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日本臨床外科学会雑誌 第79巻2号 掲載予定論文 和文抄録


原著

75歳以上高齢者の膵頭十二指腸切除術における手術成績と栄養指標の変動

山形大学大学院医学系研究科外科学第1講座

菅原 秀一郎 他

 目的:高齢者における膵頭十二指腸切除術(PD)の手術成績と術後長期的栄養指標の推移を明らかにすること.
 対象・方法: 2009年から2014年までに当施設でPDを施行した100例を対象とした.75歳以上20例(高齢者群)と74歳以下80例(非高齢者群)に分け,手術成績ならびに総蛋白(TP),血清アルブミン(Alb),ヘモグロビン,リンパ球数,”小野寺らのprognostic nutritional index”(PNI)の術前・術後の経時的推移を比較した.
 結果:手術成績に有意差はみられなかった.高齢者群で術後1年目にTPが,術後3か月目と1年目にAlbが,術後1週間,1年目にPNIが有意に低下していた.術前値と術後1年目との比較では,TP,Alb,リンパ球数,PNIに有意差は認めなった.
 結語:PD術後において高齢者の手術成績と術後栄養指標の変動は非高齢者とほぼ同等であった.

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臨床経験

Nuck管水腫19例の経験

兵庫県立西宮病院消化器外科

斎藤 明菜 他

 はじめに:女性の鼠径部膨隆の原因としてNuck管水腫が挙げられ、異所性子宮内膜症や腺癌の合併などの報告もあり、完全切除が望ましい。今回我々はNuck管水腫の診断、経過に対する検討を報告する。対象と方法:当院で過去5年間に鼠径部膨隆に対し手術を行った女性111例を対象に検討を行った。結果:111例中19例がNuck管水腫と診断され、他の82例は鼠径ヘルニアであった。術前CT結果で感度は84.2%、特異度は96.7%であった。CTでNuck管水腫と診断できなかった症例に腹腔鏡下で鼠径ヘルニア修復術をする場合には、子宮円靭帯の牽引をしっかり行うことで診断が可能であった。病理組織学診断では、異所性子宮内膜症と診断された症例は19例中2例であった。まとめ:Nuck管水腫の診断はCTである程度可能であるが、完全ではないため手術にNuck管水腫の存在を念頭においた術式選択が必要であると考えられた。

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症例

術前化学放射線療法後食道癌術後Acinetobacter感染による敗血症の1例

静岡県立総合病院外科

鈴木 克徳 他

 症例は72歳男性.食道癌,cT3cN1cM0cStageIIIの診断で,術前化学放射線療法を施行後,右開胸腹腔鏡補助下食道亜全摘,胸骨後再建,3領域郭清を行った.術後経過良好であり,術後7日目に経口摂取を開始したが,翌日未明,発熱・悪寒出現し血液培養施行したところ,Acinetobacter speciesが検出され,またDICを発症した.明らかな感染源は特定できなかったが,抗生剤治療とDIC治療を併用し.全身状態は徐々に改善した.その後は明らかな合併症出現することなく,術後28日目に退院とした.標本病理学的所見では,NACRTにより腫瘍細胞は消失していた.NACRTは効果的な治療であると考えられるが,周術期には今回のように免疫機能低下による,日和見感染に注意しなければならない.

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放射線外照射後のレンバチニブ使用により穿孔をきたした再発甲状腺癌の3例

大阪警察病院乳腺・内分泌外科

下 登志朗 他

 症例1:気管合併切除後の頸部再発気管浸潤に内用療法後SorafenibでPDとなりLenvatinib開始.3か月で気管穿孔にて休薬.1か月で自然閉鎖し再開.症例2:全摘後頸部再発皮膚浸潤で外照射後Paclitaxel投与も増大.Lenvatinib開始1週間で皮膚穿孔し中止.2週間で瘻孔閉鎖し再開.症例3:食道浸潤+頸椎転移で頸部外照射し全摘.SorafenibでPDのためLenvatinib開始し1週間で食道穿孔し休薬.保存的治療し3週間で閉鎖した.外照射後の周囲臓器浸潤再発甲状腺癌へのLenvatinib投与は浸潤臓器の穿孔や出血リスクがあるものの中止により自然閉鎖も期待できる.

