トップ > 会員のみなさま > 日本臨床外科学会雑誌 最新号 和文抄録

日本臨床外科学会雑誌 第79巻10号 掲載予定論文 和文抄録


綜説

再発鼠径部ヘルニアに対する腹腔鏡手術

刈谷豊田総合病院 腹腔鏡ヘルニアセンター

早川 哲史

 鼠径部ヘルニア治療に腹腔鏡手術が我が国に導入されたのは1991年であるが,その後の手術治療法は日本と欧米とでは大きく異なった歴史を辿って来た.欧米の鼠径部切開法では長い期間,大きく術式は変化することがなくLichtenstein法を第一選択術式と位置付けてきたが,我が国では様々なメッシュ法を各施設が自由に選択する時代となった.2018年のWorld Guidelines for Groin Hernia Managementでは,腹膜前腔での修復が行われていないLichtenstein法の再発治療には腹腔鏡手術を推奨し,腹腔鏡手術後の再発ではLichtenstein法が推奨されているが,我が国の鼠径部ヘルニア治療の歴史的背景を十分に認識しながらガイドラインを読み説く必要がある.日本に多い各種メッシュ法後の再発治療は難易度の高い症例が多く,手技に十分に熟練した技術を持つ外科医の指導の下に行われる必要がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

臨床経験

重症大動脈弁狭窄症を有する開腹手術症例に対する術前IABP挿入の経験

国立病院機構静岡医療センター外科

渡邉  卓 他

 大動脈弁狭窄症は周術期リスクが高い心疾患とされており,重症例では非心臓手術を中止するか,もしくは大動脈弁治療を先行させることが望ましいとされているが,緊急手術,悪性腫瘍手術では開腹手術を先行せざるをえない状況も存在する.今回われわれは当院で術前に心臓超音波検査で重症大動脈弁狭窄症と診断され,IABP挿入下に開腹手術を施行した5例について検討した.平均年齢は72.2歳で男性3例,女性2例であった.緊急手術症例が1例であり,悪性腫瘍手術が4例であった.心臓超音波検査での収縮期平均圧較差は平均33.68mmHgで平均弁口面積は平均0.722cm2であった.IABPの平均留置期間は3.4日で,IABP留置による合併症は認めなかった.1例に在院死を認めたが,心合併症は認めなかった.重症大動脈弁狭窄症を合併した開腹手術症例に対する術前IABP挿入は周術期管理の面で有用な手技である可能性が示唆された.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

症例

多発嚢胞経過観察中に発生した乳腺コレステロール肉芽腫の1例

国際医療福祉大学三田病院乳腺センター

小川 明子 他

 症例は56歳女性.53歳の時に左乳房の腫瘤と痛みを自覚し来院.マンモグラフィ(MMG),乳房超音波検査,乳房MRI検査が行われ,乳腺症を伴う多発嚢胞と診断.その後,年に一度の超音波検査による経過観察.3年後の超音波検査で左EAB領域に嚢胞内腫瘍を思わせる所見が出現し,乳房MRI検査で嚢胞に接して充実部のある29㎜の腫瘤を認め,嚢胞内乳癌が疑われた.嚢胞の充実部を超音波下穿刺吸引細胞診したところ、蛋白質を背景に炎症細胞、泡沫細胞の所見で悪性所見は見られなかった。本人の希望により,診断確定のために摘出生検施行.病理結果は乳房内コレステロール肉芽腫の診断であった.時に画像診断上で乳癌と鑑別が困難な症例がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

転移巣への放射線療法が奏効した乳腺悪性葉状腫瘍の1例

国立病院機構北海道がんセンター乳腺外科

押野 智博 他

 症例:32 歳時に左乳腺腫瘤に対し腫瘤摘出術を施行し, 14 cmの巨大線維線腫と診断された. 以後 6 回, 局所再発のたびに切除を繰り返し, 悪性葉状腫瘍へと病理所見の増悪を認めた. 56 歳時, 両側肺腫瘍を認め, 右肺部分切除術にて悪性葉状腫瘍の肺転移と診断された. 手術後まもなく左肺静脈への腫瘍栓を認め, 同部位に放射線療法を施行した. 腫瘍死するまでの 7 か月間病勢は制御された. 照射終了後間もなく右心房内に 79 mm大の転移巣を認め, 照射施行し 21 mmへと著明に縮小した. その後, 手指末端にも転移を来し, 疼痛のため照射施行した. いずれも有効な局所制御が得られ, 疼痛も無く良好なQOLを享受できていたが, 遠隔転移の診断から 10 か月後に呼吸状態の悪化から腫瘍死した.
 転移性悪性葉状腫瘍に対し放射線療法も治療の選択肢になりうると考えられる.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

