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日本臨床外科学会雑誌 第79巻1号 掲載予定論文 和文抄録


綜説

分子標的薬導入により変わる甲状腺癌治療の現状と課題

日本医科大学大学院医学研究科内分泌外科学分野

杉谷  巌

 根治切除不能な甲状腺癌を適応とするmulti-kinase inhibitor(MKI)が登場し、国際第3相試験によってprogression-free survival(PFS)の有意な延長が示された。しかし、現時点でも甲状腺癌に対する第一選択の治療法が外科的根治切除であることに変わりはない。分化癌に対しては放射性ヨウ素(radioactive iodine: RAI)不応であることがMKI使用の前提となるため、高リスク癌には早い段階で甲状腺全摘・RAI治療が行われる必要がある。これらの標準治療に抵抗性でかつ進行が明らかな症例に対してのみMKIが考慮され、術前・術後補助療法としての適応はない。特有の有害事象に対してチーム医療下での管理により、治療を長く継続することがPFS延長につながる。重大な有害事象として創傷治癒遅延や頸動脈などからの生命にかかわる大出血事例が報告されている。

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原著

急性虫垂炎の季節性変動

岩手県立中央病院消化器外科

荒井 智大 他

 急性虫垂炎の発症については季節性変化を報告した論文がみられ,特に高気圧時の化膿性疾患の増加を指摘した報告もある.2012年1月1日から2014年12月31日までの3年間に,当院で手術を施行した急性虫垂炎450例について,診療録をもとに後方視的に発症時期を調べその季節性変動を検討した.対象の平均年齢は38.3歳で,男女比は1.5:1であった.手術症例は7-9月が11-12月に比べ有意に多かった(p<0.05).気候要因としては,気温が高いほど発症が多い傾向があるが,気圧には先行研究で示されたような化膿性疾患の増加との関連性は認められなかった.急性虫垂炎の病因は複合的でありさらなる検証が必要だが,この季節性変動の情報が急性虫垂炎の発症機序解明に僅かながらも寄与する可能性があると考えられた.

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3D-MRCPによる胆嚢管-総胆管の立体的解剖解析

同愛記念病院外科

東園 和哉 他

 腹腔鏡下胆嚢摘出術において胆嚢管の解剖は重要である。我々は3D—MRCPを用いて胆嚢管の立体構造を解析した。当院で2005年4月〜2016年3月にMRCPを撮影した患者のうち、胆嚢管が総胆管から分岐していた454例を対象とした。解析の結果、水平断面では胆嚢管の総胆管への前方からの合流は認めなかった。また、胆嚢管は、総胆管上流では右方から、下部では左方から合流することが多かった。胆嚢管が総胆管と交差する場合、胆嚢管は総胆管の背側を走行していた。このような胆嚢管の走行は、胎生期において、胆管の上部は肝に固定されたままに十二指腸が右回転することにより生じると推察された。

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臨床経験

残膵癌の診断における膵胃吻合の利点および残膵全摘出術の意義

国家公務員共済組合連合会虎の門病院消化器外科

菅原 俊喬 他

 目的:残膵癌における膵胃吻合の利点と残膵全摘術の意義を検討する。方法:1998年1月から2016年3月まで、浸潤性膵管癌(PDA)及び膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)切除後の残膵癌に対して残膵全摘出術を施行した患者(各3例)を対象に、再発の診断方法・手術の安全性・予後を検討した。結果:初回手術は膵頭十二指腸切除+膵胃吻合再建5例、膵体尾脾切除1例であった。膵胃吻合例は全例、内視鏡下観察及び生検で再発の診断が可能であった。手術時間は192分、出血量は1250mlであった。重篤な周術期合併症はなかった。予後は、PDAでは1名が17ヶ月無再発生存中,もう1名は47ヶ月再発生存中、残り1名は9ヶ月で原病死した。一方、IPMCでは1名が133ヶ月無再発生存中、他2名はそれぞれ44,49ヶ月で原病死した。結語:膵胃吻合再建は吻合部の観察や生検を行うことが可能であり、残膵全摘術は安全で有用の可能性がある。

