたどるも救命し得た2例を経験した。【症例】症例1は69歳、女性。発熱、背部痛、大量吐血を主訴に救急搬送。症例2は67歳男性、嚥下障害、大量吐血を主訴に救急搬送。いずれも造影CT検査で下行大動脈食道瘻と診断とされ、同日緊急ステントグラフト内挿術を施行された。症例1は食道瘻孔部単純閉鎖、広背筋弁充填、腸瘻造設術を行ったが、閉鎖部に縫合不全をきたし、胸部食道単純切除術後、二期的に消化管再建術を行った。症例2は一期的に消化管再建術を行った。いずれも3年以上、グラフト感染の兆候はない。【結論】大動脈食道瘻に対してステントグラフト内挿術を行い救命し得た2例を経験した。出血制御目的のステントグラフト内挿術、および感染制御のための食道切除が有用と考えられた。

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大動脈閉塞バルーンを用い手術した閉塞性黄疸を伴う13cm大肝動脈瘤の1例

大阪市立総合医療センター肝胆膵外科

塚本 忠司 他

 症例は53歳,男性.心窩部痛を主訴に近医受診.閉塞性黄疸を伴う総肝動脈瘤の切迫破裂の診断のもと当院紹介入院.肝動脈瘤は直径13cmで,解離は腹腔動脈分枝直後から認められ,脾動脈,左胃動脈の分枝直後から総肝動脈が瘤を形成しており左右肝動脈起始部まで嚢状を呈していた.動脈瘤によって腹腔動脈起始部や腹部大動脈の露出が困難であったため,大動脈閉塞バルーンカテーテル(intra-aortic balloon occlusion (IABO) catheter)を用いて腹腔動脈分岐部の中枢側で腹部大動脈を遮断した.動脈瘤を切開して瘤の内腔から総肝動脈の開口部を確認し同部を縫合閉鎖した.また瘤内腔から左右肝動脈の開口部を確認し,同部と左胃動脈とをY字を形成した大伏在静脈をグラフトとして吻合し再建した.術後血液検査値は順調に正常値に復し,術12日後に軽快退院した.術8年後の現在,健存中である.

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胸腔鏡下左上葉切除術を行った左上大静脈遺残を有する左肺癌の1例

JA北海道厚生連帯広厚生病院外科

武藤  潤 他

 心血管系の奇形を有する患者に対する肺癌の手術は、予期せぬ大出血を引き起こす可能性や、リンパ節郭清の障害となる場合がある。今回我々は左上大静脈遺残を有する左上葉肺癌患者に対して、胸腔鏡下左上葉切除術+ND2a-2を施行した。症例は64歳、女性。CTで左S1+2に27×20mm大の結節影を認め、さらに左上大静脈を認めた。副半奇静脈が大動脈弓部の側面を背側から腹側に通過し左上大静脈に流入していたため、副半奇静脈をテーピングしリンパ節(#5)郭清を行った。左上大静脈遺残はKeithによって3型に分類されているが、本症例はグループ(a)の左上大静脈が冠状静脈洞に開口するものに分類され、心奇形が無ければ左上大静脈遺残に対する手術は不要とされている。術前のCTで左上大静脈が肺静脈とは交通していないことを確認し、さらに術中も注意深く血管の確認を行うことで安全に完全胸腔鏡下左上葉切除術を施行できた。

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絞扼性腸閉塞を伴った特発性右横隔膜ヘルニアの1例

秋田赤十字病院消化器外科

升田 晃生 他

 成人において右横隔膜の腱中心をヘルニア門として特発性に横隔膜ヘルニアが発生し, 脱出回腸が絞扼壊死していた1例を経験した. 患者は89歳, 男性. 既往に腹部外傷はない. 腹痛, 嘔吐を主訴に救急外来を受診. 腹部は軽度膨満し, 心窩部に圧痛を認めた. 胸部単純X線写真, 及び胸腹部CT検査で右胸腔内に小腸が脱出し, また造影CT検査で脱出した腸管壁と腸間膜が造影不良であった.脱出腸管の絞扼を伴う右横隔膜ヘルニアと診断し, 緊急手術を施行した. 開腹すると, 肝右葉の腹側より回腸が右胸腔内に脱出して絞扼されていた. 脱出腸管を還納すると, 右横隔膜腱中心に約3cm大の欠損を認めたため, これを縫合閉鎖した. 回腸の約35㎝が壊死していたので部分切除した. 術後29日目に退院し, 以後再発は認めていない.