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両側乳癌全摘術創のMSSA感染によるtoxic shock syndromeの1例

聖隷横浜病院外科

松本  玲 他

 症例は70歳女性。両側乳がんに対して当科で両側乳房全摘術を施行し、術後10日目に発熱と嘔吐、下痢を認めた。翌日には上半身に紅斑が出現し、ショック、DIC、急性腎不全の状態となった。明らかな創部の感染徴候は認めなかったが創部を開放した。培養からグラム陽性球菌が検出されたため、ダプトマイシンの投与を開始。バイタルも安定していった。第6病日に両側創部のデブリードマン術を施行した。明らかな膿瘍形成は認めなかったが、大胸筋前面に白苔や壊死組織を認めた。創部には持続陰圧閉鎖療法を用いた。術後経過は良好で、約1ヶ月後に退院した。創部培養からTSST抗原陽性のMSSAが検出されToxic shock syndrome(TSS)と診断した。創部の表面上の感染徴候は認めなかったにも関わらず、典型的なTSSの臨床像を呈した症例を経験した。創部の感染を疑い、積極的な外科的ドレナージ術を施行し、救命する事ができた。

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乳腺悪性腺筋上皮腫の2例

東京女子医科大学病院乳腺・内分泌外科

都倉 桃子 他

 腺筋上皮腫は腺上皮細胞と筋上皮細胞のいずれもが増生する良性腫瘍だが、稀にどちらか一方または両方の細胞が悪性化することがあり、悪性腺筋上皮腫として知られている。我々は2例の乳腺悪性腺筋上皮腫を経験したので報告する。症例1は68歳女性。右乳房に14mm大の分葉状腫瘤を認め、針生検で腺筋上皮腫や乳管癌、両者の合併が疑われ、乳房部分切除術を施行した。病理組織検査にて腺上皮成分が癌化し非浸潤性乳管癌となった悪性腺筋上皮腫と診断した。症例2は81歳女性。右乳房に35mm大の不整形腫瘤を認め、針生検で悪性腺筋上皮や悪性葉状腫瘍が疑われ、乳房切除+腋窩郭清を施行した。病理組織検査にて筋上皮成分が悪性化した悪性腺筋上皮腫と診断した。術後に肺・肝・骨転移を認め、9か月目に死亡した。腺筋上皮腫は針生検での診断が難しいが、悪性の場合は予後不良であり、外科的生検にて診断をつけ、早期に治療することが重要である。

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神経線維腫症1型および完全内臓逆位症を伴った異時性両側乳癌の1例

星総合病院外科

村上 祐子 他

 神経線維腫症1型(neurofibromatosis type 1;NF1)は、全身の皮膚に多発する結節性病変(神経線維腫)と色素斑(カフェオレスポット)を特徴とする遺伝性疾患でvon-Recklinghausen病と呼称され、原因遺伝子は第17染色体長腕上のNF1遺伝子で優性遺伝形式を示し、近年、高発癌性遺伝病として認識されている。今回、NF1および完全内臓逆位症に合併した検診発見非触知乳癌で10年後の対側異時性両側乳癌を発生した1例を経験した。双生児の姉にも乳癌が発生し、NF1家系内に発生した双生児乳癌、異時性両側乳癌、内臓逆位症を合併した稀な症例と考えたので報告する。

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非開胸ドレナージと経腸栄養にて治癒した胸腔穿破型特発性食道破裂の1例

刈谷豊田総合病院外科

犬飼 公一 他

 症例は63歳女性.夕食後に嘔吐し,直後に胸背部痛あり当院へ救急搬送となった.胸部CT検査にて胸水を伴った左気胸および大動脈周囲の縦隔気腫,食道造影にて造影剤の胸腔内への流出を認めたため特発性食道破裂と診断した.手術適応であったが,宗教上の理由で輸血の可能性がある手術を拒否されたため,絶飲食として抗生剤を投与し,減圧用ルーメン付き成分栄養チューブと胸腔鏡下に2本の胸腔ドレーンを挿入した.全身状態は不安定であったが胸腔内洗浄と経管栄養を行い,第48病日の食道造影にて造影剤の漏出は消失し,経口摂取を開始,第81病日に退院となった.胸腔穿破を伴う特発性食道破裂は死亡率が高く原則緊急手術を必要とするが,適切な胸腔ドレナージおよび減圧用ルーメン付き成分栄養チューブを用いた経腸栄養による治療の選択肢もあると思われた.