経カテーテル大動脈弁留置術時のワイヤーによる左室穿孔の1例

自治医科大学附属さいたま医療センター心臓血管外科

由利 康一 

 経カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter Aortic Valve Implantation :TAVI)は大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis:AS)に対し人工心肺を用いず,カテーテルを用いて大動脈弁位に生体弁を留置する低侵襲治療である.しかし,時には致命的合併症に遭遇する手技である.症例は88歳女性.重症大動脈弁狭窄症の診断にて当院へ紹介受診した.高齢,脆弱のためハートチームでの検討の結果TAVIを行う方針とした.手術は全身麻酔下に行い,右大腿動脈経由で左室内へStiffワイヤーを留置.バルーン大動脈弁形成(Balloon Aortic Valvoplasty :BAV)に引き続き弁を留置した.弁留置直後に大量の心嚢水が出現したため,緊急で開胸手術を行った.左室内の留置ワイヤーによる左室破裂と診断し,左室形成を行い止血した.術後経過は良好であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

出血による心タンポナーデをきたした心外膜原発滑膜肉腫の1例

福井大学附属病院心臓血管外科

川村 祐子 他

 心臓, 心膜に腫瘍が発生することは稀で, 悪性腫瘍であればさらに頻度は少ない. また心臓由来または心筋に浸潤する場合には完全切除が困難であり, 予後は不良とされる. 今回心外膜に発生した滑膜肉腫の1例を経験したので報告する. 症例65歳男性, 前胸部痛を主訴に前医受診し急性冠症候群は否定され後日の精査となった. CTで心下面の腫瘍を指摘され, 初回受診から2週間後に当院紹介受診となった. 当科入院の際には心窩部痛, 嘔気, 低血圧状態であり症状は急速にに増悪した. 心腫瘍からの出血による心タンポナーデと判断し, 救命と出血コントロール目的に緊急で手術を施行, 心タンポナーデの解除と可及的な心腫瘍摘出を行った. 患者状態が急激に悪化するなかで治療方針決定に難渋した一例であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

部分的塞栓術後に狭窄型虚血性大腸炎となった下腸間膜動静脈奇形の1例

松江生協病院外科

横山 靖彦 他

 症例は83歳,女性.2016年9月,左腹部痛を主訴に当院を受診.精査の結果,下腸間膜動脈瘤が疑われ,血管造影検査・塞栓療法目的に入院となった.検査の結果,S状結腸動脈,上直腸動脈から計4本の流入動脈を認める動静脈奇形と診断した.塞栓療法でうち2本を塞栓できたが,これ以上の塞栓はS状結腸,直腸の虚血が避けられないと判断し,塞栓療法は終了となった.外科的治療の方針となったが,排便障害,虚血による結腸の狭窄を認めず,腹痛は自制内であったため,手術の同意が得られず,経過観察となった.その後,2017年1月,腸閉塞を認め,緊急入院となった.下行結腸の狭窄型虚血性大腸炎と診断し,保存的加療を行ったが改善傾向は認められず,同年5月に結腸左半切除術を施行した.塞栓療法により虚血性腸炎となった下腸間膜動脈由来の動静脈奇形に対して,結腸左半切除術を施行した1例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

左肺静脈共通幹を術前診断し左肺下葉切除術を施行した肺MALTリンパ腫の1例

国家公務員共済組合連合会横浜南共済病院呼吸器外科

安藤 耕平 他

 患者は50代の女性.関節リウマチのスクリーニング検査で胸部CTを行ったところ左肺下葉に小結節を指摘され,肺癌の疑いで当科に紹介された.胸腔鏡下左肺下葉切除を予定したが,術前のCTで左肺静脈共通幹を認識できた.手術時に左肺静脈共通幹を確認し,末梢側に追及して上肺静脈と下肺静脈との合流部を確認した後に下肺静脈を切離することで,安全に胸腔鏡下での左肺下葉切除を完遂できた.肺静脈共通幹は肺血管の正常変異の一つであり,肺葉切除の際に肺静脈が共通幹であることを認識せずに誤って切断してしまうと,血行再建や残存肺全摘といった対処をしなければならなくなり,致命的ともなり得る.術前のCTで,切断すべき肺静脈・残すべき肺静脈の双方を確認し,さらに術中にも再確認することが,安全に手術を行う上で重要であると考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

サルベージ手術時に癌浸潤気管膜様部に広背筋弁充填を行った食道癌の1例

滋賀県立総合病院外科

谷 亮太朗 他

 気管膜様部浸潤を伴う食道癌に対する根治的化学放射線療法後のサルベージ手術は,膜様部損傷,壊死や穿孔などの膜様部関連合併症が問題となる.
 症例は67歳の男性.気管膜様部浸潤を伴う胸部上部食道癌に対して根治的化学放射線療法を施行したが,完全寛解後に食道再発を認めたため,サルベージ手術を行った.手術は右開胸開腹食道亜全摘,胸骨後胃管再建,頚部での食道胃管吻合とした.気管膜様部関連合併症を予防するために,気管膜様部背側に広背筋弁の充填を行った.術後に気管膜様部関連の合併症は全く生じず,食道-胃管吻合部の縫合不全を認めたものの保存的加療にて軽快した.気管膜様部浸潤を伴うT4食道癌に対するサルベージ手術では,膜様部損傷,壊死,穿孔などの合併症の可能性があり,ひとたび起こると致命的となる.我々は広背筋弁を充填することにより合併症を予防し得た.手技的にも容易であり,有効な術式と思われた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

