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日本臨床外科学会雑誌 第79巻5号 掲載予定論文 和文抄録


平成29年度学会賞受賞記念講演

生涯臨床外科医として

宮城県赤十字血液センター

中川 国利

 臨床外科医の道を歩んだ契機は、医学生時代に外科の魅力を熱く語る故渡辺 晃水戸国立病院院長を知ったことによる。そして4年間にわたり365日、『頭から足先まで、全ての疾患に対応できる外科医』になるべく診断から治療までを叩き込まれ、臨床外科医の魅力に嵌った。また学会・論文発表することが、信頼して診療を託してくれた患者に対する臨床医の責務であると教わった。そして外科学の神髄を求めて母校の外科学教室(故佐藤寿雄教授)の扉を叩き、臨床研究に携わり、国内外の臨床医と競うことにより交友を深め、関連病院での診療を通じて地域医療の実情を知った。仙台赤十字病院に勤務後は地域医療に邁進し、腹腔鏡手術を始めとした数多くの手術を行い、学会発表や論文発表を行った。また初期研修医や後輩外科医の教育・指導に携わった。さらに血液センターに移動後は安全な血液の安定供給に努め、生涯にわたり社会に貢献できる幸せを享受している。

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症例

乳管腺葉区域切除術にICG蛍光法が有効であった乳癌の1例

山口県立総合医療センター外科

藤井 雅和 他

 症例は73歳の女性で、約20年から右乳頭より血性分泌を認めた。細胞診はclassⅢbであった。マンモグラフィ検査ではカテゴリー1で、超音波検査では右乳房E領域外側に約10×3×4mmの低エコー領域と拡張乳管を認めた。MRI検査では右乳腺のAC領域に乳管内進展腫瘍を否定できなかった。診断と治療のため乳管腺葉区域切除術を施行した。インジゴカルミンとICGを原因乳管内に注入後、原因乳管と切除範囲となる腺葉区域が蛍光された。病理所見はInvasive ductal carcinoma with a predominant intraductal component、T1、N0、M0、stageⅠ、切除断端(-)、ER(+)、PgR(+)であった。術後アロマターゼ阻害剤の内服と放射線療法を施行した。本手技は原因乳管の支配する腺葉区域をリアルタイムでの確認ができ、かつ安全に施行可能と考えられた。

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近傍の線維腺腫により術前化学療法の治療効果を過小評価した乳癌の1例

防衛医科大学校外科学講座

平塚 美由起 他

 症例は40代女性.右乳房の硬結を主訴に当科へ紹介受診となった.右乳癌(T2N3bM0 StageⅢC), Luminal B-likeの診断にてprimary systemic therapy(PST)としてepirubicin+cyclophosphamide→docetaxelを施行した.PST後に残存した低エコー領域を腫瘍の遺残と捉えycT1N0M0 StageIと判断し右乳房部分切除術と同側の腋窩郭清を施行した.しかし,病理報告では,腫瘍の遺残とした部分は線維腺腫で,浸潤癌乳管内癌ともに消失していた.術後は残存乳房及び傍胸骨照射と術後補助内分泌療法を施行し3年8ヶ月経過後,再発徴候は認めていない.PST後の針生検を行うことでPST後の治療効果の過小評価を防ぎ,より縮小した手術を提供できた可能性がある.

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松葉杖による上腕動脈瘤に起因する上肢急性動脈閉塞の1例

名寄市立総合病院心臓血管外科

中津 知己 他

 症例は71歳男性.小児麻痺で左下肢麻痺があり日常生活で松葉杖を使用していた.左前腕のしびれを主訴に受診,CTで左上腕動脈瘤と上腕動脈閉塞を認めた.上腕動脈瘤と急性動脈閉塞と診断した.左腋窩の皮膚は松葉杖の使用で荒廃しており,創部感染を危惧して瘤切除は断念し瘤近傍で動脈を結紮し空置とした.左上腕動脈血栓摘除術ならびに動脈瘤空置,左腋窩―上腕動脈バイパス術を行った.上腕動脈瘤はまれな疾患であるが,本症例は年余にわたる松葉杖使用による慢性外力が動脈瘤形成に関与し,瘤内血栓の遊離により急性動脈塞栓症を来たしたものと考えられた.