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胸腔鏡下食道亜全摘術を施行した乳癌術後10年目の食道転移の1例

防衛医科大学校外科学講座

神津 慶多 他

 症例は70歳女性。10年前に左乳癌(Stage2b)に対し手術を受け、補助化学療法後、アナストロゾールを内服した。術後9年目に左鎖骨上リンパ節再発を来たした為、ホルモン療法を再施行中であった。術後10年目に嚥下困難を訴え、経口摂取不可能となった為、上部消化管内視鏡検査を施行、胸部中部食道に全周性狭窄を認めた。生検で悪性所見が得られず、バルーン拡張、ステント留置も困難であった為、症状改善と診断確定を目的として胸腔鏡下食道亜全摘術を施行した。摘出標本による病理学的検索では乳癌食道転移の診断であった。術後縫合不全を生じたが保存的に軽快、第30病日に退院となった。術後8ヶ月の現在、固形食摂取は概ね良好、化学療法を施行中である。多発転移を伴う再発乳癌に対しては化学療法が治療の主体となるが、症状改善を目的とした胸腔鏡下手術も選択肢となりうる。

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PTBD経由で減圧できた胃癌術後の腹膜播種再発による輸入脚症候群の1例

松原徳洲会病院外科

平田 裕久 他

 【緒言】胃癌術後の輸入脚症候群は外科的治療が必要となることが多いが、終末期医療においては侵襲的治療の可否が問題になる。【症例】57歳、男性。胃癌に対してRoux-en Y再建による幽門側胃切除術を施行された。播種結節を認め、病理組織診断は低分化腺癌StageⅣであった。術後化学療法を開始したが、悪性腸閉塞を併発した。小腸部分切除術、人工肛門造設術を施行したが改善せず、終末期医療に移行した。その後、発熱および背部の「張るような痛み」が出現し、血液検査およびCT検査で輸入脚症候群と診断した。経皮経肝胆道ドレナージを行い、カテーテル先端を十二指腸内まで進め、輸入脚の減圧に成功した。疼痛はNRS7から0に改善し、在宅医療に向けて退院可能となった。【結論】胃癌腹膜播種による輸入脚症候群に対して経皮経肝胆道ドレナージ経由での輸入脚減圧は症状緩和、QOL向上のための一つの選択肢であるとこが示唆された。

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家族性大腸腺腫症の同胞内に発症した早期胃癌の2例

横浜市立市民病院消化器外科

佐原 康太 他

 症例は家族性大腸腺腫症(FAP)の63歳男性と同胞である61歳男性.2例は結腸亜全摘後の経過観察中に,上部消化管内視鏡検査で胃体部に多発腺腫を伴う早期胃癌を指摘された.多発腺腫の癌化リスクを考慮し,内視鏡的切除ではなく幽門側胃切除術を施行し,pT1a(M)N0M0 pStage IAと診断された.FAPに合併した胃癌の報告は本邦で19病変と少なく,報告されているpT1症例15病変のうち外科切除が10病変に適応されており,腺腫や胃底腺ポリープの癌化を考慮していることが伺われた.しかし本症例では内視鏡所見,病理組織学的所見,免疫染色結果からH.pylori感染による発癌が疑われた.FAPに合併した胃癌においてもH.pylori感染を念頭に置いたサーベイランスと,予防的な外科切除に対する慎重な判断が必要であると思われた.

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十二指腸球部に嵌頓した1型進行胃癌の1例

羽島市民病院外科

東  敏弥 他

 症例は94歳の女性で,貧血の精査目的で紹介され,腹部CTで十二指腸球部に50mm大の腫瘤性病変を認めた.上部消化管内視鏡検査では幽門部前壁から胃粘膜の引きつれと,十二指腸内腔に胃から連続する隆起性病変を認め,生検で腺癌であった.十二指腸球部に嵌頓した胃癌と診断し,幽門側胃切除術を行った.腫瘍は幽門輪上に存在する60×50 mm大の1型で,病理組織学的検査はtub2 > tub1,pT2(MP),int,INFb,ly2,v2,pN0,pPM0,pDM0,pStageⅠBであった.
 十二指腸球部に脱出した胃癌の多くは早期胃癌であるが,まれに進行胃癌の場合もある.進行胃癌の場合は,腫瘍径が大きく,Ball valve syndromeの合併率も高いため,術前の深達度評価として,腫瘍径やBall valve syndromeの合併の有無も指標の一つとなりえる.