レゴラフェニブ耐性の多発腹膜播種再発巣を切除した胃GISTの1例

大阪警察病院消化器外科

阪野 佳弘 他

 72歳女性。前医で胃GISTに対して胃部分切除術が施行され、術後6ヵ月間イマチニブが投与された。術後3年目に肝転移・多発腹膜播種再発を認めたが、イマチニブを再開し無増悪で経過していた。術後6年目のCTで胃背側および傍下行結腸に新規腹膜播種病変を認めた。この腹膜播種2病変は、スニチニブの投与で一旦縮小を示すも再増大したためレゴラフェニブを投与したが、更に増大傾向を示した。この2病変のみPET-CTでもfluorodeoxyglucose (FDG)の集積を認めた。レゴラフェニブ耐性病変と診断し、この2病変の切除のため胃部分切除術、脾臓合併膵体尾部切除術、下行結腸部分切除術を施行した。術後にイマチニブを再投与し、再発術後1年間、他の再発巣の増大や新規病変の出現なく経過している。レゴラフェニブ耐性病変に対する局所切除が治療選択の1つになりうる可能性が示唆された。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

バット素振り練習時の胃結腸間膜断裂による腹腔内出血の1例

筑波学園病院外科

清水 義夫 他

 症例は腹痛を主訴に外来を受診した20歳男性である. 夕食を過量摂取後に野球の素振りを30分間行ったが, 約4時間後より突然腹痛が出現した. 来院時にはショック症状はなかったが, 腹部全体に筋性防御と反跳痛を認めた. 腹部CTにて肝表面, Douglas窩, 左網嚢内に血腫を疑う液体貯留を認めた. 緊急血管造影では腹腔動脈や上腸間膜動脈に動脈瘤や造影剤の血管外漏出は認めなかった. その後プレショックとなったため, 緊急手術を施行した. 脾彎曲に近い胃結腸間膜が10cmにわたって断裂しており, 出血の原因と推察された. 周囲血管には, 病理学的にSAMや血管炎などの器質的変化は認めなかった. 発症の機序として食物で重量の増した胃と固定された胃結腸間膜が, 素振りの体幹回旋動作により断続的に牽引され断裂を生じたものと考えた. 若干の文献を踏まえ考察した.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹壁瘢痕ヘルニア修復術後9年で発症した小腸穿通を伴うメッシュ感染の1例

伊勢赤十字病院外科

中川 勇希 他

 症例は81歳女性.66歳時にS状結腸穿孔に対してハルトマン手術,67歳時に人工肛門閉鎖術,72歳時に腹壁瘢痕ヘルニアに対しメッシュを用いた修復術を施行された.腹痛を主訴に近医を受診し抗菌薬治療が行われたが,症状が増悪したため,当院を受診した.下腹部正中に発赤を伴う手拳大の腫脹および腹部CTで波状に変形したメッシュと皮下膿瘍を認めたため,メッシュ感染と診断した.切開排膿と抗菌薬治療を行い,受診1ヶ月後に手術を施行した.メッシュは腹腔内に留置され,辺縁は腹腔側に折れ曲がり,小腸と癒着,穿通が認められた.小腸部分切除とメッシュ除去を施行し,腹壁は筋膜単純縫合閉鎖で修復した.腹壁瘢痕ヘルニアに対するメッシュを用いた修復術は標準治療となりつつあるが,使用例の増加とともに腸管癒着や遅発性感染の報告が増えている.術中はメッシュの確実な固定が,術後は遅発性感染も念頭に置いた経過観察が必要であると思われた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に切除した成人空腸非交通型重複腸管症の1例

川崎市立川崎病院外科

塩味 慶子 他

 症例は40歳,女性.上腹部痛を主訴に前医を受診し,腹腔内腫瘤を指摘され当院紹介となった.腹部造影CT検査で,トライツ靭帯近傍の空腸左側に12cm大の嚢胞性腫瘤を認めた.超音波検査で,嚢胞の蠕動を認め,嚢胞壁の層構造が腸管と類似しており,腸管重複症と術前診断した.症状を伴う成人空腸非交通型重複腸管に対し,腹腔鏡下摘出術を施行した.トライツ靭帯の左側に腫瘤を認め,周囲との癒着を剥離した.空腸と腸間膜を共有する栄養血管を腫瘤近傍で切離して検体を摘出した.成人空腸重複腸管は比較的稀な病態であり,術前診断に超音波検査が非常に有用であった.また,疾患概念を念頭に置くことで,腹腔鏡下で,多発病変の有無の検索および整容性の高い低侵襲手術が可能であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