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腹部大動脈人工血管置換術後大動脈十二指腸瘻の1例

筑波記念病院心臓血管外科

西  智史 他

 大動脈十二指腸瘻は希だが腹部大動脈瘤術後の非常に重篤な合併症である. 今回我々は腹部大動脈瘤術後の大動脈十二指腸瘻の1救命例を報告する. 症例は70歳男性. 3年前に腹部大動脈瘤に対しY字型人工血管置換術を施行された. 2週間前より発熱, 腰痛を認め, 前医で人工血管感染を疑い抗生剤治療が行われていたが, 数日前より黒色便を認め, 吐血を発症し, 当院へ搬送された. 造影CTにて大動脈十二指腸瘻と診断し緊急手術を施行した. 術中所見では人工血管の中枢側吻合部前壁が破綻し, 十二指腸と交通していた. 解剖学的に再人工血管置換と大網充填術を施行し, 十二指腸壁は単純縫合閉鎖した. 術後経過は良好であり, 術後44日目独歩退院となった.

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遅発性十二指腸狭窄を合併した膵十二指腸動脈瘤破裂の1例

大阪府三島救命救急センター

浅井 健佑 他

 今回われわれは、膵十二指腸動脈瘤破裂に対し経カテーテル的動脈塞栓術で止血後、遅発性十二指腸狭窄を合併した1例を経験したので報告する。症例は62歳、男性。第1病日、後下膵十二指腸動脈瘤破裂に対し経カテーテル的動脈塞栓術で止血した。経過良好であったが第14病日より嘔吐が出現し、第16病日に行った経管的十二指腸造影検査で十二指腸下行脚に高度狭窄を認めたため、遅発性十二指腸狭窄と診断した。保存的療法を継続し後腹膜血腫は著明に縮小したが狭窄症状の改善がなかったため、第48病日に開腹手術を施行した。十二指腸および周囲後腹膜組織に高度線維化を認め、後腹膜血腫除去後の術中十二指腸造影検査でも通過障害が残存したため、胃空腸バイパス術を行った。自験例のように、後腹膜組織の線維化を原因とする遅発性十二指腸狭窄は保存的治療に抵抗性を示すことがあるため、胃空腸バイパス術を含む外科的治療を要する可能性が高いと考える。

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肺癌と鑑別困難であったアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の1例

鶴岡市立荘内病院呼吸器外科

中橋 健太 他

 症例は73歳,女性.既往歴で喘息を有していた.検診の胸部X線で右上肺野の異常影を指摘された.胸部CTで左肺S8に最大径40mmの腫瘤と右肺S3に最大径13mmの結節を認めた.PET/CT検査では右肺の病変にFDGの集積なく左肺の病変にFDGの高集積を認めた.2か月後のCTで左肺の病変のみ増大傾向を認め,原発性肺癌を疑い手術を施行した.術中針生検で癌が疑われ胸腔鏡下左下葉切除術を施行した.病理では拡張した気管支内に多数の好酸球を含む粘液栓子や壊死物質の中に真菌菌糸を認めた.気管支壁には類上皮肉芽腫を認めアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)と診断した.結論.ABPAでは,FDG-PET/CT検査でFDGの強い集積を認めることがありまた,CEAが高値となることがあり悪性腫瘍との鑑別は困難と考えられた.喘息の既往がある患者ではABPAを念頭に置いた検査の施行を検討すべきと考えられた.

