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日本臨床外科学会雑誌 第79巻6号 掲載予定論文 和文抄録


症例

初潮とともに急速増大した14歳乳腺線維腺腫の1例

信州大学医学部外科学第2教室乳腺内分泌・呼吸器外科部門

池原 智彦 他

 若年者の線維腺腫の中には急速に増大するものがあり,若年性線維腺腫と呼ばれ,本邦での15歳以下の報告例は20例と比較的稀である.今回,14歳女児に発症し,初潮とともに急速に増大した若年性線維腺腫の1例を経験したので報告する.症例は14歳,女児.4ヶ月前に初潮初来.3ヶ月前より急速に左乳房の増大を認め,当科を受診した.左乳房に10cm大の弾性軟な腫瘤を触知し,乳房造影MRI検査で左ECD領域に12cm大の漸増型造影効果を伴う境界明瞭腫瘤を認め,針生検で線維腺腫と診断された.増大傾向を呈する巨大な腫瘤であり手術の方針とし,整容性を考慮し,乳房下溝線外縁に皮膚切開を置き,腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断で若年性線維腺腫と診断され,ER陽性,Ki-67陽性率は約20%であった.本症例は初潮後に腫瘤が急速に増大し,ER陽性であったことから,急速増大の要因としてエストロゲン刺激との関連が示唆された.

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HNF4aが診断に有用であった胃癌乳腺転移の1例

愛知県がんセンター愛知病院乳腺科

村田 嘉彦 他

 症例は80歳女性で,肛門出血で当院を受診した.精査にて肛門管癌(cT4(膣浸潤疑い)N0M0 cStage ⅢA)と幽門前庭部胃癌(cT1N0M0 cStage IA)と診断され,骨盤部への放射線照射とS-1内服による化学放射線治療後に腹腔鏡補助下直腸切断術・D2郭清と幽門側胃切除・D2郭清・B-I再建を実施した.術後病理は,肛門管癌はpCRであり,胃癌はypStage IAであった.術後補助治療なく経過観察となった.術後左乳房B領域に腫瘤形成性病変を認め,組織診で原発性乳癌(充実腺管癌)と診断し,左乳房切除術+腋窩リンパ節郭清(児玉法)を実施した.術後病理で既存の胃癌の組織像と一定の共通性もあり胃癌の転移の可能性も否定できないとの結果であった.免疫染色でHNF4aが陽性であり胃癌の乳腺転移と診断した.今までに胃癌の乳腺転移にHNF4aを用いた症例の報告は無く,非常に稀と思われた.

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VPシャントによる腹腔内髄液仮性嚢胞の1例

聖マリア病院外科

安士 健一 他

 症例は34歳、男性。出生時に先天性水頭症と診断され脳室腹腔シャント(ventriculo-peritoneal shunt:VPシャント)造設術を施行。今回、腹部膨満と腹痛を主訴に腹膜炎の疑いで当院紹介受診し腹部CT検査で腹腔内嚢胞を認め、腹腔穿刺を行い漿液性の液体を採取。嚢胞内にVPシャントチューブがあることからVPシャントによる腹腔内髄液仮性嚢胞と診断。穿刺ドレナージ後も嚢胞に髄液貯留を認めるため、VPシャント腹腔内移行術施行。腹腔内は癒着が強く、VPシャントチューブを延長し先端を癒着剥離した上腹部へ移行。腹水は減少し腹部膨満も軽快したため術後18日目に退院。術後180日に水頭症増悪を認め、腹部CT検査から腹腔内髄液仮性嚢胞再発と診断しVPシャントを抜去。脳室心房シャント(ventriculo-atrial shunt:VAシャント)造設術を施行後は感染や閉塞、水頭症の増悪は認めない。

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横行結腸が単独脱出し十二指腸閉塞を呈した食道裂孔ヘルニアの1例