特発性腸間膜膿瘍の1例

国立国際医療研究センター病院外科

細谷 聡史 他

 腸間膜膿瘍は憩室穿孔や炎症性腸疾患, 癌などにより二次性に生じることが多く, 特発性と診断される症例は比較的少ない. 今回我々は特発性腸間膜膿瘍の症例を経験したため報告する. 症例は77歳男性で既往に糖尿病と肺動脈血栓症があり3年前に当院で食道癌の切除歴がある. 来院8時間前からの心窩部痛を主訴に, プレショック状態で救急搬送された. CTで小腸間膜内の大量のairを認め, 穿孔性腹膜炎を疑い緊急手術を施行したところ, 淡血性の大量腹水と小腸間膜内の膿瘍と気腫を認め, 腸間膜膿瘍と診断し洗浄ドレナージを行った. 生検した腸間膜の病理は炎症所見で, 腸間膜生検部と血液培養で大腸菌が検出された. 周術期には敗血症, 脳梗塞, 腸管皮膚瘻など来したが, 術後181日目に退院した. 本症例では憩室や癌, 炎症性腸疾患の併発なく特発性腸間膜膿瘍と診断した. 原因は糖尿病による免疫力低下や食道切除後の低栄養によるbacterial translocationや腸間膜の血流障害が考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

特発性小腸穿孔による汎発性腹膜炎後に発生した鼠径ヘルニア嚢膿瘍の1例

豊橋市民病院一般外科

出井 秀幸 他

 症例は60歳男性.10年前から左鼠径ヘルニアを自覚していた.半年前に十二指腸穿孔による汎発性腹膜炎に対して大網充填術を施行した既往があった.腹痛で受診し,腹部全体に反跳痛と筋性防御を認め,腹部CT検査でfree airと腹腔内液体貯留があった.汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.小腸に約15mm大の穿孔部を認め,小腸切除を施行した.術後に微熱と炎症反応高値が継続し,術後6日目のCT検査で左陰嚢内に径55mmの膿瘍を認めた.穿刺培養で腸球菌が検出され,抗菌薬治療を行った.解熱し炎症反応は正常化したが,陰嚢の腫大と疼痛の改善がないため,術後25日目にヘルニア嚢膿瘍切除・高位結紮術を施行した.初回手術後31日目に退院し,ヘルニア無再発で2年経過中である.半年前の十二指腸穿孔に対する手術後にヘルニア嚢感染を発症せず,小腸穿孔に対する手術後に鼠径ヘルニア嚢膿瘍を認めた1例を経験したため報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡併用手術を施行した右鼠径ヘルニア嚢膿瘍を合併した虫垂炎の1例

九州労災病院外科

堀岡 宏平 他

 症例は72歳の男性.右鼠径ヘルニア嵌頓が疑われ当科に紹介された.血液検査では高度炎症所見を認めた.CT検査では右陰囊から腹腔内へと連続する液貯留と虫垂の腫大および周囲脂肪織の混濁を認めた.右鼠径ヘルニア囊内膿瘍を合併した急性虫垂炎を疑って緊急手術を行った.腹腔鏡下に観察すると右内鼠径輪を被覆するように盲腸と回腸末端が腹壁に癒着していた.虫垂は根部で壊死・穿孔し,周囲に膿瘍を形成していた.内鼠径輪からは膿汁が流出した.腹腔鏡下に虫垂切除術を行い,鼠径ヘルニアはiliopubic tract repairで修復した.急性虫垂炎の炎症波及により鼠径ヘルニア内に膿瘍を形成することは非常にまれであるが,腹腔鏡併用手術が診断・治療に有用であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

潰瘍性大腸炎に対する結腸全摘術後49年目に発生した回腸癌の1例

山口赤十字病院外科

森松 克哉 他

 症例は68歳女性.19歳時に他院で潰瘍性大腸炎(以下UCと略記)に対し結腸全摘術,回腸直腸吻合術を施行された.術後49年目に当院内科を受診した際,高度の貧血を指摘され精査加療目的に入院となった.貧血の原因は特発性赤芽球癆と診断され,免疫抑制剤の投与により改善したが,貧血の精査目的に施行した下部消化管内視鏡検査で回腸直腸吻合部近傍の回腸に腫瘍性病変を認めた.生検の結果,印環細胞癌の診断で,回腸部分切除術を施行した.切除標本では筋層までの浸潤を認め,リンパ節転移を1個認めた.以前はUCに関連した小腸癌の発生はないとされていたが,近年頻度は少ないが長期罹患UC患者に発生した回腸癌が報告されている.大腸全摘術施行後の長期罹患UC患者に対しては回腸癌の発生に対し留意し,定期的に回腸嚢の観察を行う必要があると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

先天性結腸閉鎖症の1例

昭和大学医学部外科学講座小児外科学部門

入江 理絵 他

 症例は日齢3の男児で,出生体重3,440g,在胎41週0日で出生した.日齢1より胆汁性嘔吐を認めたため当院搬送となり,画像所見から結腸閉鎖症を疑い開腹術となった.回盲部より7㎝肛門側に離断型の結腸閉鎖を認め,腸管の口径差は11:1であった.口側盲端に結腸瘻,肛門側盲端にチューブ腸瘻を造設し,持続減圧および肛門側注入を行った後に二期的腸吻合術を行った.腸管の口径差は2:1に縮小していた。術後経過は良好で,術後17日目に退院となった.先天性結腸閉鎖症(以下,本症)の治療法は,病型や初回手術時の腸管の状態によって種々の選択肢がある.初回手術時に口径差が大きい場合,虫垂瘻やカテーテル瘻を併用した一期的腸吻合を行うか,もしくは一期的吻合が困難な場合は,一時的に人工肛門を造設して口径差の縮小後に二期的吻合を行う.今回,自験例を含めた本邦報告例を検討し,本症について治療法を中心に報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