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術前に後腹膜腫瘤と診断された胃重複症の1例

高知大学医学部附属病院小児外科

大畠 雅之 他

 症例は10歳女児。間欠的上腹部痛で近医を受診した際の画像検査で左腎臓頭側に腫瘤性病変が認められ、後腹膜腫瘤の疑いにて当院に入院となった。病変は左腎臓、脾臓と境界が明瞭な長径62mmの嚢胞性病変であった。内腔に充実性成分は存在せず、副腎由来の腫瘍マーカーは正常であった。腹痛の軽快ともに病変の縮小を認めたが悪性腫瘍を否定することが出来ないと判断して外科的切除術を施行した。病変は胃底部背側から発生していたため上腹部開腹創からの観察のみでは確認することができず、胃底部を引き出す操作が必要であった。病変は胃壁筋層との交通を認めず、胃壁を損傷することなく切除された。切除標本内腔には白色混濁液が貯留しており、病理学的に胃重複症と診断された。本症例は一部胃壁との共有を認めたが胃重複症には完全に孤立した病変として存在する症例も報告されており、後腹膜嚢胞性病変の鑑別として念頭に置く必要がある。

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転移リンパ節の破裂による腹腔内出血で発症した進行胃癌の1例

渓和会江別病院外科

坂本 聡大 他

 患者は50歳、男性。突如出現した左側腹部のため救急搬送された。造影CTで膵体部に接する15cm大の腫瘤と腹水貯留を認め、腫瘤の破裂による腹腔内出血が疑われた。待機手術の方針として全身精査を行い、食道胃接合部癌の転移リンパ節の破裂および傍大動脈リンパ節転移の診断とした。化学療法は腫瘍崩壊症候群が懸念され時間経過により再出血のリスクがあると考え、手術先行の方針とした。胃全摘・膵体尾部合併切除を行った。術後に化学療法を継続している。胃癌による消化管出血は頻繁に遭遇する病態であるが、腹腔内出血を呈することは稀であり、転移したリンパ節が巨大化して破裂する4症例のみ報告されている。そのうち2例で緊急手術が選択され、そのうち1例は合併症のため術後約1か月半で死亡している。治療には巨大化した転移リンパ節の切除が必要となるが、拡大手術が必要な場合があり、手術時期や術式などの判断は慎重に行わなければならない。

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集学的治療が奏効したリンパ節転移を伴った胃内分泌細胞癌の1例

イムス三芳総合病院化学療法外科

三原 良明 他

 症例は73歳男性.貧血の原因精査で上部消化管内視鏡検査を施行し,胃体部小弯側の腫瘍生検で腺癌と診断された.腹部CTにて胃体小弯に高度リンパ節転移を認めたため,術前化学療法の方針とした.S-1/Cisplatin(CDDP)を2コース施行後,著明なリンパ節縮小を認め,胃全摘術・胆嚢摘出術を施行した.術後病理の免疫染色の結果,胃内分泌細胞癌, ypT3(SS), ypN0, M0, ypStageⅡAの診断となった.術後化学療法は,肺小細胞癌の治療に準じ,Irinotecan(CPT-11)/CDDPを2コース施行した.術後6ヶ月で腫瘍マーカーの上昇を認めたため,S-1内服を追加したところ基準値内まで低下し,現在再発所見は認めていない.
  胃内分泌細胞癌は稀なため,治療方法は確立されておらず,予後不良である.今回我々は集学的治療が有効と思われる胃内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.