尾道市立市民病院外科

伏見 卓郎 他

 食道裂孔に横行結腸のみが脱出し,横行結腸により十二指腸が牽引され十二指腸閉塞を呈した1例を経験したので報告する.症例は77歳女性.以前から縦隔内に横行結腸が脱出する食道裂孔ヘルニアを指摘されていたが,通過障害なく経過観察となっていた.嘔吐を主訴に近医受診し,腸閉塞の診断で当院紹介となった.腹部単純CT検査では縦隔内に脱出した横行結腸により十二指腸球部が牽引され十二指腸閉塞を呈していた.胃管で減圧し待機的に腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア根治術を施行した.食道裂孔は約3cm大で横行結腸が縦隔内に脱出していた.ヘルニアを還納後,食道裂孔を非吸収糸で縫縮した.術後経過は良好で,術後2年間に再発を認めていない.本邦において横行結腸が単独脱出した食道裂孔ヘルニアの報告は散見されるが,十二指腸閉塞を呈した報告はなく,稀な病態と考えられた.

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保存的に治療した門脈ガスを伴う胃気腫症の1例

那覇市立病院外科

上江洌 一平 他

 症例は69歳,男性.統合失調症で約20年間精神科病院に入院中,腸閉塞疑いで当院に救急搬送された.当院へ搬送時,腹部膨満著明であったが明らかな腹部圧痛は認めなかった.腹部造影CT検査では,胃拡張,胃壁に沿って空腸近位部まで気腫性変化,肝左葉を中心に門脈ガスを認めた.空腸近位部での狭窄を認めたが,明らかな絞扼所見はなかった.以上の所見より,空腸近位部での腸閉塞を契機とした胃気腫症と診断した.腹膜刺激症状がなく全身状態は安定していたため,同日緊急入院とし,経鼻胃管留置,絶食,補液による保存的治療を開始した.入院後も腹痛は出現せず,経時的に施行したCTにて,腸閉塞の改善,門脈ガスおよび胃壁内気腫の消失を確認した.
 今回,われわれは発症がまれな門脈ガスを伴う胃気腫症に対して保存的に治療しえた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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肺炎入院中に発熱の再燃で顕性化した義歯による90歳小腸穿孔の1例

指扇病院外科

田中 政有 他

 症例は90歳,男性.38度の発熱を主訴に当院内科を受診し,胸腹部CTにて両側肺炎を認め入院となった.肺炎は速やかに軽快したが,入院9日目に再び39度の発熱を認めた.腹痛なく,腹部所見も乏しかったが,胸腹部CTにて腹腔内遊離ガスと回盲部付近に高吸収域の異物像を認めた.入院時のCTと比較すると,その異物像は左下腹部から回盲部付近に移動しており,義歯が紛失していたことから義歯による消化管穿孔,腹膜炎を疑い,同日緊急腹腔鏡補助下手術を行った.Bauhin弁から約10cm口側の小腸に直径7mmの穿孔が存在し,腸液の流出と回盲部周囲膿瘍も認めたため,回盲部切除術を施行した.義歯は突出した爪様の形態で,盲腸内へ移動していた.術後重篤な合併症は発生しなかったが,術前より存在した嚥下障害が改善しなかったため,中心静脈栄養ポートを留置し,術後39日目にリハビリ目的で療養型病院へ転院となった.

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精巣静脈より中心静脈路を確保した慢性偽性腸閉塞症の1例

古河赤十字病院外科

片野  匠 他

 慢性偽性腸閉塞症(Chronic Intestinal Pseudo-Obstruction: CIPO)の根本治療は確立されておらずTPNは必須である.今回20年来のTPN患者に対して経精巣静脈的にCVカテーテルを留置し得たため報告する.症例は59歳男性.40歳時にCIPOに対して小腸瘻造設術が施行された.その後もカテーテル関連血流感染症(Catheter-related bloodstream infection: CRBSI)のため入退院を繰り返しており,今回もCRBSIのため緊急入院となった.感染のコントロール後にCVルートを模索したが主要血管が閉塞していたため,代替路として精巣静脈からのカットダウン法を行った.局所麻酔下に左鼠径部切開を行い,左精巣静脈から腎静脈を経由して下大静脈まで16G CVカテーテルを挿入した.TPN再開後,約半年間経過良好である.

