トップ > 会員のみなさま > 日本臨床外科学会雑誌 最新号 和文抄録

日本臨床外科学会雑誌 第79巻4号 掲載予定論文 和文抄録


原著

出生前診断された先天性嚢胞状腺腫様肺形成異常の治療方針

昭和大学医学部外科学講座小児外科学部門

杉山 彰英 他

 目的:出生前診断された先天性嚢胞状腺腫様肺形成異常(CCAM)の治療方針を検討した.
 方法:過去10年間で出生前診断されたCCAM10例を後方視的に検討した.
 結果:在胎22.6±3.0週に出生前診断され,体重2,861±411g,在胎37.2±2.7週で出生した.2例が新生児期に呼吸器症状を認め,1例は新生児期に手術し,残り1例は手術に至らずに死亡した.無症状の8例中1例は早期症状出現の可能性があり,新生児期に手術した.残りの7例は早期手術は行わずに退院となり,うち4例で待機的手術を施行した.手術は全例,肺葉切除術を行った.新生児手術例と待機手術例の周術期合併症発生頻度に差はなかった.
 結論:CCAMの手術は有症状例や早期症状出現の可能性があるものは新生児期手術を考慮すべきである.手術待機中の症状出現例はその時点で早期に,無症候性例は乳児期後半の再評価後に手術を予定したい.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

臨床経験

乳癌に対する温存手術の切除範囲設定のための術前両側乳腺MRIの臨床的意義

うえお乳腺外科

福永 真理 他

 術前の乳腺MRI検査の臨床的意義を検討する目的で、乳腺部分切除術(Bp)の切除範囲を超音波検査(US)所見に沿って決めていた時期のI群(2011年)と、MRI所見を重視することにしたII群(2013年)の術中乳腺追加切除率と術後再手術率を比較した。その結果、術中迅速病理診断に基づいた術中乳腺追加切除の頻度はI群:62/99例(62.6%)からII群:33/112例(29.5%)へと有意に低下し(P<0.001)、術後の再手術例も5例(5.1%)から1例(0.9%)へと減少した。術前MRIの対象をI群はBp予定例のみ、II群では乳房切除(Bt)予定例も対象に追加したが、USスクリーニングでは検出されず両側MRIが契機となって発見された対側乳癌(MRI発見乳癌)は両群間に差はなく、全体でMRI施行の410例中10例(2.5%)だった。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

症例

乳腺線維腫症の1例

名古屋掖済会病院外科

福岡  恵 他

 今回われわれは稀な乳腺線維腫症の1例を経験したので報告する.症例は34歳,女性.右乳房の皮膚の陥凹を自覚して当院受診.初診時,右乳房B領域に15mm大のdimplingを伴う硬い腫瘤を触知し,マンモグラフィでは右L領域に局所非対称性陰影を認めた.超音波検査では14x17x14mm大の不整形腫瘤を認め,前方境界線の断裂,後方エコーの減衰を伴い悪性が疑われたが,乳房MRIの造影パターンは良性を示唆するものであった.針生検の病理所見は,豊富な膠原線維を背景に異型に乏しい紡錘形細胞が束状に増生し,核にβ-cateninが陽性であり,乳腺線維腫症と診断した.治療は1.5cmのマージンを確保して部分切除術を施行し,断端陰性を確認した.術後3ヶ月経過し再発徴候を認めていないが,乳腺線維腫症の局所再発率は高く,今後も慎重な経過観察が必要と考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ジェムシタビン+パクリタキセルが奏効した乳腺血管肉腫再発の1例

埼玉医科大学国際医療センター乳腺腫瘍科

貫井 麻未 他

 乳腺血管肉腫は稀な難治性疾患であるが、ジェムシタビン(GEM)+パクリタキセル(PTX)が奏効した症例を経験した。症例:29歳女性、乳腺血管肉腫と診断。初期治療として胸筋合併乳房切除術 +広背筋皮弁術+分層植皮術を施行した後、補助化学療法としてエピルビシン+シクロホスファミドおよびドセタキセルを逐次投与した。術後13ヵ月目で肺、肝、骨転移を認めた。一次治療としてGEM-PTXを開始した。20コース継続して治療効果は部分奏効であったが、治療開始後14ヵ月で肺転移の増大、新規病変を認め、病勢進行となった。二次治療、三次治療ともに効果なく術後2年8ヶ月で死亡した。再発・転移性血管肉腫に対してはアンスラサイクリン系やタキサン系抗がん剤による治療法が基軸となるが、既治療例に対しGEM+PTXは有効な選択肢となりうると考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

微小浸潤を伴う男性嚢胞内乳癌の1例

苫小牧市立病院外科

木井 修平 他

 男性乳癌は全乳癌の約1%とされる稀な疾患であり,嚢胞内乳癌は全乳癌の2-3%以下の頻度と報告されている.微小浸潤を伴う男性嚢胞内乳癌の本邦報告例は自験例を含めて2例のみであった.今回我々は,微小浸潤を伴う男性嚢胞内乳癌の1例を経験したので報告する.
  症例は83歳の男性,右乳房腫瘤を主訴に来院.右乳房EACB領域に弾性硬,辺縁明瞭な腫瘤を認め,腋窩リンパ節の腫脹は認めなかった.乳房超音波検査では右乳頭直下やや内側にかけて内部に点状の血流シグナルを伴う45×39×29mmの嚢胞性腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診ではclass IIIであり,悪性を否定できないため腫瘍摘出術を行った.生検結果は乳頭腺管癌で断端陽性であったため,乳房全摘術とセンチネルリンパ節生検を施行した.最終病理診断は乳頭腺管癌であり,微小浸潤を認めた.術後はタモキシフェンの内服を5年間行い,7年間無再発生存中である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

ePTFEでペースメーカーを被覆して植込んだ金属アレルギー患者の1例

名寄市立総合病院心臓血管外科

鎌田 啓輔 他

 症例は72歳,女性.高血圧,脂質異常症,洞不全症候群で近医通院中であった.Holter心電図で約10秒間のlong pauseを認めたため,ペースメーカー(PM)植込みを目的に当院へ紹介された.以前より金属アレルギーを指摘されており,術前のパッチテストではジェネレーターの金属のみならず,リード素材にもアレルギー反応を認めた.経静脈的PM植込み術ではリードの被覆が困難であるため胸骨正中切開下に右室と右心耳にリードを留置し,PM本体とリード部分をexpanded polytetrafluoroethylene
 (ePTFE)シートで被覆した.現在,術後約半年を経過しアレルギー症状は出現していない.可及的にシステム全てをePTFEシートで被覆したが,PMアレルギーは術後遅発性に生じる報告もあり,慎重に経過観察する必要がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