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IgA血管炎による十二指腸・空腸多発潰瘍穿孔の1例

九州労災病院外科

堀岡 宏平 他

 症例は57歳の女性.1週間持続する腹痛のため当院に搬送された.上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚から水平脚にかけて輪状潰瘍を認め,生検では血管炎の所見であった.血液凝固第XIII因子の低下もあり,IgA血管炎による十二指腸潰瘍を疑ってステロイドの投与が開始された.入院12日目に腹痛が増強し,CT検査で腹腔内遊離ガスを認めたため当科に紹介された.十二指腸遠位から上部空腸の壁肥厚と腹水貯留を認め,十二指腸潰瘍穿孔および穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.十二指腸上行部と十二指腸空腸曲のすぐ肛門側の空腸の2ヵ所に穿孔を認めた.穿孔部を縫合閉鎖し,逆行性十二指腸ドレーンおよび順行性空腸ドレーンを留置した.術後縫合不全は認めなかったが,空腸穿孔部の狭窄を認めたため十二指腸空腸吻合術を施行した.術後119日目に軽快退院した.

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腸管嚢胞性気腫症経過観察中に判明した小腸壊死の1例

下関市立市民病院消化器外科

岡山 卓史 他

 症例は91歳女性で,嘔吐・腹痛を主訴に受診した.採血で白血球15480/μLと高値だったが,腹部所見は軽度の圧痛のみであった.画像では,腸管嚢胞性気腫症,腹腔内遊離ガス,門脈ガスの3所見を認めたが腸管の明らかな虚血所見はなかったため,胃管で減圧して経過をみていた.入院48時間後の造影CTで門脈ガスは消失していたが,腸管虚血が疑われたため,緊急手術で回腸部分切除を施行した. 前述の3所見がありつつ保存的に加療できた症例報告も存在するが腸管壊死の可能性を常に念頭に置き,慎重な判断が必要となってくる.

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大腸癌術後血行性小腸転移の1例

静岡赤十字病院外科

鈴木 嵩弘 他

 症例は60歳代,女性.盲腸癌と上行結腸癌の二重癌に対し右半結腸切除術を施行した.pT4a(SE)N1M0 StageⅢaと診断された.術後補助療法が施行され,無再発で経過観察されていたが.術後4年3ヶ月目に腹部骨盤腔CT検査で小腸腫瘤が指摘された.精査の結果,大腸癌小腸転移または小腸原発腫瘍が疑われ,小腸部分切除術を施行した.前回吻合部から210cm口側に,10×35mmの全周性の隆起性病変を認め.肉眼的には漿膜面への浸潤は見られなかった.病理組織学的にも大腸癌切除検体に類似した正常な粘膜の下に周囲との境界が明瞭な管状腺癌と粘液腺癌の混在した腫瘍を認めたため,大腸癌の血行性転移と診断した.患者の希望により術後補助化学療法は行わず,術後2年6ヶ月となる現在まで無再発生存中である.大腸癌の血行性小腸転移は稀であり,その治療や予後に関する報告は少ないため,文献的考察を加えて報告する.

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腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した遺残虫垂炎の1例

東京品川病院外科

村瀬 秀明 他

 症例は57歳、女性。7ヵ月前に他院にて急性虫垂炎に対して腹腔鏡下虫垂切除術を施行された。前日からの右下腹部痛を主訴に近医受診。抗生剤投与も改善せず、翌日当院を紹介受診した。体温は37.5℃で、WBC9,500/μl、CRP12.3mg/dlと炎症反応の上昇を認めた。腹部造影CTでは盲腸の尾側に管腔構造を認め、先端部にstapleを疑うhigh density areaを認めた。以上より遺残虫垂炎と診断し、緊急手術を施行した。10mm長の遺残虫垂を同定し、腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した。病理組織学的検査では、遺残虫垂に蜂窩織炎性の炎症を認めた。術後経過は良好で、術後7日目に退院した。

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ポリスチレンスルホン酸カルシウム沈着を呈した黄色肉芽腫性虫垂炎の1例

