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日本臨床外科学会雑誌 第78巻9号 掲載予定論文 和文抄録


第78回総会会長講演

―事上麻錬の日々―肝臓外科における内視鏡手術の導入

東邦大学医学部外科低侵襲医療学

金子 弘真

 腹腔鏡下肝切除の導入と検証には紆余曲折はあったが、患者さんに対して低侵襲というメリットがあると信じてここまで前向きにオールを漕いできた。腹腔鏡下肝切除は1993年に我々が導入して以来、徐々に普及はされてはいたが、更なる推進をめざし2007年に肝臓内視鏡外科研究会が発足した。その後、腹腔鏡下肝切徐を導入する施設ならびに症例数は着実に増加した。そして、近年では腹腔鏡手術の利点である低侵襲だけを強調するのではなく、術中出血量減少、術後合併症の軽減や非劣性の長期予後の成績も報告されてきている。
 一方で肝胆膵領域の腹腔鏡手術への無理な適応拡大から不幸な結果を招いた事例が大きな社会問題となった。腹腔鏡下肝切除では通常の開腹手術に比べ、その手技の習得により多くの時間を要する。そのため症例ごとに外科医自身の手術技量を考慮して、慎重に適応を検討する必要がある。最近では多施設共同研究による大規模な傾向スコアマッチングも行われ、腹腔鏡下肝切除の優位性も報告され、より高いエビデンスの獲得へ向けての努力も続いている。2015年から肝臓内視鏡外科研究会では腹腔鏡下肝切除術の全症例の前向き登録を開始した。そして翌年には、この登録制度を条件に肝亜区域切除術、区域切除術、肝葉切除術の術式が保険収載されることになった。今後、これらの取り組みから患者への安全性を担保し、公正で幅広いデータを蓄積し、術式に対する理解を深めてもらうことで、腹腔鏡下肝切除の正しい評価と安心・安全な普及を望んでいる。

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原著

閉鎖孔ヘルニア嵌頓における腸管切除予測因子の探索

国保直営総合病院君津中央病院外科

吉田 充彦 他

 目的と方法:1999年6月から2016年5月に閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対して手術を施行した連続50例を対象に,患者背景,臨床徴候,術前検査項目を後ろ向きに収集し,腸管切除群・非切除群の2群に分けて解析し,腸管切除の予測因子を探索した.
 結果:22例に腸管切除を要し,嘔気・嘔吐,CRP値,発症から手術までの日数,術後在院日数において2群間で有意差を認めた.術前主要項目を用い腸管切除を目的変数として多変量解析を行うと,発症から手術までの日数が独立した予測因子として抽出された(P<0.0001).腸管切除に対する発症から手術までの日数についてROC解析を行うと,AUCが0.825であり、そのカットオフ値は発症2日である事が示された.
 結語:閉鎖孔ヘルニア嵌頓において発症からの経過日数は,腸管切除の予測因子であり,術式選択の参考になりうると考えられた.

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症例

十二指腸癌術後感染を契機に発症した後天性血友病Aの1例

国立病院機構金沢医療センター外科

牧田 直樹 他

 症例は75歳男性.十二指腸癌に対し亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.術後48日目に高度貧血を認め,内視鏡検査では食道粘膜の出血を認め止血処置を行った.術後53日目に右下腹部に手拳大の硬結を触知し,CT検査にて右後腹膜血腫を認めた.術後59日目には右足関節に皮下血腫,術後65日目には更なる貧血の進行,CT検査では左臀部から股関節周囲に新たな血腫を認めた.同日の凝固系検査ではAPTT (76.8 sec)の単独延長を認めたため,更なる追加検査にて第Ⅷ因子活性低下(4 %)と第Ⅷ因子インヒビター(8 BU/ml)の存在が確認され,後天性血友病Aと診断された.ステロイドと遺伝子組換え活性型凝固第Ⅶ因子製剤を投与することにより,抗第Ⅷ因子抗体は陰性化し術後146日目に退院となった.本疾患の診断の遅れは致死的状況を招くこともあり,原因不明の異常出血を認めた場合には,鑑別に挙げることが重要である.

