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日本臨床外科学会雑誌 第78巻12号 掲載予定論文 和文抄録


原著

膵頭十二指腸切除術後ドレーン排液中の細菌汚染が膵瘻に与える影響

市立豊中病院外科

横田 祐貴 他

 【目的】膵頭十二指腸切除術(PD)術後早期における腹腔内ドレーン排液の監視培養の結果が術後膵瘻(POPF)に与える影響を評価した.【方法】PD施行例93例を対象とした.術後腹腔内ドレーン排液の培養検査にて細菌を認めた場合を陽性と定義し,その培養検査結果とPOPF grade B/C発症との関連性を評価した.またドレーン排液培養検査の結果を規定する因子についても検討した.【結果】ドレーン排液の培養検査陽性例は22例(23.7%)であった.POPF grade B/Cは21例(22.6%)に認められ,その発症率は培養検査陽性例において陰性例よりも有意に高かった.多変量解析にてドレーン排液培養検査陽性化に関与する因子を解析すると,「胆管ドレナージチューブ内瘻化」が唯一の独立規定因子であった.【結論】術後ドレーン排液の培養検査結果はPOPF grade B/C発症の予測因子となる可能性が示された.

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臨床経験

皮膚浸潤腋窩副乳癌切除後における上肢可動性確保のための広背筋皮弁再建

南町田病院外科

矢野 正雄 他

 78歳、女性。他院にて皮膚浸潤腋窩副乳癌と診断されて手術目的にて紹介され、右腋窩局所広範囲切除、腋窩リンパ節郭清を行った。皮膚欠損が広範囲で術後の瘢痕拘縮が予測されたため、広背筋皮弁を用いて腋窩再建を施行し、上肢の可動性を確保した。術後6年半経過し瘢痕拘縮や局所再発、遠隔転移を認めていない。局所広範囲切除、腋窩リンパ節郭清、広背筋皮弁再建は腋窩副乳癌の有用な術式であると考えられた。

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肺炎随伴性胸水および急性膿胸に対する胸腔内線維素溶解療法

山口県立総合医療センター外科

金田 好和 他

 胸腔内が被包化した肺炎随伴性胸水および膿胸はドレナージが困難である.当科でウロキナーゼによる胸腔内線維素溶解療法を施行した肺炎随伴性胸水および急性膿胸24例を対象とし,その方法と結果を検討し報告する.男性21例,女性3例で,平均年齢は70歳であった.自覚症状から当院来院までの平均期間は9日,ACCP category 3が19例,4が5例であった.ドレナージは透視下またはCTガイド下に施行され,平均ドレナージ回数1.7回,平均ウロキナーゼ投与回数は4.5回で合併症を認めなかった.平均ドレーン留置期間は11日で,2例に腔の残存を認めたが全例軽快し,手術が施行された症例はなかった.胸水培養にて原因菌は15例(63%)に同定された.胸腔内が被包化した肺炎随伴性胸水および膿胸に対する胸腔内線維素溶解療法は複数回のドレナージが必要な場合があるが,外科手術への移行を減少させる可能性がある.

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症例

乳腺顆粒細胞腫の1例

山口県立総合医療センター外科

藤井 雅和 他

 症例は31歳の女性。左乳房B区に約2cmの硬結を触知し、左乳癌の疑いで当科紹介となった。マンモグラフィで左乳房内側下方に局所的非対称陰影を伴う構築の乱れを認め、カテゴリー4と診断した。超音波検査では辺縁不整で境界不明瞭な低エコー腫瘤像を認めた。MRI検査ではTime Intensity Curveは漸増型であったが、腫瘤の辺縁にスピキュラを認め画像所見上は悪性腫瘍を疑った。針生検で乳腺顆粒細胞腫と診断した。しかし画像上は悪性所見を呈していたため、診断と治療を兼ねて左乳腺腫瘍摘出術を施行した。病理組織所見でも悪性所見は認めず、良性の乳腺顆粒細胞腫と診断した。本疾患は理学所見および画像所見が乳癌に極めて類似し、乳癌との鑑別が困難な場合もあるため、本症例を疑う場合はまず腫瘍摘出術を行い、完全に摘出した腫瘍の永久標本の結果もって診断を行うべきであると考えられた。

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First line bevacizumab+paclitaxel療法で脳転移が消失した乳癌の1例