大津赤十字病院外科

中村 直人 他

 症例は72歳男性.糖尿病性腎症と片腎(右腎摘後)を原疾患とする慢性腎不全に対して腎臓内科で経過観察されていた.これに伴う高カリウム血症に対しポリスチレンスルホン酸カルシウム(calcium polystyrene sulfonate,以下CPS)を定期内服していた.経過中に黒色便・血便を自覚したため精査したところ,腹部CT検査で虫垂先端に腫瘤性病変を認めた.腹部造影超音波検査では虫垂先端部に嚢状の拡張があり,これは多房性の構造を呈し,造影にて粘膜の造影効果を示した.PET-CTでは虫垂には有意な集積を認めなかった.以上より虫垂粘液腫と診断し,回盲部切除術を施行した.病理組織学的検査では虫垂内にCPS結晶の沈着を伴う黄色肉芽腫性変化を認めた.このような組織学的形態を呈した虫垂炎の報告は本邦において初めてと思われる.CPS内服中の患者ではCPS関連の黄色肉芽腫性虫垂炎を念頭において診断・治療にあたることが必要であり、詳細な既往歴と服薬歴聴取が重要と考えられた.

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大腸内視鏡検査で発見されたクーゲル(R)パッチによる結腸穿通の1例

国立病院機構米子医療センター消化器外科

大谷  裕 他

 症例は38歳の男性.左鼠径ヘルニア嵌頓に対する緊急手術から約2年後,検診で便潜血反応の異常を指摘され,数回の内視鏡検査の結果,S状結腸内に過去の手術時に使用されたクーゲルパッチの一部が露出している事が判明した.自覚症状は無かったが,後に重篤な合併症を引き起こす可能性が高いと考え,根治術を施行した.まず腹腔鏡による観察で,左鼠径床とS状結腸の強固な癒着を確認し,剥離授動操作を進めた.そして必要最小限の開腹を加え,鼠径床のクーゲルパッチを含めてS状結腸切除を行った.術後1年以上経過したが,トラブルなく経過している.クーゲルパッチによる消化管穿孔・穿通の症例報告は数例しか無く,極めてまれなケースであると思われた.術者は,術式や使用するメッシュの形状に関わらず,このような重篤な合併症が起こり得る事を念頭に置いて治療にあたるべきである.

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盲腸軸捻・S状結腸軸捻を同時に発症した1例

JA北海道厚生連札幌厚生病院外科

園川 卓海 他

 症例は53歳,男性.幼少期のてんかん,精神発達遅滞の既往あり.嘔気,嘔吐を主訴に前医受診.腸閉塞の診断で2日間保存的に加療されたが,症状の改善に乏しく,当院へ紹介となった.胸部単純X線写真では,腸管の拡張とniveau像,腹部造影CTでは著明な腸管拡張,右下腹部で上腸間膜静脈を中心に腸間膜組織が渦巻き状に巻き込まれる腫瘤像(”whirl sign”)を認め,腸軸捻転症に伴う腸閉塞の診断で手術治療の方針となった.開腹すると,結腸全体の著明な拡張,盲腸及びS状結腸の捻転を認め,結腸亜全摘術を施行した.術後は麻痺性イレウスが遷延し,術後約3ヶ月で退院した.腸軸捻転症は腸間膜と共に腸管が捻転する病態であり,多くは単独箇所で生じ,複数箇所の捻転が同時に発症することは稀である.今回,盲腸軸捻転,S状結腸捻転を同時に発症した非常に稀な症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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Non-lifting sign判定の局所注射によって消失したS状結腸癌の1例

佐賀県医療センター好生館消化器外科

田中  太 他

 症例は63歳の女性. 下部消化管内視鏡検査でS状結腸に20mm大の0-Isp病変を認め、内視鏡的粘膜切除術のために腫瘍直下にエピネフリン・インジゴカルミン加グリセオールの局所注射を行ったところnon-lifting signを認めた. 外科的切除の適応と判断し腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行したが, 切除標本では潰瘍瘢痕を認めるのみで病理組織学的に癌を認めず, 消失したものと考えられた. 消失の機序として局所注射による腫瘍と正常組織の離開やエピネフリンの薬理作用である血管収縮による腫瘍の阻血により, 結果として壊死, 脱落, 潰瘍形成後, 瘢痕をきたした可能性が考えられた. 術前に本症例と同様に内視鏡処置が行われた場合は,病変部の消失が起こり得ることを念頭において外科手術を行う必要があると考えられた.

