トップ > 会員のみなさま > 日本臨床外科学会雑誌 最新号 和文抄録

日本臨床外科学会雑誌 第79巻11号 掲載予定論文 和文抄録


症例

保存的に治癒した左乳癌術後乳糜漏の1例

愛知厚生連江南厚生病院外科

野々垣 彰 他

 症例は49歳,女性.3ヵ月前からの左乳房のしこりを主訴に当院を受診した.精査の結果,左AC領域の浸潤性乳管癌,病期cT2cN0cM0 cStageⅡAであった.左乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を行った.センチネルリンパ節転移陽性で,腋窩郭清術(LevelⅠ)を追加した.術直後より腋窩部ドレーンから漿液性排液を認めた.術後1日目(post operative day1,以下POD1)の夕食摂取後よりドレーンから252mlの白濁した排液を認め,乳糜漏と診断した.POD2より脂肪制限食に変更した.排液量は徐々に減少し,POD5より漿液性となり,POD7にドレーンを抜去し,POD10に退院となった.
 乳癌術後の乳糜漏は非常に稀な合併症であり,今回,保存的治療により治癒し得た1例を経験したので,その病態や治療法を中心に,文献的考察を踏まえて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

男性乳房Paget病の1例

九州医療センター乳腺外科

仕垣 隆浩 他

 男性乳癌は全乳癌の1%以下であり,さらに男性乳房Paget病は全乳癌の約0.5%ときわめてまれな疾患である.症例は78歳の男性で4年前より左乳頭部のびらんを自覚するも放置していた.2ヶ月前より症状が増悪し,左乳頭びらん部の皮膚生検でPaget病の診断となった.乳房超音波検査で左乳頭皮膚肥厚、豊富な血流を伴い, MRIで左乳頭の腫大,表層に早期濃染像が見られた. 左乳房Paget病の診断で左乳房切除術を行い,センチネルリンパ節生検はOSNA法で陰性であり,腋窩リンパ節郭清は省略した.組織学的には乳頭表皮内にPaget細胞の増殖を認め,免疫組織化学染色ではER60%,PgR-,HER2(3+),GCDFP-15+を示した.真皮内の一部にmicroinvasionを認めたが,乳管内進展や著しい浸潤巣は観察されなかった.今回,男性乳房Paget病の症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

同時性対側乳癌を併存した乳腺悪性リンパ腫の1例

関西メディカル病院乳腺外科

若宮 志織 他

 乳腺原発悪性リンパ腫は乳腺悪性腫瘍全体の0.4 - 0.5%と言われている。乳腺悪性リンパ腫に同時性対側乳癌を併発したさらに稀な1例を経験したので報告する。
 症例は62歳女性、右乳房腫瘤を主訴に当院を紹介受診。右乳房DE領域に4.5×3.5cm大の腫瘤を触知。針生検でnon-Hodgkin lymphomaと診断され、PET-CTでは右乳腺腫瘤・右腋窩リンパ節以外の他臓器へのFDG集積は認めなかった。乳腺造影MRIで同所見に加え、左乳腺腫瘍が疑われたため、左乳腺の超音波検査を再検したところ同部に低エコー領域を認め、針生検で浸潤性乳管癌の診断。左乳房切除術・センチネルリンパ節生検を施行後、血液内科でR-CHOP療法を施行。
 乳腺原発悪性リンパ腫は稀で両側発生率が高い疾患だが、治療方針が通常の乳腺悪性疾患とは異なる。他病巣が示唆された場合、其々を病理組織検査で確認する必要があると考える。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

局所麻酔下に切除した100歳の乳腺浸潤性微小乳頭癌の1例

倉敷市立市民病院外科

川﨑 伸弘 他

 今回、我々は100歳の超高齢者に生じた浸潤性微小乳頭癌(Invasive micropapillary carcinoma, 以下 IMP)を経験した. 症例は100歳の女性. 外傷時のCT検査で右乳房腫瘤を指摘され当科紹介となった. 局所麻酔下に乳腺部分切除を行ったところ, 摘出組織の病理検査で, 微小乳頭状の癌胞巣が増殖した特徴的な組織像を呈しIMPであった. 初診時のCTで遠隔転移所見なく, 術後照射や補助薬物治療は行っていない. 本邦で報告されている100歳超の乳癌症例は極めて少なく, 本邦最高齢のIMPと考えられる. 予後不良といわれるIMPではあるが, 切除後2年たった現在も良好な経過となっている. 悪性度の高い組織型であっても, 超高齢者乳癌に対する局所切除は有用な治療となりうる.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Bevacizumab投与後に胸壁穿通をきたした局所進行乳癌の1例