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CTで術前診断し腹腔鏡下Ladd手術を行った成人腸回転異常症の1例

美濃市立美濃病院外科

丹羽 真佐夫 他

 症例は28歳の男性.上腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部単純CT検査で腸回転異常症,中腸軸捻転症を疑ったが,胃から上位小腸の拡張が軽度であったため保存的加療目的で入院とした.入院後2日目の腹部造影CT検査でSMAとSMVの走行が左右逆転しており腸回転異常症,nonrotation typeと改めて診断し,圧痛が継続し同様の既往歴を有するため同日腹腔鏡下Ladd手術を施行した.術後経過は良好で術後6日目に退院し,再発を認めていない.腸回転異常症の術前診断にはCT検査と病歴聴取が重要で,術前診断できていれば低侵襲手術としての腹腔鏡下Ladd手術が有用であると思われた.

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腹腔鏡下に切除した腸間膜仮性嚢胞の1例

十和田市立中央病院外科

杉田 純一 他

 症例は32歳男性.胃痛にて近医受診.腹部超音波検査にて膵体尾部に接する嚢胞を認め,当院に紹介された.腹部CTにて後腹膜Treitz靱帯の尾側に境界明瞭な45×38mm大の嚢胞性病変を認めた.境界明瞭で壁の不正や壁在結節は認めなかった.腹部MRIにて同病変と主膵管との交通を認めなかった.腹部超音波検査所見では体位変換により容易に移動した.以上より腸間膜嚢胞と診断し,腹腔鏡下腸間膜嚢胞摘出術を施行した.鏡視下に観察すると,空腸起始部に45mm大の腸間膜に覆われた腫瘤を認め,腸間膜後葉から剥離し嚢胞を完全に摘出した.病理学的に嚢胞壁は線維性間質からなり,上皮細胞は観察されなかったため,腸間膜仮性嚢胞と診断した.腸間膜仮性嚢胞はまれな疾患であり,腹腔鏡下に切除した本邦での報告は当症例で5例目である.その治療は完全切除であり,腹腔鏡手術は利点を生かした有効な手技と考えられた.

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発症早期に診断し腹腔鏡下に治療した外側型盲腸周囲ヘルニアの1例

津島市民病院外科

有竹  典 他

 症例は48歳,男性.開腹歴は無し.腹痛を主訴に当院を受診した.右下腹部に限局した圧痛があり,腹部造影CT検査では拡張した回腸が盲腸背外側でclosed-loopの形成と口側小腸の拡張を認めた.小腸壁の造影効果は保たれており,虚血を疑う所見は認めなかった.盲腸周囲ヘルニアと診断し,発症から約5時間後に腹腔鏡下に緊急手術を施行した.鏡視下に観察すると,盲腸の外側に小腸の陥入を認めた.陥入小腸に血流障害は認めず,切除は不要であった.ヘルニア門となっていた膜状構造物を切開し,小腸が陥入していたスペースを完全に開放して手術を終了した.術後経過は良好で,術後2日目に退院した.腹部CT検査は盲腸周囲ヘルニアの診断に有用であった.低侵襲な腹腔鏡手術を行い,患者は早期に退院できた.

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腹腔鏡手術を行った腰椎腹腔シャントを有する急性虫垂炎の1例

昭和伊南総合病院外科

吉村 昌記 他

 症例は72歳女性で,特発性正常圧水頭症に対して当科受診27日前に腰椎腹腔シャント術を受けていた.腹痛を主訴に受診し,腹部CT検査にて急性虫垂炎と診断された.脳神経外科医と検討し,シャント温存下で気腹圧8 mmHgにて腹腔鏡下虫垂切除術を施行し,術後4日目に退院となった.術後経過は順調で,以後髄膜炎やシャント不全などは認めていない.
 腰椎腹腔シャント留置例に対してシャントチューブを温存したままで腹腔鏡下虫垂切除術を施行する場合,逆行性感染を来す恐れがあるが,症例を選べば逆流防止弁付きシャントシステムに処置を追加せずとも安全に腹腔鏡下虫垂切除術を施行できる可能性がある.検索しえた範囲では腰椎腹腔シャント留置例に対し腹腔鏡下虫垂切除術を施行した報告はなく,文献的考察を加え報告する.