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トシリズマブ投与中のCastleman病患者に発生した食道癌の1例

名古屋大学医学部医学系研究科消化器外科学

武田 重臣 他

 症例は73歳女性.多中心性キャッスルマン病に対して約10年にわたってトシリズマブの投与を受け,良好な病勢コントロールを得ていた.健診にて食道癌を指摘され,手術目的に当科紹介となった.トシリズマブの最終投与日から19日後に,胸腔鏡補助下胸部食道亜全摘術を施行した.術後1日目に集中治療室を退室,術後2日目に歩行を開始し,術後14日目に経口摂取を再開した.術翌日以降の発熱やCRP上昇は乏しかった.術後17日目以降CRPは上昇傾向に転じたが,術後合併症を思わせる所見はなく,術後22日目にトシリズマブの投与を再開し,術後28日目独歩退院となった.今回の休薬期間設定では術直後にも関わらず血液検査上のCRP上昇は乏しく,感染性合併症発生の判断の指標とはならない可能性が考えられた.術後キャッスルマン病の病勢悪化によると考えられるCRP上昇を認めたが,安全にトシリズマブの再開が可能であった.

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びまん性胃粘膜下異所腺を併存したCA19-9産生胃癌の1例

福井大学医学部第1外科

河野 紘子 他

 術前血清CA19-9が533.0U/mlと異常高値を示し,DCMに合併したCA19-9産生胃癌の1例を経験したので報告する.症例は57歳男性,検診の胃透視で異常を指摘され紹介医受診.上部消化管内視鏡検査で4型腫瘍を認め,生検にて腺癌と診断された.手術は胃全摘出術,D2郭清,脾臓合併切除,胆嚢摘出を施行.病理組織診断はpT3(se)N3H0M0 pStageⅢCであり,DCMを認めた.切除標本の免疫染色では癌細胞の細胞質にCA19-9陽性所見がみられ,血清CA19-9が術後2か月目より正常化したことよりCA19-9産生胃癌と診断した.高度のリンパ節転移を認め,術後20日目から術後補助化学療法を開始した.術後60か月経過した現在も無再発生存中であるCA19-9産生胃癌の本邦報告例は,自験例を含め39症例とまれであり,DCMを合併した症例は現在まで報告がないことから,文献的考察を加えて報告する.

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十二指腸乳頭部原発大細胞神経内分泌癌の1例

広島市立病院機構広島市立安佐市民病院外科

瀬尾 信吾 他

 46歳男性、黄疸を主訴に当院を受診。十二指腸乳頭部に腫瘍を認め、内視鏡的乳頭生検にて腺管状、蜂巣状、策状に増殖する腫瘍細胞を認めた。免疫染色にてchromogranin A、synaptophysin、CD56がいずれも陽性、Ki-67indexは90%以上であり神経内分泌癌(NEC)と診断し手術を施行した。術後病理診断にて最終的に乳頭部原発の大細胞神経内分泌癌(LCNEC)と診断した(Adc腫瘤潰瘍型 T3aN1M0 fStageIIB)。術後は補助療法を行わず経過観察としたが、術後3ヶ月で肝転移・リンパ節転移再発を認めた。Cisplatin + Etoposide療法を開始したが、4コース後にはPDと判定。Gemcitabine+S-1療法へ変更するも、4コース中に癌性腹膜炎のため入院となり術後11ヶ月で癌死した。乳頭部原発のLCNEC診断例は国際的にも稀少であり報告とした。

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術中ICG蛍光法による血流評価が有用であった非閉塞性腸管虚血症の1例

横浜市立大学医学部消化器・腫瘍外科

佐藤  圭 他

 症例は81歳の女性.腹痛を主訴に救急要請し,当院に搬送された.腹部造影CTで腸管気腫像と腹水貯留を認め,非閉塞性腸管虚血症(以下,NOMI)を疑い緊急手術を施行した.小腸は暗赤色に色調変化していた.Indocyanine green(以下,ICG)蛍光法による腸管血流評価では,腸間膜血流は維持されていたが,色調変化した部位の腸管壁内の血流が欠損していた.NOMIによる腸管壊死と診断し,腸管切除を行った.一期的な吻合は避け,翌日2nd look operationを行い,ICG蛍光法により残存小腸に虚血がないことを確認して小腸の吻合を行った.術後17日目に自宅退院した.NOMIの緊急手術時にICG蛍光法を用いることで,正確な壊死範囲の診断と再手術時の虚血部位の有無が評価可能であった.NOMIの治療方針決定におけるICG蛍光法の有用性に関する報告は少ないため,文献的考察を加え報告する.