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初回トラスツズマブ療法後の重症血小板減少症の1例

済生会中和病院外科

三宅 佳乃子 他

 症例は81歳,女性.左乳癌に対し術後補助療法としてトラスツズマブ初回投与を行った.口腔内出血と全身の紫斑を認め,投与2日後に緊急受診した.血液検査で血小板数0.1万/μlと著明な血小板減少を認め,緊急入院した.トラスツズマブによる重症薬剤性血小板減少症を疑い,血小板輸血,ステロイドパルス療法,およびステロイド経口投与を行った.トラスツズマブ投与後14日目に紫斑は消失したが, 16日目まで血小板数は1万台/μlを推移した.その後徐々に血小板数は回復し,トラスツズマブ投与後22日目に4.7万/μl,25日目に10.3万/μlとなり,26日目に退院した.トラスツズマブ投与後29日目に血小板数は正常値となった.その後トラスツズマブの再投与は行っていない.トラスツズマブによる薬剤性血小板減少症は稀である.今回,初回トラスツズマブ療法後に重症血小板減少症を認めた1例を経験したので報告する.

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男性異時性両側乳房Paget病の1例

名古屋掖済会病院外科

木村 桂子 他

 症例は53歳男性.左乳頭痛と湿疹を主訴に近医皮膚科を受診.軟膏を処方され,約半年経過をみるも軽快しないため皮膚科を再受診.生検を施行し,腺癌の診断で当院へ紹介受診.左胸筋温存乳房切除術を施行し,Paget病と診断された.リンパ節転移は陰性であったがER陽性で,術後補助内分泌療法として5年間タモキシフェンを内服し,その後も1年に1回の経過観察中に再発兆候を認めなかった.術後9年目の63歳時に,右乳頭に前回と同様の痛みと湿疹が生じ,来院.擦過細胞診にて悪性の診断がされ,右単純乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行.病理で再びPaget病と診断されER,PgRともに陽性,HER2も陽性であった.術後はタモキシフェンによる補助内分泌療法をしながら,現在無再発で経過観察中である.極めて稀な男性異時性両側乳房Paget病を経験したので報告する.

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乳腺原発骨肉腫の1例

ツカザキ病院外科

井上 健太郎 他

 症例は75歳、女性。25歳頃より左乳房腫瘤を自覚していたが放置。最近になって腫瘤が増大してきたため当科を受診した。初診時、左乳房A領域に直径約40mmの皮膚の硬化を伴った腫瘤を認めた。超音波検査・CT検査・MRI検査にて腫瘍は直径40mm大の内部に嚢胞成分を伴う腫瘍として描出され、針生検を施行したところ巨細胞腫の診断であったため、乳房部分切除術を行った。病理組織検査で、腫瘍組織は破骨細胞型巨細胞と核分裂像を有する紡錘状・類円形細胞で構成されており、骨外性骨肉腫と診断された。術後は補助療法として放射線治療を施行したが、術後7ヶ月目に胸膜播種再発しその2ヶ月後に永眠された。
 乳腺原発骨肉腫は乳腺悪性腫瘍の1%以下とされるまれな疾患であり、確立した治療法がなく通常の乳癌と比較し予後不良とされている。今回われわれは、乳腺原発骨肉腫の1切除例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

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乳腺low-grade adenosquamous carcinomaの1例

東京臨海病院外科

坂元 晴子 他

 乳腺のlow-grade adenosquamous carcinoma(LGASC)は稀な疾患である。化生癌に分類されるが予後は良好でありユニークな病態を示す。特徴的な臨床所見は乏しいため、診断は専ら病理組織学的診断によるが、細胞診や針生検では術前に確定診断を得るのが難しい場合も多い。今回摘出生検で診断がついたLGASCの1例を経験した。
 症例は65歳女性。左乳房の腫瘤を指摘された。細胞診、針生検ではいずれも良性の診断だったが理学所見と画像所見からは悪性を強く疑う所見であった。整合性を欠くため摘出生検を行い、LGASCの診断を得た。追加の治療はせず経過を観察中である。術前に細胞診や針生検で確定診断をつけることは質の高い手術のために望ましいが、各種所見の解離が生じている場合は摘出生検も考慮するほうが良い。治療は腫瘍の完全切除が原則で、補助療法の必要性や内容に関しては確立したものはない。