長崎大学病院腫瘍外科

内田 史武 他

 症例は41歳女性,右乳房の腫瘤と疼痛を主訴に前医を紹介され,右乳房に17cm大の腫瘤と著明な浮腫,皮膚結節を認め,腋窩に6cm大のリンパ節を認めた。穿刺吸引細胞診では硬癌,ER(-),PgR(-),HER2 score3であり,遠隔転移を認めなかった。cT4dN3cM0,cStageⅢCの診断で,前医で2ケ月間化学療法を行われるもPDであり,当科紹介となった。その後複数レジメンにわたる化学療法と局所コントロール目的の放射線照射が行われるも,局所の進行,他臓器転移(肝,骨,肺)が出現し,当科での治療開始後13ケ月でbest supportive careの方針となった。間もなくして右胸壁が穿通を来した。呼吸状態は安定しており,在宅加療希望で退院し,1ケ月後に永眠された。胸壁穿通を来した局所進行乳癌は極めて稀であり,文献的考察も含めて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ステロイドが著効をみた血小板減少症とPAIgG高値を伴う再発乳癌の1例

県立がんセンター新潟病院乳腺外科

諸  和樹 他

 症例は69歳女性.52歳時右乳癌に対し,右乳房部分切除+腋窩郭清を施行.硬癌T1N2M0 Stage IIIA,ER+,PgR-,HER2score 0の診断.術後放射線療法及びCMF療法,ホルモン療法を施行,再発なく10年目に終診.66歳時に乳癌多発骨転移,骨髄癌腫症の診断で薬物療法が開始され,67歳時に脳転移,髄膜癌腫症の診断で全脳照射,抗癌剤髄注療法を施行.その1.5ヵ月後に急激な血小板減少を認めた.原因として骨髄癌腫症の増悪や薬剤による骨髄抑制を疑い,血小板輸血を連日行ったが血小板数は改善しなかった.一方,鑑別診断目的のPAIgG測定で高値を認め,自己免疫による血小板減少を疑い,PSL60mg/dayの投与を開始.投与翌日より血小板数は著明に改善し,その後半年間は自宅療養可能であった.がん終末期では輸血を要する症例も散見されるが,病態によっては輸血から離脱できる症例も存在する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

外傷後の遅発性血胸の1例

金沢医科大学呼吸器外科

関村  敦 他

 症例は26歳男性。自転車で転倒し、近医を受診。左第6、第7肋骨骨折のため経過観察目的で入院となった。受傷後2日目に、胸部X線写真では異常を認めないために、退院となったが、同日夕方に、突然の左胸痛の増悪を認め、退院した病院を再度受診し、胸部X線写真・CT上、左の大量血胸を疑われ当院へ転院搬送された。救急外来で胸腔ドレーンを留置したところ、血性胸水800mlの流出を認めた。出血性ショックと診断し、直ちに緊急手術を行った。当初、胸腔鏡での観察では明らかな出血源が同定できなかったものの、カメラポート直下の横隔膜に裂傷を認め、同部位からの出血であることが確認できた。同部位を縫合閉鎖、止血して手術を終了した。術後経過は良好で、術後5日目に退院となった。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