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集学的治療を行った卵巣癌術後胃転移・大動脈周囲リンパ節転移再発の1例

ベルランド総合病院外科

土橋 果実 他

 症例は69歳,女性.Stage IIIcの卵巣癌に対して術前化学療法を行った後,両側付属器摘出術,単純子宮全摘出術,大網部分切除術,骨盤内リンパ節郭清を施行した.術後2年5ヵ月目に左上腹部痛を認めたため,上部消化管内視鏡検査を施行したところ胃腫瘍を指摘された.精査の結果,卵巣癌胃転移,膵浸潤,大動脈周囲リンパ節再発と診断した.卵巣がん治療ガイドラインに従って,化学療法+secondary debulking surgeryの方針とし,Paclitaxel/Carboplatin療法を3コース施行した.膵浸潤が指摘できなくなったためR0手術が可能と判断し,幽門側胃切除術,D2リンパ節郭清,大動脈周囲リンパ節郭清,Roux-en-Y法再建を施行した.術後経過は良好で,再発徴候なく,現在維持化学療法中である.極めて稀な卵巣癌の胃転移に対して集学的治療を施行した1例を経験したので報告する.

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十二指腸球部神経内分泌腫瘍の1例

JCHO下関医療センター消化器外科

吉本 裕紀 他

 症例は66歳の男性,腹痛にて当院消化器科へ紹介され受診した.慢性膵炎の急性増悪の診断で保存的加療を行い,その後近医にて経過観察中であった.高CA19-9血症が持続するためCTを施行したところ,十二指腸球部に造影効果を認める腫瘍を認めた.EGDにて同部に1型腫瘍を認め生検を施行したところNET-G1・サイズが10㎜を超えていたため手術目的に消化器外科紹介となった.腹腔鏡下幽門側胃切除術(D2)+十二指腸部分切除術を施行した.術後病理ではリンパ節転移はなかった.十二指腸NETでは,腫瘍径,深達度,核分裂像の有無が転移リスクを予測するうえで重要な因子といわれているが,治療方針,手術術式に関してはまだ不明なところが多い.今回我々は,十二指腸球部NETに対して手術を行ったが,術式選択について非常に難渋したので若干の文献考察を加えて報告する.

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上行結腸への嚢胞性腫瘤転移で発見された原発不明癌の1例

福井県立病院外科

古谷 裕一郎 他

 症例は40歳の女性.血尿を主訴に当院泌尿器科を受診し,腹腔内に嚢胞性腫瘤を指摘され当科を紹介受診した.腹部CTにて上行結腸背側に約50mmの嚢胞性腫瘤を認めた.診断を兼ねて外科的切除の方針とし,回盲部切除術を施行した.病理組織学的所見にて上行結腸への転移性腺癌と診断され,術後のFDG-PET検査においても原発巣は指摘できなかった.原発巣として卵巣が疑われたため両側卵巣切除術を施行したが,卵巣標本においても悪性所見は指摘できず,原発不明癌と診断した.術後の治療は患者本人の希望もあり,化学療法はせず経過観察の方針となった.現在,転移性腺癌切除術後9ヶ月を経過したが再発や原発巣の顕性化なく外来通院中である.
 原発不明癌ではリンパ節転移で発見されることが多く,本邦において大腸への転移で嚢胞性腫瘤を契機に発見された報告はない.今回,われわれは上行結腸への転移で嚢胞性腫瘤として発見された原発不明癌の1例を経験したので報告する.

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著明な壁外発育を呈し予後不良だったCK20+横行結腸低分化腺癌の1例

小山記念病院外科

髙橋 真治 他

 患者は70歳代, 女性. 腹部腫瘤, 腹痛を主訴に来院した. 精査の結果, 壁外発育型横行結腸癌および多発性肝転移と診断し, 横行結腸切除術を行った. 組織型は低分化腺癌, 免疫染色はCK7-/CK20+であった. 術後化学療法を施行したが肝転移の増悪および腹膜播種の新たな出現により術後4カ月で永眠された. 壁外発育型大腸癌はまれで, なかでも低分化腺癌は報告例が非常に少ない. また, CK20+を呈する大腸低分化腺癌は予後不良と言われる. 今回われわれは著明な壁外発育を呈し予後不良だったCK20+横行結腸低分化腺癌の1例について, 文献的考察を加えて報告する.

