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日本臨床外科学会雑誌 第79巻3号 掲載予定論文 和文抄録


原著

造影超音波による乳癌の広がり診断

日本医科大学武蔵小杉病院乳腺外科

蒔田 益次郎 他

 この研究の目的は術直前に造影超音波で乳癌の広がり診断を行い、その結果に従って切除し組織学的に評価して、造影超音波とMRIの広がり診断を比較することである。2015年9月~2016年6月に文書によるインフォームドコンセントを取得し、乳腺部分切除を施行した乳癌21例を対象とした。症例ごとにMRI,造影超音波と組織学的広がり長径を測定し、MRIまたは造影超音波の組織学的広がり長径との一致率を比較した。造影超音波は全麻下で術直前に行い、低エコー域での造影の有無で評価した。造影超音波による広がり診断に従って部分切除を行い、標本は全割し階段状切片で評価した。組織学的広がり長径との一致率はMRI57.1%、造影超音波52.4%で、MRIと同様に組織学的広がり長径と造影超音波はよく相関した(r=0.755、p<0.0001)。造影超音波は手術と同じ体位でできるので、乳房部分切除の切除範囲の設定に有用である。

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膵頭十二指腸切除におけるERAS®の有用性

手稲渓仁会病院外科

寺村 紘一 他

 目的:膵頭十二指腸切除(pancreaticoduodenectomy:PD)にERAS(enhanced recovery after surgery)を実施し,早期経口摂取と目標指向型輸液治療(goal directed fluid therapy:GDT)の有用性を評価する.
 方法: PD症例107例中,ERAS群48例と従来群59例を比較し、輸液量,合併症率,在院日数,前者の経口摂取量を後方視的に検討した.
 結果:ERAS群で半量以上摂取は術後3日目で72.9%、術中輸液balanceは減少した(+3844ml vs +2637ml,p<0.001).術後合併症は,従来群55.9%,ERAS群39.6%(p=0.64),在院日数は18日,17日(p=0.28)と差はなかった.
 結論:PDにERASを導入し,早期経口摂取とGDTの臨床的有用性は明らかではなかったが,安全に達成できた.

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臨床経験

急性胆嚢炎保存的加療後に行った待機的単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術の経験

横浜総合病院外科

坂田 真希子 他

 当院では単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を急性胆嚢炎の待機手術に積極的に取り入れている.待機手術としての単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術のまとまった成績は未だ明らかではない.当院で行った待機的単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術について検討しその妥当性を検討した.対象と方法:待機的単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術23症例を対象として単孔式手術で完遂できた群(T群)とポート追加あるいは開腹移行した群(C群)について臨床所見などを比較検討した.結果:23例中14例で単孔式手術を完遂,7例がポートを追加,2例が開腹へ移行した。急性期の血液検査結果・画像検査結果ともに炎症所見に関して二群間で有意差を認めなかった.結語:待機手術を行うにあたり単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術は急性期の炎症の強さによらず選択可能で妥当な術式であると考える.

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症例

男性乳腺に発生したneuroendocrine tumour,well-differentiatedの1例

名古屋第一赤十字病院一般消化器外科外科・乳腺内分泌外科

深田 浩志 他

 症例は39歳男性で、左乳房腫瘤にて当院を受診した。穿刺吸引細胞診にてrossette様構造を伴う乳癌と診断.左乳房全摘術,左腋窩リンパ節郭清術を施行した.切除標本では乳頭直下に35 mmの腫瘤を認めた.病理組織像では 均一な腫瘍細胞が充実性胞巣を形成し浸潤を伴っていた.Synaptophysinとchromograninが陽性で神経内分泌細胞への分化が示唆された.ER/PgR陽性,HER2陰性,Ki-67標識率5%,リンパ節転移を認めなかった.neuroendocrine tumour, well-differentiatedと診断した.Tamoxifen内服を5年間行い無再発生存中である.