多発性骨髄腫を重複し骨転移と鑑別を要した肺癌の1例

JA広島総合病院呼吸器外科

熊田 高志 他

 症例は62歳,男性.外傷性くも膜下出血で加療中,CT検査で左肺上葉S1+2に1.8cmの結節影を指摘され,同時に複数の骨融解病変を認めた.FDG-PET検査では肺結節影に一致してSUVmax:3.0の集積を認めるほか,骨病変に軽度集積を認めた.骨病変が肺癌の骨転移でなければ根治術の適応と考え,全身麻酔下に生検術を行う方針とした.初めに腹臥位で腸骨病変の生検を行い,迅速病理検査で骨髄腫の診断が得られた.続いて右側臥位で分離肺換気とし,肺病変の生検を行ったところ,腺癌と診断された.ⅠA期の肺癌と判断し,左上葉切除とリンパ節郭清を施行した.多発性骨髄腫に対しては,術後に血液内科へ紹介し化学療法が行われた.多発性骨病変を認めたが,安易に骨転移と断定せずに積極的に生検を行い,肺癌に対する根治術が施行できた.多発性骨髄腫を合併した肺癌は比較的まれであり,若干の文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

化学放射線療法後PET-CT陽性を示した病理学的完全奏効食道癌の1例

岩手医科大学外科

梅邑  晃 他

 症例は64歳、女性。嚥下困難を主訴に受診し、上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy:EGD)で胸部食道に2型腫瘍を認め、生検で扁平上皮癌であった。治療前診断T3N1M0 Stage IIIとしてbiweekly DCFによる導入化学療法を開始したが高度肝障害を認め中止し、low dose FP療法を併用した化学放射線療法(chemoradiotherapy:CRT)を施行した。後治療を1年間継続しPET-CT検査を施行したところ局所に集積を認めた。EGDやCT検査で腫瘍の確定診断は得られず食道癌再燃と診断し救済手術を施行したが、病理学的完全奏功であった。本症例のように原発巣の遺残や再発の確定診断を得られない場合にPET-CT検査が有用であるとの報告があるが、感度や特異度、腫瘍のviability評価や治療の効果判定に関してはさらなる検討が必要である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

止血用クリップにて内視鏡下に修復した食道癌術後胃管穿孔の1例

済生会滋賀県病院外科

飯高 大介 他

 食道癌術後合併症で胃管穿孔は稀な合併症である.今回、我々は食道癌術後早期に胃管穿孔を発症し,止血用クリップにて上部消化管内視鏡下に閉鎖した1例を経験したので報告する.症例は70歳代の男性で,食道癌に対して術前化学療法を施行した後に縦隔鏡下食道亜全摘,胸骨後経路胃管再建,3領域リンパ節郭清術を施行した.術後16日目に胸部CT画像検査で胃管壁の破綻を認め,術後17日目の上部消化管内視鏡で胃管穿孔と診断した.術後21日目に止血用クリップにて胃管穿孔部を閉鎖した.その後,再穿孔を認めなかったが,術後123日目に再発死亡された.食道癌術後早期の胃管穿孔に対しては,胃管切除・2期的再建が施行されることが多いが,自験例のように止血用クリップを用いて内視鏡的に閉鎖する方法も選択肢の一つと考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

膵頭十二指腸切除術後総肝・脾動脈仮性瘤への塞栓術による虚血性胃穿孔の1例

茨城県立中央病院外科

板本 孝太 他

 症例は63歳男性。膵頭部癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除、門脈合併切除再建術を行った。術後12日目に総肝動脈仮性瘤破裂をきたし、総肝動脈コイル塞栓術を施行、さらに術後17日目に脾動脈仮性瘤破裂をきたし、腹腔・脾動脈コイル塞栓術を行った。この際肝動脈血流温存のため、アンスロン®P-Uカテーテル(ヘパリン使用体内植込用カテーテル)を用いた。
 胃の虚血が懸念されたため、上部消化管内視鏡で粘膜の観察を行った。塞栓直後に前庭部大彎の粘膜が暗紫色に変化し、壊死・脱落した。その後一旦は色調が改善したが、塞栓後17日目に発熱があり、胃角部前壁と大彎後壁の穿孔を認めた。再手術も検討したが、保存加療を継続し、塞栓後36日目に穿孔は閉鎖、41日目に自宅退院となった。
 胃は虚血に強いとされる臓器だが、総肝・脾動脈塞栓後の虚血性胃穿孔においても保存的に治癒した。その要因について、文献的考察を含め報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Rhabdoid featureを呈した胃未分化癌の1例