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HER2陽性進行乳癌治療中に乳腺原発小細胞癌が発生した1例

倉敷中央病院外科

山口 和盛 他

 症例は49歳女性.右乳房にしこりを自覚し当科受診.右CD領域に5×3cmの腫瘤を触知し,腋窩リンパ節腫大も認めた.針生検では浸潤性乳管癌 ER(-),PgR(-),Her2(3+),胸腹部造影CTで多発肝転移が認められた.cT2N1M1(HEP) Stage Ⅳの診断で,まずはTrastuzumab併用化学療法を開始した.肝転移は消失したが,乳腺腫瘍は増大傾向にあった.急速な増大による疼痛が出現したため,乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術を施行した.術後の病理組織学的検査ではHER2陽性浸潤性乳管癌の組織と共存してsmall cell carcinoma,ER(-),PgR(-),Her2(-)が認められた.術後には化学療法を継続したが,脳転移をきたし治療開始から2年9ヶ月で死去された.HER2陽性進行乳癌治療中に乳腺原発小細胞癌が発生した極めて稀な症例を経験したので文献的考察を加え報告する.

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肝転移切除13年後に再び肝転移をきたした乳癌の1例

長野市民病院乳腺外科・呼吸器外科

竹腰 大也 他

 症例は47歳女性. 右乳癌(T1cN0)の診断で右乳房部分切除術(Bp+Ax)を受けた. 病理組織学的所見は, 硬癌, f , φ21mm, ly1, v0, pN0(0/22), ER(-), PgR(-)であった. 残存乳房への放射線照射後の遠隔転移再検索で肝S8に孤立性腫瘤が確認された.肝部分切除術を施行し乳癌肝転移であることが判明した. 術後Epirubicin・Cyclophosphamide併用療法を6クール施行し, 術後10年後の全身評価で遠隔転移が確認されず近医へ紹介した. 術後13年5月後に近医で多発肝腫瘤を指摘され超音波肝生検で乳癌肝転移巣の再発と診断した. 再発治療としてPaclitaxel(PTX)+ Bevacizumab(BEV)による化学療法を施行したところ, 腫瘍縮小効果が得られたため減量し, 再発治療1年6月後の全身評価でCRとなり現在治療を休薬中である.

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石灰化像を呈した卵巣癌乳房転移の1例

国立病院機構大阪南医療センター乳腺外科

碇  絢菜 他

 51歳女性。StageⅠcの卵巣癌(漿液性乳頭腺癌)に対して当院婦人科にて両側付属器摘出、大網切除、骨盤内リンパ節郭清ならびに腹腔内化学療法が施行された。術後19ヶ月で傍大動脈リンパ節再発を認め、化学療法により再発巣は縮小したが、右鎖骨上窩、腋窩、頸部リンパ節腫大が出現した。右腋窩リンパ節腫大の精査目的のマンモグラフィでは、淡く不明瞭な石灰化を区域性に認めた。診断確定のため、ステレオガイド下マンモトーム生検を他院に依頼したところ浸潤性微小乳管癌の診断であった。右乳房切除術、腋窩リンパ節郭清を施行し、最終病理検査では卵巣癌乳房内転移の診断であった。卵巣癌乳房転移は稀であり、さらに転移性乳腺腫瘍はマンモグラフィで石灰化をきたす報告は少ない。今回、再発卵巣癌の加療中に、乳房石灰化をきたし、乳房転移が判明した1例を経験したので、文献的考察を加え報告する。

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ステントグラフト内挿術と開腹手術を一期的に行った腸骨動脈瘤結腸瘻の2例