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2年7カ月後に再発した縦隔気腫の1例

焼津市立総合病院外科

山本 沙希 他

 症例は63歳男性, 腹痛と便秘を主訴に近医でイレウスと診断され, 当院に紹介された. 直近に胸部外傷の既往なく, 来院時胸痛・呼吸困難はなかった. 胸腹部CTでS状結腸の閉塞と縦隔気腫を認め, 同日人工肛門造設術を施行した. 縦隔気腫は経過中に消失した. 精査の結果, S状結腸癌, 直腸癌と肝転移を認め, 2ヶ月後二期的に原発巣切除と転移性肝腫瘍切除を施行したが, この周術期に縦隔気腫は再発しなかった. 術後2年6ヶ月化学療法中に呼吸困難・発熱を主訴に当院を受診し, 急性呼吸不全の診断で緊急入院した. 気管挿管下に人工呼吸管理とステロイドパルス療法を行い, 人工呼吸管理7日目に胸部X線で縦隔気腫の再発を認めた. 陽圧換気を継続したが縦隔気腫は消失した. 患者は呼吸不全により入院2ヶ月後に死亡した. 本症例における縦隔気腫の発生機序や経過の特色について文献的考察を加えて検討し報告する.

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Diffuse pulmonary meningotheliomatosisの1例

国立病院機構東京病院呼吸器センター外科

井上 雄太 他

 66歳女性。胸部CTで両肺野にびまん性小粒状影を認め、粟粒結核疑いで気管支鏡検査を行ったが結核菌は検出されなかった。悪性腫瘍の肺転移を疑い、原発巣検索のため、上・下部内視鏡検査、FDG-PETを施行。PETにて甲状腺癌を疑われ、穿刺吸引細胞診施行。classⅢまでの診断だったため、肺病変の確定診断目的に胸腔鏡下肺生検を施行。病理学的に肺結節はmeningothelial-like nodulesであり、両側肺野にびまん性に分布しているためDiffuse pulmonary meningotheliomatosis(DPM)と診断された。Minute pulmonary meningothelial-like nodules(MPMNs)は偶発的に病理検体で診断されることも少なくないが、DPMの報告は極僅かである。びまん性両肺結節の鑑別として留意しておくべきであろう。

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膵組織成分が誘因と考えられた喀血を伴う成熟型縦隔奇形腫の1例

岸和田徳洲会病院外科

山口 智之 他

 症例は30歳女性.1週間前から続く喀血を主訴に来院した。胸部CT検査では前縦隔に径3㎝の多房性嚢胞性病変が認められ、隣接する左肺上葉の肺炎像が認められた。血管造影検査で腫瘍と左内胸動脈および左気管支動脈との交通が認められ、腫瘍が喀血の原因と判断された。異常血管の塞栓により喀血は消失したが、再発予防の目的で胸腔鏡下に手術を行った。病理組織学的検査では奇形腫内に膵組織が認められ、それと隣接する肺組織に出血像が認められた。術後も26ヶ月を経過し腫瘍の再発や喀血の再燃は認めていない。喀血を契機に発見された胸腔鏡下に切除した成熟型縦隔奇形腫の1切除例を経験したので報告する。

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経皮的胸管破砕術により再手術を回避できた食道癌術後難治性乳糜胸の1例

富士市立中央病院外科

小林 康伸 他

 症例は50才代男性.進行食道癌cT2N1M0 cStageⅡの診断で術前化学療法後に,腹臥位胸腔鏡下食道亜全摘を施行した.術後より右胸腔ドレーンから大量の排液を認め,乳糜胸と判明した.オクトレオチド酢酸塩の皮下注射および高カロリー輸液による管理を行ったが乳糜胸は改善せず,初回手術から第21病日に胸管塞栓術を予定した.リンパ管造影後に塞栓術を試みるもワイヤーカニュレーションができず,透視下に胸管破砕術を施行した.破砕術後より乳糜胸は減少傾向となり,破砕術より30日目に退院となった.食道癌術後の難治性乳糜胸に対し,保存的加療によって改善せず胸管破砕術により治癒が得られた1例を経験した.本法は食道癌術後乳糜胸に対し,手術に比し低侵襲であり,治療のひとつのオプションとなり得る有効な手段であると考えられた.

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主リンパ節に内膜組織を認めた回盲部子宮内膜症の1例

由利組合総合病院外科

笹森 凌平 他

 主リンパ節に内膜組織を認めた腸管子宮内膜症の稀な1例を報告する.症例は49歳の女性で,右下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診.受診時,腹膜刺激症状を伴う右下腹部痛と炎症反応の著明な上昇を認めた.造影CTでは回盲部に4㎝大の不均一な造影効果を伴う腫瘤形成と周囲リンパ節腫大を認めた.加えて,虫垂壁肥厚と周囲脂肪識濃度上昇および近傍腹壁に膿瘍形成を認めた。以上より,腫瘍による続発性穿孔性虫垂炎・膿瘍形成が疑われたために,緊急でD3郭清を含む回盲部切除術を施行した.病理組織学的に,虫垂,および回腸の粘膜下層から漿膜下組織にかけて子宮内膜腺に類似した腺管を認め,免疫染色から腸管子宮内膜症と診断した.また,虫垂所属リンパ節である#203にも同様に内膜組織を認めた.本邦において,主リンパ節に内膜組織を認めた腸管子宮内膜症の報告例はなく,非常に稀な1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.