順天堂大学消化器・低侵襲外科

松尾 祐太 他

 症例は76歳,男性.黒色便,貧血を認めた.上部消化管内視鏡検査で胃体上部前壁に隆起性病変を認め,生検は低分化型腺癌の診断であった. 胸腹部CT検査で胃体上部の壁肥厚と小弯リンパ節の腫大を認めた.胃癌の診断にて脾摘を伴う腹腔鏡下胃全摘術を施行した.切除標本肉眼所見では胃体上部前壁に14 x 11 cm大の隆起性病変を認めた.病理組織学的所見では大部分が未分化な腫瘍細胞で構成され,クロマチン過染性を示す偏在する核と好酸性な細胞質を持つrhabdoid cellを多く認め,免疫組織化学染色ではcytokeratin,vimentinが陽性であった.以上よりrhabdoid featureを呈する胃未分化癌と診断した.現在、抗癌剤内服治療中であり術後13ヶ月,再発を認めていない.今回われわれはrhabdoid featureを呈した胃未分化癌の一例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下十二指腸空腸吻合を施行した膵癌局所再発による悪性狭窄の1例

神戸市民病院機構神戸市立医療センター西市民病院外科

村上 哲平 他

 症例は77歳女性, 7カ月前に膵尾部癌にて脾・横行結腸合併膵体尾部切除術を施行した. 嘔吐を繰り返すようになり緊急入院となった. 画像検査結果より, 膵癌局所再発による十二指腸空腸曲の通過障害と診断し, 腹腔鏡下十二指腸空腸吻合術を行った. 術後経過は良好で化学療法も導入した.
 胃十二指腸の悪性狭窄に対する外科治療としては胃空腸バイパス術が広く行われているが, 食物通過経路がより生理的で低侵襲に施行可能な本術式は,集学的治療の一環として有用であると考えられたため報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腸瘻チューブが原因で発症した腸重積の1例

大阪市立大学大学院医学研究科腫瘍外科学

田内  潤 他

 症例は65歳の男性,体重減少,嘔吐症状を契機に食道胃接合部癌と診断され,開腹胃全摘術,経裂孔的下部食道切除術,結腸前経路Roux en-Y法再建を施行,術後の栄養療法目的に腸瘻造設術を併施し,12Frの腸瘻チューブを留置した.術後18日目,持続する発熱の精査目的に,CT検査を施行したところ,腸瘻チューブに沿って小腸のtarget signを認め,腸重積症と考えられた.上部消化管内視鏡で整復を試みたが困難であり,緊急手術を施行した.Y脚吻合部より約10cm肛門側の空腸から約10cmに渡り順行性の重積を確認した.Hutchinson手技にて整復を試みたが,腸管壁が全層に裂けたため,損傷部を含めて小腸を10cm部分切除した.再手術後問題なく経過し,再手術後13日目に退院となった.今回,われわれは腸瘻チューブが原因となった比較的稀な成人腸重積症の1例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術前診断が困難であった小児(14歳)腹部放線菌症の1例

岩手県立久慈病院外科

石岡 秀基 他

 症例は14歳男児.5日前からの腹痛を主訴に近医を受診した.急性虫垂炎が疑われ,当院へ紹介となった.体温38.3℃,右下腹部に圧痛および反跳痛を認めた.血液検査で白血球およびCRPの上昇,造影CTで回盲部に膿瘍を認め,周囲の脂肪織濃度上昇を認めた.穿孔性虫垂炎に伴う腹腔内膿瘍の疑いで,緊急手術を行った.腹腔鏡下に開始したが,骨盤内で肥厚した大網と腸管が一塊となっており鉗子の操作空間がなく,開腹へ移行した.回盲部で大網と回腸が強固に癒着しており,同部位に8cm大,4cm大の腫瘤を2個認めたことから,炎症の主座と判断して,回腸部分切除,虫垂切除を行った.摘出標本の膿瘍内に放線菌の集塊を認め,腹部放線菌症の診断に至った.術後一過性のβ-D-グルカン高値を認めたが,原因は不明であった.術後1年が経過したが,再発はみられていない.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Laparoscopic interval appendectomyによって診断された卵巣癌虫垂転移の1例