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症例

救命困難であった盲腸癌穿通によるClostridium perfringens 敗血症の1例

愛知厚生連江南厚生病院外科

野々垣 彰 他

 症例は66歳,女性.数日前からの右下腹部痛を主訴に近医から紹介となった.バイタルサインは安定しており,右下腹部に圧痛を認めた.血液検査で炎症反応は上昇し,造影CT検査で上行結腸の壁は肥厚し,肝表面からダグラス窩にかけて腹水を認めた.盲腸腫瘍後腹膜穿通を疑い,抗生剤による治療を開始した.翌日,血圧低下と意識障害が出現した.輸液で血圧は上昇したが,来院時の血液培養検査からClostridium perfringensが検出された.急性期DICスコアは5点であり,盲腸腫瘍後腹膜穿通による敗血症と診断し,回盲部切除術,腹腔洗浄ドレナージ術を行った.術後,ICUで集中治療を開始したが,術後2日目に循環不全で死亡した.腫瘍はpStageⅡの盲腸癌であった.Clostridium perfringens感染症について,特徴や救命出来なかった原因を中心に,文献的考察を踏まえて報告する.

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食道憩室が併存した甲状腺癌の2例

大阪市立大学大学院腫瘍外科

飯盛  望 他

 症例1は67歳女性.PET検査にて甲状腺右葉に集積を認め紹介となった.超音波検査にて甲状腺右葉上極近くおよび右葉背側にそれぞれ腫瘤像を認め,細胞診を施行したところ前者は乳頭癌疑いとの診断であった.後者はリンパ節転移を疑い,手術を施行した.術中所見にて甲状腺背側の腫瘤は食道との連続性を認め,食道憩室と診断した.症例2は55歳男性.CT検査にて甲状腺左葉に腫瘤認め,超音波検査にて同腫瘤およびその背側に接する腫瘤像を指摘された.細胞診にて前者は乳頭癌疑いであり,手術を施行した.術中に甲状腺左葉の腫瘍の背側に位置する食道の拡張を認め,食道憩室と診断した.いずれの症例も,甲状腺切除に食道憩室切除を併施した.甲状腺癌に食道憩室を合併した報告は会議録以外にない.超音波検査で甲状腺背面に境界明瞭な内部に粒状の高エコーを伴う腫瘤影がある場合には,食道憩室の可能性を考えてCT画像との対比などを行う必要がある.

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チフス菌による乳腺膿瘍の1例

石川県立中央病院乳腺内分泌外科

金子 真美 他

 本邦初となるチフス菌(Salmonella enterica serovar Typhi;S. Typhi) による乳腺膿瘍の1例を報告する.腸チフスは本邦では年間20-70例が発症し,大半がアジアもしくはアフリカへの渡航歴がある.0.5%に乳腺膿瘍を合併するといわれ非常に稀である.症例は28歳,健常女性.右乳房腫瘤,疼痛を主訴に受診した.造影CT・US検査で明らかな膿瘍形成は認めず,乳腺炎と診断した.インドから帰国後1ヶ月間発熱と解熱を繰り返していたが,皮疹や消化器症状は受診時は認めなかった.第三世代セフェム1週間投与にて症状は軽快したが,硬結が残存していたため穿刺したところ,膿汁が得られた.培養でS.Typhiが分離された. CVA/AMPC 2週間投与で乳房硬結も改善した.ファージ型はUVS2, ナジリクス酸およびシプロフロキサシン耐性株であった.

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局所麻酔下で手術したDown症患者における乳房血腫を呈する乳癌の1例

一宮西病院外科

近藤  優 他

 症例は37歳女性.生下時よりダウン症と診断されている.1年半前に母が右乳房のしこりに気づき,増大したため当院を受診した.触診では右CD領域に10cm大の硬い腫瘤を触知,エコーで同部位に円形で境界明瞭,内部不均一な低エコー腫瘤を認めた.穿刺すると内容液は血性で細胞診,組織診ともに悪性所見は認めず経過観察とした.しかし3か月後にしこりが増大,悪性腫瘍の可能性が否定できず診断的治療として手術を行った.肥満,巨舌,環軸椎亜脱臼のため全身麻酔は意識下挿管が必要と麻酔科からの意見があり,ダウン症で理解力が乏しいため全身麻酔は選択せず局所麻酔下で腫瘤摘出術を施行した.病理結果は粘液癌でサブタイプはLuminal A,残存乳房に対する放射線療法は不可能と判断し現在はホルモン療法のみを施行している.今回乳房血腫を呈した乳癌に対し局所麻酔下で切除したダウン症患者の1例を経験したので報告する.