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待機的腹腔鏡下手術を施行した小腸仮性憩室腸間膜穿通の1例

気仙沼市立病院外科

田中 美也子 他

 症例は68歳男性で,右下腹部痛・発熱を主訴に来院された.造影CTで小腸腸間膜穿通・腸間膜膿瘍の診断となった。原因として憩室が疑われたが、悪性腫瘍も否定できないと考えられた.来院時全身状態は良好で,腹痛症状も限局的であり,保存的加療を行いながら精査を進めた。下部消化管内視鏡検査では回腸末端部に粘膜下隆起を認めた.穿通発症から1ヶ月後,炎症反応は軽快したが悪性腫瘍が否定できないため,腹腔鏡下での待機手術を行った.病理所見では小腸仮性憩室腸管膜穿通の診断であった.小腸仮性憩室穿通は比較的めずらしい疾患で術前診断が難しく、緊急手術が行われることも多い。今回は憩室穿通により腸間膜膿瘍が形成されたものの保存的加療が奏功し,待機的に腹腔鏡下手術にて病巣を切除しえた.小腸腸間膜膿瘍の症例において,炎症が限局的である場合,待機的な腹腔鏡手術による侵襲の低減化も可能であると考えられた.

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小腸原発メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患の1例

韮崎市立病院外科

齊藤  亮 他

 症例は68歳,女性.関節リウマチに対し9年間メトトレキサート(以下,MTX)を内服中であった.倦怠感を主訴に受診し,血液検査および腹部造影CTで終末回腸の悪性リンパ腫が疑われた.MTX関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)の可能性を考えMTXを中止した.2週間後の下部消化管内視鏡検査では悪性リンパ腫が疑われたが,確定診断には至らなかった.診断及び治療目的に腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.組織学的にはリンパ増殖症の診断で,MTX内服の既往と合わせてMTX-LPDと考えられた.小腸に発症したMTX-LPDの報告は自験例を含め7例あるが,自験例を除くすべての症例で穿孔により緊急手術が行われている.また待機的に腹腔鏡手術を行った文献報告は認めない.今回我々は終末回腸に発症したMTX-LPDを術前に疑い,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

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術前に留置したVATS用マーカーを指標に部分切除した小腸angioectasiaの1例

岡山済生会総合病院外科

庄司 良平 他

 症例は71歳男性. 既往に胆嚢十二指腸瘻に対する開腹手術歴があった. 術後9年目頃から繰り返す下血, 貧血の進行を主訴に入退院を繰り返していた. それまで各種検査を施行していたが明らかな出血源は不明のままであった. しかし今回の入院時に撮影した腹部造影CT検査では上腸間膜静脈の閉塞と, 小腸, 上行結腸辺縁静脈の拡張, 側副血行路の発達を認め, また活動性出血時に撮影した腹部造影CT検査で臍近傍の小腸壁の一部に造影剤の貯留を認めたため, この部位の腸管壁に術前VATS(video-assisted thoracic surgery)マーカーを留置しこれを指標に小腸部分切除を施行した. 摘出標本では小腸粘膜が一部欠損していた. 病理組織学的検査で病変の粘膜下に静脈の増生, 出血所見を認め, 小腸angioectasiaからの出血と診断した.

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腹腔鏡下に切除した馬蹄腎併存S状結腸癌の1例

日本赤十字社和歌山医療センター外科

細川 慎一 他

 症例は64歳女性. 検診にて便潜血を指摘され, 大腸内視鏡検査でS状結腸癌と診断された. 術前の3D-CTにて馬蹄腎と腎下極を栄養する過剰腎動脈の存在を認めた. cSS, cN1, cM0, cStagⅢaと診断し, 腹腔鏡下直腸高位前方切除術+D3郭清施行. 術中所見として, 腰内臓神経が腎前面を走行しているのが確認できた. またIMAのすぐ尾側から過剰腎動脈を確認できた. 解剖学的変異の多い馬蹄腎患者のS状結腸癌に対しても, 通常同様の正しい剥離層を保持して行うことで, 腹腔鏡下で副損傷なく, 安全に施行可能であると思われた.