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CT検査で特徴的な所見を呈した虫垂真性憩室炎の2例

北海道消化器科病院外科

上野  峰 他

 稀な病態である虫垂真性憩室を病理学的に診断し得た2例を経験したので報告する.症例1は右下腹部痛を主訴に受診した.CT検査で虫垂の腫大と周囲脂肪織濃度の上昇を認め,急性虫垂炎の診断となり,保存的加療の2ヶ月後に腹腔鏡下虫垂切除術が施行された.症例2は心窩部痛を主訴に受診した.CT検査で虫垂周囲に多発する嚢胞形成と脂肪織濃度の上昇を認め,虫垂憩室炎の診断となり,保存的加療を開始したが,採血と画像検査所見の増悪を認めたため,入院2日目に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.病理組織学的所見ではいずれも炎症細胞浸潤を有する真性憩室を認め,虫垂真性憩室炎と診断した.

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腺癌を伴った虫垂goblet cell carcinoidの1例

広島記念病院外科

迫田 拓弥 他

 症例は40歳女性. 右下腹部を主訴に近医を受診し急性虫垂炎の疑いとして当院紹介となった. 血液検査でWBC14790/mm3 , CRP12.12 mg/dlと炎症反応の上昇と, 腹部CT検査で虫垂腫大と壁肥厚を認め, 急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行した. 病理組織学的検査では虫垂根部の粘膜下層から固有筋層を中心に虫垂goblet cell carcinoid(GCC)を認め, 一部に中分化型管状腺癌を伴っていた. 切除断端にもGCCを認め, 術後31日目に追加切除として腹腔鏡補助下回盲部切除術, D3郭清を施行した. 最終病期はT3, N0, M0, StageIIであった. 術後は合併症なく経過し, capecitabine, oxaliplatinによる術後補助化学療法を6ヶ月施行し, 術後2年9ヶ月無再発生存中である.

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肺混合型小細胞癌による虫垂転移の1例

新宮市立医療センター外科

桐山 茂久 他

 症例は76歳,男性.左上肺野異常陰影のため当院紹介され精査の結果,肺混合型小細胞癌(cT3N2M1b(骨転移); cStageIV)と診断されたが,CTで虫垂根部に腫瘤影も認めたため当科紹介となった.虫垂腫瘍の診断で,穿孔の危険性も考慮し肺癌治療に先行して回盲部切除術,D2リンパ節郭清術を施行した.病理組織学的検査で肺混合型小細胞癌の虫垂転移と診断した.術後32ヵ月現在,化学療法等を行いながら担癌生存中である.肺癌虫垂転移はまれとされており,肺混合型小細胞癌による虫垂転移は検索しえた範囲で本邦報告例は無く,今回若干の文献的考察を加え報告する.