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腹部杙創による外傷性下大静脈損傷の1例

豊橋市民病院一般外科

柴田 淳平 他

 杙創は先端が鈍である異物が,強力な外力により生体内に突き刺さった状態を指す.杙創に伴う大血管損傷の報告例は少ない.今回,腹部杙創による下大静脈を含む多臓器損傷を来した1例を経験した.症例は16歳,男性.バレーボール練習中,剥がれた床木材が右季肋部より刺さり受傷した.CTにて下大静脈貫通,穿通性肝損傷,穿通性十二指腸損傷,膵損傷,椎間板損傷を疑い,受傷後3時間で緊急手術を施行した.下大静脈内に完全に侵入していた異物は下大静脈をクランプ後に除去,肝貫通部は抜去し止血,十二指腸穿通部は異物抜去と壁縫合閉鎖,そしてドレナージを行った.術後経過は良好であった.下大静脈の穿通性外傷は致死率が31-58%と予後不良とされる.本症例では,複数科の連携のもと迅速的確な手術を行い良好な転帰を得ることができた.

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一期的ステントグラフト手術を施行した胸部・腹部大動脈瘤の1例

市立大村市民病院心臓血管外科

古野 哲慎 他

 症例は78歳男性。遠位弓部の胸部大動脈瘤と腎動脈下の腹部大動脈瘤と右外腸骨動脈閉塞を認めた。アクセスルートとして右総腸骨動脈に吻合した10mm人工血管を使用し、胸部および腹部のステントグラフト内挿術を施行した。合併症は認めず、術後11日目に退院となった。手術症例の高齢化が進み、腹部大動脈瘤と胸部大動脈瘤の合併や閉塞性動脈硬化症と大動脈瘤の合併は今後増加してくるものと思われる。今回、右外腸骨動脈閉塞を伴った、胸部および腹部大動脈瘤に対して、人工血管をアクセスルートとして一期的に手術を施行し、良好な結果を得たので報告する。

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交通外傷後遅発性に発症し救命した外傷性腸間膜仮性動脈瘤破裂の1例

済生会長崎病院外科

小山 正三朗 他

 症例は38歳男性.自動車運転中に誤って路上のポールに衝突した.事故直後は症状がなかったが夕より腹痛が増悪したため,同日夜に当院救急外来を受診した.来院時CTで外傷性S状結腸腸間膜損傷の診断で当科入院となった.保存的加療にて一時改善傾向であったが,入院17日目深夜に突然大量下血しショックバイタルに至った.CTでS状結腸腸間膜仮性動脈瘤破裂の診断で即日緊急手術となった.術中所見で下腸間膜動脈分枝に仮性動脈瘤形成と破裂を認め,またS状結腸背側に穿孔部位を認めた. 瘤を結紮止血後,ハルトマン手術を施行した.臨床所見と併せると,腸間膜仮性動脈瘤破裂の出血が穿孔部を通って腸管内に流入し下血をきたしたと考える.術後は重篤な合併症なく,第33病日に自宅退院となった.遅発性外傷性腸間膜仮性動脈瘤は非常に稀で,腹部鈍的外傷で保存的に経過をみる際は遅発性合併症について十分に念頭において診療に臨むべきと考える.

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分節性動脈中膜融解症の4例

札幌東徳洲会病院外科

深堀  晋 他

 我々は平成26年1月~平成29年5月までに、病理診断によって4例の分節性動脈中膜融解症(segmental arterial mediolysis:以下SAM)を経験した。年齢は60歳から88歳までですべて男性であった。全例に緊急手術を行い、摘出検体より中膜の空胞変性など特徴的な所見からSAMと診断した。3例は生存し、1例のみ術後第36病日に肝梗塞によって死亡したが、死因とSAMとの関連性は不明であった。今回、自験例4例と国内で渉猟しえたSAMの報告107例とを合わせ、疫学や発症部位などの特徴を報告する。

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術前超音波ガイド下生検が術式縮小に有用であった膵癌肺転移の1例

苫小牧市立病院外科

木井 修平 他

 術前超音波ガイド下生検が術式縮小に有用であった膵癌肺転移の1例を経験したので報告する.
 症例は66歳の男性で膵癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行した.術後19ヶ月のPET-CTで右肺S9に小結節を指摘され,術後26ヶ月で超音波ガイド下経皮的肺生検を施行した.生検結果が膵癌肺転移の診断であったため,右肺下葉部分切除術を施行した.術後の免疫組織学的検査でも膵癌肺転移の診断であった.現在,再手術後20ヶ月が経過しているが無再発生存中である.