大阪警察病院乳腺・内分泌外科

下 登志朗 他

 転移性脳腫瘍の治療は症状改善や進行抑制を目的とし手術,放射線,薬物療法による集学的治療が考慮される.放射線療法後の乳癌脳転移にBevacizumab+Paclitaxel(BP)療法を施行し有効性が認められた報告は多いが,放射線や手術など前治療のない脳転移にfirst line BP療法の有効性を示した報告は少なく,特にHER2陰性乳癌脳転移での報告は少ない.我々は治療開始時から無症候性の脳転移とlife-threateningな有症状の臓器転移をもつホルモン受容体陽性HER2陰性進行乳癌症例にBP療法をfirst lineとして導入した.臓器転移,脳転移ともに有効で無増悪生存期間は15か月であった.脳転移を有するHER2陰性乳癌で,抗癌剤を使用すべき病態の場合,BP療法を先行させることにより放射線療法の施行タイミングを遅らせ,放射線療法による有害事象を先延ばしにできる可能性がある.

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PTEN過誤腫症候群に発症した若年(30歳台)乳癌の2例

北海道大学乳腺外科

奈良 美也子 他

 PTEN過誤腫症候群の女性に乳癌を発症した2症例を経験した。症例1は33歳、女性。両側乳癌Stage Ⅳ、ER陽性HER2陰性の診断で治療が行われたが奏効せず、当院がん遺伝子診断外来を受診。網羅的遺伝子解析でPTEN遺伝子の生殖細胞変異(p.R130*)を認めた。PTEN遺伝子下流のシグナル伝達因子であるmTORを阻害するエベロリムスと内分泌療法による治療を開始したが、急速に病状が悪化し死亡された。症例2は35歳、女性。右乳房腫瘤を自覚し当科を受診。精査で右乳癌と子宮体癌と診断された。若年での重複癌と特徴的な既往歴、家族歴からCowden症候群が疑われた。遺伝子検査の結果、PTEN遺伝子の生殖細胞変異(c.723dupT)を認めた。右乳癌(ER陽性HER2陰性)に対して手術と化学療法を施行したが術後8ヶ月で骨転移が出現した。内分泌療法が開始され、現在も加療中である。

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縦隔腫瘍と鑑別が困難だった奇静脈瘤の1例

板橋中央総合病院呼吸器外科

永山 加奈 他

 症例は59歳, 男性. 胸部CTにて縦隔の異常陰影を指摘され, 当科紹介された. 造影CTでは気管分岐部に約2㎝の嚢胞性病変を認め, 気管支原生嚢胞や食道嚢胞などの縦隔腫瘍を疑った. 胸部MRIを予定したが, 閉所恐怖症にて施行できず, 精査目的に手術の方針となった. 病変は奇静脈と連続性を有し, 同血管壁が瘤状を示したことから奇静脈瘤と診断し, 末梢側と中枢側をそれぞれ結紮して瘤を切除した. 術後経過は良好であり, 第2病日にドレーンを抜去し, 第5病日に退院とした. 奇静脈瘤は稀な病変であり, 自覚症状に乏しいため, 偶発的に発見されることが多い. 今回術前検査では縦隔腫瘍との鑑別が困難だった奇静脈瘤の1手術例を経験したため報告する.

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術前に大動脈弁狭窄症に対してTAVIを行った消化器悪性腫瘍の2例

香川県立中央病院心臓血管外科

塚本 千晶 他

 大動脈弁狭窄症(Aortic valve Stenosis;AS)は非心臓手術における危険因子であり,ガイドラインではASの治療を先行することを推奨している.ASに対する低侵襲な治療法として経カテーテル的大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve implantation;TAVI)が近年登場した.ASを合併した大腸癌に対してTAVI施行後に開腹術を行った症例を経験したので報告する.(症例1) 79歳女性.ASと上行結腸癌の診断にて,TAVIを施行後14日目に開腹右半結腸切除術を施行し,14日後に独歩転院となった.(症例2) 89歳女性.ASと直腸癌による小腸イレウスの診断にて,TAVIを施行後11日目に回盲部切除術,人工肛門造設術を施行し,20日後に自宅退院となった.(結語) TAVIはその低侵襲性から悪性腫瘍合併症例に対する短期間の治療戦略として期待できる.