聖隷浜松病院大腸肛門科

田村 峻介 他

 腸骨動脈瘤-結腸瘻は稀な疾患であり,治療に難渋することが多い.今回,内腸骨動脈瘤-S状結腸穿破に対してステントグラフト内挿術施行後,開腹して腸管瘻処置により救命した2例を経験した.治療として有用であると考えられたため報告する.
 症例1:81歳,男性.5年前に腹部大動脈人工血管置換術を施行.下血,ショックを主訴に救急搬送となり,左内腸骨動脈瘤-S状結腸穿破と診断.人工血管左脚から左外腸骨動脈までステントグラフト内挿術を施行後,開腹し左半結腸切除,人工肛門造設術を行った.
 症例2:90歳,男性.下血を主訴に救急搬送となり,左内腸骨動脈瘤-S状結腸穿破と診断.腹部大動脈ステントグラフト内挿術を施行後,開腹してS状結腸瘻孔部閉鎖,動脈瘤切除を行った.いずれの症例も術後合併症なく退院した.

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急速に発育したダンベル型下大静脈原発平滑筋肉腫の1例

JCHO東京山手メディカルセンター消化器外科

伊地知 正賢 他

 63歳女性。人間ドックの腹部超音波検査で肝周囲の腫瘤を指摘され、精査目的に当院に紹介された。腹部CT検査で不均一に造影される10cm大の腫瘤が認められ、左腎静脈分岐部近くで下大静脈内に突出する像がみられた。その後腫瘤は急速に増大し、肝十二指腸間膜と下大静脈の間より左右にダンベル型に大きく発育した。下大静脈原発腫瘍と診断し手術を施行した。腫瘍は膨張性発育を示し周囲との剥離は比較的容易であったが、下大静脈と肝十二指腸間膜との間を引き抜けず分割切除とした。下大静脈は前壁を約1/3周性に合併切除し、ウシ心膜パッチで再建した。病理組織学的に下大静脈壁の平滑筋より連続性に増生する腫瘍像を認め、下大静脈原発平滑筋肉腫と診断された。以後播種再発を繰り返し、3度の再手術を施行、初回手術から21ヵ月経過し外来にてfollow中である。下大静脈原発平滑筋肉腫は稀な疾患であり、文献的考察を加えて報告する。

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慢性膵炎による膵性胸水貯留後に発症した左横隔膜ヘルニアの1例

刈谷豊田総合病院消化器・一般外科

野々山 敬介 他

 症例は67歳,男性.アルコール性慢性膵炎で通院中に左膵性胸水を発症し,胸腔ドレナージ術を施行した.その13か月後に嘔吐,食思不振が出現し,当院を受診した.腹部CTで左胸腔内に胃の脱出を認め,左横隔膜ヘルニアと診断し,腹腔鏡下手術を施行した.ヘルニア門は食道裂孔左側に存在し,ヘルニア門を縫合閉鎖後にメッシュで補強し修復した.慢性膵炎に伴う膵性胸水はまれな合併症で,その後に横隔膜ヘルニアを認めた症例の報告はない.今回われわれは,膵性胸水貯留が原因と考えられた横隔膜ヘルニアに対して腹腔鏡下手術を施行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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低容量イマチニブで化学療法後切除した食道GIST(84mm)の1例

三井記念病院消化器外科

植原 裕雄 他

 症例は72歳男性。主訴は食後悪心、嚥下困難。上部消化管内視鏡で、切歯38cmより食道胃接合部に内腔を占拠するSMT様病変があり生検でc-kit陽性・CD34陽性で、gastro-intestinal stromal tumor(GIST)の診断となった。CTでは腫瘍の最大短径84mm、下大静脈や大動脈との接点が広範で、術後局所再発リスクを考慮し、イマチニブによる術前化学療法施行。Day2でgrade2の腎機能障害を認め、400mg/日から100mg/日に減量し投与継続した。投与日数 64日で最大短径50mmと十分な縮小を認め、左開胸開腹下部食道切除術を施行し、治癒切除となった。巨大食道GISTは術前化学療法の有効性を示す報告が散見される。本症例は投与開始2日目に認められた著明な腎障害のため、低容量とせざるを得なかった。本症例の治療経験を巨大食道GISTの治療に関する文献報告を交えつつ報告する。