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触診で発見された外側胸筋神経が由来と思われる胸壁神経鞘腫の1例

東京慈恵会医科大学葛飾医療センター外科

松平 秀樹 他

 一般に胸部に発生する神経鞘腫の大部分は後縦隔に認められ、胸壁原発の神経鞘腫の発生頻度は低い。また、四肢や頭頸部領域には触知される神経鞘腫の報告が散見されるが、体幹、特に胸壁に触知される神経鞘腫の報告は極めて少ない。症例は62歳、男性。 狭心症で通院中に内科医が触診で 左前胸部に4cm大の可動性が乏しい皮下腫瘤を指摘し精査目的に当科へ依頼となった。MRI検査でのT2強調画像にて内部性状は中心部が低信号、周辺部が高信号の同心円状の信号を呈しており、神経鞘腫と診断し切除した。術中所見では外側胸筋神経が発生母地と考えられた。体表から触知される胸壁神経鞘腫は稀な病態であり、さらに外側胸筋神経から発生した神経鞘腫の報告例は検索しえなかった。われわれが経験した1切除例を若干の文献的考察を加え報告する。

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根治的化学放射線療法後3度の再発と2次原発癌をきたした食道癌の1例

名古屋大学大学院医学系研究科腫瘍外科

酒徳 弥生 他

 症例は56歳女性. 2008年7月胸部中部食道, cT4 N1 M0 : cStageⅢCに対し根治的化学放射線療法及びFP療法を2コース行いCRが得られた. 半年後に#104L、#16a2interに転移を認めた. FP療法を5コース, 5-FU+CDGP療法を3コース施行し, #16a2interはCRとなったが, #104LはSDであった. 2010年7月左頚部リンパ節郭清を行った. 2011年2月#105, #3に転移を認め, 5-FU+CDGP療法を5コース行いCRとなった. 2012年2月再度#105の腫大と切歯列23㎝にT1b病変を認めた. R0切除が見込めると判断し, 2012年3月右開胸開腹食道亜全摘術, 3領域リンパ節郭清, 後縦隔経路胃管再建を行った. 以後化学療法は行わず, 初回治療から7年3ヵ月無再発生存中である.

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術後7年目に胆管転移再発した胃癌の1例

JCHO大阪病院外科

高市 翔平 他

 症例は66歳の男性.2009年胃癌に対し,幽門側胃切除術,D2郭清,BillothⅠ法再建術を施行した.病理組織学的診断はpor2>sig,T3,ly2,v0,N0,M0,fStageII,R0であった.無再発で経過していたが,2016年6月造影CTで左肝内胆管拡張,左肝内胆管に軟部影,門脈左枝の途絶を指摘された.左肝管原発の胆管癌,門脈左枝浸潤疑いと診断し,肝拡大左葉尾状葉切除術,門脈合併切除再建,肝外胆管切除術を施行した.病理組織診断では中分化型管状腺癌であり,肝門部領域胆管の繊維筋層が肥厚し,同部位に印環細胞様の形態を示すものを含む異型細胞の増殖を認めた.免疫組織染色で腫瘍細胞がCK7(+),CK20(+)と既往の胃癌と同じパターンを呈し,胃癌の胆管転移と診断した,胃癌の胆管転移は稀であり,胃癌手術から7年以上経過し,診断に苦慮した胃癌術後胆管転移症例を経験したので,今回報告する.

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急性膵炎に輸入脚症候群を合併した胃全摘術後の十二指腸憩室結石の1例

市立加西病院外科

横山 邦雄 他

 症例は66歳女性.55歳時に胃癌にて胃全摘術を施行されている.
 夕食後に数回嘔吐あり,心窩部痛が出現したため当院救急外来を受診した.
 血液生化学検査にて炎症反応,肝胆道系酵素,膵酵素の上昇を認め,腹部CTにて十二指腸憩室内に45mm大の高輝度の腫瘤影,総胆管の拡張,膵周囲脂肪織濃度の軽度上昇を認めた.十二指腸憩室結石による急性膵炎・胆管炎と判断し入院した.保存的加療も第2病日の腹部CTにて結石が落石,十二指腸水平脚にて嵌頓し,輸入脚症候群を呈した.また膵周囲の脂肪織濃度上昇も両側Gerota筋膜まで広がり,重症膵炎と診断した.緊急小腸内視鏡下に腸石を砕石した.以降重症膵炎に対し集学的治療を行ったが,多臓器不全にて第14病日に死亡した.
 十二指腸憩室結石から急性膵炎・胆管炎を来たし,経過中に憩室結石が落石して輸入脚症候群を呈した例の報告はなく,若干の文献的考察を加えて報告する.