十二指腸空腸バイパスを施行したEVAR術後大動脈十二指腸瘻の1例

湘南鎌倉総合病院外科

池谷 佑樹 他

 二次性大動脈十二指腸瘻は感染と大出血を伴う致死的病態であるが,EVAR術後の二次性大動脈十二指腸瘻はまれである.症例は76歳女性.腹部大動脈瘤に対してEVARを施行した.術後エンドリークが残存していた.術後10か月で椎間板炎および腸腰筋膿瘍を発症し抗菌薬治療にて軽快した.術後1年で吐血・タール便にて受診し上部消化管内視鏡およびCTで大動脈十二指腸瘻と診断した.十二指腸水平部と屈曲したステントグラフトに圧迫された瘤壁が瘻孔を形成していた.屈曲したステントグラフトを部分置換した.十二指腸欠損孔が大きく,空腸を挙上し側々吻合を行い,十二指腸空腸バイパスによって腸管再建した.瘻孔・感染の再発なく経過良好である.先行感染,ステントグラフトによる圧迫およびエンドリークが誘因と考えられたEVAR術後の二次性大動脈十二指腸瘻に対して,解剖学的血行再建および十二指腸空腸バイパスによる腸管再建は有用であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

二期的手術を行った腎血流障害を伴う急性B型大動脈解離の1例

東京都立墨東病院胸部心臓血管外科

志水 祐介 他

 Stanford B型大動脈解離より腎血流障害をきたした69歳女性に対して,初回は緊急でAxiall-Femoral Bypass術を施行し,臓器血流改善により維持透析導入を回避し得た.術後,下行大動脈の偽腔開大による真腔狭小化と,偽腔自体の左房圧迫による難治性心不全をきたした.2期的に胸部大動脈ステントグラフト挿入術(TEVAR)を行い,心不全,腎機能の改善が得られた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

縦隔型気管支動脈瘤破裂の1例

友愛会豊見城中央病院外科

我喜屋 亮 他

 症例は67歳女性. 突然の前胸部痛を主訴に救急車にて当院へ搬送された. 造影CTを施行し縦隔型気管支動脈瘤破裂と診断され緊急気管支動脈塞栓術を施行した. 術中血圧低下を認めたが気管支動脈塞栓術が奏功しバイタルも安定した. 術後経過は良好で再発なく術後12日目に退院となった. 術後2年経過しているが再発は認めていない. 縦隔型気管支動脈瘤破裂は血行動態が不安定になりやすく, 早期診断, 治療が必要である. 本症例において3D-CTAによる血管構築画像は気管支動脈瘤破裂の診断に有用で, 治療には気管支動脈塞栓術が有効であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

血管形成術を行った2本の流出動脈を有する腎動脈瘤の2例

福井大学病院心臓血管外科

田邉 佐和香 他

 【背景】腎動脈瘤は、最近の画像診断技術の向上に伴い、報告例が徐々に増加した疾患であり、CTやエコーで偶然発見されることが多い。治療には、血管内治療(EVT)と外科的治療があるが、今回、外科的治療を行い良好な結果を得た2例を経験した。症例1.70歳女性。腹部造影CTにて腎動脈末梢に最大短径24 mmの嚢状腎動脈瘤を認めた。流入血管は1本だが、流出血管が2本あり外科的適応と判断した。腎保護液を使用して瘤切除と流出動脈2本の再建を行った。症例2.76歳女性。CTにて腎動脈末梢に最大短径17 mmの嚢状腎動脈瘤を認め1本の流入動脈と2本の流出動脈を認めた。症例1と同様、瘤切除し流出動脈2本を再建。2例とも経過良好で術後の腎機能低下は認めなかった。【結論】2本の流出動脈を有する腎門部腎動脈瘤2例に対して血管形成術を施行した。腎保護液を使用し、流出動脈をすべて再建し術後の腎機能の増悪を回避できた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に修復したCTで経過を追えた遅発性外傷性横隔膜ヘルニアの1例

神戸赤十字病院外科

久保田 暢人 他

 症例は19歳,男性.約6か月前に交通事故による外傷性腹部大動脈損傷に対して,開腹下に人工血管置換術を施行された既往がある.今回,左前胸部痛を主訴に救急外来を受診し,CTにて左横隔膜ヘルニアへの結腸嵌頓と診断されたが,受診直後より症状の軽減を認めたため,後日,腹腔鏡下に横隔膜ヘルニア修復術を施行した.左横隔膜に癒着した大網を剥離し,約3cm大のヘルニア門を縫縮した.腹腔鏡手術が観察と治療に有用であった.また,受傷直後から発症までの経過をCTで追跡することができた稀な症例であり,過去の画像と比較することにより遅発性外傷性横隔膜ヘルニアと診断することが可能であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

一卵性双生児に異時性に発症した成人Bochdalek孔ヘルニアの1例

脳神経疾患研究所付属総合南東北病院外科

外舘 幸敏 他

 症例は20歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に受診した.CT検査,上部消化管造影検査で胃軸捻転症を伴った横隔膜ヘルニアと診断した.腹腔鏡下に観察するとBochdalek孔ヘルニアを認め,ヘルニア門に脾臓が強固に癒着していた.安全に癒着を剥離する為,用手補助下腹腔鏡手術(Hand-assisted laparoscopic surgery:以下,HALS)に変更し修復した.脱出した臓器を還納し,ヘルニア門は縫合閉鎖した.一卵性双生児の姉は新生児期にBochdalek孔ヘルニアを発症し,手術治療をしていた.今回,我々は家族歴のある成人Bochdalek孔ヘルニアに対して,HALSを用いてヘルニア修復術を行った症例を経験したので報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術前3D-CTにて安全に胸腔鏡下経横隔膜的切除した直腸癌術後腹膜播種の1例