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右鼠径ヘルニア嚢内に嵌頓し穿孔をきたしたS状結腸癌の1例

新潟県立中央病院外科

鈴木  晋 他

 症例は81歳,男性.右鼠径ヘルニアおよびヘルニア内容であるS状結腸に癌が認められ手術予定であったが,術前検査中に右総腸骨動脈瘤を指摘され動脈瘤に対する治療を先行した.ステントグラフト内挿術後2病日に右鼠径部の膨瘤増大,腹痛,嘔吐があり,CTでヘルニア嚢内に嵌頓している結腸に穿孔が疑われたため緊急手術を施行した.鼠径部切開でアプローチすると,嵌頓しているS状結腸癌が穿孔しヘルニア嚢内に腸液が充満していた.腹腔内に汚染は認められなかった.侵襲を小さくするため正中切開は行わず,鼠径部切開創からHartmann手術を施行した.鼠径ヘルニアはBassini法で修復した.術後創感染を認めたが40病日に退院した.鼠径ヘルニアの嵌頓内容が大腸癌で,さらに穿孔した症例は極めてまれである.本症例は高齢で全身状態不良であったため切開創は鼠径部のみとし,また,吻合は行わず人工肛門造設し比較的良好な経過が得られた.

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経会陰アプローチで切除した下部直腸GISTの1例

岐阜大学大学院医学系研究科腫瘍外科学

水谷 千佳 他

 症例は57歳,男性.会陰部違和感を主訴に近医を受診し,肛門腫瘤を指摘され当院紹介となった.生検でgastrointestinal stromal tumor(以下 GIST)と診断された.画像検査では,直腸(Rb-P)前壁から壁外に突出し尿管を腹側へ圧排する約6cm大の腫瘤性病変を認めた.腫瘍縮小を期待して半年間のメチル酸イマチニブ投与後に根治術を行うこととした.術式は腫瘍が会陰部に近く,腫瘍の輪郭を会陰部皮膚から触知可能であり,経腹的アプローチでなく経会陰的腫瘍切除術を選択した.術後は合併症なく経過し,術後第13病日で退院した.経会陰的アプローチは,腸管切除吻合を要する他の術式と比較し低侵襲である一方,前立腺および尿道損傷や性機能障害のリスクが挙げられる.経会陰的に直腸GISTを切除した症例は報告が少ないが,腫瘍が低位直腸に局在する症例には良い適応であり今後多くの症例集積が期待される.

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腹腔鏡下肝内異物摘出術を行った魚骨の胃壁穿通による肝膿瘍の1例

JCHO九州病院外科

堤  親範 他

 症例は41歳男性。発熱と心窩部痛を主訴に近医を受診し、CTで内部に高吸収域の線状陰影を伴う肝膿瘍を指摘された。食餌摂取歴から魚骨の胃壁穿通による肝膿瘍が疑われ、抗生剤投与下に継続加療目的に当科紹介となった。腹腔鏡下肝内異物摘出術を施行し、術中超音波検査を異物の同定および遺残の確認、ならびに周囲脈管の評価に用いた。術後経過は良好であった。魚骨の胃壁穿通による肝膿瘍における待機的異物摘出術として低侵襲かつ拡大視が可能な腹腔鏡下手術は有用であった。一方で、術中の触診は困難であり、補完的な術中超音波検査の併用が有効であった。

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肝切除で治癒したK.pneumoniae起因難治性肝膿瘍の1例

JCHO東京山手メディカルセンター消化器外科(上部消化管・肝胆膵外科)