洛和会丸太町病院外科

中村  慶 他

 症例は81歳女性。3日前より続く心窩部痛を主訴に当院受診。腹部CTにて虫垂内部の糞石とその周囲に32mm大の腫瘤影を認め、急性虫垂炎による限局性腹膜炎および腹腔内膿瘍の診断で抗生剤投与を開始した。保存的加療によって炎症は沈静化し、画像検査で膿瘍の縮小を認めたため、腹腔鏡下待機的虫垂切除術(Laparoscopic interval appendectomy)の方針とした。手術所見では、虫垂は右卵巣と強固に癒着していたが、明らかな腫瘍性病変は認めなかった。病理組織学的検査で、虫垂粘膜に病変を認めなかったが、漿膜下層に腺癌を認め、免疫染色の結果から卵巣癌虫垂転移と診断した。高齢者の急性虫垂炎では、転移性虫垂腫瘍の存在を念頭に置く必要がある。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術前診断し単孔式腹腔鏡手術を行ったMeckel憩室内翻による腸重積の1例

横浜総合病院消化器センター

土井 雄喜 他

 症例は39歳男性,2週間前からの下腹部痛を主訴に受診した.腹部造影CT検査では回腸に腸管壁の重複輪状影が描出された.腫瘍による腸重積を疑い,ダブルバルーン小腸内視鏡および小腸造影を施行した.回腸末端から100cm口側の回腸にKerckring襞壁を伴う陰茎様小腸腫瘍を認め,生検結果にて幽門腺類似組織が見られ,Meckel憩室内翻による腸重積が強く疑われた.単孔式腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.切除標本において小腸内腔に突出する真性憩室であり,異所性胃粘膜と膵組織が確認され.術前診断に矛盾しない結果であった.術後経過は良好,第6病日に退院した.成人腸重積の原因としてMeckel憩室内翻はまれであるが,術前に確定診断し悪性疾患を否定しえたことでリンパ節郭清を省略できた.また小腸は可動性があり煩雑な術中操作を要しないため,単孔式腹腔鏡手術のよい適応であると考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

水溶性造影剤の注腸が効果的であった宿便による閉塞性大腸炎の1例

野上病院外科

藤  智和 他

 症例は81歳女性で、排便停止と腹部膨満を主訴に受診した。腹部CTではS状結腸が便塊により閉塞し口側腸管が拡張していたが、腸管虚血や腹膜炎は認めなかった。白血球3万/µlと異常高値であり、閉塞性大腸炎によるbacterial translocationが疑われた。
 全身状態が安定していたため緊急手術待機下で下部内視鏡検査を施行した。水溶性造影剤による注腸により便塊の除去に成功し大量の排便を認めたために厳重な経過観察の方針とした。翌日の腹部CTで結腸壁の浮腫が出現したが、腹膜炎やショックを来すことなく採血所見も速やかに改善した。第7病日の下部内視鏡検査ではS状結腸~横行結腸まで不連続な潰瘍が多発しており閉塞性大腸炎の治癒過程と考えられた。退院後は病状の再燃無く経過している。
 宿便による閉塞性大腸炎を内視鏡的に加療し得た報告は稀であり、本邦手術例との比較を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に切除した横行結腸癌併存結腸静脈瘤の1例

新松戸中央総合病院消化器病センター外科

福島 登茂子 他

 症例は84歳女性.52歳時に血便を認め下部消化管内視鏡検査で大腸静脈瘤を指摘された.以降血便を繰り返し複数の病院で検査をされるも,治療は行わず経過していた.2014年に当院で施行した下部消化管内視鏡検査では,下部直腸から回腸末端までほぼ連続して蛇行する静脈瘤を認めた.2017年3月に再度血便を認め,内視鏡検査では明らかな出血源は指摘できなかったが横行結腸に20㎜大の2型病変を認めた.その後も血便の再燃があり静脈瘤を含めた外科的切除の方針となった.上腸間膜動脈造影では静脈相で回盲部から上行結腸付近の静脈に蛇行が目立ち,下腸間膜動脈造影では明らかな異常所見なく門脈の閉塞も認めなかった.術前内視鏡であらかじめ結腸静脈瘤の範囲をマーキングし腹腔鏡補助下拡大結腸右半切除術を施行した.術後は血便の再燃なく経過している.大腸静脈瘤は稀な疾患であり,手術により治療し得た1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