市立宇和島病院呼吸器外科

根津 賢司 他

 症例は74歳,男性。直腸癌と同時肝転移に対し腹腔鏡下低位前方切除後,二期的に開腹にて肝S5,S6部分切除を施行した。経過中のCTにて右肺下葉S9に12×10mm大の結節と横隔膜直下の肝外側に11×9mm大の結節を認め,肺転移,肝転移が疑われた。術前に術中体位の左側臥位にて画像解析装置SYNAPSE VINCENTを用いた3D-CTを施行し, 胸腔鏡のポート位置と横隔膜の切開部位を設定した。手術は胸腔鏡下に右肺S9部分切除を行い,続いて横隔膜術中エコーにて肝外側結節の位置を確認し,その直上で横隔膜を小切開し,結節を摘出した。横隔膜は非吸収性2-0糸計6針にて結節縫合閉鎖した。病理組織学的検査にて直腸癌肺転移および腹膜播種と診断された。直腸癌術後の肺転移巣と横隔膜下肝外側の腹膜播種に対し, 3D-CTを用いた術前の胸腔鏡シミュレーションを行い,経横隔膜的により安全な両結節の切除が可能であった。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

経腸栄養との関連が疑われた食道癌術後NOMIの1例

国立がん研究センター東病院食道外科

堀切 康正 他

 今回、鏡視下での食道がん術後に経腸栄養との関連が疑われたNOMIを発症した1例を経験したので報告する。患者は85歳、男性。ふらつき、黒色便を主訴に受診し、精査で食道胃接合部癌と診断され、胸腔鏡下食道亜全摘、腹腔鏡補助下胃管再建、3領域郭清を施行された。2病日から経腸栄養を開始し5病日に強い腹痛を認め、CTで門脈ガス血症、腸管気腫を認め、NOMIと診断し緊急手術を施行した。術後に経腸栄養を施行している際の頻回の下痢に続く腹痛には、NOMIの可能性を念頭に置いて検査をする必要がある。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術後呼吸・循環不全を呈したupside down stomachの1例

JCHO船橋中央病院外科

高原 善博 他

 症例は78歳女性で呼吸困難にて当院を受診し, CTにて食道裂孔ヘルニアに胃軸捻を伴うupside down stomachの診断となった. 術前より呼吸障害を認め人工呼吸器による陽圧換気を要しており, 経鼻胃管による胃内減圧を施行するも呼吸障害が改善せずに, 準緊急にて腹腔鏡下食道裂孔ヘルニア修復術を施行した. 術後呼吸・循環不全が遷延し, 胸部単純写真にて右下縦隔に軟部陰影を認めたために, 同部位の穿刺を施行したところに古い血液様の排液を認めた. 保存的加療にて呼吸・循環不全は改善し, 胸部単純写真にても右下縦隔陰影は消失した. 巨大食道裂孔ヘルニア修復術術後においては, 血腫および水腫による心肺圧迫症状の出現の可能性があると考えらえた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

小児期に出現した不完全型Carney’s triadの1例

済生会横浜市南部病院外科

橋本  至 他

 症例は18歳女性で,9歳時に黒色便および貧血の精査目的に施行した上部消化管内視鏡検査にて多発する胃粘膜下腫瘍が認められた.胃部分切除術が施行され,病理組織学的検査にて胃Gastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断された.その後10歳時に胃GISTの再発,13 歳時に胃GISTの多発肝転移および多発十二指腸GISTが認められ,いずれも外科切除が施行されたが,年齢を考慮し術後化学療法は施行せずフォローしていた.今回,再び多発する胃GISTと右肺下葉に肺軟骨種の出現が認められたため,不完全型Carney’s triadと診断された.胃部分切除を施行し,術後補助化学療法としてImatinibの投与を開始した.術後1年を経過した現在,再発をみとめていない.今回,稀な小児期に出現した不完全型Carney’s triadの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

小網原発GISTの1例

山陽小野田市民病院外科

野村 真治 他

 症例は79歳女性。慢性肝機能障害があり当院内科通院中、2016年の定期検診での腹部MRIで初めて、胃小弯側に1.5cm大の腫瘤を指摘された。腫瘤が増大傾向にあったため翌年当科紹介となった。低悪性度の胃GISTなどの間葉系腫瘍などを疑い手術を行った。腫瘍は径2.5cm、胃体部小弯側に接していたが、胃との連続性は認められず腫瘤摘出術のみ施行した。病理組織結果でKIT陽性、CD34陽性、S-100陰性、SMA陰性、核分裂像数は2/50HPFであり、術中所見と、その解剖学的位置より小網原発EGISTと診断した。Fletcher分類では低リスク群に分類されるが、Contour mapsでは術後10年での再発確率が40~60%とされているため、現在厳重に経過観察中である。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

診断・治療に苦慮した胃全摘後の十二指腸憩室出血の1例

聖隷横浜病院外科

横山 元昭 他

 症例は82歳の男性で,既往に盲腸癌・右水腎症に対する右結腸切除+右腎摘出術と胃癌に対する胃全摘+胆摘+Roux-en-Y再建がある.嘔吐を主訴に当院を受診,腸閉塞の診断でイレウス管を留置するも改善せず,2日後にイレウス解除の手術を施行した.第9病日の朝に大量下血と共に出血性ショックを発症,上部消化管内視鏡及び腹部造影CTで出血源は同定できず,一度状態は安定するも同日夕方に再度ショック状態となりCTで十二指腸憩室出血と診断,血管造影で後上膵十二指腸動脈から腸管内へのextravasationを認め,コイル及びゼルフォームで経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)を施行した.翌日のCTで再出血を認め,後上膵十二指腸動脈をコイル塞栓し,NBCA(N-butyl-2-cyanoacrylate)で胃十二指腸動脈を塞栓し止血を得た.胃全摘後の十二指腸憩室出血の報告はこれまで無く文献的考察を含め報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

十二指腸球後部潰瘍膵頭部穿破による膵周囲膿瘍の1例

済生会熊本病院外科

岡部 弘尚 他

 症例は74歳の男性。腹痛、黒色便、ふらつきを主訴に来院し、上部消化管内視鏡検査で十二指腸球後部潰瘍を認めた。入院後、腹痛の増悪と血圧低下出現し、CTにてFree airが疑われ緊急開腹術を施行した。十二指腸球後部潰瘍が膵頭部から穿破し、限局性膿瘍を形成していた。膵頭部の実質裂孔部を単閉鎖し胃・十二指腸減圧管を胃から挿入固定し、術後は良好に経過し、第10病日に食事開始、第20病日に転院した。穿孔性十二指腸球後部潰瘍に対して緊急手術を必要とし、十二指腸を温存し救命しえた例は過去に報告がないので、文献的考察を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