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敗血症ショックを呈した宿便起因性閉塞性大腸炎の1例

JA長野厚生連南長野医療センター篠ノ井総合病院外科

秋田 倫幸 他

 症例は80歳、男性。便秘と腹部膨満感を主訴に当院へ救急搬送となった。腹部は軽度膨満、明らかな腹膜刺激症状は認めなかった。腹部CTで直腸からS状結腸に便塊とその近位側大腸の拡張と液体貯留を認めた。
 採血結果では炎症反応上昇、脱水、代謝性アシドーシスの呼吸性代償を認めた。下腹部痛増悪、呼吸苦出現、意識混濁出現したため腸壊死もしくは腸穿孔に至ったと判断し緊急手術を施行した。開腹し腹腔内を観察したところ便臭のある褐色腹水を認めた。結腸、回腸に菲薄化した腸管を認め、特に下部大腸の腸管粘膜は黒く、壊死像が菲薄化した腸管から透見できた。結腸全摘術を施行した。回腸断端で単孔式人工肛門を造設した。術後は心房粗動に対し除細動、エンドトキシン吸着カラムなど治療を行い、救命することができた。宿便性腸閉塞は透析患者や糖尿病を有する患者に発症しやすいが手術に至る例は比較的少ない。文献的考察ともに報告する。

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腹腔鏡下結腸全摘術を行った早期癌を伴うserrated polyposis syndromeの1例

自治医科大学附属さいたま医療センター一般・消化器外科

田巻 佐和子 他

 早期結腸癌を伴ったSerrated polyposis syndromeに対して腹腔鏡下結腸全摘術を施行した1例を報告する。症例は66歳、女性で、多発大腸ポリープに対する内視鏡治療目的に紹介となる。3年間で合計5回の内視鏡治療を行い14病変を切除した。9病変は10mm以上(最大30mm)で、右側大腸のsessile serrated adenoma/polypであった。2病変に癌を認め、横行結腸の粘膜内癌(15mm、IIa)と上行結腸の粘膜下層高度浸潤癌(15mm、IIa)であった。腹腔鏡下結腸全摘術を施行した。病理では計272個のhyperplastic polypからsessile serrated adenoma/polypの混在を認めた。Serrated polyposis syndromeに発生した癌に対しては、腹腔鏡下結腸全摘は選択肢の1つと考えられる。

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腹腔鏡下に切除したS状結腸腹膜垂原発脂肪腫茎捻転の1例

佐々総合病院外科

竹内 俊介 他

 症例は36歳の女性。左下腹部痛を主訴に当院受診。診察所見上、左下腹部に圧痛と筋性防御を認めた。血液検査上、血清CRP値および白血球数の上昇を認めた。腹部CT検査にて子宮の左側腹側に脂肪成分とほぼ同等の吸収域を呈し膀胱を圧排する径77mm大の腫瘤を認めた。経腟エコー検査でも同様の腫瘤を認め疼痛部位と一致したため左卵巣成熟嚢胞性奇形腫または左卵管脂肪腫の茎捻転を疑った。しかし原発部位が特定出来ないことから外科と婦人科合同で緊急腹腔鏡下手術を施行した。腹腔鏡検索にてS状結腸腹膜垂原発の有茎性腫瘍が捻転していることを確認し腹腔鏡下に腫瘍を切除した。腫瘍は病理組織学的検査で捻転による循環障害を伴う脂肪腫と最終診断された。腹膜垂原発腫瘍や腹腔内脂肪腫茎捻転についての報告例は少なく、術前に原発部位を特定することは困難であったが、腹腔鏡下手術は発生部位の診断や手術侵襲の軽減に有用であると考えられた。

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肝転移再発時にサルコイドーシスを発症した直腸癌の1例

JCHO大阪病院外科

寺西 立冴 他

 症例は68歳,男性.直腸癌に対して腹腔鏡補助下前方切除術を施行し,pT3N0M0 pStageⅡであった.術後6カ月目のCT検査で,頸部,縦隔および肝門部リンパ節腫脹と肝S6に3cm大の結節を認めた.直腸癌術後多発転移を疑い,FDG/PET検査を施行した所,腫大リンパ節と肝腫瘤にSUVmax=3.9〜9.5の異常集積を認めた.直腸癌多発転移の可能性がある一方,他の悪性腫瘍やサルコイドーシス等の疾患も考えられた.頸部および縦隔リンパ節生検を施行し,非乾酪性肉芽腫の結果を得た.肝腫瘍および肝門部リンパ節腫大に対して肝S6亜区域切除術および肝門部リンパ節生検を施行し,肝腫瘍は直腸癌の肝転移,肝門部リンパ節は非乾酪性肉芽腫であった.術後19ヵ月間,無再発で健在である.直腸癌肝転移とサルコイドーシスが混在する症例は比較的稀であり、結果的にR0切除可能であった1例を経験したので報告する.