柴崎 正幸 他

 Klebsiella pneumoniae 起因肝膿瘍に対して抗菌剤投与と経皮経肝膿瘍ドレナージ(percutaneous transhepatic abscess drainage;以下PTADと略記)の治療を行ったが、敗血症を併発したため保存的治療開始35日目に準緊急的に肝右葉切除術を行い、その後順調に経過した症例を報告した。今回の報告例の様に保存的治療に抵抗性で外科治療を必要とする症例もいまだに存在する。細菌性肝膿瘍に対する手術適応の判断は困難であるが、画像診断の特徴(多発膿瘍、大きな膿瘍、隔壁により隔絶された膿瘍、厚い被膜を有する膿瘍、胆道病変の合併など)、膿の性状(高い粘稠度)、起因菌を総合的に考慮し、保存的治療が奏効しない場合には肝切除は速やかな回復が得られる有効な治療手段であり、細菌性肝膿瘍の治療にあたる際には選択肢の1つとして考慮しておくべきと考えられた。

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腹腔鏡下肝切除を行った分類不能型肝細胞腺腫の1例

兵庫県立がんセンター消化器外科

山根 秘我 他

 患者は16歳、女性。経口避妊薬やステロイドの内服歴はなく、特記すべき既往歴は認めない。上腹部痛を認めたため前医を受診し、腹部超音波検査にて肝S5に3cm大の低エコー腫瘤を指摘されたが、本人の希望で経過観察となっていた。1年後の同検査にて5cm大まで増大しており当科紹介受診となった。造影CTにて肝細胞腺腫と診断され悪性転化の可能性が否定できないため、腹腔鏡下部分肝切除術を施行した。病理学的診断は分類不能型の肝細胞腺腫であり、現在術後2年が経過しているが無再発生存中である。非常に稀な分類不能型の肝細胞腺腫の1例を経験したので、文献的考察を加え報告する。

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吐血を契機に発見された膵神経内分泌腫瘍の1例

昭和大学江東豊洲病院消化器センター

保母 貴宏 他

 症例は42歳男性.201X年6月に吐血にて前医へ緊急搬送され内視鏡的止血処置がなされた.造影CTで60㎜大の膵尾部腫瘍と脾腫,脾静脈の怒張,胃静脈瘤が認められた.脾静脈への腫瘍浸潤と腫瘍塞栓形成による左側門脈圧亢進症に起因する胃静脈瘤からの出血と診断され,精査加療の目的で当院へ紹介された.腫瘍は造影CTの動脈相で不均一に高吸収,静脈相で軽度低吸収となり膵神経内分泌腫瘍を疑った.血液生化学検査で膵ホルモンの上昇を認めなかった.再度施行した上部消化管内視鏡では胃体上部後壁に壁外圧迫性の隆起性病変と胃静脈瘤を認めた.超音波内視鏡下穿刺吸引法による細胞診はclassⅤ,組織診は神経内分泌腫瘍の診断であった.左側門脈圧亢進症を伴った膵尾部神経内分泌腫瘍と術前診断し膵体尾部切除,脾摘,胆摘,胃全摘,結腸部分切除を施行した.吐血を契機に発見される膵神経内分泌腫瘍は稀であり,その病態の考察を加え報告する.

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腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した25cm大の脾海綿状血管腫の1例

山口大学大学院医学系研究科器官病態外科学

末廣 祐樹 他

 原発性脾腫瘍は稀な疾患であり,脾嚢胞,血管腫,リンパ管腫,過誤腫,悪性リンパ腫,転移性腫瘍,血管肉腫などが報告されている.今回われわれは,術前に脾動脈塞栓術を施行し,脾門部先行処理で腹腔鏡下脾臓摘出術を施行し得た本邦最大級の脾海綿状血管腫症例を経験した.
 症例は31歳,女性.約2年5ヶ月前に腹部エコーにて脾腫瘤を指摘され,無治療経過観察されていた.嘔気を主訴に受診し,25cm大の巨大な脾原発脾血管腫と診断された.出血予防と脾臓の体積減少目的で手術前日に脾動脈塞栓を施行した.脾動脈塞栓後より強い腹痛を認めたが,硬膜外麻酔と経口鎮痛剤を併用し疼痛コントロールは可能であった.脾門部先行処理で腹腔鏡下脾臓摘出術を施行し,術後合併症は無く第9病日に軽快退院となった.巨大な脾腫瘍に対する腹腔鏡手術における工夫と文献学的考察を含めて報告する.