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食道GISTを併発したc-KIT陽性食道原発悪性黒色腫の1例

福島県立医科大学臓器再生外科学講座

金田 晃尚 他

 症例は71歳の男性で,上部消化管内視鏡にて胸部下部食道粘膜に黒色の色素沈着と隆起性病変を認め,悪性黒色腫と診断された.他臓器に病変を認めないため食道原発悪性黒色腫と診断し,右開胸開腹食道亜全摘術を施行した.食道癌取扱い規約ではpT1aN0M0,Stage0であった.免疫組織染色にて腫瘍細胞はc-KIT陽性を示した.また,悪性黒色腫の進展範囲内に粘膜下腫瘍を認めgastrointestinal stromal tumor(以下,GIST)と診断した.術後は補助化学療法を行い2年3か月無再発生存中である.食道原発悪性黒色腫は稀であり,c-KIT陽性例の報告は少なく,食道GISTの合併例の報告はない.c-KIT陽性を示した食道原発悪性黒色腫に食道GISTを合併した極めて稀な1例を経験したので報告する.

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両側アプローチにて根治切除を施行した左肺浸潤を伴う下部食道癌の1例

岐阜県総合医療センター外科

深田 真宏 他

 症例は74歳、男性。主訴は経口摂取困難。食事のつかえを自覚し、上部消化管内視鏡検査にて下部食道に3型腫瘍を指摘された。当初治療拒否され民間療法を選択され、その後腫瘍の増大による通過障害をきたしたため、2度食道ステント留置術を施行した。腫瘍の左肺下葉浸潤による膿瘍形成を認め、この時点で手術治療の希望がなされた。肺浸潤を認めるものの遠隔転移を認めず、cT4a(左肺S10)cN3M0→cStageⅢで根治切除が可能と判断した。上中縦隔郭清を右側から胸腔鏡下に、下縦隔操作については左胸腹連続斜切開のもと施行した。医中誌にて「食道癌」、「肺浸潤」、「両側開胸」をkeywordに検索した結果症例報告はわずかであり、本症例のように胸腔鏡と開胸操作を併用した報告はみられなかった。局所進行下部食道癌において両側アプローチは侵襲性・根治性の両面から有用な術式であり臨床的に採用可能であると考えられた。

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傍気管嚢胞を伴う食道癌の3例

大阪市立大学院大学医学研究科消化器外科学

橋場 亮弥 他

 傍気管嚢胞(paratracheal air cyst)は,第1~第3胸椎レベルの気管右側に好発する,比較的まれな良性の嚢胞性疾患である.われわれは術前CTで傍気管嚢胞を診断した3例の食道癌手術症例を経験した.いずれの症例も嚢胞が右反回神経周囲リンパ節を郭清する過程で同定され,郭清手技に注意を要した.傍気管嚢胞は術前にその存在を認識していなければ,術中にリンパ節と判別することが難しい形状,サイズであり,認識なく術中に遭遇すれば嚢胞損傷の危険性が高いと考えられた.胸部食道癌手術において左右反回神経周囲リンパ節郭清は重要であり,食道癌の術前評価では傍気管嚢胞も念頭におくことは重要であると考えられた.