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上腸間膜動脈の三次元再構築が診断に有用であった小腸軸捻の1例

マツダ株式会社マツダ病院外科

林谷 康生 他

 症例は81 歳,男性.2年前に胃癌に対して胃全摘,Roux-en-Y法再建の既往あり.夕食後に激しい上腹部痛が出現し,自制不可となり救急搬送された.腹部造影CT検査で小腸壁の肥厚と腸間膜の脂肪濃度上昇を認め,三次元再構築で上腸間膜動脈の捻転が描出され小腸軸捻転症と診断して緊急手術を施行した.開腹すると乳糜腹水が貯留し,挙上空腸の背側を小腸が左から右へ嵌入したPetersen’s herniaのため小腸軸捻転となっていたが,整復すると壊死はなくPetersen’s defectを閉鎖して手術を終了,術後7 日目に軽快退院した.本症例はCTの断層像のみでは診断困難であったが,上腸間膜動脈の三次元再構築が診断に有用で必要に応じて追加する必要がある.

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10年間の病悩期間の末に穿孔をきたした非特異性多発性小腸潰瘍症の1例

岡山済生会総合病院外科

西山 岳芳 他

 症例は37歳男性。17年前に貧血、低蛋白血症を指摘された。10年前より腹痛を自覚しており、徐々に増悪していた。某年6月、かつてない腹痛を自覚して救急要請。腹部CT検査にてfree airを認め、当科で緊急手術を施行。開腹すると、上部回腸が70cmにわたり狭窄と拡張を繰り返し、最も拡張した腸管壁の一部が菲薄化して穿孔していた。多発狭窄部位を含めた小腸部分切除を施行した。切除標本所見では、境界が比較的鮮鋭で浅く平坦な潰瘍が近接多発しており、病理組織学的検査では潰瘍はいずれもUL−Ⅱまでにとどまる非特性の潰瘍であった。病歴、標本の特徴的な形態学的所見、また非特異的な病理所見などから、非特異性多発性小腸潰瘍症と診断された。本症は平成27年7月1日より難病法の施行の指定難病の一つである。今回、本症の長期経過において穿孔を来した稀な一例を経験したので、若干の文献的考察を踏まえて報告する。

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Enterocolic lymphocytic phlebitisの1例

一宮市立市民病院外科

中川 暢彦 他

 症例は74歳の男性,深夜に急激に生じた腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部膨満を認め,上腹部に腹膜刺激症状を認めた.腹部造影CT検査では,横行結腸に著明な浮腫性肥厚と周囲脂肪識の濃度上昇を認めた.NOMIによる腸壊死を疑い,緊急手術を施行した.術中所見では,肝彎曲部からの横行結腸および間膜に著明な浮腫と発赤を認めたが,壊死や穿孔の所見は認めなかった.肉眼的に正常な回腸末端から横行結腸中央部までの右半結腸切除術を施行した.病理組織学的検査では静脈を主体にリンパ球浸潤を認め,一部では静脈閉塞も認めた.動脈には炎症所見を認めず,Enterocolic lymphocytic phlebitis と診断した.術後経過は良好で術後第9病日に退院し,以降再発は認めていない.今回,稀なEnterocolic lymphocytic phlebitis を経験したので報告する.

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化学療法が奏効し1年8カ月生存した直腸癌播種性骨髄癌症の1例

市立池田病院消化器外科

森 総一郎 他

 症例は66歳男性。軟便を主訴に受診。大腸内視鏡検査で上部直腸から下部直腸にかけて直腸癌を認め、生検で低分化型腺癌と診断された。CTでは主腫瘍の他に大動脈周囲リンパ節の腫大を認めたため、PET-CTを施行したところ、多発骨転移を指摘された。StageⅣのためまず化学療法を予定したところ、初診から3週間で血小板の急減な低下、PT-INRおよびD-dimerの急激な上昇を認め、播種性血管内凝固(DIC)となった。直腸癌による播種性骨髄癌症と判断し、すぐにDICの治療とともにmFOLFOX6による化学療法を開始した。化学療法の導入により速やかにDICから離脱することができた。化学療法はその後4th lineまで施行し、化学療法開始後約1年8カ月で原病死した。
 本疾患は発症後早期での死亡の報告が多いが、本症例では速やかな治療により長期生存が得られたと考えられた。