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Peutz-Jeghers症候群に伴う小腸重積術後に発生した吻合部小腸重積の1例

八千代病院外科

尾入 保彰 他

 症例は29歳の女性で,腹痛を主訴に当院を受診した.小腸腫瘍を先進部とする腸重積と診断し,緊急で腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した.病理所見でPeutz-Jeghers型の過誤腫ポリープを認め,Peutz-Jeghers症候群と診断した.術後50日目に腹痛を主訴に当院を再受診した.腹部CTにて腸重積再発と診断し緊急で腹腔鏡下に手術を行った.重積を整復し上部空腸を観察すると,重積先進部は初回手術の端々吻合部であり,近傍小腸に腫瘍を認めなかったので,吻合部を先進部とした腸重積と診断した.虚血や壊死を認めなかったため吻合部の切除は行わず,重積の再発予防のため吻合部周囲を左腹壁に固定し,手術を終了した.術後に行った小腸ダブルバルーン内視鏡検査では上部空腸にポリープを認めなかった.術後経過は良好で,術後4年の現在,腸重積の再発やイレウスの発症を認めていない.

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回腸人工肛門閉鎖術後に類白血病反応を呈した1例

長野中央病院外科

片桐  忍 他

 症例は86歳,女性.S状結腸癌術後吻合部再発に対し, 吻合部結腸切除および回腸人工肛門造設術を施行した.人工肛門閉鎖術後、閉鎖部創部感染あり, 創部解放と抗菌薬投与を開始したが,白血球数は88840/μl まで増加した. 骨髄疾患を疑い骨髄穿刺を施行したが, 芽球の増加や腫瘍細胞を認めない正形成骨髄であった. 術後創部感染に伴う類白血病反応と診断し, 感染症治療を継続した. 創部感染の軽快とともに白血球数は正常化した.類白血病反応は感染症や悪性腫瘍,薬剤などを原因として引き起こされる反応性の病態であり,白血病や白血病類縁疾患との鑑別が重要となる.今回我々は人工肛門閉鎖術後の創部感染を契機に発症した類白血病反応を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.

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腹腔鏡下に診断したMeckel憩室癌の1例

医真会八尾総合病院消化器センター外科

前田 浩晶 他

 症例は55歳男性。繰り返す腸閉塞にて当院へ入院した。PET-CT検査を含む精査では悪性疾患を疑う所見に乏しく、腸閉塞の原因検索及び根治術目的に腹腔鏡下に手術を施行した。手術では、回腸末端より約50cmの回腸にMeckel憩室様の突出腫瘤および腹膜結節を認め、Meckel憩室癌・腹膜播種と診断し、回腸部分切除術および腹膜腫瘤生検を施行した。病理組織検査では高~中分化腺癌を検出したが、明らかな迷入組織は認めなかった。術後は化学療法を施行するも、術後約1年4か月で癌性腹膜炎を併発し死亡した。Meckel憩室癌は画像診断が困難であり、進行癌の状態で発見されることが多く予後不良である。今回、診断に苦慮し、腹腔鏡下に診断し得たMeckel憩室癌の1例を経験したため、文献的考察を加え報告する。

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虫垂炎にて発症し待機的に腹腔鏡下切除した虫垂神経鞘腫の1例