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保存的治療後慢性期に左室瘤をきたしたOozing型左室破裂の1例

都立墨東病院胸部心臓血管外科

三島 秀樹 他

 症例は67歳男性。心窩部痛を自覚後に意識消失とショックを呈して、救急搬送された。来院時の血液生化学検査、心電図所見では下壁心筋梗塞の所見であった。経胸壁心エコーで全周性の心嚢液貯留があり、急性心筋梗塞とoozing型心破裂に伴う心タンポナーデと診断された。出血を危惧して冠動脈造影(CAG)はおこなわず、心タンポナーデに対する緊急ドレナージを施行した。持続的な出血はなく、厳重な血圧管理のもと保存的加療により急性期を脱した。その後CAGを行い責任病変の左回旋枝に対して第17病日に経皮的冠動脈形成術(PCI)を施行した。6か月後の心エコー、CAGにて左室後壁に心室瘤を認めた。急速な瘤化と僧帽弁閉鎖不全に伴う心不全の進行があり、左室形成術および僧帽弁乳頭筋形成術を行った。Oozing型破裂症例においてもドレナージ後の保存的加療にて急性期を乗り切れる場合があるが、慢性期心室瘤の発生に対し厳重な経過観察が必要である。

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3年以上生存中の多発転移を伴う胃形質細胞腫の1例

千葉労災病院消化器外科

今村 南海子 他

 症例は61歳女性,食事のつかえ感,労作時息切れにて当院受診.CTでは胃全体に壁肥厚が認められ,小彎側に不均一に造影される50mm大の巨大腫瘍を認めた.上部消化管内視鏡にて胃噴門部小彎側後壁に出血性潰瘍を伴う15mm大の粘膜下腫瘍を認め,生検にて形質細胞腫の診断.腫瘍は膵体部,脾門部と一塊となっており,胃全摘・膵体尾部切除を施行.腹膜播種,遠隔転移を認めなかったが,術中腹水細胞診,胸水細胞診にて腫瘍細胞陽性であった.病理学的組織検査では腫瘍は胃漿膜側へ露出を認めたが,切離断端は陰性であった.膵臓,脾臓の実質への浸潤は認めなかった.
 術後は血液内科に転科.術後1年目,術後2年7か月目に再発を認めたが,化学療法,自己末梢血幹細胞移植にて画像上病変は消失し,現在は外来で経過観察中である.
 病変が全身に及んだ消化管形質細胞腫の治療報告はまれであり,自験例に文献学的考察を加えて報告する.

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胃原発胎児消化管上皮類似癌の2例

順天堂大学医学部附属順天堂医院消化器・低侵襲外科

夕部 由規謙 他

 非常に稀な胃胎児消化管上皮類似癌を2例経験した.症例1は80歳代,男性.前庭部前壁に55mmの2型病変を認め,胃癌の診断にて腹腔鏡下幽門側胃切除術を施行した.病理組織検査で淡明な細胞質を有する高~中分化腺癌,一部低分化腺癌を認めた.免疫染色でAFP陰性, Glypican3陰性,SALL4陽性であり胎児消化管上皮類似癌と診断した.補助化学療法中の術後6ヶ月で肝転移,大動脈周囲リンパ節転移をきたした.
 症例2は90歳代,男性.噴門部小弯後壁に19mmの1型病変を認め,胃癌の診断にて腹腔鏡下噴門側胃切除術を施行した.病理組織検査では細胞質が淡明な中分化腺癌と一部乳頭腺癌の所見であった. 免疫染色でAFP陰性,glypican3陽性,SALL4陽性で胎児消化管上皮類似癌と診断した.術後9ヶ月で肝転移を認めた.胃胎児消化管上皮類似癌は非常に稀で予後不良な疾患である.文献的考察を加え報告する.

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粘膜下腫瘍様の形態を呈した胃粘膜癌(m癌)の1例

千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学

米本 昇平 他

 粘膜下腫瘍様の形態を呈した胃粘膜癌(m癌)を経験したので報告する.症例は64歳女性.検診で胃体上部大彎前壁に粘膜下腫瘍様の病変を指摘され,1年3ヵ月経過観察の後に胃癌として診断され当科紹介となった.精査の結果,胃癌cT2N0M0と診断し,胃全摘術(D2郭清),脾臓摘出術を施行した.病理結果はWell differentiated adenocarcinoma(tub1),Type0-Ⅰ,22×15×15mm,pT1a,ly0,v0,pN0,pStageⅠAであった.粘膜筋板が頂部から憩室様に内反し,そこに腫瘍が陥入するように存在しており,粘膜筋板の連続性は保たれ粘膜癌の診断となった.術後4か月無再発経過中である.粘膜下腫瘍様の形態を呈する胃癌の中でもこのような形態を呈することは非常に稀であり,術前深達度診断は困難である.本邦での粘膜下腫瘍様胃癌210例を集計し,文献的考察を加え報告する.