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治療的リンパ管造影が著効をみた直腸癌術後難治性リンパ漏の1例

JCHO埼玉メディカルセンター外科

林  航輝 他

 症例は80歳,女性.肛門縁から15cmの全周性2型腫瘍に対し高位前方切除術を施行した. 術後第1病日より仙骨前面ドレーンから多量の乳縻様排液を認めリンパ漏と診断,禁食,利尿剤投与などで改善傾向となり第23病日に退院となった.
 術後1か月頃よりリンパ漏が増悪し,オクトレオチドや利尿剤を投与するも改善に乏しく適宜腹水穿刺を施行した.術後112病日に診断的治療として両側鼠径リンパ節穿刺からリピオドールによるリンパ管造影を施行,腹部大動脈分岐部直上左側の外側大動脈リンパ節周囲から造影剤漏出を認め瘻孔部位と考えられた.術後151日目のCTで著明な腹水減少が得られ,現在術後3年で無再発生存中である.
 保存的治療に反応しない消化管術後難治性リンパ漏に対しては外科的治療が推奨されているが, 奏功率は高くない.リピオドールによる治療的リンパ管造影は消化管術後難治性リンパ漏に対して有用な治療手段となり得る.

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化学放射線療法が著効をみたAFP産生直腸癌局所再発の1例

太田綜合病院付属太田西ノ内病院外科

伊藤 泰輔 他

 症例は64歳,女性。血便を主訴に他院を受診し,下部消化管内視鏡検査にて直腸癌を指摘された。精査加療目的に当院紹介となり,術前検査で遠隔転移は認めないものの子宮浸潤が疑われた。低位前方切除術および子宮合併切除を行った。この際の病理検体にてAFP染色陽性でありAFP産生直腸癌と診断された。AFP値は術前から現在まで正常値であった。術後補助化学療法施行中に腫瘍マーカー(CEA)が漸増し局所再発が認められた。化学放射線療法を行い,局所再発は消失し,現在(術後3年8か月)まで寛解状態を維持している。AFP産生大腸癌は肝転移を来しやすく非常に予後が悪い疾患である。今回我々は,局所進行AFP産生直腸癌の術後局所再発に対し化学放射線療法を行い良好な結果が得られた1例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する。

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肛門括約筋内に遺残していた誤嚥魚骨の1例

尾道市立総合医療センター公立みつぎ総合病院外科

瀬尾 信吾 他

 72歳男性。肛門痛を主訴に近医を受診し、同医で肛門管壁に刺さった魚骨を摘出された。症状は一旦消失したが2ヶ月後に再燃したため当科を受診。視診で粘膜面に異常はなかったが、CTで肛門管右側の括約筋層内に高吸収な針状構造物と周囲組織の濃度上昇を認め、魚骨の遺残と診断し外科的摘出の適応とした。腰椎麻酔下に観察したが、肛門管から直腸粘膜に刺入点を認めなかったので、MDCT画像を基に歯状線部粘膜を切開し、内肛門括約筋の外側に接して頭側に鉗子を進め探索し13mm長の魚骨を摘出した。術後、粘膜切開部直下に膿瘍形成を伴ったので、7日目にSeton法によるドレナージを加えた。膿瘍消退後に瘻管化したドレナージ創を切除し、49日目に自宅退院した。異物による消化管穿通例の中でも肛門部での発生は稀だが、大多数は肛門周囲膿瘍を形成し、膿瘍切開により異物が摘出されていた。自験例のように肛門括約筋への直達操作を要したものは稀であり報告する。

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腹腔鏡下手術にて解除したRiedel葉による腸閉塞の1例

福井県立病院外科

古谷 裕一郎 他

 症例は73歳の女性.自動車同士の交通事故にて当院へ救急搬送された.右側腹部に強い痛みを訴え,腹部CTにて肝臓から小腸へ繋がる索状物と索状物による小腸閉塞と口側腸管の拡張を認めた.索状物による腸閉塞と診断し単孔式腹腔鏡下イレウス解除術を施行した.手術所見として,小腸へ繋がるように肝右葉下縁が舌状に伸展し,その部位での腸閉塞を認めた.舌状に伸展した肝をクリップし超音波凝固切開装置にて切離し腸閉塞を解除した.病理学的所見にて肝細胞ならびに胆管の組織を認め,肝副葉(Riedel葉)と診断した.術後経過は良好で,術後7日目に退院した.
 肝副葉は異常形態のひとつで,偶発的に発見されることが多い.また,肝副葉のうち肝右葉より舌状に下方に伸展するものはRiedel葉とよばれる.今回われわれは,肝副葉(Riedel葉)による腸閉塞に対して腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので報告する.