十二指腸球部神経内分泌細胞癌の1例

NTT東日本札幌病院外科

古川 聖太郎 他

 症例は80歳男性で,黒色便を主訴に受診し,採血で貧血を指摘された.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に2型腫瘍を認め,生検で内分泌細胞癌と診断された.病変の肛門側縁は十二指腸乳頭部に近接しており,乳頭部の温存不能と判断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織検査では,N/C比の高い大型の腫瘍細胞が充実性胞巣を形成して増殖していた.免疫組織染色では,シナプトフィジン,クロモグラニンAはいずれも陽性であった.膵浸潤および13番リンパ節に転移を認めたため,十二指腸神経内分泌細胞癌 pT3(膵)N1M0 pStageⅢBと診断した.術後補助化学療法を希望せず経過観察中であり,現在,術後1年4カ月生存中である.乳頭部以外から発生する十二指腸内分泌細胞癌は非常に稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

心肺停止蘇生後の虚血性小腸炎による小腸狭窄の1例

国立病院機構九州医療センター消化管外科臨床研究センター

新里 千明 他

 症例は50歳女性. 気管支喘息重責発作後に心肺停止となったが, 速やかに蘇生措置が行われ救命された. その後腹痛, 下痢が長期にわたって持続し, 精査により潰瘍を伴う小腸炎と診断された. 保存的治療では症状の改善が得られず,検査所見としても著明な狭窄を伴うようになったため , 蘇生1年4か月後に, 小腸狭窄に対して腹腔鏡下小腸切除術を施行した. トライツ靭帯から約280cmの小腸に2か所の狭窄を認め, 狭窄部とその口側で拡張の強い範囲を含む80cmの小腸を切除し吻合を行った. 病理学的検査では狭窄型虚血性小腸炎と診断され, 臨床経過から心肺停止による循環不全から虚血をきたしたと考えられた. 今回, 心肺停止蘇生後に虚血性小腸炎による狭窄をきたし, 外科的治療を必要とした症例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

上腸間膜動脈拡張術と小腸切除術を同時施行した繰り返す小腸壊死の1例

平塚市民病院外科

大住 幸司 他

 症例は83歳,男性.虚血性小腸壊死に対する小腸部分切除術後, 1か月で小腸壊死が再発し,経皮的血管拡張術と小腸部分切除術を一期的に行う方針とした.左大腿動脈から上腸間膜動脈にマイクロガイドワイヤーを挿入したが,根部の狭窄が強く,バルーン,ステントは通過しなかった.小腸切除が必要であるため,手術室で開腹下血管拡張術の方針とした.切除小腸間膜内の動脈を切開しガイドワイヤーを挿入,上腸間膜動脈根部を通過させた.スネアカテーテルを用いガイドワイヤーを左大腿部まで誘導しpull through法を用いた.左鼠径部からステントを留置し血流を改善させた後,壊死腸管を切除し手術終了した.大腿動脈―腸間膜動脈間のpull through法を用いることで石灰化を伴う狭窄部をバルーン,ステントが通過可能となり良好な結果が得られたと考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術中内視鏡を併用し51個のpolyp切除を行ったPeutz-Jeghers syndromeの1例

みやぎ県南中核病院外科

二科 オリエ 他

 35歳、女性。2歳時と7歳時に腸重積にて小腸部分切除術の既往あり。1年前に多発大腸ポリープと診断されたが、通院自己中断していた。その後3か月継続する腹痛と泥状便主訴に再来した。精査にて、多発消化管ポリープと小腸に3箇所の腸重積をみとめ、同日入院、翌日手術となった。Peutz-Jeghers syndrome(PJS)が疑われ、可能な限り腸管温存すべく、重積した部位に小切開をおき外科的に整復施行後、内視鏡を挿入し、内視鏡的ポリープを行った。大きく、内視鏡的切除困難なものは外科的に切除した。腸管切除無しに合計51個のポリープを切除した。病理組織検査では、過誤腫ポリープの所見であり、PJSの診断に矛盾しない結果であった。本症例のようにPJSに伴う小腸多発ポリープに関する外科治療の際には、腸管温存のため術中内視鏡的治療を併用することは有用であると考えられた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

DICを契機に診断された敗血症合併非穿孔性急性虫垂炎の1例

恒心会おぐら病院外科

東本 昌之 他

 症例は35歳、男性.2017年X月Y-2日より心窩部痛にて他院受診.内服処方を受けるも,翌日より下腹部痛,下痢,悪寒,38℃代の熱発が出現し,同年X月Y日別医受診.血液検査にてDIC疑の診断で,同日紹介医紹介受診.CTにて糞石を伴う虫垂の腫大を認めたが,穿孔を思わせる所見はなかった.急性虫垂炎を原因としたDIC(disseminated intravascular coagulation:以下,DIC)の診断で同日当院紹介受診し,緊急手術を施行した.術中所見および病理組織学的診断でも,壊疽性虫垂炎であったが虫垂には明らかな穿孔は確認できなかった.術後は集学的治療でDICを脱却できた.術後11日目に退院となった.当院での動脈血血液培養でEubacterium speciesが検出された.DICを契機に診断された敗血症を合併した非穿孔性急性虫垂炎は稀であり報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

急性虫垂炎を契機に診断された虫垂神経鞘腫の1例

きぬ医師会病院外科

木村 聡大 他

 症例は58歳の男性で,下腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CTでは,虫垂の腫大と周囲脂肪織の濃度上昇が認められたため,急性虫垂炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると,膿苔が付着し炎症性に腫大した虫垂が認められたが,術中に明らかな腫瘍性病変は認識されず,虫垂切除術を施行した.摘出標本では,粘膜面にびらんや潰瘍を伴い壁が肥厚した虫垂を背景として,虫垂内腔に突出する径14 mm大の隆起性病変が認められた.組織学的には,隆起性病変部では核の柵状配列を伴った紡錘形細胞の増殖が粘膜から固有筋層内に及んでおり,免疫組織染色ではS-100蛋白がびまん性に強陽性,desmin陰性,c-kit陰性,CD34陰性であり虫垂神経鞘腫と診断した.虫垂発生の神経鞘腫は非常に稀であり,本症例のように急性虫垂炎を来して偶発的に診断される場合もあるため,若干の文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