鼠径ヘルニアメッシュ上に同時性血行性転移をきたした下行結腸癌の1例

国際親善総合病院外科

三島 江平 他

 鼡径ヘルニア術後3年でメッシュ上に同時性腹壁転移を来した下行結腸癌の症例を経験したので報告する.症例は77歳男性,完全内臓逆位の患者で,73歳時に左内鼡径ヘルニアに対してInlay法を施行され,76歳時に下行結腸癌の診断に至り結腸左半切除術を施行された(T3N2M0 StageⅢB).術後6カ月に圧痛を伴う左鼡径部腫脹を認めたが,メッシュ周囲の肉芽腫性反応と判断され抗菌薬処方の上で経過観察された.術後1年3カ月で腫瘍マーカー上昇を認め,PET/CT検査で肝転移と左腹壁転移の診断に至り,肝部分切除術及び左腹壁腫瘍切除術を施行した.CT画像上,メッシュ留置部に一致した左腹壁転移は結腸切除時に既に存在し経時的に増大していた.大腸癌の腹壁転移の多くは腹膜播種またはimplantationによる術後再発であるが,本例はヘルニアメッシュ上の同時性血行性転移の可能性が高く稀な症例であると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Pull through法が有効であった病的肥満(BMI44.3)を伴う下部直腸癌の1例

大阪医科大学一般・消化器外科

鈴木 重徳 他

 下部直腸癌に対する肛門温存手術では、吻合部の安静と術後合併症の予防として一時的人工肛門造設を行うことがある.今回我々は、BMI 44.3という、病的肥満患者に対し腹腔鏡下括約筋間直腸切除術(以下lapISR)を予定したが、病的肥満のため一時的人工肛門造設術が困難と予想されたため、その代替としてpull through法を施行した症例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下右肝切除術を施行した肝血管肉腫の1例

大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院外科

門久 政司 他

 例は61歳の男性で,アルコール性肝硬変の既往があった.腹部大動脈瘤術後の経過観察のCTにて肝S5,S6領域に3.5cm大の腫瘤を指摘された.精査の結果,混合型肝癌あるいは胆管細胞癌の術前診断にて,その悪性度や解剖学的な腫瘍露出のリスクを考慮し,腹腔鏡下右肝切除術を施行した.術後経過は良好で,術後9日目に自宅退院した.術後の病理組織学的検査にて肝血管肉腫と診断した.現在術後20か月無再発生存が得られている.肝血管肉腫は非常にまれで予後不良な疾患であり,外科的切除の対象となり得ること自体が少ない.これまで肝血管肉腫に対する腹腔鏡下肝切除術の報告はないが,今回我々は偶発的に肝血管肉腫に対して腹腔鏡下に根治的切除を施行した.根治性を落とすことなく安全に切除可能であり,有用な選択肢の一つと考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胆嚢摘出術後に動脈瘤を合併したcaterpillar hump型右肝動脈の1例

山梨大学医学部附属病院外科学第1講座

芦沢 直樹 他

 症例は61歳,男性.心窩部痛,発熱を主訴に受診し急性胆嚢炎の診断で抗生剤治療が行われ退院した.待機的手術を目的に再入院し,腹腔鏡下胆嚢摘出術が行われた.術中に動脈を損傷し,鏡視下での止血を試みたが困難で,開腹止血した.術後14日目に直径2cmの右肝動脈瘤を認め,コイル塞栓術を施行し抗生剤治療後に退院した.本症例ではCaterpillar hump型の右肝動脈を認めた.これは1923年にFlintによって提唱された頭側や尾側へ走行するコブを伴い曲がりくねった走行をする右肝動脈の異常の事である.この異常の頻度は多くはないが,決して稀ではなく,術中損傷の危険が高いため注意が必要である.また,胆摘後の肝動脈瘤も稀ではあるが,合併時は命に関わる合併症である.Caterpillar hump型の右肝動脈を伴い,術後に右肝動脈瘤を合併した腹腔鏡下胆嚢摘出術の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