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十二指腸原発扁平上皮癌の1例

大阪警察病院消化器外科

森 総一郎 他

 十二指腸原発扁平上皮癌に対し、膵頭十二指腸切除術を施行した一例を経験した。
 症例は72歳男性。心窩部痛を主訴に近医を受診した。上部消化管内視鏡検査の結果、十二指腸に高度狭窄を指摘され精査加療目的に当院紹介となった。当院での十二指腸狭窄部の生検の結果、Group5の診断であった。CT上は狭窄に一致して十二指腸に全周性に壁肥厚を認め、PET-CTでも同部位にSUVmax8.17のFDG集積を認めた。その他に遠隔転移を認めなかったことから膵頭十二指腸切除術を施行した。病理組織診断結果は扁平上皮癌であり、その他に病変を認めないことから十二指腸原発扁平上皮癌であると判断した。
 十二指腸原発扁平上皮癌は非常に症例報告が少なく、明確な治療方針が存在しないのが現状である。現時点では外科的切除が唯一の根治的治療法と考えられ、今後さらなる症例の蓄積による治療成績の向上が期待される。

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腹腔鏡による腸管内観察で出血点が同定できた活動性小腸出血の1例

富士市立中央病院外科

市原 恒平 他

 症例は82歳, 男性. 内科入院中に大量の下血を認め, 造影CT検査にて活動性の小腸出血と診断され当科紹介となった. 持続的な出血を認めるため保存的治療は困難と判断し緊急手術の方針とした. まず腹腔鏡にて腹腔内を観察し, 出血源として疑わしい小腸に直接ポートを挿入, ここから腹腔鏡を用いて腸管内を観察することで出血点を同定後に小腸部分切除術を施行, 止血が得られた.
 小腸出血に対する手術は出血部位の同定に難渋することが多く, これまで様々な同定法が選択されている. 今回腹腔鏡手術で使用中の腹腔鏡を使用することで人員・装置も最小限に抑えられ, 小腸の出血部位を同定し得た1例を経験し, 有用な方法と考えられたため若干の文献的考察を加えて報告する.

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空腸憩室内の真性腸石による穿孔性腹膜炎の1例

JCHO中京病院外科

寺境 宏介 他

 症例は62歳男性.上腹部痛と発熱を主訴に受診し,腹部CT検査で空腸憩室および周囲の炎症所見を認め入院となった.入院後2日経過しても解熱せず,また検体検査でも炎症反応の増悪を認めたため再度CT検査を行った.空腸憩室周囲にfree airを認め,空腸憩室穿孔と診断して緊急手術を行った.開腹するとトライツ靭帯より10cm肛門側の空腸憩室が壊死・穿孔していた.また同部位よりわずか5cm肛門側にもう一つ憩室を認めたため,2か所の憩室を含めた小腸部分切除を行った.摘出検体を確認すると憩室内に2cm大の腸石を認め,これが穿孔の原因であった.腸石の成分分析から98%がデオキシコール酸で形成された真性胆汁酸腸石であった.術後経過は良好であり術後12日目に自宅退院した.空腸憩室内の腸石が原因で穿孔をきたした、きわめてまれな1例を経験したため文献的考察を加えて報告する.

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Meckel憩室に関連したabdominal cocoonの1例

岡崎市民病院外科

中村 俊介 他

 症例は9歳, 男児.持続する腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来紹介受診した.腹部CT検査にて小腸の拡張と臍部直下に盲端状の腸管を認め,Meckel憩室に関連した絞扼性イレウスを疑い緊急手術施行した.開腹すると,臍部に固着したMeckel憩室を認め,Meckel憩室から小腸間膜にわたる袋状の膜の中に口側の腸管が包み込まれて,イレウスの原因となっていた.本症例はMeckel憩室に伴うイレウスとして極めて稀な機序と考えられ,若干の考察を加え報告する.