粘液嚢胞腺腫を伴う虫垂GISTの1例

横須賀市立市民病院外科

髙橋 弘毅 他

 症例は70歳,男性.肝機能障害の精査時に施行した腹部骨盤造影CT検査で,虫垂の腫大と造影効果を伴う盲腸の壁肥厚を認めた.大腸内視鏡検査では,虫垂開口部を取り囲む発赤した,正常粘膜に覆われた低隆起性病変を認め,虫垂腫瘍と診断した.内視鏡的生検では確定診断に至らず,画像診断も含めて悪性腫瘍の可能性を考慮し,回盲部切除術,D2郭清を施行した.切除標本では,虫垂開口部より末梢側2cmの虫垂に,径10mmの結節を認め、病理組織学的所見では紡錐形細胞が錯綜していた.免疫染色ではc-kit陽性,Ki-67 1-2%で,低リスクのgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断した.さらに末梢側の虫垂には粘液嚢胞腺腫も認めた.虫垂GISTは,全GISTのうち約0.1%と非常に稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

術前診断が潰瘍性大腸炎であったcolitic cancerを合併したCrohn病の1例

東北大学消化器外科学

相澤  卓 他

 症例は30歳代男性.16歳時より潰瘍性大腸炎(UC)として加療されていた.左下腹部痛を主訴に当院消化器内科を受診した.下部消化管内視鏡・腹部CT検査でS状結腸に壁肥厚と狭窄,その近傍に膿瘍形成を認めて当科紹介となった.3期分割手術の方針として大腸亜全摘・回腸瘻造設術を施行した.当初2期目手術に残存直腸切除・回腸嚢肛門吻合術を予定していたが,術後病理組織学的検査で非乾酪性肉芽腫を多数認めてCrohn病に診断変更となり,さらに2期目手術前検査で残存直腸のポリープからadenocarcinomaが検出されたため残存直腸切断術を行った.病理組織学的検査ではポリープ部のみならず周囲にcarcinomaやdysplasiaを広範囲に認めた.非典型的なUC症例では診断が変更になる可能性を念頭に置き,またcolitic cancerを合併した場合は病変が広範囲に存在することがあることを考慮する必要がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

慢性偽性腸閉塞症と鑑別を要した急性膵炎に続発した慢性巨大結腸症の1例

東北大学消化器外科学

佐藤 英昭 他

 症例は20代男性で、重症急性膵炎および被包化壊死に対し、経皮的・内視鏡的ドレナージなどの加療を行った既往がある。外来での経過観察中に麻痺性腸閉塞を発症し、当院で入院加療を行った。当初は慢性偽性腸閉塞症(CIPO)が疑われたが、シネMRIで小腸の運動機能は保たれていることが判明し、結腸の運動機能障害を伴う慢性巨大結腸症と診断した。回腸瘻造設術を施行し、その後社会復帰が可能となった。CIPOは小腸を主体とし、食道から大腸までの全消化管に起こりうる消化管運動機能障害で、機械的な閉塞機転がないにもかかわらず腸閉塞様症状を引き起こす疾患である。一方で、慢性巨大結腸症は、以前は結腸型CIPOと呼ばれていたが、外科治療が無効なことが多いCIPOに対し、手術による治療効果が高く、これらの鑑別は非常に重要である。我々は本邦において報告例のない急性膵炎に続発した慢性巨大結腸症の治療経験を得たのでここに報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

敗血症を伴ったα-グルコシダーゼ阻害薬による腸管気腫症の1例

小樽市立病院外科

村田 竜平 他

 症例は65歳, 男性. 糖尿病にて近医通院中であり, α-グルコシダーゼ阻害薬(以下, α-GI)を内服していた. 3日前からの腹部膨満感があったが, 強い腹痛を発症したために当院を受診した. 腹部造影CT検査では, 上行結腸から横行結腸の腸管壁内に大量の気腫像を認めた.右上腹部の圧痛, 炎症反応高値, 敗血症を認め, 腸管壊死の可能性を疑い同日に緊急試験開腹術を行った. 上行結腸から横行結腸の腸管漿膜下に大量の気腫像を認めたが, 血色は良好であり,腹腔内洗浄とドレナージのみで終了した. 腸管気腫症に伴うbacterial translocationから敗血症を発症したものと考えられ, 抗菌薬投与にて軽快し, 19日目に退院となった. α-GIには腸管ガスを増加させる副作用があり, 同薬内服患者の腸管気腫症が報告されており, 迅速な診断と病態に応じた適切な治療法の選択が必要である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患による横行結腸穿孔の1例

三井記念病院消化器外科

伊藤 良太 他

 メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)はメトトレキサート(MTX)投与中に発症するリンパ腫であり,下部消化管穿孔としては本邦で報告がない.症例は69歳男性で悪性関節リウマチに対してMTXを内服中であった.左側腹部痛で来院し,CTで下部消化管穿孔の診断となり,緊急結腸部分切除術を施行した.切除結腸には潰瘍性病変を認め, MTX-LPD(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)の潰瘍穿孔と診断した.術後吻合部不全で再手術を要したが,軽快した. 2年後の現在,再発なく経過している.
 本邦報告MTX-LPD 86例のうち休薬により69%が寛解し,不変・増悪・再発に化学療法を行った症例の33%は死亡していた.EBV潜伏感染の有無で予後の差は認めなかった.寛解症例の平均観察期間は20.4ヶ月であり長期予後は不明である.自験例のような症例では初回手術の人工肛門造設を厭わないことが肝要である.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

成人における結腸間膜リンパ管腫の1例

岸和田徳洲会病院外科

芳竹 宏幸 他

 症例は27歳の女性で、受診2日前からの腹痛を主訴に当院を受診した。既往歴は特になく生来健康であった。理学所見では右上腹部から季肋部に圧痛が認められたが、明らかな腫瘤は触知されなかった。腹部エコー検査では上腹部に多房性の嚢胞性病変が認められた。腹部CT検査では、内部は均一で造影効果のない腫瘤像が見られ、腹部MRI検査ではT1強調画像で低信号を、T2強調画像では高信号を示す腫瘤像が認められた。リンパ管腫を強く疑ったが、炎症反応の上昇が見られたためリンパ管腫に細菌感染を合併したと判断し、まずは抗生剤加療を行った。その後炎症反応が改善したため、横行結腸部分切除ならびに腫瘤摘出を行った。病理組織学的にもリンパ管腫の診断であった。リンパ管腫は小児に多く見られる疾患であり、成人での報告例は少なく、なかでも結腸間膜に発生するものは稀であるため文献的考察を加えて報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下に切除した腰椎腹腔シャント留置S状結腸癌の1例