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魚骨迷入により肝膿瘍をきたした1例

北播磨総合医療センター外科・消化器外科

小濱 拓也 他

 魚骨により消化管穿孔を来すことがあると知られているが,魚骨の迷入により肝膿瘍を来した症例は稀である.症例は,74歳男性.発熱,呼吸苦を主訴に救急受診した.2週間前に魚骨を飲み込んだ自覚があった。腹部CT検査、腹部超音波検査で肝内に魚骨を疑う異物および肝膿瘍を認めた。ショックを伴う全身状態の悪化を認めたため、緊急で経皮的膿瘍ドレナージ術を施行した。翌日に開腹肝内異物除去術、膿瘍ドレナージ術を施行した。術中超音波検査で膿瘍内に音響陰影を伴う線状高エコーを認めた。膿瘍ドレナージを行ったところ、肝内に完全に埋没した魚骨を認め,摘出した。消化管の穿孔・穿通部位は明らかではなかった。術後21日目に軽快退院した。魚骨の迷入により肝膿瘍を来した稀な症例を経験した.保存的加療やPTADのみでは再燃・増悪例も報告されており,全身状態が安定した状態で,可及的速やかに魚骨の除去を検討すべきである.

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Epstein-Barr virus非関連肝移植後リンパ増殖性疾患の1例

愛媛大学肝胆膵・乳腺外科

田村  圭 他

 患者は64歳、男性。2009年5月にアルコール性非代償性肝硬変に対し、生体部分肝移植術を施行した。Epstein–Barr virus(EBV)はともに既感染であった。術後の免疫抑制剤は3剤併用療法を行い、ステロイドは術後6ヶ月目に中止した。2014年1月に吐下血を認め、上部消化管内視鏡にて胃体上部に潰瘍を伴う腫瘍性病変を認め、生検により移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)と診断された。EBV-PCR検査は陰性であった。PET-CT検査では胃及び腹腔内の塊状に腫大したリンパ節にFDGの集積を認め、Ann Arbor分類II期と診断した。治療として、まず免疫抑制剤を減量した。続いて化学療法を施行しCRとなった。小児ではほとんどがEBV関連のPTLDであるが、成人ではその割合は約70%と報告されており、成人肝移植症例ではEBV非関連のPTLDが発症する危険性に注意する必要がある。

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胆嚢仮性動脈瘤・胆嚢十二指腸瘻合併による消化管出血性ショックの1例

JA山口厚生連周東総合病院外科

吉峯 宗大 他

 胆嚢動脈瘤の多くは胆嚢炎に続発する仮性動脈瘤で,胆道出血の原因となる稀な疾患である.一方,胆嚢十二指腸瘻の約90%は胆嚢結石による胆嚢炎に続発し,胆石イレウスや繰り返す胆道感染の原因となり得る比較的稀な疾患である.今回我々は,胆嚢仮性動脈瘤と胆嚢十二指腸瘻を合併したことにより,消化管出血から出血性ショックを呈した症例を経験したので報告する.症例は胆石性胆嚢炎の既往がある82歳女性で,一過性の意識消失を繰り返し,貧血の進行を認めた.造影CT検査,上部消化管内視鏡検査の結果,胆嚢仮性動脈瘤と胆嚢十二指腸瘻の合併による消化管出血と診断された.準緊急手術を施行すると,胆嚢および十二指腸球部周囲に強固な癒着を認めた.胃前庭部~十二指腸球部と胆嚢を切除し,消化管再建はRoux-en Y法で行った.術後経過は良好で,術後3ヵ月目にリハビリ目的に転院となった.

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動脈管開存症治療後に生体部分肝移植を施行した乳児胆道閉鎖症の1例

愛媛大学大学院肝胆膵・乳腺外科学

上野 義智 他

 症例は8ヶ月の女児。生後43日目に胆道閉鎖症に対して葛西手術が行われた。術後肝障害の進行に伴う腹水、消化管出血、精神身体発育の遅延を認め、生後7ヶ月で生体部分肝移植術の適応と判断した。術前の心エコー検査で動脈管開存症が発見されたが、肝移植後の左心系の容量負荷や免疫抑制剤の使用に伴う感染性心内膜炎を考慮し、まず動脈管開存症に対してInterventional Radiology下に閉鎖術を行う方針とした。体重は5100gと低体重であったがコイル挿入に伴う問題もなく、その後3週間目に父親をドナーとしてhyper-reduced left lateral segment graftを用いて生体肝移植術を施行した。術後感染症の発症もなく移植後33日目に退院した。動脈管開存症を合併した乳児に対する肝移植の報告は稀で、肝移植前の治療方針にコンセンサスはなく貴重な症例と思われたことより報告する。