上行結腸癌手術時に切除された腸間膜傍神経節腫から診断されたVHL病の1例

宇治武田病院外科

政野 裕紀 他

 症例は62歳、女性。既往に中枢神経系血管芽腫に対する手術歴があった。便潜血陽性のため下部消化管内視鏡検査を行い上行結腸癌と診断された。術前造影CT検査にて、上行結腸近傍に複数の小腫瘤、横行結腸間膜内の中結腸動脈右枝近傍に単発の多血性腫瘤を認め、#211および#222リンパ節転移と診断、腹腔鏡下右半結腸切除術(D3郭清)を施行した。術中に中結腸動脈右枝近傍に白色腫瘤を認めた。また、高血圧などの術中異常所見は認めなかった。病理組織検査結果から#211リンパ節は上行結腸癌の転移、術前に#222リンパ節転移と診断した腫瘤は、paragangliomaと診断された。既往に中枢神経系血管芽腫があることから、von Hippel-Lindau病と臨床診断された。腸間膜内に発生するparagangliomaは非常に稀だが、多血性腫瘤を認めた場合には既往歴に十分注意し同疾患を考慮した手術を行う必要がある。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術後12年目に肝転移再発したStageⅠ(T2)下行結腸癌の1例

呉共済病院外科

白川 賢司 他

 症例は68歳,女性.12年前に他院で下行結腸癌に対して左結腸切除術(D2郭清)を施行された.病理診断はT2(MP),N0,M0,ly0,v0,StageⅠであった.近医での腹部CT検査と腹部超音波検査で肝右葉に石灰化を伴う腫瘤を認めたため,紹介となった.上部・下部内視鏡検査は悪性疾患を疑う所見はなく,腹部CT,MRI検査で肝S5に造影効果を伴う石灰化のある腫瘤を認めた.CEAも高値で,悪性疾患の可能性が高く,肝S5部分切除術を施行した.病理組織学的検査では12年前の下行結腸癌の組織像と同様の組織像を示し,下行結腸癌の肝転移と診断した.術後5年を超えてのStageⅠ大腸癌の再発は稀ではあるが,大腸癌の既往がある場合には再発の可能性を常に念頭に置いておく必要がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

大腸stentを挿入して弁治療を先行した大動脈弁狭窄症併存閉塞性大腸癌の2例

香川県立中央病院心臓血管外科

坂本 あすな 他

 閉塞性大腸癌とAortic valve Stenosis (以下AS)を合併した高齢者に対し,大腸ステントによって腸管浮腫の軽減と栄養状態の改善,ADLの維持を図りつつ心疾患の治療と大腸手術を施行し,良好に経過した2例を経験したので報告する.(症例1) 73歳男性.呼吸困難を主訴に受診し,ASによる心不全と内腔狭窄を伴うS状結腸癌を指摘された.入院6日目に大腸ステントを留置後,13日目に大動脈弁置換術,63日目に開腹S状結腸切除術を施行した.(症例2) 79歳男性.肺気腫の通院治療中に偶然,内腔狭窄を伴うS状結腸癌と多発肝転移,高度ASと冠動脈病変を指摘された.入院4日目に大腸ステントを留置し,8日目にPCI,13日目にTAVIを施行し,50日目に腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.(結語) 大腸ステントを使用する事で,心疾患を合併した閉塞性大腸癌症例にも根治を目指し得ることが示唆された.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術前診断し待機的に腹腔鏡手術を行ったS状結腸間膜窩ヘルニアの1例

大隅鹿屋病院外科

能美 昌子 他

 腹部手術歴のない58歳女性.下腹部痛,嘔吐が持続するため当院を受診した.腹部造影CTで左下腹部にclosed loopを形成した小腸を認め,内ヘルニアが疑われた. loopは距離が短く,S状結腸間膜の背側,左総腸骨動脈の腹側にあることから,S状結腸間膜に関連した内ヘルニア,中でもS状結腸間膜窩ヘルニアを強く疑った.CTで腸管壊死の所見はなく,嵌頓腸管が壊死した過去の報告も少なかったことから,イレウス管で減圧後,待機的に腹腔鏡手術を施行した.小腸を牽引して嵌頓を解除し,直径約2cmのヘルニア門を縫合閉鎖した.また,その近傍に同じ形状の約1cmの孔を認めた.ヘルニアの内腔は下行結腸間膜と壁側腹膜の間隙であり,S状結腸間膜窩ヘルニアと診断した.
 S状結腸間膜窩ヘルニアは腸管壊死を来たしにくく,嵌頓小腸も短いため,減圧後の待機的腹腔鏡手術の良い適応であると思われた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