内視鏡的止血術が奏効した肝門部胆管空腸吻合部静脈瘤出血の1例

宇部興産中央病院外科

兼定  航 他

 症例は, 80歳, 男性. 2014年, 中部胆管癌に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術施行. 術後膵液漏に伴う肝外門脈閉塞を来たし, 挙上空腸, 胆管空腸吻合部を介した副血行路が形成され, 時に消化管出血を認めたが保存的に対処可能であった. 2016年6月, 再度大量下血を来たし入院となった. 保存的加療を行ったが繰り返し下血を来たし, 頻回の輸血を余儀なくされた. 挙上空腸からの出血を疑い, 内視鏡で肝門部挙上空腸まで到達すると胆管空腸吻合部付近で粘膜下に著明な静脈瘤がみられ, 出血源を確認できた. 同部位にクリッピング術を行い止血処置とした. 施術後は下血の再燃なく外来通院中である. 膵頭十二指腸切除術後膵液漏は腹腔内出血など致命的な転帰を来たし得る重篤な合併症であるが, 炎症波及による肝外門脈閉塞にも注意が必要であり, その場合には消化管出血を念頭におき慎重に経過をみる必要がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

肉腫様変化を伴った肝内胆管癌の1例

名鉄病院外科

小林 裕幸 他

 症例は45歳男性。右季肋部痛を主訴に近医より紹介され当院を受診した。血液検査にて白血球数増多とCRPの上昇を認めた。腫瘍マーカーでは、CA19-9が高値を示した。腹部超音波では肝右葉に高エコーで内部不均一な腫瘍を認めた。腹部造影CT検査では腫瘍辺縁のみが濃染され中心部は濃染されなかった。肝内胆管癌の特殊型、特に肉腫様癌を疑い、肝右葉切除術、横隔膜合併切除とリンパ節郭清術を施行した。切除標本では腫瘍は12 X10 cmの大きさであった。割面は黄白色であり、内部に壊死、嚢胞化、出血を認めた。病理組織検査では腫瘍のほとんどで多辺形から短紡錘形の腫瘍細胞が錯走するように増殖しており、肉腫様構造を呈していた。腫瘍の辺縁部のみに腺管構造を認めた。免疫組織化学検査では腫瘍の大部分で、CK7 (+),CK19 (+),EMA (+),vimentin (+),Hepatocyte (-),AFP (-)

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

頸部嵌頓により急性胆嚢炎を呈した早期胆嚢癌の1例

津島市民病院外科

宇野 雅紀 他

 症例は64歳女性で,心窩部痛と嘔気を主訴に受診した.右季肋部に限局する軽度圧痛があり,CTで胆嚢腫大と胆嚢壁の浮腫状肥厚を認めて急性胆嚢炎と診断した.胆嚢頚部に腫瘤影を認め,腫瘤の頚部陥頓が胆嚢炎の原因と考えてまずは抗菌薬による保存的治療を開始した.しかし,入院3日目に右季肋部痛と炎症所見が増悪したため緊急開腹術を施行した.胆嚢頚部に壁外から腫瘤を触知できず,胆嚢管を総胆管合流部近傍で切離して胆嚢を摘出した.切除標本では胆嚢頚部に径3cmの軟らかい有茎性腫瘍を認めた.肉眼的には腺腫あるいは早期癌が疑われ,追加切除やリンパ節郭清は行わなかった.病理組織検査で早期胆嚢癌と診断され,胆嚢剥離面や胆嚢管断端に癌の進展を認めなかった.胆嚢癌は自覚症状に乏しく,早期癌は胆石症の手術で偶然見つかることも多い.胆嚢頚部への陥頓により生じた胆嚢炎を契機として発見された早期胆嚢癌はまれであり,報告をする.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