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肺癌S状結腸転移による腸重積の1例

鎌ヶ谷総合病院外科

藤川 幸一 他

 症例は77歳の男性。腹痛にて来院され胸腹部CT検査の結果、右肺に7cm大の腫瘤およびS状結腸の腫瘤を先進部とした腸重積を認めた。S状結腸癌による腸重積および転移性肺癌の術前診断にてS状結腸切除および肺腫瘤生検を施行した。切除標本は45×45×40mmの1型腫瘍で免疫染色にてCK20 陰性、CK7 陽性、TTF-1(Thyroid transcription factor-1) 陽性で肺癌の大腸転移と診断した。肺癌の大腸転移による腸重積はまれであり文献的考察を加え報告する。

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下行結腸平滑筋肉腫による腸重積の1例

JCHO徳山中央病院外科

藤田 雄司 他

 症例は69歳、男性。約3ヶ月前より左腹部腫瘤に気付いていた。2日前よりわずかな痛みを伴う手拳大の左腹部腫瘤を主訴に近医より消化器内科へ紹介受診。腹部CT検査にて下行結腸の巨大腫瘤が下行結腸内に順行性に重積していた。非観血的整復は困難と判断され外科紹介受診となった。受診時、痛みは軽微で腸閉塞も認めないため、入院の上待機的手術が可能と判断した。MRIなどの精査を追加した後、腸重積を併発した下行結腸腫瘍の診断のもと、リンパ節郭清を伴う結腸左半切除術を施行した。術中術後を含め重積解除は不可能であった。病理組織学的には免疫組織染色にて平滑筋肉腫と診断された。術後2年経過良好で再発の兆候は認めていない。

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腹腔鏡下に切除した腸回転異常症を伴うS状結腸・小腸重複癌の1例

富士市立中央病院外科

谷田部 沙織 他

 症例は60歳代の男性で,腹部膨満および食思不振を主訴に当科を受診した.精査により腸管の解剖学的異常を伴う大腸閉塞の診断に至り,内視鏡下に大腸ステントを留置した.S状結腸に全周性腫瘍を認め,組織検査にて高分化型腺癌の診断に至った. CT angiographyを施行したところ,下腸間膜動脈(inferior mesenteric artery ; 以下,IMA)が腹部大動脈の正中より分岐し通常とは左右対称性に走行していることが確認された.待機的に腹腔鏡下切除術を施行した.術中,回腸末端部にも腫瘍を認めたため,回盲部切除術も追加したところ,原発性小腸癌の病理診断であった.腸回転異常症に消化器癌が合併する報告は散見されるが,自験例はIMAが左右対称性の走行を呈し,下行結腸からS状結腸が右側腹腔に位置する解剖学的特徴を有するのみならず,同時性重複癌の症例であり,極めて稀なため報告した.

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腹会陰式直腸切断術後23年目に発症した特発性人工肛門皮膚瘻孔の1例

新潟臨港病院外科

峠  弘治 他

 症例は90歳の女性で,23年前に腹会陰式直腸切断術の手術歴があった.認知症と廃用症候群で他院入院中に不明熱と人工肛門パウチ漏れが続き,原因検索目的に当院を紹介受診した.人工肛門周囲に瘻孔を認めたほか,腹部 CT検査で人工肛門周囲皮下膿瘍と挙上腸管狭窄を認め,ドレナージシートン術を施行した.術後腸管造影検査で憩室は認めず,特発性人工肛門皮膚瘻孔と診断した.ブジーするも狭窄部は拡張せず,瘻孔が排泄口となり,頻回のパウチ漏れが起きた.単品系装具を瘻孔ごと覆い2‐3日おきに交換して人工肛門管理が向上し,術後第28病日に前医転院した.転院後,膿瘍腔が縮小し,チューブが外れたが,瘻孔は排泄口として機能しており経過観察した.術後10ヵ月経過し,トラブルなく生存している.日常生活動作の低い超高齢者で特発性人工肛門皮膚瘻孔に対し,ドレナージシートン術で人工肛門再造設を回避できた症例を経験したので報告する.