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Bystanderによる心肺蘇生によって肝損傷・出血性ショックをきたした1例

名古屋第一赤十字病院一般消化器外科

太田 有香 他

 症例は43歳、男性で、バス停で突然倒れ、心肺停止状態であったためbystanderによる心肺蘇生が行われた。急性冠症候群による心肺停止を疑い、緊急冠動脈造影を施行したところ、左冠動脈前下行枝に90%狭窄を認め経皮的冠動脈形成術を行った。ICUへ帰室後、抗血栓療法を開始したところ、18時間後より血圧低下及び貧血の進行を認めた。CTで大量腹腔内出血を伴うⅢb型肝損傷を認めたが、腹部血管造影では出血血管を同定できなかったため、抗血栓療法を中止し輸血による保存的治療を行った。その後、循環動態は安定し、経過良好で20日後に退院した。3カ月の経過で、肝内の複数の血腫は限局、縮小化している。肝損傷の原因は胸骨圧迫と考えられ、抗血栓療法は肝損傷による腹腔内出血の増悪因子で、心肺蘇生の行われた患者では注意が必要である。

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先天性胆道拡張症に対する分流手術後に発症した膵頭部癌の1例

宮崎大学医学部外科学講座肝胆膵外科学分野

土持 有貴 他

 症例は47歳の女性.戸谷Ia型の先天性胆道拡張症・膵胆管合流異常に対し,18歳時に肝外胆管切除,肝管空腸吻合術を受けた.心窩部痛を主訴に近医を受診し,血液検査で膵酵素の上昇を指摘された.腹部CT検査で膵頭部に22 mm大の低吸収腫瘤を認め,上腸間膜静脈,十二指腸,挙上空腸への浸潤が疑われた.明らかな遠隔転移の所見はなく門脈合併切除を伴う亜全胃温存膵頭十二指腸切除術,Child変法再建術を行った.切除標本では膵頭部領域に高分化腺癌を認め,十二指腸浸潤・門脈浸潤を認めたがリンパ節転移はなくR0切除が達成された.病理組織学的に明らかな膵内胆管の遺残はなかった.膵・胆管合流異常に膵癌を合併することは胆道癌よりも頻度が少ないものの,通常型膵癌の発生頻度よりも高率とされている.本症例のように若年発症する事も念頭に,膵・胆管合流異常では膵悪性腫瘍も念頭においたフォローアップが必要と考えられた.

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横行結腸癌術後に発症し保存的治療で脾臓が消失した脾梗塞の1例

呉共済病院外科

坂部 龍太郎 他

 横行結腸癌術後に発症し保存的治療で脾臓が消失した脾梗塞の1例を報告する.患者は57歳の女性で,発熱と腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.単純CTで横行結腸に不整な壁肥厚を認め,横行結腸,下行結腸,左腎に囲まれた後腹膜に被包化されたガスと液体貯留を認めた.横行結腸癌の穿通による腸間膜内膿瘍を疑い,緊急手術を施行した.結腸脾彎曲部が胃底部の背側まで達していたため,胃脾間膜を切離して結腸の授動を行い,結腸左半切除術を施行した.術後9日目の造影CTで脾臓内部に低濃度の液体貯留と少量のガスを認め,脾梗塞と診断した.抗菌薬投与とドレナージによる保存的治療で軽快し,術後67日目に退院した.術後6カ月目の造影CTで脾臓は消失しており,完全に壊死して吸収されたと考えられた.脾梗塞に対する保存的治療は,全身状態が安定しドレナージが効いている場合には有用であることが示唆された.