膵管出血にて発症した退形成性膵管癌の1例

岩手県立中部病院外科

小原 史衣 他

 80歳男性.入院2か月前から易疲労感,黒色便があり,近医で重度の貧血を認め当院に紹介された.入院時,血液検査はHb 3.5g/dl,AMY 573IU/L,CEA 2.0ng/ml,CA19-9 22.2U/mlだった.上部消化管内視鏡で十二指腸乳頭から血液流出を認めた.CTで主膵管拡張,MRCPで膵管胆管合流部付近の主膵管狭窄が疑われた.各種検査より,何らかの膵病変からの出血,凝血による膵液流出障害を疑った.貧血が増悪し,入院12日目に緊急手術をした.膵臓を門脈直上で切離すると,尾側から膵管出血があり,切離面より3cm尾側に胆道鏡で出血を確認した.追加切除し,摘出標本に膵管内に腫瘤があり出血源と考えた.幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断は,膵管内に限局した退形成性膵管癌(0.5×0.5cm,pT1N0M0,StageI)となった.膵管出血は膵腫瘍では稀であり、報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

膵管内腫瘍栓を伴った膵粘液癌の1例

パナソニック健康保険組合松下記念病院外科

高尾 幸司 他

 症例は64歳の男性.左季肋部痛で来院した.血液検査でCEA 192.1ng/ml,CA19-9 135U/mlと上昇していた.造影CTで膵頭部に23mmの辺縁不整で比較的境界明瞭な乏血性腫瘤と尾側膵管の拡張を認めた.内視鏡的逆行性胆管膵管造影で膵頭部主膵管に30mmの造影欠損像と蟹爪様の途絶を認め,膵液細胞診で粘液を背景とした印環細胞の集塊を認めた.以上より膵頭部癌T2N0M0 cStageIB(膵粘液癌疑い)と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除+D2郭清を施行した.病理診断で豊富な粘液産生を伴う印環細胞主体の異型上皮増生を認めたが膵管内乳頭粘液性腫瘍成分は認めず,膵粘液癌T2N0M0 fStageIBと診断した.また腫瘍性変化を伴わない主膵管内に癌細胞の集塊を認め,膵管内腫瘍栓を形成していた.今回稀な膵管内腫瘍栓を伴った膵粘液癌の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

肝切除術中のソフト凝固を使用した副腎止血操作による異常高血圧の1例

国立病院機構神戸医療センター循環器内科

大隅 祐人 他

 症例は83歳女性。肝S7単発の転移性肝腫瘍に対して肝S7部分切除術を施行した。術前CTでは副腎に腫瘍性病変は認めなかった。術中右葉脱転操作により副腎裂傷をきたし出血を認めたため、イオアドバンス電極(VIO 300D、ERBE社、エフェクト6、最大90W)によるソフト凝固止血を行った。直後に収縮期血圧200mmHg以上の異常高血圧を認め、止血操作の中止とニフェジピンの投与ですみやかに改善し、その後の手術に影響はなかった。術後の血圧,血糖は安定しており術後合併症も認めず術後第14病日に退院となった。ソフト凝固は従来の電気メスによる凝固と比較して凝固層が深くなり、本症例では副腎髄質まで及びカテコラミン放出をきたしたと推測される。副腎周囲ではソフト凝固の使用は控えるべきと考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

Endoscopic components separation法で修復した妊娠後発症白線ヘルニアの1例

東北大学消化器外科学

伊勢 一郎 他

 白線ヘルニアは白線と呼ばれる腹壁正中の腱膜繊維の隙間に生じるヘルニアで,本邦では比較的稀な疾患である.今回,妊娠を契機に発症した白線ヘルニアに対し,endoscopic components separation(ECS)法で修復した1例を経験したので報告する.症例は27歳,女性.手術歴はなく,両側卵巣嚢腫と診断され経過観察となっていた.第2子を妊娠中に臍周囲の疼痛を自覚していた.出産後も妊娠中と同様の疼痛を自覚し,下腹部正中の膨隆も認めるようになった.救急外来を受診し,腹部CTにて白線ヘルニア(16.9 x 5.9cm )と診断され,翌月,ECS法で修復した.併せて,両側卵巣嚢腫に対して腹腔鏡下卵巣嚢腫核出術を行った.ECS法はメッシュを要さず,open components separation (CS)法と比べ整容性に優れ,若年患者に有用な術式と思われた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る