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Segmental arterial mediolysisによる右胃大網動脈瘤破裂の1例

大館市立総合病院外科

内田 知顕 他

 症例は86歳の女性で、突然の下腹部痛と嘔吐を主訴に当院へ救急搬送された。CT検査で腹水と胃大弯部の血管から腹腔内への造影剤の漏出を認めたため、腹腔内出血と診断し緊急手術を施行した。開腹したところ、胃の大弯側に沿った大網内に多量の血腫と、血腫近傍の右胃大網動脈領域の血管から活動性の出血を認め、右胃大網動脈瘤破裂と診断された。動脈瘤を含めた大網部分切除術を施行し術後経過は良好であった。病理組織学的所見で動脈瘤破裂の原因はsegmental arterial mediolysis (SAM) と考えられた。近年では解離性の内臓動脈瘤においてその多くにSAMが関与している可能性が報告されているが、SAMを原因とする胃大網動脈瘤の報告例はまだ少ない。SAMによる内臓動脈瘤破裂は急性腹症の鑑別疾患の一つとして念頭に置くべき疾患で,手術適応の速やかな判断とともに多発病変の検索も必要と思われる.

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Peutz-Jeghers症候群に併発した胃噴門部GISTの1例

東邦大学医療センター佐倉病院外科

北原 知晃 他

 症例は62歳男性で、Peutz-Jeghers症候群の既往がある。腹部造影CT検査にて胃噴門部後壁に30mm大の粘膜下腫瘍を指摘された。悪性を示唆する所見を認めず、基礎疾患を踏まえ経過観察となったが、6か月後に75mm大まで増大したため腹腔鏡補助下噴門側胃切除術を行った。腫瘍は術後病理組織学的所見よりGISTと診断され、modified-Fletcher分類で中リスクに相当した。術後16か月の時点で無再発経過中である。
 今回、腹腔鏡補助下に腫瘍を摘出することが可能であったが、積極的に悪性を示唆する所見がない胃粘膜下腫瘍においても、本症例のように再建法に制限のある基礎疾患をもつ場合には、初期の段階で胃部分切除といった、より低侵襲な縮小手術を検討すべきであったと思われた。

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術前補助化学療法後蛋白漏出症状が顕在化した進行胃癌の1例

三豊総合病院外科

遠藤  出 他

 進行胃癌に対する術前補助化学療法(以下、NAC)は、胃癌治療ガイドライン第4版においても「臨床研究としての治療法」と位置付けられているが、実臨床でも既に行われている。一方、蛋白漏出性胃癌は比較的稀な病態であり、本邦での報告例は76例程度であった。
 症例は72歳女性。粗大な領域リンパ節を伴う局所進行胃癌と診断し、NAC後に手術を行う方針とした。しかし、NAC後、著明な血清総蛋白、アルブミン値の低下を認め、精査の結果、蛋白漏出性胃癌が疑われた。文献上、蛋白漏出性胃癌は術前栄養管理に抵抗性とされており、手術は予定通りに施行した。本症例においてNACにより病状改善得られず、むしろ蛋白漏出症状の顕在化を認めた。術前治療の間に蛋白漏出性症状が顕在化した場合、できるだけ早期の外科的介入が望ましく、術後には栄養介入も併用しつつ、現行のガイドラインに準じた確実な術後補助化学療法を行うべきである。

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AdachiⅤ型腹腔動脈異常を伴った胃癌の1例

山形県立中央病院外科

石山 廣志朗 他

 症例は59歳女性。上部内視鏡検査にて胃角部大弯に0-I型胃癌を指摘された。術前3次元CT angiographyで左胃動脈と脾動脈が共通幹を形成する血管変異(AdachiⅤ型)をみとめた。手術は腹腔鏡下幽門側胃切除術(D2郭清)を施行した。術中に術前指摘された血管変異を認識し安全に手術を遂行した。術後合併症なく第6病日に退院となった。今回我々は術前診断したAdachiⅤ型を伴う胃癌に対する腹腔鏡下幽門側胃切除術を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

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クラミジア感染による小腸腸閉塞の1例

名古屋第一赤十字病院一般消化器外科

毛利 康一 他

 症例は23歳女性で腹痛を主訴に当院を受診した。腹部CTで骨盤内に小腸の拡張を認めたため、小腸腸閉塞と診断し保存的加療を開始したが、入院翌日も腹痛と嘔吐が持続したため、絞扼性腸閉塞を疑い腹腔鏡下手術を行った。骨盤内にviolin string様の線維性索状物を認め、その間隙に小腸がはまり込み狭窄していたため、線維性索状物を切離して狭窄を解除した。以上の手術所見と術後1日目に測定した血清クラミジアIgGが抗体陽性であったことから、クラミジア感染による小腸腸閉塞と診断した。女性の腸閉塞の診断にあたってはクラミジア感染によるものを鑑別に加えるべきである。