沖縄協同病院外科

加藤 航司 他

 症例は59歳,男性.便潜血陽性精査でS状結腸癌と診断した.クモ膜下出血に続発した正常圧水頭症に対して,腰椎腹腔シャント(LPS)を留置されていた.術前に逆流防止機構付きLPSチューブであることを確認し,通常気腹圧で安全に腹腔鏡下手術が可能と判断した.術中にLPSチューブを上腹部の腹壁に固定後,D3郭清を伴うS状結腸切除術を施行した.経過良好で,術後12日目に退院した.逆流防止機構付きLPSチューブ例では,安全に腹腔鏡下手術が可能と思われた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

抗EGFR抗体の再投与が五次治療で奏効した黄疸を伴う大腸癌肝転移の1例

岡崎市民病院外科

吾妻 祐哉 他

 症例は62歳,男性.S状結腸癌,多発肝転移.KRAS は野生型.化学療法としてPmab+FOLFOX療法, Bmab+FOLFIRI療法TAS-102,レゴラフェニブを使用したがすべて不応の判断.T-Bil 16.3mg/dlであったがPS0かつ患者本人及び妻より化学療法継続の強い意志が示されたため十分なICの上,Cmab単剤投与を開始.4コース施行したところでT-bil 2.1mg/dlと改善しS-1を併用.大きな副作用なく行えたためSOX+Cmab療法へ移行した.Cmab 16コース投与時にT-Bil 4.2mg/dlに増悪.CTで新規病変をみとめ,RAM+FOLFIRI療法へ変更した.初診から36ヶ月,Cmab投与開始から6ヶ月後に原病死した.抗EGFR抗体での治療歴があり,高度黄疸を伴っている症例に対しても五次治療としてCmab投与が有用である可能性が示された.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

リンパ節転移を認めた5mmの直腸神経内分泌腫瘍G1の1例

厚生連高岡病院外科

垣内 大毅 他

 症例は39才男性.便潜血陽性を主訴に前医受診し,下部消化管内視鏡検査にて下部直腸に5mmの粘膜下腫瘍を認めた.内視鏡的切除術を施行し,病理診断でNeuroendocrine tumor(NET), G1, 5mm, sm浸潤,リンパ管侵襲陽性と診断されたため,追加切除を施行した.病理診断にて原発部位の遺残は認めなかったが,251番リンパ節に転移を認めた.外来にて経過観察中である. 直腸NETでは深達度がsmまで,腫瘍径6mm以下ではリンパ節転移は極めてまれとされ,経過観察が可能という報告もあるが,リンパ管侵襲陽性の場合は,追加切除または慎重な経過観察が必要と考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

10年生存している多発肝原発神経内分泌腫瘍の1例

国家公務員共済組合連合会大手前病院外科

佐々木 優 他

 症例は55歳,女性.45歳時,貧血精査目的に当院紹介となり,CTにて肝全体に大小様々な腫瘤を多数認めた.全身精査するも肝以外に明らかな異常は認めず,肝生検にて神経内分泌腫瘍(NET)と診断した.他臓器に原発巣を疑う病変は認めなかったが,同腫瘍の中でも肝原発は稀で,肝内に多発して認めたことから転移性肝NETと診断した.本人希望にて経過観察となったが,10年後,右季肋部痛にて再受診された.CTでは右葉の約10cm大の腫瘤をはじめとして,以前認めた腫瘤は何れも増大していた.腹痛は増大した腫瘍によるものと考えられ,減量手術として肝右葉切除術,肝S4部分切除術を施行した.術後の全身精査でも残肝以外に病変を認めないことから,肝原発NETと診断した.肝原発NETは稀であり,原発か転移性かの判断に苦慮する.10年もの長きに渡り自然経過を観察しえた報告はほとんどなく,文献的考察を加え報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

小児頭大の肝細胞癌RFA穿刺部転移の1例

労働者健康福祉機構中部ろうさい病院

竹林 三喜子 他

 症例は82歳男性,既往に慢性C型肝炎,肝硬変,肝細胞癌(Hepatocellular Carcinoma: HCC)があり,6年前に経皮的ラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation:RFA)の治療歴があった.主訴は右胸壁腫瘤,2年前より右胸壁に腫瘤の出現を認め,徐々に増大し,疼痛と出血を伴うため受診.腫瘍は小児頭大で表面は一部壊死,潰瘍形成し,出血が続いていた.右側臥位になれず寝返り困難な状況であった.腫瘍は過去のRFA穿刺部に一致しており,穿刺経路胸壁転移と考えた.肋間へ圧排性に進展していたが胸腔,腹腔内へは露出しておらずQOL改善目的のため胸壁腫瘍摘出術+分層植皮術施行.術後QOLの改善を認めた.肝硬変やHCCの予後が切迫した状況でない限り,穿刺経路胸壁転移にはQOL低下を生じる前に切除が望ましいと考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

胆嚢皮膚瘻を合併した黄色肉芽腫性胆嚢炎の1例

水戸済生会総合病院外科

朴  秀吉 他

 症例は87歳,女性.右側腹部の腫瘤を自覚したため近医を受診し,皮膚腫瘤および腹壁膿瘍と診断され当院紹介された.皮膚腫瘤の生検では悪性所見は認めなかった.画像所見では皮下膿瘍内に結石を疑う高吸収域を認めており,腹腔内では胆嚢底部と連続していた.周囲臓器への浸潤などの悪性を示唆する所見に乏しく,胆石による慢性胆嚢炎に合併した胆嚢皮膚瘻と診断した.開腹での胆嚢摘出術および瘻孔切除が施行した.胆嚢底部と腹壁は瘻孔が形成されていた.皮下には結石を複数伴っていた.病理組織学的検査では黄色肉芽腫性胆嚢炎と診断され悪性所見は認めなかった.診断,治療技術の向上により胆嚢皮膚瘻は近年では比較的稀な病態となっている.慢性胆嚢炎は腸管などの腹腔内臓器との瘻孔を形成することは報告されているが,胆嚢皮膚瘻を伴う報告は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した90歳以上高齢者胆嚢捻転の2例

国家公務員共済組合連合会浜の町病院外科

久保 顕博 他

 症例1は91歳,女性.右側腹部痛を主訴に当院に救急搬送された.検査所見では軽度の炎症反応を認めた.腹部造影CTでは著名に腫大し浮腫状の胆嚢を認め,胆嚢壁は造影効果が見られなかった.急性胆嚢炎の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢は頚部で360度反時計回りに捻転していた.
 症例2は93歳,女性.急な上腹部痛を主訴に救急搬送された.検査所見では軽度の炎症反応を認めた.腹部造影CT検査では胆嚢の腫大と壁肥厚を認めた.胆嚢頚部に渦巻き状構造を認め,胆嚢捻転の診断となり腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.胆嚢は頚部で時計回りに540度捻転していた.
 高齢者は併存疾患が多いため術後に合併症のリスクが高くなることが問題となるが,特徴的な画像所見による早期診断、腹腔鏡下胆嚢摘出術による早期治療を行えば,超高齢者であっても安全に治療が可能であると考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