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多発腸管穿孔をきたした外国人23歳女性の結核性腹膜炎の1例

中部ろうさい病院外科

水谷 哲之 他

 症例は23歳,フィリピン人女性.9ヵ月前にSLEと診断され,プレドニゾロン10mg内服中.来院日の3週間前より右下腹部痛が出現,腹痛は徐々に増強し,発熱,食思不振も出現したため当院を受診した.胸腹部CTでは両肺野に多発する小粒状影,浸潤影,および下腹部から骨盤内にかけて広範囲にfree airと液体貯留を認めた.腸結核,結核性腹膜炎による穿孔性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した.術中所見では大網,腸間膜,腸管に多数の白色結節を認め,回腸に4ヵ所,S状結腸に1ヵ所穿孔を認めた.穿孔部を縫合閉鎖し,洗浄,ドレナージを行った.病理組織検査にて大網結節に類上皮細胞性肉芽腫を認め,喀痰,腹水,大網の培養から結核菌が同定された.近年,日本において外国生まれの結核患者は増加しており,外国人の急性腹症の鑑別疾患として腸結核,結核性腹膜炎も念頭に置く必要があると考えられた.

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盲腸癌イレウス術後に呼吸不全をきたした筋強直性ジストロフィーの1例

名古屋市立大学医学研究科消化器外科学

安藤 菜奈子 他

 症例は50歳代女性.糖尿病,筋強直性ジストロフィーの既往があった.盲腸癌(腺腫内癌)によるイレウスのため,緊急で開腹盲腸部分切除術を施行した.術後鎮痛目的に麻薬の経静脈的持続投与を行った.術後18時間にCO2ナルコーシスを発症,心室細動が出現し,心肺蘇生の後再挿管し,以降呼吸器離脱困難な状態が続いた.さらに術後高血糖のため血糖コントロールを必要とした.第12病日に気管切開術を施行し,第33病日に胃婁を造設した.さらに呼吸リハビリ,嚥下訓練を施行し,第54病日に呼吸器から離脱.第110病日に転院した.筋強直性ジストロフィー患者で周術期管理上問題となる呼吸器合併症のうち,鎮静・鎮痛薬投与の関与が考えられる症例が呼吸器合併症の約50%あるといわれており,本症例も呼吸不全の原因であると思われた.今回我々は術後管理に難渋したが,治療が奏功し全身状態が改善し得た筋強直性ジストロフィー患者を経験した.

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虫垂欠損に合併した腸性嚢胞の1例

千葉労災病院消化器外科

鈴木  大 他

 非常に稀な、虫垂欠損に合併した回盲部腸性嚢胞の1例を経験したので報告する。症例は58歳女性、外傷や虫垂炎の既往はなかった。下腹部痛を契機に右下腹部の嚢胞性病変を指摘され、右卵巣嚢腫の診断で腹腔鏡下切除の予定となった。術中所見で病変は回腸末端付近の腸間膜に付着し、腸管との交通を認めない腫瘤として認められ、腫瘤の切除を行った。術中の観察で正常な虫垂は認められなかった。術後の病理学的検索で、腫瘤は腸管に類似した壁構造を有する嚢胞性病変で、腸性嚢胞と診断した。術後のScreeningを兼ねて行った画像診断で、虫垂は痕跡的にしか認められず、虫垂欠損を合併しているものと考えられた。これらの所見から、何らかの原因で根部が途絶した虫垂の先端が、嚢腫化した可能性があると推測された。

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術前診断し腹腔鏡下手術した下行結腸固定異常による左半結腸軸捻の1例

さいたま市民医療センター外科

清水 貴夫 他

 症例は26歳女性で,2年前にS状結腸軸捻の診断で下部消化管内視鏡的整復術を受けていた.急激な腹痛および腹部膨満を主訴に当科を受診した.腹部単純レントゲン検査で著明に拡張した結腸を認め,S状結腸軸捻を疑い,緊急で下部消化管内視鏡を用いて整復した.後日,注腸造影検査を施行したところ,横行結腸から下行結腸にかけた腸管が著明に拡張していたが,S状結腸の拡張は認めなかった.横行結腸・下行結腸の軸捻転の診断で待機的に腹腔鏡手術を施行した.術中所見では横行結腸の過長と,下行結腸の固定異常を認め,横行結腸中央部から下行結腸まで約55cm切除し機能的端々吻合をした.
 若年者の腸軸捻では腸回転異常症に起因するものが多く盲腸・回腸の報告がほとんどである.今回我々は腸回転異常のない固定異常による左半結腸軸捻の1例を経験したので報告する.