十和田市立中央病院外科

杉田 純一 他

 症例は48歳女性.腹痛,背部痛にて受診.急性虫垂炎疑いにて当科紹介.腹部CT,超音波検査にて,虫垂の腫大と虫垂根部腫瘍を認めた.虫垂・盲腸腫瘍による急性虫垂炎と診断した.保存的加療にて炎症改善後に精査を施行し,根治手術の方針とした.下部消化管内視鏡検査では,虫垂開口部の発赤と粘膜下腫瘍様の隆起を認めたが,生検では炎症粘膜であった.虫垂癌を否定できないため,腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.病理組織検査では,虫垂根部に20mm大の腫瘤を認め,S100抗体陽性を示す紡錘形細胞からなる神経鞘腫の診断であった.虫垂腫瘍は偶発的に発見されるものの他,本症例のように虫垂炎症状を初発とするものも多い.虫垂神経鞘腫は術前に診断するのが困難であり,手術に際し切除範囲の決定に難渋する.虫垂炎症状改善後に,内視鏡検査やPET-CTなどを行い,術式を検討するのが望ましいと考える.

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S状結腸直接浸潤で発見され術前診断した虫垂粘液癌の1例

長崎みなとメディカルセンター消化器外科

渡海 大隆 他

 症例は66歳、男性。便潜血陽性の精査にて施行した大腸内視鏡でS状結腸に陥凹を伴う隆起性病変を認め、生検で粘液癌の診断であった。虫垂開口部付近に粘膜下腫瘍状の隆起を認めたが生検は施行しなかった。腹部CTにてS状結腸と盲腸に接した7×4cm大の嚢胞状腫瘤を認めた。虫垂粘液癌のS状結腸浸潤と術前診断し、D3郭清を伴う回盲部切除とS状結腸、回腸部分切除術を施行した。術後はmFOLFOX6による補助化学療法を施行したが、1年6ヶ月後に腹部大動脈周囲リンパ節再発を来たし、その後1年以上bevacizumab+capecitabineによる化学療法を継続中である。今回の文献検索ではS状結腸浸潤を伴う虫垂癌の報告は3例のみであり、術前診断し得たものは1例のみであった。

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OTSC® Systemで治療した結腸切除術後縫合不全の1例

長野県立信州医療センター外科

今井 紳一郎 他

 消化管切除術後縫合不全に伴う瘻孔は時に難治化し,再手術や人工肛門造設を要することがある.今回われわれは,上行結腸癌に対する右半結腸切除術後縫合不全に起因する難治性瘻孔をOver-The-Scope-Clip (OTSC) Systemで治療しえた1例を経験した.症例は77歳男性.進行上行結腸癌および肝転移に対して,結腸右半切除,肝部分切除術を施行した.術後縫合不全に起因する瘻孔および腹腔内膿瘍を形成し,難治化した.術後90日目にOTSC Systemを用いて吻合部の瘻孔を閉鎖したところ奏功し,処置後16日目に軽快退院した.術後16カ月現在大腸癌,腹腔内膿瘍ともに再発なく経過している.OTSC Systemは消化管切除術後縫合不全に伴う瘻孔に対する有効な治療法になりうると考えられた.

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S状結腸癌肝転移に対するパニツムマブ投与中に発症した腸管嚢腫様気腫症の1例

豊橋市民病院一般外科

伊藤 量吾 他

 症例は52歳、男性。同時性肝肺転移を伴う、閉塞性S状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行した。術後にmFOLFOX6+Pmabを8コース施行した。効果判定の胸腹部CT検査で、上行結腸から横行結腸の気腫状変化と腹腔内遊離ガス、後腹膜ガス、縦隔気腫を認め、腸管嚢腫様気腫症と診断した。全身状態は良好であり、腹部症状も認めなかったため保存的治療を開始した。気腫状変化は次第に改善し、第11病日に軽快退院した。第31病日にmFOLFOX6を再開し、その後、腸管嚢腫様気腫症の再燃はなかった。近年、ヒト上皮成長因子受容体抗体であるセツキシマブが原因で発症した腸管嚢腫様気腫症の報告が散見されるが、パニツムマブが原因とされる報告は少ない。パニツムマブ投与中に腸管嚢腫様気腫症を発症した1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。

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Coffin-Lowry症候群に発症したS状結腸憩室炎による直腸肛門周囲膿瘍の1例