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破骨細胞様巨細胞を伴った肝血管肉腫の1例

東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座消化器外科学分野

水井 崇浩 他

 症例は64歳,男性.発熱,右上腹部痛を主訴に近医より紹介となった.血液検査で炎症反応の上昇とCTで肝後区域に50mm大の辺縁不整な低吸収域を認め,肝膿瘍疑いで緊急入院となった.入院翌日に経皮経肝ドレナージを施行したところ,膿汁は吸引されずに血液のみ吸引され,さらに針生検検体による組織診において悪性を疑う異型細胞を認めたことから血管由来の腫瘍の可能性も疑われた.入院後より抗生剤加療を継続するも発熱,炎症反応の改善を認めず,肝機能は徐々に悪化した.肝病変が悪性腫瘍であれば肝切除が唯一の治療法と考え,入院後22日目に肝後区域切除,胆嚢摘出術を施行したが,根治切除にはならなかった.術後発熱,腹痛は一時改善したものの,術後25日目に死亡した.病理組織診断は肝血管肉腫であり,多核の破骨細胞様巨細胞の混在を認めた.肝血管肉腫に破骨細胞様巨細胞を認めた報告は本例が最初であり,文献的考察を加えて報告する.

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腹腔鏡下肝切除を行ったALPPS術後の直腸癌肝転移再発の1例

倉敷中央病院外科

嵯峨 謙一 他

 症例は65歳の男性で,2年5ヶ月前に直腸癌及び同時性肝転移に対して低位前方切除,D3リンパ節郭清を行った.病理結果はSS,N1,M1a(HEP)であった.CapeOX療法による化学療法を開始した.治療効果PRであり,1年7ヶ月前にALPPS手術1期目(S3部分切除,門脈右枝結紮,肝切離),2期目(右葉摘出)を施行した.術後補助化学療法(UFT/LV)施行中の1年2ヶ月前に肝転移再発3箇所を認め,Capecitabine+Bmab投与を開始した.新規病変認めず,手足症候群のため化学療法継続困難のため,腹腔鏡下肝部分切除3箇所を行った.
 現在,最終手術から11ヶ月無再発生存中である.
 大腸癌肝転移は,術後再発も起こりうるため,再肝切除の可能性に留意が必要である.本症例では,ALPPS術後に腹腔鏡下肝切除を行いえており,文献的考察を加え報告する.

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肝内胆管破裂による胆汁性腹膜炎の1例

京都府立医科大学附属北部医療センター外科

満田 雅人 他

 症例は81歳男性,激しい腹痛を主訴に来院した.腹部CTで総胆管結石と左横隔膜下に液体貯留を認めたため急性腹膜炎の診断で同日臨時手術を施行された.腹腔内には大量の胆汁と腹水が貯留しており,肝外側区域に小孔と胆汁漏出を認めた.肝内胆管破裂と診断し,肝外側区域部分切除と胆嚢摘出術と総胆管切開結石切石術を施行し,総胆管にT tubeを留置した.術後経過良好で術後第25病日に退院となった.胆汁性腹膜炎の原因である胆道穿孔の中でも特発性のものは稀であり,さらに肝内胆管破裂によるものはほとんど報告例がない.しかし胆汁性腹膜炎を疑う急性腹症の鑑別診断の一つとして考慮する必要があると考える.

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胆嚢仮性動脈瘤の1例

白十字病院外科

佐々木 貴英 他

 症例は83歳、女性で、呼吸苦、胸腹部痛を主訴に救急車で来院された。理学所見、血液生化学検査、腹部CT、MRIより当初胆嚢癌に伴う出血を疑った。出血は自然止血し、高齢、認知症であることを考え、経過観察の方針とした。
 その後も胸腹部痛、黒色便を繰り返したため、再度腹部CTを行うと、胆道出血を疑う所見と、胆嚢壁に動脈瘤を認めた。胆嚢出血は動脈瘤によるものと判断した。胆嚢動脈瘤に対して動脈塞栓術を行った上で、腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った。病理組織学的には胆嚢は黄色肉芽腫性胆嚢炎で、胆嚢動脈瘤は仮性動脈瘤と診断された。
 今回、胆嚢動脈瘤に対して動脈塞栓術を先行して行う事で、腹腔鏡下胆嚢摘出術を安全に行う事ができた。