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術後4年目に多発遠隔転移再発をきたした早期大腸癌(T1b)の1例

尾道総合病院外科

別木 智昭 他

 症例は73歳、女性、早期大腸癌の内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)を施行した.組織学的に、筋版が不明瞭であったが、病変表層からの浸潤距離が3000μmであったため、腹腔鏡下大腸切除術を追加で行った.術後4年目の健診で胸部異常陰影を指摘され、当院を紹介受診された.血液生化学検査上、CEA、CA19-9が高値を示し、胸腹部造影CT検査で右肺上葉に結節影、肝に多発する腫瘤像を認めた.PET(Positron Emission Tomography)検査では、CTで指摘された肺結節影、肝腫瘤にSUVの高度集積がみられた.肝腫瘤の生検病理結果では、大腸癌由来の転移性肝腫瘤の診断であった.術前化学療法後に、肝左葉切除術と肝部分切除術を行った.今回、我々は、早期大腸癌に対する追加切除術後4年目に、多臓器に遠隔転移再発をきたした1例を経験したので報告する.

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直腸に発生した炎症性偽腫瘍の1例

国立病院機構仙台医療センター外科

大島 有希子 他

 症例は72歳の男性. 便潜血陽性で近医を受診し, 下部消化管内視鏡検査を行ったところ, 肛門縁より15㎝に粘膜下腫瘍を認めた. PET/CTで同部位に集積を認め, GISTや悪性リンパ腫が疑われ当院へ紹介となった. 超音波内視鏡下穿刺吸引生検では確定診断に至らず, CT上, 腫瘍周囲の腫大リンパ節が散見され, 悪性腫瘍も否定できなかったため, 腹腔鏡補助下直腸高位前方切除, D3廓清を行った. 病理組織診断で高度の炎症細胞浸潤と間葉系細胞増生を認め, 炎症性偽腫瘍と診断された. 直腸に発症した炎症性偽腫瘍は稀であり, 文献的考察を加え報告する.

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腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術および腹直筋皮弁再建術を行った肛門管癌の1例

大阪医科大学一般消化器外科

川口  直 他

 広範囲の会陰部合併切除が必要な肛門周囲への浸潤を伴う肛門管癌や下部進行直腸癌術後の吻合部局所再発, 複雑性痔瘻を伴う下部進行直腸癌の3症例に対して, 腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術および腹直筋皮弁を用いた再建術を施行した. 3症例中1例に骨盤死腔の残存を認めたために, 大腿筋皮弁での充填術を追加したが, 骨盤死腔炎や腸管の骨盤死腔への落ち込みによる腸閉塞は予防された. 腹直筋皮弁による骨盤底の再建は骨盤死腔を減少させ, 同時に皮膚欠損の補填も行える有用な術式と考えられた. さらに, 腹腔鏡下での手術は骨盤内における皮弁の状態を観察することが可能であり, かつ腹壁破壊などの侵襲も少なく, 腹直筋皮弁を用いる際には有用であると考えられた.

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安全に胆嚢摘出術を施行した胆道走向異常の1例

横浜市立大学消化器・腫瘍外科

井上 英美 他

 症例は63歳男性、腹部超音波検査で増大傾向のある胆嚢ポリープを指摘された.術前のDIC-CT検査では、胆管肝後区域枝の一部が肝外で胆嚢管に合流していた.術中胆道造影を施行し、合流部よりも上流側で胆嚢管を切離し、胆嚢を摘出した.胆嚢摘出術における胆道損傷は重篤な合併症であり、特に胆嚢管や肝外胆管の走向異常が有る場合はそのリスクが高まるといわれている.術前、術中の適切な画像診断により、胆道損傷を回避し安全に胆嚢摘出術を施行した1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する.

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胆管内乳頭状腫瘍由来肝内胆管癌の1例

岡山済生会総合病院外科

大倉 友博 他

 症例は77歳女性.血液検査で胆道系酵素の上昇と腹部超音波検査で肝腫瘤性病変を指摘.腹部造影CTにて肝外側区から尾状葉にかけて造影効果を伴う充実成分と嚢胞の集簇部分の二つの成分からなる5cmの腫瘤性病変を認めた.胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)由来肝内胆管癌と診断し,拡大肝左葉,尾状葉切除術を施行した.組織学的には充実組織は粘液産生を伴う中分化型腺癌で,嚢胞部分はIPNBであった.免疫染色によりどちらの病変もpancreatobiliary typeが示され,IPNB由来肝内胆管癌と診断した.当院で手術を施行したIPNBの8症例に関する検討を加えて報告する.