低位前方切除時に留置した経肛門ドレーンによる大腸穿孔の1例

JCHO中京病院外科

塚原 哲夫 他

 症例は53歳,男性.検診で便潜血陽性を指摘され,前医で下部直腸のカルチノイドと診断され,当院紹介となった.手術は腹腔鏡下低位前方切除術を施行し,吻合部ドレーンと経肛門ドレーンを留置した.術後第5病日,経肛門ドレーン造影で,縫合不全を認めなかったが,経肛門ドレーンは吻合部口側腸管後壁を圧排しており,抜去した.術後第6病日,吻合部ドレーンより便汁様排液を認め,吻合部ドレーン造影で経肛門ドレーンによる口側腸管後壁の穿孔と診断された.術後第9病日,大量の下血を呈し,CTで仙骨前面から出血を認めたため,緊急開腹止血術を施行した.術後,穿孔部は保存的に改善せず,初回手術から第63病日,回腸人工肛門を造設して,第81病日に退院となった.経肛門ドレーンによる腸管穿孔はまれな合併症であり,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

広範囲デブリードマンと直腸切断術により救命した重症Fournier壊疽の1例

国家公務員共済組合連合会浜の町病院外科

山本 真大 他

 Uludag Fournier’s gangrene severity index(UFGSI)により極めて死亡率が高いと判定された重症Fournier壊疽を、広範囲デブリードマンにより救命した。73歳男性、臀部の発赤と疼痛を認め搬送された。会陰部の皮膚は壊死し、臀部全体が炎症で発赤していた。CTで下部直腸に壁肥厚を認め、皮膚軟部組織の炎症は第12肋骨レベルまで進展していた。直腸癌穿孔による重症Fournier壊疽と診断し、人工肛門造設、会陰部ドレナージを施行した。術後も感染の範囲は肩甲骨下縁レベルまで拡大し、敗血症、DICとなった(UFGSI18点)。術後8日目に直腸切断、両側精嚢・精巣摘出、背部、右大腿部の壊死組織大量切除を行った。DIC、敗血症から脱し、植皮ののち退院となった。制御不能な直腸癌穿孔による重症Fournier壊疽には原発巣切除と広範囲デブリードマンが必要である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下低位前方切除術を行ったLeriche症候群併存直腸癌の1例

日本赤十字社和歌山医療センター外科・消化器外科

野田 和樹 他

 症例は68歳男性. 主訴は腹痛, 下血. 下部消化管内視鏡検査にて直腸癌を指摘され, 精査の結果T3N2M0cStageⅢbと診断された. 術前造影CTでLeriche症候群の合併を認めたが, 無症状であり画像上も高度に発達した腹腔内側副血行路からの下肢, 腹腔内臓器への供血を認めた. 血行再建は行わず, 腹腔鏡下低位前方切除術を施行した. 周術期合併症なく術後7日目に退院となった. Leriche症候群を合併した直腸癌に対して腹腔鏡下手術を安全に施行し得た.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

肛門管神経内分泌細胞癌の1例

名鉄病院外科

小林 裕幸 他

 症例は62歳女性。肛門痛のため当院外来を受診した。直腸指診にて肛門に腫瘍を触知した。下部内視鏡検査では肛門管に潰瘍を伴う隆起性の病変を認めた。生検にて神経内分泌細胞癌と診断した。CT検査で肛門管の腫瘍以外に直腸壁外、仙骨前面にも腫瘍を認め、PET-CTにて全て異常集積を示した。肛門管癌のリンパ節転移と診断し、腹会陰式直腸切断術+D3郭清を行った。切除標本では肛門管の腫瘍は25 X 25 mmの大きさであった。病理検査にて腫瘍の大部分は大型類円形でN/C比の大きい細胞増殖を認め、進行度は StageIIIbであった。肛門管の腫瘍は免疫組織化学検査では、Synaptophysin強陽性、Chromogranin A陽性で、Ki-67陽性率は60%であった。また、腫瘍の口側辺縁に高分化型腺癌と絨毛腺腫を認めた。肛門管原発の神経内分泌細胞癌と診断した。術後補助化学療法としてmFOLFOX (6)を施行した。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

感染後29年の経過が推定された肝多包性エキノコックス症の1例

順天堂大学医学部付属順天堂医院肝胆膵外科

松平 慎一 他

 症例は千葉県在住の31歳、女性。腹痛と下痢のために近医を受診。腹部造影CT検査で肝内に多発する嚢胞性病変を認めた。エキノコックス抗体検査が陽性で肝多包性エキノコックス症の診断となり、手術目的に当科紹介となった。嚢胞は肝S3/2、S5、S7/8、S8に存在し、S8の嚢胞は右肝静脈に近接する病変で、嚢胞壁の損傷を回避するため右肝静脈を含む拡大後区域切除術、外側区域切除術、S5部分切除術を行った。術後経過は良好で術後第18病日に退院した。病理組織所見では類上皮肉芽腫と嚢胞内部に大型の壊死形成を認めた。壊死部にはクチクラ層を有する小嚢胞を認め、繁殖胞を有する原頭節も含まれていた。術後3年経過したが、再発なく生存中である。本症例は関東在住であるが、2歳時に北海道へ旅行し、キツネとの接触歴があった。感染後29年の経過で緩徐に進行したと考えられる肝多包性エキノコックス症を経験したので報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