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胃壁筋層内へ穿破した膵粘液性嚢胞腫瘍の1例

自治医科大学消化器・一般外科

太田  学 他

 症例は44歳、女性。主訴は心窩部不快感。CTで膵尾部に径約70mmの嚢胞性病変、それと連続し胃壁内に小嚢胞の集簇を認めた。経過観察中に突然の腹痛で当院へ救急搬送され、CTで胃側の嚢胞が長径95mmと増大しており入院した。超音波内視鏡検査で胃側の嚢胞は胃壁筋層内に存在し、膵尾部の嚢胞との交通を認めた。穿刺内容液は血性で、内容液中のamylase(AMY)、CEAが高値であった。膵粘液性嚢胞腫瘍(MCN)が胃壁内へ穿破したことによる胃壁筋層内出血と診断し待機的に手術を行った。手術は膵体尾部脾合併切除を行い、胃側の嚢胞は胃壁の筋層を温存し嚢胞壁のみ合併切除した。膵嚢胞内容液のAMY、CEAは高値で胃壁側の嚢胞液と類似していた。病理組織診断ではMCNの診断であった。MCNが膵管と交通を持ち、胃壁筋層内へ穿破し出血を生じたと考えられる1例を経験したため、文献的考察も含めて報告する。

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浸潤性膵管癌術後に発症した異時性膵腺扁平上皮癌の1例

済生会横浜市東部病院外科

古田土 高志 他

 症例は74歳女性. 膵癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した. 組織診断はinvasive ductal carcinomaであった. 術後1年6ヶ月の定期検査にてCA19-9の上昇を認めた. 腹部造影CTにて膵体部に約30 mm大の低吸収腫瘤を認め, 残膵癌の診断で残膵切除術を実施した. 術後組織診断はadenosquamous carcinoma, pT4N1M0 pStageⅢであり, ①初発癌と残膵癌の組織診断が異なる, ②膵断端が陰性である2点より異時性膵癌と判断した. 残膵癌組織型がadenosquamous carcinomaの症例は本邦2例目の報告となる. 浸潤性膵管癌の予後は不良とされるが, 近年は異時性膵癌に対する残膵切除の報告が認められる.膵癌術後の経過では, 再発以外に異時性膵癌の可能性も念頭に置くことは非常に重要となる.

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頻尿を契機に発見された骨盤内solitary fibrous tumorの1例

東京逓信病院一般・消化器外科

辻本 裕紀 他

 症例は61歳男性.頻尿を主訴に近医を受診し,骨盤内腫瘤を指摘され,当科を紹介された.腹部CTでは,膀胱や前立腺を右側に圧排する巨大腫瘤を認めた.画像所見で周囲への浸潤はなく一括切除が可能と判断し,生検は行わず手術の方針とした.標本は最大径26cm, 2030g.割面は主としてゼリー状で隔壁を有する嚢胞性,充実性の腫瘍部分とが混在していた.組織学的には“patternless pattern”を認めた.免疫染色では,CD34・Bcl-2・CD99が陽性で,近年有用性の高さが報告されているSTAT6にも陽性を示し,孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:以下SFT)と診断された.頻尿という特異性の低い症状を契機に発見されたSFTは,1983〜2016年での報告例(会議録を除く)7例のみで,貴重な症例と考え,若干の文献的考察を加えて報告する.

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骨盤内平滑筋腫(最大径25.5cm)の1例

福山医療センター外科

安井 雄一 他

 骨盤腔を占拠する巨大な腫瘍は,発生部位・質的診断に難渋することが多い.今回我々は,骨盤部後腹膜から発生した巨大平滑筋腫の1例を経験したので報告する.症例は26歳の女性.嘔気・下痢を主訴に近医を受診した.腹部エコーで骨盤内腫瘤を認め,当院を紹介受診した.各種画像検査では骨盤腔内を占拠する巨大腫瘤として描出され,周囲への浸潤所見は認めなかった.また頭側と尾側で所見が異なっていた.画像所見から,術前は侵襲性血管粘液腫を疑い,骨盤内腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は他臓器への浸潤を認めず,骨盤底部の後腹膜にのみ付着していた.同部位を切離し,長径25.5cmの巨大腫瘍を摘出した.病理組織学検査と免疫組織学的検査の結果,粘液変性を伴う平滑筋腫と診断した.骨盤部後腹膜を原発とした平滑筋腫は稀であり,文献報告を加えて検討した.