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腎細胞癌術後12年目に発見された膵転移の1例

国立病院機構九州医療センター肝胆膵外科臨床研究センター

立石 昌樹 他

 症例は76歳,男性.2001年,腎細胞癌に対し左腎摘出術を施行.2007年,肝細胞癌に対しマイクロ波凝固壊死療法を施行.以後,外来にて経過観察中,2013年,腹部超音波検査にて膵体部に20mm大の腫瘍を認めた.CT・MRIにて腫瘍は動脈相早期から強く造影され,平衡相まで造影効果が遷延していた.臨床症状はなく,各種内分泌検査で異常所見は認めなかった.各種腫瘍マーカーはいずれも陰性であった.非機能性膵神経内分泌腫瘍もしくは,腎細胞癌の膵転移を疑い,脾臓合併膵体尾部切除術を施行.病理組織はclear cell carcinomaで,2001年の腎細胞癌の組織と類似していたため,腎細胞癌膵転移と診断.肝細胞癌の術後経過観察中に腎細胞癌術後12年目に発見された膵転移の1例を経験した.経時的な腫瘍の変化を観察することができ,今後経過観察する上で貴重な所見を得たと考えられ,文献的考察を加え報告する.

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Schloffer腫瘍疑いで摘出後に明細胞癌と診断された1例

日本医科大学消化器外科

大野  崇 他

 症例は80歳女性.右下腹部腫瘤を主訴に来院した.18歳時に急性虫垂炎,汎発性腹膜炎に対し虫垂切除術と33歳時に同部位の腹壁瘢痕ヘルニア修復術の既往がある.以前から手術創皮下に硬結を自覚していたが,半年前より増大傾向を認め当科受診.腹部所見は,右下腹部切開創に3cm大の無痛性腫瘤を触知した.腹部CT検査では,創部皮下に腹膜と連続する腫瘤であり,Schloffer腫瘍を疑った.全身麻酔下で腫瘍摘出術を施行した.腫瘍より暗赤色の液体が少量漏出した.標本の病理所見は,異物や炎症性肉芽腫はなく,明瞭な細胞質を有する異形細胞の乳頭状増殖を認め明細胞癌と診断したが,組織学的に子宮内膜はみられなかった.経過良好で術後3日目に軽快退院した.過去に婦人科疾患の既往はなく,術後に婦人科悪性疾患を検索したが異常を認めなかった.本症例は,術後創部局所に存在した外性子宮内膜症が悪性転化した可能性があると思われた.

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大網に発生した悪性中皮腫の1例

市立東大阪医療センター消化器外科

上田 正射 他

 症例は67歳、女性。既往歴は37歳時に卵巣嚢腫で開腹手術を受けた。下腹部痛を主訴に当院受診した。腹部造影CTで大網の著明な肥厚を認め、特発性大網脂肪織炎と診断された。抗菌薬、ステロイドで改善せず、当科で診断的手術を行った。大網は腫瘍性に肥厚しており、術中迅速病理検査では悪性の診断であった。小腸間膜に多数の播種病変を認め、大網腫瘍の可及的な減量手術のみを行った。永久病理検査において、大網由来の上皮型悪性中皮腫と診断された。術後経過は良好であり第13病日に退院したが、急激に病状が悪化し手術から73日目に死亡した。中皮腫は漿膜腔を覆う中皮細胞由来の比較的稀な悪性腫瘍であり、胸膜、腹膜、心膜に発生する。腹膜原発は全中皮腫の10~30%とされ、その原発部位が同定されないことが多く、診断に難渋する。今回、我々は大網原発の悪性中皮腫の一例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

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腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術中に乳糜腹水で発見された腸間膜脂肪織炎の1例

札幌北楡病院外科

服部 優宏 他

 患者は72歳,男性.右内鼠径ヘルニアの診断で腹腔鏡下ヘルニア修復術を開始したが,腹膜切開後に腸間膜に白色顆粒状変化を伴う乳糜腹水を認めた.手術時には乳糜腹水の原因が不明であったので,異物留置による感染を危惧し,ヘルニアメッシュの留置を中止し,腹腔鏡下にiliopubic tract repairを施行した.術中採取した腸間膜生検と腹水検査の結果から術後に腸間膜脂肪織炎と診断した.腸間膜脂肪織炎は非特異的な腸間膜の炎症で,病理学的に脂肪変性やマクロファージの浸潤を認める.術前の血液・画像検査では腹水や炎症の所見がなく診断できなかった.手術後は脂肪織炎の悪化はなく退院した.腹腔鏡下手術中,無症状の同疾患を偶発的に認めた場合の対応を検討していく必要があると考えられた.