肝門部胆管癌と鑑別困難であった胆管断端神経腫の1例

大阪警察病院外科

三賀森 学 他

 症例は70歳、女性。22年前に胆嚢炎に対して胆嚢摘出術を施行された。平成28年11月、腹痛を認め近医受診。エコーで肝内胆管の拡張を指摘され当院を受診した。造影CTにて総肝管~右肝管に造影効果を示す腫瘤を認め、後区域の胆管は拡張していた。ERCPにて擦過細胞診および生検では悪性所見は認めなかったが、画像上、肝門部胆管癌を完全に否定しきれず、切除目的に紹介となった。拡大肝右葉切除術、胆管切除術、胆管空腸吻合術を施行した。切除標本では総肝管から右肝管にかけて充実性腫瘍を認めた。病理検査では粘膜下に神経線維の増生を認め胆管断端神経腫と診断された。22年前の胆嚢摘出術の際に右肝管を損傷してTチューブが留置されており、断端神経腫の発生原因になったと推察される。肝門部胆管の断端神経腫の報告は非常に稀であるが、胆道系手術後に胆管狭窄を認めた場合には本症の可能性も念頭におき、治療方針を検討するべきである。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

肝十二指腸間膜内に発生した神経鞘腫の1例

金沢大学消化器・腫瘍・再生外科学

所  智和 他

 症例は44歳,女性.検診の腹部超音波検査にて肝門部に腫瘤を指摘され来院した.CTでは肝十二指腸間膜内に長径82㎜大の境界明瞭平滑な腫瘤を認めた.腫瘍は総肝動脈を腹側,門脈を背側,右肝動脈と胆管を右方,左肝動脈を左方に圧排し,尾側は膵頭部と密着していた.内部は低吸収,辺縁は淡い高吸収域や微小石灰化を伴い,造影では辺縁が漸増性に濃染し,中心部の造影効果は乏しかった.肝十二指腸間膜内に発生した腫瘍で,特に神経原性腫瘍を想定し腫瘍摘出術を施行した.割面は大部分が透明感を帯びた黄色で,一部暗赤色の部分も混在していた.病理学的検査では腫瘍辺縁に紡錘形細胞が増生し束状配列を示している部分と浮腫状領域が混在しており,紡錘形細胞はS-100陽性で神経鞘腫と診断した.
 本症例では術前に良性の神経原性腫瘍を想定していたため肝動脈,門脈,胆管と密着していたが,これらを温存し腫瘍のみを摘出することが可能であった.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

膵腫瘍との鑑別が困難であったCastleman病の1例

愛知医科大学外科学講座(消化器外科)

加藤 瑶子 他

 Castleman病は縦隔を好発とするリンパ増殖性疾患であり,膵近傍の原発はまれである.
 症例は45歳男性.検診の腹部超音波検査で膵腫瘤を指摘され当院を受診.腹部造影CT検査で膵体部に頭側に突出する造影効果を伴う46mm径の充実性腫瘤を認めた.血液検査に特記すべき異常所見を認めなかった.超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)では異型を伴わないリンパ球を認めるのみであり,確定診断は得られなかった.悪性リンパ腫や膵神経内分泌腫瘍を否定できず,切除の方針とした.腫瘤は赤色・軟で膵体部の頭側に存在し,腫瘍周囲には栄養血管と思われる細径血管が多数存在した.鑑別診断困難で膵原発の病変が否定出来ず,完全切除のために,膵体尾部脾切除術を選択した.病理組織学的検査ではCastleman病(Hyaline vascular type)と診断した.術後合併症なく,術後10日目に軽快退院した.
 術前診断困難病変の,術式選択は議論となるが,進展範囲に応じた過不足のない術式選択が重要と考える.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

十二指腸副乳頭原発神経内分泌腫瘍の1例

防衛医科大学校外科学講座

藤沼 八月 他

 症例は74歳の男性.貧血精査で近医受診,上部消化管内視鏡検査では主乳頭よりやや口側の十二指腸下行脚左壁に可動性良好な15mm大の腫瘍を,超音波内視鏡では第3層主体の均一な低エコー腫瘤を認め,生検結果から副乳頭原発の神経内分泌腫瘍(NET)G1と診断された.造影CTでは動脈早期相から濃染される13mm大の腫瘤と膵内胆管背側および膵鉤状突起左側辺縁に計4個の造影効果を示す最大径5mmの結節影を認めた.その他遠隔転移を示唆する所見はなく,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査では腫瘍は副乳頭に限局し,Ki-67指数1.7%,核分裂像(4/10 HPF)からNET G2と診断され,術前CTで認めた膵鉤状突起周囲の結節影は転移リンパ節であった.副乳頭部NETは腫瘍径が小さくても高率にリンパ節転移を来すため,安易な縮小手術をすべきではないと考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

1型糖尿病合併低ガンマグロブリン血症患者に発症した膵IPMCの1例

大阪大学大学院消化器外科学

藤本 直斗 他

 症例は59歳男性.16歳時に低ガンマグロブリン型の免疫不全症と診断,27歳時に1型糖尿病と診断されていた.53歳時に主膵管拡張と膵頭部の嚢胞性病変を指摘され,精査にてWorrisome featureを伴わない膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断.54歳時にHigh risk stigmataを伴ったため,手術適応となった.1型糖尿病で膵インスリン分泌能は失っていること,また先天性免疫不全症であることを考慮し,脾温存膵全摘術を行った.切除標本の病理診断は膵管内乳頭粘液性腺癌(TS2(33mm), pTisN0)であった.術後管理としては,免疫グロブリン製剤を適宜補充し,予防的抗生剤を長期間投与したが,その他は通常通りに管理し,特記すべき合併症なく退院した.先天性免疫不全症に合併した膵管内乳頭粘液性腺癌に対して全膵切除を行った症例は検索し得る限りではなく,非常に稀な症例と思われたため,報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