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消化管ステント留置により術前経口摂取を可能とした膵頭十二指腸切除の2例

東邦大学医療センター大橋病院外科

浅井 浩司 他

 膵頭十二指腸術(pancreaticoduodenectomy; PD)は高度侵襲を伴う術式であり,未だ術後合併症発生率,在院死亡率が高率な術式である.今回,われわれはPD術前に消化管ステントを留置した2例を経験したので報告する.症例1は76歳の男性.十二指腸浸潤を伴う切除可能境界膵鉤部癌と診断した.十二指腸狭窄により経口摂取が困難であったため,術前に内視鏡的十二指腸ステントを留置した.留置後1か月目にPDを施行し,術後第23病日に退院となった.症例2は68歳の男性.十二指腸,肝浸潤を伴う閉塞性上行結腸癌と診断した.経口摂取が困難であったため,術前に内視鏡的大腸ステント留置を行った.留置後16日目に結腸右半切除術,PD,肝部分切除術を施行し,術後第25病日に退院した.高度侵襲手術であるPDを必要とする症例に対して,術前の消化管ステント留置は考慮すべき治療戦略の一つと考えられた.

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著しい可動性を有した膵漿液性嚢胞腺腫の1例

杏林大学医学部付属病院外科

本多 五奉 他

 症例は36歳,女性.上腹部に可動性腫瘤を自覚し,CTで嚢胞性腫瘍を指摘され受診.触診で上腹部に5cm大の腫瘤を触知し,用手的に容易に左右に移動した.画像では蜂巣状構造を呈し,漿液性嚢胞腺腫が疑われた.腫瘤径が4cm以上であったため手術を行った.腫瘤は膵頭部前面から膵外へ広基性に発生しており,基部となっている膵実質も含めて腫瘤を摘出した.病理組織学的検査でmicro cystic typeの漿液性嚢胞腺腫と診断した.術中所見では膵臓自体には可動性がなく,腫瘍が膵外発育をしたことが可動性の原因と考えた.本邦における可動性膵腫瘍の報告は8例あり,膵腫瘍も可動性腹部腫瘤の鑑別診断に挙げる必要がある.

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分娩後に発症した腹壁デスモイドの1例

沖縄協同病院外科

仲地 広美智 他

 症例は29歳,女性.2014年4月,分娩直後より,右上腹部に腫瘤出現し,精査加療目的で当院紹介となった.超音波,CT,MRIで右腹直筋内から発生し,36×12mm大,紡錘形,辺縁は不明瞭な腫瘍を認め,腹壁デスモイドを疑って手術を施行した.腫瘍の辺縁から約2cm以上のsurgical marginを確保し,腹直筋前鞘を含めて切除した.筋膜に緊張がかからないように,component separation法で修復した.病理診断はデスモイド,エストロゲンレセプターは陰性だった.術後2日目退院.術後3年経過した現在,再発は認められない.

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局所止血材により止血した仙骨骨折に起因したBatson静脈叢出血の1例

国保直営総合病院君津中央病院外科

須田 竜一郎 

 仙骨骨折は,内椎骨静脈叢(Batson静脈叢)が骨片により損傷され出血し,致死的なショックをきたしうる.今回,仙骨骨折に起因するBatson静脈叢からの出血に対し,微線維性コラーゲン止血材を使用した症例を経験し,有用であると考えられたため報告する.症例は29歳,男性.墜落に伴った鉄骨支柱による会陰部杙創.CTで仙骨骨折に伴う腹腔内出血に対して緊急開腹を行った.術中所見ではDenis分類zone Ⅲの仙骨(S1)に鉄骨が刺入しており,これを抜去するとBatson静脈叢からの出血と考えられる噴出性の出血をみた.ガーゼパッキングを行い,24時間後に再開腹すると再び噴出性の出血をみたため,微線維性コラーゲン止血材を出血部位に充填したところ,良好な止血が得られた.外傷に伴う止血困難なBatson静脈叢からの出血に対しては,微線維性コラーゲン止血材の使用もひとつの選択肢となりうる.

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