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肉眼的に明らかな所見を認めなかった肛門管癌pagetoid spreadの1例

千葉県がんセンター食道・胃腸外科

佐藤 菜実 他

 症例は66歳女性,主訴は血便.精査で肛門管内に3㎝大の1型腫瘍を認め肛門管腺癌cT2N0M0StageIの診断となった.周囲粘膜と肛門皮膚に有意な所見は認めず,腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.標本上も腫瘍以外に肉眼的所見を認めなかったが病理組織学検査では癌周囲の表皮内にPaget細胞の浸潤を認めた.免疫染色の結果はCK20(+)CK7(-)GCDF15(-)であり癌部と一致しPagetoid spread(PS)を伴う肛門管腺癌(全体の最大径102mm,pT2pN0M0,ly1,v2,PM0,DM0(3mm),RM0)と診断された.PSは悪性腫瘍が原発巣から表皮内へ経上皮性に浸潤する病態である.肛門管癌にPSを伴う場合は切除範囲が重要となるが本症例では広範囲にPSが存在したものの肉眼的所見を認めず術前評価が困難であった.肛門管癌の診療にあたる際はPSの可能性を念頭に置く必要がある.

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単孔式腹腔鏡手術を行った完全内臓逆位を伴う急性胆嚢炎の1例

小樽市立病院外科

渡辺 義人 他

 症例は76歳男性。以前より胆嚢結石と完全内蔵逆位を指摘されていた。今回左季肋部痛、背部痛を主訴に平成27年11月近医受診。症状が改善せず当院消化器内科を受診し急性胆嚢炎の診断で緊急手術となった。手術は単孔式での腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した。術後経過は良好で、第7病日に退院となった。完全内蔵逆位症例に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術はこれまでにも報告されており近年では単孔式手術の報告も散見される。従来法では逆手となる鉗子操作が単孔式では交叉法により逆手とならず、エネルギーデバイスや鉗子の操作を順手で行うことができた。まれな症例ではあるが単孔式手術の利点は多いと考えられ、術式の一つとして有用であると考えられた。

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腹腔鏡下に切除した脾sclerosing angiomatoid nodular transformationの1例

滋賀県立総合病院外科

谷  昌樹 他

 症例は49歳女性.検診の胃透視検査で胃粘膜下腫瘍疑いのため,紹介受診した.上部消化管内視鏡検査で,胃体上部大弯に壁外性圧迫を認めた.造影CTでは脾臓に平衡相で淡く造影される6cm大の腫瘤を認め,MRIでは辺縁は整・平滑な腫瘤で,T1強調画像で脾と等信号,T2では低信号であった.腫瘍マーカー・可溶性IL2レセプターは正常範囲であった.術前診断困難であり確定診断目的に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.CD8・CD31・CD34を用いた免疫組織化学的検査でsclerosing angiomatoid nodular transformation(以下SANT)と診断された.SANTは2004年に初めて報告された脾臓に特異的な腫瘤形成性の非腫瘍性血管性病変である.本邦報告例は少なく文献的考察を加え報告する.

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大網原発未分化多形肉腫の1例

北里大学医学部外科学

丸山 正裕 他

 67歳,男性.発熱・腹痛・腹部膨満を主訴に当院内科を受診した.腹部造影CT検査にて,横行結腸に接する内部不均一な造影効果を伴った腫瘍を認め,手術目的に当科紹介となった.大網悪性腫瘍の疑いで腹腔鏡下大網腫瘍切除術の予定となった.手術は腹腔鏡下に開始したが,大網腫瘍径が大きく,体位変換においても視野確保が困難であり開腹移行となった.腫瘍周囲には著明な静脈拡張を認めたものの他臓器への浸潤はなく,大網腫瘍切除術を施行した.病理組織学的診断では,大網原発の未分化多形肉腫(undifferentiated pleomorphic sarcoma)と診断された.大網原発の未分化多形肉腫は,極めて稀な疾患で術前診断も困難であり予後不良である.本症例は,他臓器浸潤や遠隔転移は認めず完全切除を行えており長期生存の可能性がある.今後も注意深く経過観察を行い,再発時には外科的切除を検討する必要がある.