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鼠径ヘルニアLichtenstein法術後に生じた腹直筋鞘血腫の1例

平塚市民病院外科

中西  亮 他

 症例は73歳男性.胸腹部大動脈瘤に対しステントグラフト内挿術を施行され,心房細動の既往があるためワルファリンカリウムを内服していた.右鼠径部の膨隆を主訴に受診し,右鼡径ヘルニアと診断され,術前ヘパリン化の後,Lichtenstein法を行った.術後1日目よりヘパリン投与を再開したところ,2日目に創部頭側皮下の腫脹が著明になり,ヘモグロビン及び血小板の減少を認めた.造影CT検査で腹直筋鞘血腫(rectus sheath hematoma)と造影剤の漏出所見を認めた.保存的加療は困難と判断し,血管造影検査を行ったところ,右深腸骨回旋動脈からの出血所見を認め,NBCA-Lipiodolによる動脈塞栓術を行った.その後抗凝固薬を再開したが,再出血を認めず現在術後8か月,経過観察中である.鼡径ヘルニア術後の腹直筋鞘血腫は稀な病態ではあるが,IVRにて止血し得た極めて稀な症例を経験したので報告する.

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腹腔内操作を併用した単孔式TEP法で修復した巨大鼠径ヘルニアの1例

近畿中央病院外科

若杉 正樹 他

 症例は 83歳 男性. 小児期からの右鼠径部膨隆を主訴に当科を受診した.来院時,右鼠径部から大腿にかけて小児頭大の膨隆を認めた.左鼠径部にも手拳大の膨隆を認めた.腹部CT検査では,右鼠径ヘルニア内容は回腸・右側結腸・大網であり,左鼠径ヘルニア内容は膀胱だった.非還納性巨大鼠径ヘルニアと診断し,腹腔内操作を併用した単孔式TEP (totally extraperitoneal repair)で両側鼠径ヘルニアを修復した.術後早期に漿液腫を認めたが,保存的に軽快した.術後9ヶ月でヘルニア再発を認めず,良好に経過している.腹腔内操作を併用した単孔式TEP法は ①整容性に優れており,②安全にヘルニア内容還納・ヘルニア嚢処理が可能であり,③広範な腹膜外腔剥離により,十分な大きさのメッシュ留置が可能であるため,非還納性巨大鼠径ヘルニアに対する術式選択の1つになりえる.

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術後管理に難渋した巨大鼠径ヘルニアの1例

姫路赤十字病院外科

半澤 俊哉 他

 症例は63歳,男性.6年前から左鼠径部膨隆を放置し,ヘルニア増大による排尿困難にて受診した.来院時身体所見では,左ヘルニア嚢の膨隆は立位で膝に達し,用手還納は困難であった.CTでは小腸および上行結腸,下行からS状結腸の脱出を認めた.腹腔鏡アプローチで手術を開始したが,嵌入腸管とヘルニア嚢との癒着により還納困難で前方アプローチへ移行した.還納後,気腹下に腹腔内を観察し,腸管の血流障害がないことを確認し手術終了した.術後は腹部コンパートメント症候群(Abdomen Compartment Syndrome,以下ACS)を考慮し,気管挿管のままICU管理を行った.ACSによる呼吸循環不全のため4日間の人工呼吸器管理を要し,抜管後も非侵襲的陽圧換気を離脱できなかった.術後11日目にICUを退室し24日目に退院した.腹腔鏡併用でも回避し得なかった巨大鼠径ヘルニア術後のACSを経験し,術式や周術期管理について周到な計画を要すると考えた.

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鼠径リンパ節原発Merkel細胞癌と考えられた神経内分泌癌の1例

高木病院外科

廣橋 喜美 他

 症例は57歳男性。右鼠径部の腫瘤を主訴に来院。CTにて34×26mmの腫瘤が認められ鼠径リンパ節腫大と診断しリンパ節摘出生検を行った。病理結果は神経内分泌癌の所見であった。しかし内視鏡検査やPET-CTにて全身検索を行ったが原発巣と思われる病変は認められなかった。免疫組織染色では神経内分泌癌のマーカーとされるCD56、シナプトフィジン、クロモグラニン Aはすべて陽性でCK7陰性、CK20陽性でMerkel細胞癌が最も疑われた。追加治療として鼠径部に放射線照射を行い経過観察中である。Merkel細胞癌は希な皮膚腫瘍で白人男性に多くその予後は不良であるとされる。本例は当初原発不明の神経内分泌癌の鼠径リンパ節転移として全身検索を行った。しかし免疫組織染色の結果からはリンパ節原発のMerkel細胞癌が最も考えられる所見であった。

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