IVC血栓合併を疑いフィルター留置後腹腔鏡下開窓術を行った30cm肝嚢胞の1例

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院消化器・一般外科

小倉 佑太 他

 症例は62歳の女性, 3年前の腹部CT検査で肝右葉に10.2×10.5cm大の肝嚢胞を認め, 30.0×20.1cm大と経時的に肝嚢胞の増大傾向を認めたため,当院消化器内科より依頼となった. CT上囊胞による下大静脈の高度圧排像, 両大腿静脈~下大静脈腎静脈流入部付近にかけて内腔の低吸収域が認められ, 肝嚢胞の圧排が原因と思われる下大静脈血栓症を来している可能性が考えられた. 術後塞栓症が危惧されたため, 下大静脈フィルター(IVCフィルター)を挿入後, 腹腔鏡下に肝嚢胞開窓術施行. 病理組織学的には孤立性肝嚢胞で明らかな悪性所見は認められなかった. 術後経過は良好で第11病日にIVCフィルターを抜去し第12病日に軽快退院となった. 今回, 我々は経時的に増大する巨大肝嚢胞を認め術前にIVCフィルターを挿入し腹腔鏡下肝嚢胞開窓術にて安全に治療しえた1例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

異時性肝転移に2度の肝切除を施行した上行結腸平滑筋肉腫の1例

弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座

吉田 枝里 他

 症例は70代男性.貧血の精査のために行った下部消化管内視鏡検査で,上行結腸に管腔の約3/4周を占める2型腫瘍を認めた.腫瘍の組織生検を行い,免疫染色を行ったところ,S100陰性,desmin陽性,α-SMA陽性,CD34陰性,c-kit陰性,Ki-67 labelling index 30 %であり,高悪性度平滑筋肉腫の診断となった.明らかな遠隔転移は認めず,結腸右半切除術+D3郭清を施行した.術後18か月で肝S4に再発を認め,肝左葉切除を施行した.初回手術後23か月に,残肝S5に異時性肝転移を認め,肝部分切除術を施行した.その後,初回手術後33か月となる現在まで,無再発生存中である.結腸に発生する平滑筋肉腫は頻度が少なく,肝転移に対する切除報告例も少ない.異時性肝転移に対し2度の切除術を施行した稀な症例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

大腸癌腹膜播種再発と鑑別を要した落下胆石による腹腔内膿瘍の1例

北海道大学大学院医学研究院消化器外科学教室I

田中 友香 他

 症例は78 歳の男性,進行上行結腸癌に対し腹腔鏡下回盲部切除D3郭清を施行した. 再発フォローのCTで肝周囲に3ヶ所の結節性病変を認めた.PET-CTにて異常集積を認め大腸癌腹膜再発を否定できない所見であった.経過中に他院で慢性胆囊炎に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行され,手術記録から落下胆石による腹腔内膿瘍を鑑別診断として考慮した.しかしながら,腹膜再発の可能性を否定できず外科的切除を施行した.摘出標本の病理組織検査所見から落下結石による腹腔内膿瘍と確定診断した.胆石手術を既往歴に有する腹膜結節の鑑別として落下胆石による膿瘍形成や肉芽腫を考慮する必要がある.今回我々はPET-CTにて異常集積を認め大腸癌腹膜再発との鑑別に苦慮した胆嚢摘出術後の落下結石による遺残膿瘍の1例を経験したので,報告した.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術後32年目に肝・膵転移再発巣を同時切除した腎癌の1例

岡村一心堂病院外科

正木 裕児 他

 腎細胞癌は時に晩期再発を起こすことで知られる. 今回我々は腎細胞癌術後32年目に肝・膵転移再発を起こし, 根治切除が可能であった症例を経験したので報告する. 患者は82歳, 男性. 50歳時に腎細胞癌で右腎摘術を受けている. 80歳時に右鼡径部リンパ節に発生した濾胞性リンパ腫に対してR-CHOP療法を実施,経過観察中の腹部computed tomography(以後CT)検査で肝右葉と膵体部に腫瘤性病変が指摘され, 造影腹部CT検査で同部にhypervascular tumorを認めた. この2つの腫瘍は画像的特徴が類似していた. 肝生検で腎細胞癌(clear cell carcinoma)の肝転移再発と確認された. 画像所見を踏まえ膵病変も同じ転移性腫瘍と考え肝部分切除術と膵体尾部・脾切除術を実施した. 病理組織学的検査で両者は同じ腎細胞癌再発と診断された. 晩期再発の中でも術後30年以上経過して再発するケースは非常にまれである.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ステントグラフトで止血した膵頭十二指腸切除後仮性動脈瘤出血の1例

久美愛厚生病院外科

酒徳 弥生 他

 症例は59歳男性. 2017年3月に膵頭部膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断で全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した. 術後8日目に膵腸吻合部縫合不全を発症した. 15日目にドレーンよりセンチネル出血を認め, 血管造影で胃十二指腸動脈断端に仮性動脈瘤を確認したが, 明らかな出血はみられなかった. 翌16日目に血管内治療を行い, 総肝動脈に7mm径-2.5㎝長の自己拡張型末梢血管用ステントグラフト (Goa Viabahn)を留置し, 肝動脈血流を温存しつつ止血が得られた. 以後, 膵液漏は改善し, 術後50日目に退院した. 本症例では, 放射線科医と連携し, 2016年12月に腹部の医原性動脈損傷に対し初めて保険適用となった末梢血管用ステントグラフトを用いて, 準緊急的に仮性動脈瘤からの出血を止め, かつ肝動脈血流を温存することができた. この手技は仮性動脈瘤治療に大きく貢献すると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