膵頭十二指腸切除術を施行した腸回転異常症を伴うVater乳頭部癌の1例

斗南病院外科

田中 宏典 他

 症例は61歳の男性で、倦怠感と黄疸を主訴に受診した。腹部CTにて肝内胆管および総胆管の拡張とVater乳頭部に造影効果を有する胆管壁の肥厚を認めた。また、上腸間膜動脈は上腸間膜静脈の右側を走行し、結腸は左側、小腸は右側に位置しており腸回転異常症と診断した。Vater乳頭部癌の診断にて膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;以下PDと略記)を施行したが、手術所見で十二指腸は水平脚を形成せず尾側へ下降し、十二指腸前面にLadd靱帯を認め、Treitz靱帯は欠損していたことから、nonrotation typeの腸回転異常症と診断できた。再建は上行結腸右側の小腸をそのまま挙上し、Child変法で行った。術後経過は良好で術後13病日に自宅退院した。成人腸回転異常症を合併したVater乳頭部癌に対してPDを施行した稀な1例を経験したので報告する。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

腸回転異常症を併存した子宮全摘後の尿管による絞扼性イレウスの1例

諏訪赤十字病院外科

岡畠 祥憲 他

 症例は45歳,女性.子宮体癌に対して2週間前に手術施行された.第4病日から嘔吐,腹痛が出現.診察では腹部は軽度膨隆,正中より右側に軽度の圧痛を認めていた.術後癒着性イレウスと診断され保存的加療していたが,第15病日の腹部造影CT検査で腹部右側に小腸の限局的な拡張と右腎盂の拡張,右尿管が屈曲し下腹部で途絶している所見を認め,絞扼性イレウス及び右水腎症と診断し,緊急再手術を施行した.腹腔内を観察するとTreitz靭帯は通常の位置には存在せず,椎体の右側に存在し腸回転異常症と診断した.その肛門側にて前回手術時に形成された右尿管と後腹膜との間隙に入り込み絞扼されていた.腸管は軽度の色調変化を認めたが,用手的に整復する事で改善したため,腸管切除は行わなかった.再発防止として右尿管を後腹膜に縫着した.婦人科術後に剥離した尿管が原因で発症したイレウスは稀であり,文献的考察を加えて報告する.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

血液透析患者褐色細胞腫の1例

一宮西病院外科

笹本 彰紀 他

 症例は多発性嚢胞腎で血液透析を受けている66歳男性. 胸痛発作で近医受診し偶然CT検査で左副腎腫瘍を指摘. 異常高血圧を来し当院に緊急入院. 入院時血液検査でカテコラミンの高値を認めた. 造影CTで内部に壊死を伴う造影される腫瘍を認め, I123-MIBGシンチで左副腎に集積を認め褐色細胞腫と診断. 術中, 術後の心血管系の重篤な合併症を防ぐ目的に, 術前α1遮断薬を漸増していき, dry weightを0.7 kg増加させ手術に臨んだ. 腫瘍への過度な接触による術中異常高血圧を回避けるため腫瘍とともに左腎臓を合併切除. 切除標本は20x15cm,1945gの腫瘍で, 病理検査で Pheochromocytoma of the Adrenal Gland Scoring Scaleは 6点, Ki-67は5%で悪性の経過をたどる可能性の高い褐色細胞腫と最終診断した.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

大網原発高分化型脂肪肉腫の1例

JCHO札幌北辰病院外科

藤居 勇貴 他

 症例は83歳の男性で、発熱、腹部違和感を主訴に来院した。造影CT検査で、右腹腔内に脂肪濃度を呈する13cm大の腫瘤性病変、および周囲脂肪濃度の上昇を認めた。大網原発脂肪肉腫や大網捻転の可能性が考えられ、準緊急的に手術の方針となった。手術は大網腫瘍摘出、腹壁・回盲部合併切除術を行った。術後は創離開を生じたが保存的治療により改善し、術後47日目に退院となった。病理所見は大網原発の高分化型脂肪肉腫であった。脂肪肉腫は大腿、臀部、後腹膜に発生することが多く、大網原発のものは極めて稀である。脂肪肉腫は高分化型、粘液型、円形細胞型、多形型、脱分化型に分けられ、高分化型は比較的予後が良いとされる。しかし、腹腔内発症の脂肪肉腫は、腫瘍の完全切除が難しい、十分量の放射線照射ができないなどの理由により、他部位発症のものより予後不良である。本症例では拡大腫瘍切除が奏功し、11ヶ月間の無再発生存が得られた。

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

TAPP術後の腹膜縫合部裂隙嵌頓の1例

中村病院外科

佐藤 裕英 他

 患者は,77歳男性.両側鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(transabdominal preperitoneal repair:以下TAPP)を実施したが,術後4日目に腸閉塞を発症.CT画像から右側TAPP修復部位での腹膜外腔への小腸のヘルニア嵌頓が原因と判断し,即日緊急で腹腔鏡下手術を実施した.手術所見では,右側の腹膜閉鎖部の正中側に形成された腹膜の裂隙を通して回腸が約50cm,腹膜前腔から膀胱前腔に嵌頓していた.ヘルニアを鏡視下に整復し,腹膜の裂隙を縫合閉鎖し手術を終えた.腹腔鏡下ヘルニア修復術後は腹膜縫合部への負荷から裂隙を形成し,ヘルニア嵌頓をきたす可能性があるので,腹膜閉鎖の際には隙間なく強度をもたせた閉鎖を心掛けるとともに,術後はこの疾患を念頭に入れておくことが必要と考えられた.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る

TEPを施行したヘルニア嚢を認めない鼠径部ヘルニアの1例

仙台市立病院外科

貝羽 義浩 他

 症例は35歳,女性. 半年ほど前から左鼠径部の膨隆を自覚し、痛みも伴った. 近医受診し、鼠径ヘルニアの診断で当科紹介となった. 診察時鼠径部に膨隆を認めず、超音波検査、CTでも所見を認めなかったが、本人の希望で腹腔鏡下手術の方針とした. まず臍部より腹腔鏡を挿入し観察したが、鼠径部に腹膜陥凹を認めなかった. しかし本人は痛みのある膨隆を自覚しており、TEP法にて腹膜前腔を観察することとした. バルーンにて腹膜前腔を剥離し検索したところ、塊状の脂肪組織が大腿ヘルニアの部位にはまり込んでおり、これを剥離すると径約2cmの筋膜欠損部が存在した. メッシュを用いてヘルニアを修復した. 術後経過問題なく退院した. 術後1年となるが、症状の再発を認めていない. 腹腔内を観察してヘルニア門が確認できない場合でも、明らかに症状のある症例では、sacless herniaを念頭に腹膜前腔を検索する必要がある.

目次へ戻る  ページの先頭へ戻る