深谷赤十字病院外科

藤田 昌久 他

 症例は31歳、男性。幼児期にCoffin-Lowry症候群と診断されていた。1か月前より続く発熱と前日からの腹痛、肛門痛を主訴に初診。肛門周囲膿瘍の診断で切開排膿術を行った。1週間後に腹痛のため再診。CT検査で骨盤直腸窩から皮下に及ぶ直腸肛門周囲膿瘍の診断となり、切開排膿部よりドレーンを留置した。ドレーンから排膿が続くため瘻孔造影を繰り返し行ったところ、S状結腸との交通を確認し、注腸および内視鏡にてS状結腸に多発する憩室を認めた。以上よりS状結腸憩室炎による直腸肛門周囲膿瘍と診断し、初診から3か月後、待機的にS状結腸切除術を行った。手術所見でS状結腸は直腸膀胱窩の右側に癒着し、同部に後腹膜の膿瘍腔へ通じる瘻孔を認めた。S状結腸憩室炎により直腸肛門周囲膿瘍が生じることは稀であり、また、Coffin-Lowry症候群と大腸憩室疾患の関連を示唆する報告は少なく、貴重な症例を経験したので報告する。

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腹腔鏡下肝部分切除中に発症したガス塞栓による急性循環不全の1例

栃木県立がんセンター肝胆膵外科

前原 惇治 他

 79才男性.肝S6/7に存在する40mm大の肝細胞癌に対し腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.胃切除後の癒着剥離に時間を要し,手術開始3時間後に肝切離開始となった.術中,肝流入血遮断が施行できず,肝切離面の止血に難渋した.手術開始5時間後に血圧が50mmHg台へと急激に低下した.肝切離面の圧迫止血,急速輸液,昇圧剤を投与するも循環動態は不安定であった.EtCO2は28mmHgに低下しており,血液ガス所見ではPaCO2 は56.8mmHgとEtCO2との間に乖離を認めたことからガス塞栓による急性循環不全と診断した.直ちに気腹を中止し,開腹手術に移行したところ循環動態は改善した.肝切離時に損傷した肝静脈枝から気腹ガスが血中へ流入したことでガス塞栓を起こしたと考えられた.ガス塞栓は鏡視下手術において重篤な合併症であり,慎重なモニタリングと迅速な対応が重要と考えられた.

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計画的門脈部分動脈化を施行した肝左葉切除後固有肝動脈瘤破裂の1例

弘前大学大学院医学研究科消化器外科学講座

内田 知顕 他

 症例は64歳男性で、肝門部領域胆管癌に対して肝左葉切除、尾状葉全切除および肝外胆管切除術を施行した。術後合併症なく経過し第13病日に退院したが、第27病日に腹痛を認め当院へ救急搬送された。同日中に下血を生じショック状態に陥ったため、緊急血管造影検査を施行し固有肝動脈の仮性動脈瘤破裂の診断となった。肝動脈以外に残肝への動脈性供血路は認めなかったが、止血のために固有肝動脈をコイルで塞栓した。塞栓術直後に残肝への動脈性血流の確保を目的に回結腸動静脈を吻合し門脈部分動脈化を施行した。術後は合併症なく経過し、第64病日に残肝への動脈性供血路が形成されていることを確認した後、回結腸動脈をコイル塞栓した。門脈圧亢進症などの合併症に注意を要するが、肝切除術後の肝動脈に発症する仮性動脈瘤破裂に対して塞栓術と門脈部分動脈化を併用することは、術後の虚血性肝不全を回避する有効な治療戦略の1つであると考えられた。

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セフトリアキソンによる偽胆石性胆嚢炎の1例

日本医科大学心臓血管外科

村田 智洋 他

 症例は85歳,男性.嘔吐・吐血を主訴に来院し,急性胃腸炎より嘔吐及びそれに伴う食道潰瘍と診断した.セフトリアキソン投与による加療を行い,一時症状は改善するも右季肋部痛を伴う発熱を来し腹部CTでは新規発症の急性胆嚢炎を認めた.セフトリアキソンによる偽胆石性胆嚢炎と考え抗菌薬を変更するも保存的加療では軽快せず,腹腔鏡下胆嚢摘除術を施行した.壊死性胆嚢炎の様相を呈しており,胆石分析ではセフトリアキソンに類似した成分であることが示された.