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経十二指腸的ドレナージで治癒した潰瘍穿孔による後腹膜膿瘍の1例

沖縄協同病院外科

加藤 航司 他

 十二指腸潰瘍穿孔による後腹膜膿瘍は比較的稀な疾患で,治療に難渋する.今回経十二指腸的膿瘍ドレナージで手術を回避しえた本疾患例を経験した.症例は64歳の男性で,右側腹部痛を主訴に受診した.エコー,CTで右後腹膜腔に70mm大の膿瘍を認め,上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行脚後壁に潰瘍と十二指腸内への膿汁流出を認めた.十二指腸潰瘍穿孔による後腹膜膿瘍と診断し保存的治療を開始したが第7病日に炎症の波及による右水腎をきたしたため内視鏡的経鼻胆道ドレナージチューブ(以下,ENBDT)を用いた内視鏡的膿瘍ドレナージ(以下,本法)を施行した.自他覚的所見の改善が得られ,膿瘍腔の縮小,水腎の改善を確認し,第16病日にENBDTを抜去,第21病日に退院した.退院後10カ月の現在も再燃なく経過している.本法は低侵襲に効果的なドレナージが得られ,有用である.

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坐骨切痕を通じ骨盤内外へ進展した孤立性線維性腫瘍の1例

九州大学医学研究院臨床・腫瘍外科

岩本 直也 他

 症例は41歳女性.数年前より間欠的な右下肢麻痺と疼痛を認めていた.検診で骨盤内腫瘤を指摘され当院紹介となった.腹部造影CT検査では坐骨切痕を通じて骨盤内外へ進展する腫瘍、いわゆるsciatic notch tumorを認め、生検で孤発性線維性腫瘍(SFT)の診断となった.後腹膜および後方アプローチを併用した腫瘍切除術を施行した.術後は右下肢麻痺の改善を認め、退院時には歩行可能となった.術後3年6ヵ月経過し、明らかな再発は認めていない.骨盤内SFTは稀な疾患であり、骨盤内外に進展するSFTの本邦報告例は認めていない.骨盤内外に進展する軟部腫瘍に対する外科治療では、解剖学的熟知と高度な手術手技を要し、多方向からのアプローチを用いて十分な視野確保の下に、安全かつ腫瘍学的に十分な腫瘍切除を行う必要がある.今回我々は後腹膜および後方アプローチにより完全切除が可能であった骨盤内外へ進展するSFTの1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する.

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TEP後に再手術を必要とした滑脱型の外鼠径ヘルニアの1例

九段坂病院外科

冨井 知春 他

 症例は66歳,男性.右鼠径部の膨隆を自覚し,当院を受診した.術前画像診断で両側鼠経ヘルニアと診断し,TEP(totally extra peritoneal approach)法を施行した.しかし,術翌日に右鼠径部膨隆の訴えがあり,CTにて右鼠径部に脂肪濃度の腫瘤を認めた.改めて術前腹臥位CTを見返すと,右鼠経ヘルニアは膀胱周囲の腹膜前脂肪が滑脱した滑脱型の外鼠経ヘルニアであった.それにも関わらず通常のTEPと同様に内鼠径輪の高さでヘルニア嚢を結紮したため,右鼠径部にヘルニアの先進部となった腹膜前脂肪が遺残したことが疑われた.術後2日目に前方アプローチで鼠径管内に遺残した脂肪組織を摘出した.脂肪組織は滑脱した腹膜前脂肪とヘルニア嚢断端で構成されていた.滑脱型の外鼠経ヘルニアに対しTEPを施行するも,滑脱していた腹膜前脂肪が残存し,前方アプローチによる再手術で摘出した症例を報告する.

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右下腹部痛を呈した化膿性恥骨結合炎の1例

大垣市民病院外科

寺﨑 史浩 他

 症例は16歳男性で,バレーボール選手である.右下腹部痛で受診し,CT検査でRetzius腔に膿瘍形成あり,ドレナージを施行,細菌培養でメチシリン感受性黄色ブドウ球菌を検出した.5日目に施行した造影MRI検査で恥骨と膿瘍に連続性を認め,化膿性恥骨結合炎と診断し,セフェム系抗菌薬投与を施行した.恥骨結合炎は勤続的な酷使により恥骨間円板に炎症を生じる疾患で,整形外科領域では一般的な炎症性疾患である.一方で,化膿性恥骨結合炎(septic arthritis of the pubic symphysis,以下SAPS)は若年スポーツ選手に多い疾患で,腹痛や鼠径部痛と膿瘍形成を認めるため,急性虫垂炎や原因不明の腹膜炎と診断されることが多い.診断困難であることから,治療しても再発や重篤化する報告が散見される.重篤化する際はdebridementなど侵襲的な治療が必要となるため,早期診断が重要である.

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