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Components separation法で修復した腸管脱出腹壁瘢痕ヘルニア破裂の1例

国立病院機構岩国医療センター外科

賀島  肇 他

 症例は83歳の女性.腸管脱出を主訴に当院に救急搬送された. 10年前にS状結腸癌に対してS状結腸切除を施行されたが,術後1年で腹壁瘢痕ヘルニアを発症し未治療のままであった.ヘルニア部位の脆弱化した皮膚に怒責で腹圧がかかり破綻したものと考えられた.ヘルニア門は最大径が82mmであり,人工物を用いての修復が望ましかったが,創部の汚染と腸管へのトイレットペーパーの付着があり腸切除を行ったためその挿入は躊躇されたので緊急でcomponents separation method(以下CS法)による修復を行った.術後経過は良好で合併症なく退院した.半年後の外来受診時にも再発は認めていない.Mesh等の人工物が使用できず,直接縫合によるヘルニア門の閉鎖が困難である症例に対してCS法は有用な治療方法である.本症例のように術野汚染を伴う緊急の巨大腹壁瘢痕ヘルニアに対してCS法は良い適応であると考えられた.

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卵管采が嵌頓した大腿ヘルニアの1例

馬場記念病院外科

森  拓哉 他

 症例は55歳, 女性.以前より右鼠径ヘルニアを指摘されていた.1週間前からの右鼠径部膨隆を主訴に当院を受診.右鼠径部に鶏卵大の緊満した膨隆を認めたが,発赤はなく圧痛も軽度であった.来院時血液検査に異常は認めず,腹部CT検査でイレウス像や腸管の嵌頓所見は認めなかったため待機的に腹腔鏡手術を施行した.手術時診断は右大腿ヘルニア嵌頓で内容は右卵管采であった.還納した卵管采に血流障害はなかったため温存し,メッシュによる根治術を施行した.また腹膜前腔に可動性良好な1.5㎝大の腫瘤を認めたため,同時に切除を行った.病理結果は平滑筋腫であった.術後経過は良好で術後1日目に退院となった.成人で卵管采が嵌頓した大腿ヘルニアは非常に稀である.イレウス症状を伴わない大腿ヘルニア嵌頓では,内容物が卵巣や卵管采の可能性があることを念頭において手術を行うことが望ましいと考えられた.

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左鼠径ヘルニア嵌頓に併存した右坐骨ヘルニア嵌頓の1例

自治医科大学消化器・一般外科

金子 勇貴 他

 76歳女性.心窩部痛を主訴に救急搬送された.開腹歴なし.左鼠径部腫瘤を触知し,単純X線で小腸ガスを認め,左鼠径ヘルニア嵌頓による腸閉塞と診断された.用手的整復後,経過観察入院となった.腸閉塞の改善がなく,翌日の造影CTで右坐骨孔に腸管脱出を認め,右坐骨ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術となった.腹腔鏡下観察で右坐骨ヘルニアを認めたが,嵌頓は既に解除されていた.腸管壊死を疑い開腹すると,回腸にRichter型嵌頓を起こしていた所見があった.壊死所見なく腸切除はしなかった.ヘルニア門は卵巣等周囲組織で被覆閉鎖した.術後は肺炎などのため,第35病日に退院となった.腹壁ヘルニア嵌頓時には他のヘルニアの合併に留意し,嵌頓解除後の症状観察が重要である.坐骨ヘルニアの診断,治療方針の決定に造影CT,腹腔鏡観察が有用であった.

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