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肝外発育型細胆管癌の1例

東京医科大学消化器・小児外科学分野

永川 裕一 他

 67歳女性.肝外側区域および左上腹部に巨大腫瘤を認め当院紹介となった.AFP が16500 ng/mlと高値であり肝外発育型肝細胞癌の診断にて手術を施行した.腫瘍は肝外側区域に存在し肝外発育を伴い左横隔膜,左下肺および脾上極に浸潤していた.肝外側区域切除,脾臓摘出,左下肺部分切除,横隔膜部分切除術を施行した.病理所見では肝内腫瘍部は細胆管癌で,肝外腫瘍部は中分化型肝細胞癌であったことから肝細胞癌に分化し肝外発育した細胆管癌と診断した.免疫組織学的検討を行ったところ肝内腫瘍の細胆管癌部はCEA,cytokeratin 19が陽性であったほかAFPが一部陽性を示した.肝外腫瘍の中分化型肝細胞癌部ではAFP,CEA,cytokeratin 19すべてが陽性であった.術後6カ月で残肝再発し,肝生検行ったところ組織像は中分化型肝細胞癌であった.稀な肝外発育型細胆管癌を経験したので報告する.

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減量切除が有用であった血糖制御不能な悪性インスリノーマの1例

東京医科歯科大学肝胆膵外科学

松井  聡 他

 症例は71歳の男性で、2014年5月頃から意識障害が頻回に出現し、低血糖発作のため緊急入院し膵尾部原発の多発肝転移を伴う神経内分泌腫瘍、悪性インスリノーマと診断された。根治切除不能であり、ジアゾキサイドによる血糖コントロールを行ったが、副作用による血小板減少を来し継続不能となった。内科的治療で制御不能となったため、血糖コントロール目的で原発巣および最大の転移巣である肝S6病変を含む減量手術を施行した。病理組織学的検索にて膵尾部腫瘍はインスリノーマに矛盾しない所見で、Ki-67 index 41%と高値であり、肝転移巣も同様の所見であった。術後、低血糖発作を来すことなく自宅退院となった。退院後、残存腫瘍の増大と低血糖発作が再燃したため、スニチニブによる治療を開始した。集学的治療により血糖コントロール良好で外来加療を継続していたが、術後1年4か月に原疾患増悪に伴う肝性脳症を発症し死亡した。

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化学療法後の膵癌縮小で脱落した十二指腸ステントによる小腸穿孔の1例

高知大学医学部外科学講座外科1

川西 泰広 他

 症例は71歳、女性,黄疸、食物通過障害を機に精査を行い、膵頭部癌T4N1M0と診断された。腫瘍による胆管、十二指腸狭窄に対して胆管ステント(フルカバーステント10×60㎜)、十二指腸ステント(メタリックステント22×100㎜,22×60㎜)を留置し、Gemsitabin+S-1併用療法を開始した。3クール終了後のCT検査で膵頭部腫瘍の縮小を認めたが、胆管ステントと十二指腸ステントの脱落を認めた。胆管ステントは十二指腸内に脱落しており、内視鏡下に回収、再留置を行った。十二指腸ステントは小腸へ脱落していたが、自然排出の可能性も考え、経過観察となった。CT検査から12日後にイレウスを発症し、外科的摘出を行った。ステントは上部空腸の腸管壁に穿通しており、小腸部分切除術を行った。十二指腸ステントの合併症として、脱落、穿孔は稀であり、外科的介入を行った症例を経験したので、文献的考察を加え報告する。

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腹腔鏡下切除した後腹膜原発機能性傍神経節腫の1例

金沢大学先進総合外科

西田 洋児 他

 患者は45歳,女性.健診目的で施行された腹部超音波検査にて後腹膜腫瘍を指摘され紹介となった.後腹膜原発機能性傍神経節腫と診断し,腹腔鏡下腫瘍摘出術の方針となった.術前にα-blockerの内服を行い,術中は動脈圧ライン,中心静脈カテーテル,Swan-Ganzカテーテルを用いて厳重な血圧管理を行いながら手術を施行した.腹腔鏡の拡大視効果により腫瘍血管を安全に処理することが可能であり,周術期に血圧変動は認めなかった.腹腔鏡下に安全に切除可能であった機能性傍神経節腫の1例を報告する.