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単孔式後腹膜鏡下に切除した後腹膜神経鞘腫の1例

遠州病院外科

臼井 弘明 他

 症例は57歳男性.6年前に健診で尿潜血を指摘され,両側多発腎結石と診断された.腎結石の治療精査目的で行われたCT検査で腹部大動脈の左側に14mmの後腹膜腫瘤が偶然発見された.神経原性腫瘤が疑われたため経過観察していたが,初発見時から6年後24mmに増大したため,手術目的で外科に紹介となった.術前精査の為に行ったMRI検査でも神経鞘腫の可能性が高いと診断された.手術は右半側臥位とし,左側腹部3㎝の皮膚切開から単孔式後腹膜鏡下に手術を行った.術中視野は良好で特に問題となる出血や誤認識は無かった.近年は後腹膜腫瘤に対して腹腔鏡や後腹膜鏡による手術報告が増加しているが,単孔式後腹膜鏡による報告は多くない.若干の文献的考察を含め後腹膜腫瘍に対する単孔式後腹膜鏡の有効性を検討する.

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腹腔鏡下に摘出した腹腔神経叢神経鞘腫の1例

国家公務員共済組合連合会大手前病院外科

佐々木 優 他

 症例は42歳,男性.上部消化管出血にて当院救急搬送となり,上部消化管内視鏡検査にて胃癌と診断され手術目的に当科紹介となった.その際,CT検査にて腹腔動脈幹左側に最大径45mm大の境界明瞭な充実性腫瘤を認めた.MRI検査ではT2強調像で被膜構造を有する高信号,拡散強調像では均一な軽度高信号を示すことから,後腹膜神経原性腫瘍や後腹膜リンパ管腫などが疑われた.しかし,胃癌関連,あるいはその他の悪性疾患の可能性も否定しえず,胃癌に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術と同時に,腹腔鏡下後腹膜腫瘤摘出術を施行した.術中所見では同腫瘤は腹腔動脈幹周囲の神経叢と索状物で連続しており,同神経叢由来の腫瘍と考えられた.病理検査では神経鞘腫との診断であった.腹腔動脈幹周囲の腹腔神経叢に発生した神経鞘腫の報告は,検索しえた限り本邦では自験例を含め6例と稀であり,また,自験例は腹腔鏡下に摘出された初めての症例であった.

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鼠径部interparietal herniaの1例

国家公務員共済組合連合会呉共済病院外科

山口 拓朗 他

 Interparietal herniaはヘルニア嚢が腹壁の様々な筋層・筋膜間へ進展するヘルニアで、鼠径部に発生するものは鼠径ヘルニアの1亜型と考えられている。今回われわれは、鼠径部interparietal herniaに対しPlug法でヘルニア根治術を施行した1例を経験した。症例は75歳、女性。腹部CT検査で偶然右下腹部に腹壁ヘルニアを指摘され、当科紹介となった。腹部CT検査所見よりSpigelian herniaを疑い、Plug法によるヘルニア根治術を施行した。術中所見でヘルニア嚢は内鼠径輪より脱出し、鼠径管方向ではなく頭側の外腹斜筋と内腹斜筋の間へ進展していた。以上の所見より、interparietal herniaと診断した。本疾患に対して、前方到達法はヘルニア嚢の進展を直視下に観察可能であり、有用な術式と考えられた。

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TAPP法による腹腔鏡手術を施行したSpigelianヘルニアの3例

公立陶生病院外科

杉山 史剛 他

 症例1は47歳女性.主訴は右下腹部膨隆.腹部CTにて右腹直筋外縁に腹壁の欠損と脂肪組織の脱出を認めSpigelianヘルニアと診断し,TAPP法による腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.症例2は71歳女性.主訴は右下腹部膨隆.腹部CTにて右腹直筋の外側に腹壁の欠損と腸管の脱出を認めた.Spigelianヘルニアと診断しTAPP法による腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.症例3は64歳女性.主訴は右下腹部膨隆.腹部CTにて右腹直筋外側に腹壁の欠損と腸管の脱出を認めSpigelianヘルニアと診断しTAPP法による腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した.いずれの症例も術後合併症は生じず,観察期間中の再発は認めていない.Spigelianヘルニアの腹腔鏡下手術の報告例は少なく,若干の文献的考察を加え報告する.

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