増大傾向を示し脾摘術を行った無症候性脾辺縁帯リンパ腫の1例

筑波記念病院外科

佐々木 量矢 他

 72歳, 男性. 前立腺肥大に対する経過観察の腹部超音波検査にて, 脾臓内に多発する低エコー腫瘤と軽度の脾腫を指摘された. 転移性脾腫瘍の可能性を考え全身検索を行ったが, 原発巣となる病変は認めなかった. 多発脾腫瘍 (最大径10mm) は, 半年後のCT検査にていずれも増大し, 最大径は23mmに達した. 全身リンパ節腫大やLDH上昇はみられなかったが, 可溶性IL2レセプターは軽度の高値であり, 増大傾向を示したことから悪性リンパ腫などの脾原発悪性腫瘍を否定できず, 診断を兼ねた脾摘術の適応と判断した. 用手補助腹腔鏡下脾摘出術にて無傷の脾臓を病理検査へ提出し, 無症候の状態にて脾辺縁帯リンパ腫との診断を得, 合併症なく退院となった. 本症例は, 術後約6年となる現在まで再発なく経過しており, 若干の文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

大網脂肪織炎が原因と推定される大腸癌術後腸閉塞の1例

公立学校共済組合四国中央病院外科

田代 善彦 他

 54歳男性.横行結腸癌に対して結腸左半切除術+D3郭清を施行.術後2日目から水分・内服開始,5日目に食事開始,9日目には5分粥を摂取できた.10日目に腹痛出現,腹部CT施行し,空腸起始部での閉塞を認めたが,縫合不全等の炎症所見はなかった.胃管挿入等の保存的加療で改善せず,17日目に再手術を施行.狭窄部である空腸起始部にはbandや内ヘルニアを認めず,大網が全周性に強固に癒着し閉塞の原因となっていた.剥離困難なため同部位を切除,空腸空腸吻合術を施行.再手術後6日間は胃管排液量の減少を認めたが,9日目から増加した.大網の脂肪織炎が吻合部に再発したと考え,保存的治療を継続した.17日目までは1L/日程度の胃管排液があったが徐々に減少し,消化管造影で通過障害の改善を認め,食事摂取再開し48日目に退院した.大腸癌術後早期の大網の異物反応による繰り返す腸閉塞の報告はなく文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

メッシュ除去と神経切離術で除痛が得られた鼠径ヘルニア術後慢性疼痛の1例

大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院外科

松本  龍 他

 鼠径ヘルニア術後の慢性疼痛は,患者のQOLを著しく低下させる重篤な合併症である.今回,鼠径ヘルニア術後の慢性疼痛に対して,メッシュ除去術および神経切離術を行い,著明な除痛が得られた1例を経験したので報告する.症例は77歳の男性で,右腎癌治療に伴う慢性腎不全で血液維持透析中であった.左内鼠径ヘルニアに対して鼠径ヘルニア修復術(Mesh Plug法)を施行した.術後3か月で左鼠径部痛が出現した.左鼠径部の異常感覚と左鼠径部から左大腿内側にかけての放散痛を認めたことから神経因性の慢性疼痛と診断した.鎮痛剤による内服加療が奏功せず,初回手術より5ヶ月でメッシュ除去術および神経切離術を施行した.手術直後より著明な除痛が得られた.病理組織学的検査では,陰部大腿神経陰部枝周囲に広範な脂肪壊死および瘢痕化所見を認め,そこへ向かって同神経が牽引されていたことから,今回の神経因性疼痛の原因の一つと考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡と前方アプローチ併用手術を行った疼痛を伴う再発鼠径ヘルニアの1例

安城更生病院外科

藤枝 裕倫 他

 症例は74歳の男性で,右外鼠径ヘルニアに対しヘルニア修復術(Mesh plug法)を施行した.術後より右鼠径部痛を認めていたが改善せず,術後6ヶ月で受診した.腹圧をかけると右鼠径部の膨隆を認め右鼠径ヘルニアの再発と診断した.また,右鼠径部から大腿内側への痛みがみられた.ヘルニア修復術後7ヶ月で手術を施行した.腹腔鏡下に観察すると再発形式は内鼠径ヘルニアであった.腹腔鏡下でPlugを除去後,前方アプローチで鼠径管を開放すると,Onlay patchが恥骨上で反転し,同部位で再発していた.Onlay patchに腸骨下腹神経が癒着しており,慢性疼痛の原因と考えた.Onlay patchを除去し,腸骨下腹神経も切除した.閉創後,腹腔鏡下経腹的腹膜前メッシュ修復法(TAPP法)にてヘルニア修復をおこなった.術後,慢性疼痛は消失し経過良好,術後1年が経過し,慢性疼痛やヘルニアの再発は認めていない.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る