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腹腔鏡併用手術を行った鼠径ヘルニア偽還納の1例

北部地区医師会病院外科

林  裕樹 他

 症例は59歳男性。左鼠径部痛を主訴に外来受診。左鼠径ヘルニア嵌頓の診断で用手還納し、後日待機手術の予定で帰宅した。同日夜に腹痛、悪心を主訴に救急再受診。左鼠径部にヘルニア嵌頓の理学所見は無かったが腹部膨隆を認めた。CTにて左鼠径部近傍の腹腔内に球状に限局された小腸と腹水を認め、鼠径ヘルニア偽還納が疑われ緊急手術を施行。前方アプローチで手術を開始し、併存型の所見を認めた。前方からの視野では偽還納の所見が確認できずDirect Kugel Patch®で修復後に腹腔鏡下に観察した所、肥厚腹膜がヘルニア門となり小腸を絞扼している所見を確認し、絞扼を解除してヘルニア門を縫縮した。腸切除は要しなかった。術後経過は良好で術後5日目に退院となった。鼠径ヘルニア偽還納が疑われる症例に対して低侵襲で詳細な検索が可能な腹腔鏡併用手術は有用であると考えられた。

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10歳女児の穿孔性虫垂炎術後に発生した右鼠径ヘルニア嚢膿瘍の1例

網走厚生病院外科

中本 裕紀 他

 症例は10歳女性. 腹痛を主訴に当院受診, 急性虫垂炎と診断し腹腔鏡下虫垂切除術を施行. 虫垂は壊死しており腹腔内には混濁した腹水を認め, 穿孔性虫垂炎の所見であった. 虫垂切除, 洗浄, ドレナージを施行した. 鼠径ヘルニアに関わるエピソードはなかったが術中所見でわずかに内鼠径輪の開大を認めた. 術後7日目に右鼠径部に疼痛が出現. CTで右鼠径管内に膿瘍を認めた. 穿孔性虫垂炎による汚染した腹水が右内鼠径輪を通して右鼠径管内に流入したことによる膿瘍形成と推察された. 膿汁を穿刺吸引し, 抗生剤投与により治癒した. 汎発性腹膜炎や穿孔性虫垂炎術後にヘルニア嚢内に異時性に膿瘍を認める症例の報告は散見されるが, 比較的高齢者の報告例が多く, 若年者の報告例は稀である. 本症例のように若年者においても腹腔内感染の治癒後にヘルニア嚢に膿瘍形成を認める場合があり, 術後経過に十分留意する必要がある.

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Leser-Trélat徴候を呈した異時性7重複癌の1例

大森赤十字病院外科

尾崎 公輔 他

 78歳男性.既往に直腸癌,胃癌,肺癌,横行結腸癌,膀胱癌がある患者.便潜血陽性の精査目的に施行した下部内視鏡検査にて人工肛門より5cmの部位にⅠs型隆起性病変,20cmの部位に2型病変を認めた.後者より生検を施行し,腺癌と診断.結腸左半切除術,横行結腸単孔式人工肛門造設術を施行した.術後の病理結果より,下行結腸のdouble cancerと診断された.また,胃癌の術前より,体幹腹側を中心に老人性疣贅の急激な増加を認めていた.疣贅の急激な増加及び消化管悪性腫瘍の合併からLeser-Trélat(LT)徴候と考えられた.今回極めて稀なLT徴候を伴う異時性7重複癌を経験したので報告する.

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