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大網に被覆されて存在した卵巣由来と考えられる成熟嚢胞性奇形腫の1例

安城更生病院外科

福山 貴大 他

 症例は62歳の女性.13年前他院で左卵巣の成熟嚢胞性奇形腫に対し左付属器摘出術を受けた.右下腹部痛を訴え近医を受診し,腹部US検査で腹腔内腫瘤を指摘され当院紹介となった.腹部US検査で右下腹部に径6cm大の類円形の嚢胞性病変を認めた.造影CT検査で同病変は脂肪織に囲まれ,境界明瞭な石灰化被膜構造からなり,内部に結節性病変を認めた.周囲臓器への浸潤は認めなかった.MRI検査では内容は主に脂肪成分であることを示した.以上から大網に被覆され存在する成熟嚢胞性奇形腫と臨床診断し切除術を施行した.病理組織検査では,嚢胞性被膜は石灰化を伴った線維性組織からなり,腫瘍性増殖像,核異型は認めなかった.被膜構造には一部に卵巣組織を認めた.内部の結節性成分は毛髪や骨組織を含んでいた.以上から,卵巣成熟嚢胞性奇形腫が大網へ播種し被覆され成長したと考えられた.術後経過は良好で,術後第4病日に軽快退院した.

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仙骨前面low grade fibromyxoid sarcomaの1例

済生会滋賀県病院外科

飯高 大介 他

 Low grade fibromyxoid sarcoma (以下,LGFMSと略記)は稀な軟部腫瘍であり,長期的に転移再発を来たす悪性の臨床像を呈する.今回、骨盤内LGFMSの1例を経験したので報告する.症例は40代男性で便通異常を主訴に来院した.腹部造影CTにて仙骨前面に約11cm大の腫瘤性病変を認めた.術前に経直腸的に穿刺生検を施行したが確定診断は得られなかった.経仙骨及び経腹アプローチで剥離断端を確保し腫瘍摘出,直腸低位前方切除術を施行した.病理組織所見では線維成分と粘液腫様成分の混在より成っており,免疫染色でMUC4陽性であることを併せてLGFMSと診断した.術後経過は良好で術後3年を経て再発を認めていない.仙骨前面のLGFMSは極めて稀ではあるが,軟部腫瘍の鑑別診断として考慮すべきであり,またその再発までの期間は長期にわたるため経過観察が必要である.

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腹直筋鞘前葉反転法と遊離大腿筋膜で修復した再発腹壁瘢痕ヘルニアの1例

足利赤十字病院外科

松田 圭央 他

 症例は45歳,女性.12年前,帝王切開後の絞扼性イレウスに対し,小腸切除,人工肛門造設,その後,閉鎖術が施行された.8年前,人工肛門閉鎖部の腹壁瘢痕ヘルニアに対しヘルニア修復術(単純閉鎖法)が施行され,5年前に腹壁瘢痕ヘルニア再発を認めた.最近,疼痛が出現し当科を受診.CT検査上,径15mmと径30mmのヘルニア門を右側腹部に確認した.18年前より皮膚筋炎と診断されプレドニゾロン10㎎を内服中で,組織の脆弱性,中心性肥満体型のため単純閉鎖法は再々発のリスクが高い.また,易感染宿主でありメッシュを使用しSSIを生じた場合,その治療に難渋する可能性も高い.そこで,腹直筋鞘前葉を反転しヘルニア門を閉鎖,さらに大腿筋膜を自家移植するヘルニア修復術を選択した.再発性腹壁瘢痕ヘルニアは組織の脆弱性より,再々発のリスクは高い.患者背景に合わせた術式の選択が再発率の低下につながると考えられた.

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