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小腸悪性リンパ腫治療6年後に発症した遅発性瘢痕性小腸狭窄の1例

遠州病院外科

臼井 弘明 他

 症例は50代男性.他院にて6年前に内視鏡によって小腸悪性リンパ腫と診断され,化学療法で完全寛解したため通院はしていなかった.当院救急外来へ腹痛を主訴に来院し,CT検査とイレウス管造影で小腸の不完全狭窄を認めた.悪性リンパ腫再発による小腸狭窄を疑い,腹腔鏡補助下に狭窄部小腸を部分切除した.狭窄部位は6年前に悪性リンパ腫を認めた部位と一致した.腹腔内及び小腸に癒着は認めなかった.病理検体では線維化と固有筋層の菲薄化を認めたが,悪性リンパ腫の再発は認めなかった.悪性リンパ腫による小腸狭窄の報告はあるが,治療後の狭窄はあまり知られていない.悪性リンパ腫治療6年後の小腸狭窄という稀有な症例を経験したので報告する.

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腹腔鏡下に切除した17歳小腸GISTの1例

琉球大学第1外科

西垣 大志 他

 17歳,女性.夕食後に腹痛が出現したため,近医の救急外来を受診.右卵巣腫瘍の診断にて精査加療目的に当院婦人科を紹介受診.婦人科での精査では小腸腫瘍の診断で,手術目的に当科紹介となった. 腹部造影CT検査では骨盤内に9cm大の辺縁不整な腫瘤を認め,小腸腫瘍が疑われた.小腸腫瘍の診断で腹腔鏡下腫瘍摘出術を施行.骨盤内に9cm大の分葉状腫瘍を認め,小腸壁より発生した腫瘍と判明した.また,小腸は腫瘍を軸に時計方向に540度捻転していたが,明らかな血流障害はみられなかった.病理検査では紡錘形細胞が密に増殖し,核分裂像は5/50HPFであった.免疫染色でc-kit陽性でGISTと診断された.術後経過は良好で術後第5病日に退院.c-kit遺伝子exon11に変異を認め,Imatinibによる術後補助化学療法を開始した.若年者小腸GISTは非常に稀であり,文献的考察を含め報告する.

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短期間に大幅に縮小した低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例

麻生総合病院外科

柳垣  充 他

 症例は,71歳・男性.当院で2年前に胃癌に対して開腹幽門側胃切除術の既往がある.腹痛を主訴に当院を受診し,腹部単純CTで回盲部左側に4cm大の低濃度腫瘤影と血液検査で炎症反応の上昇を認めた. 1週間経過を観察した後に施行した腹部造影CTで壁の造影効果を伴い,8cmに増大した多房性の低吸収域を示す腫瘤と周囲リンパ節腫大を認めたため,膿瘍形成性虫垂炎もしくは虫垂粘液産生腫瘍の診断で入院とした.待機的虫垂切除術を予定したが,1週間の抗菌薬加療で画像上劇的に低吸収域が縮小したため,炎症の鎮静化を確認後の1か月後に回盲部切除術を施行した.術後病理組織診断はLAMNであり,退院後外来で経過観察を行っている. 膿瘍形成性虫垂炎における待機的手術の際は,虫垂腫瘍の可能性も考慮し,慎重に術式を決定する必要がある.

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左卵巣転移を契機に発見された低異型度虫垂粘液性腫瘍の1例

JA愛知県厚生連海南病院外科

小林 大悟 他

 症例は47歳女性.左下腹部痛,腹部膨満感を認め近医受診した.下腹部に手拳大の腫瘤性病変を触知した.腹部超音波検査にて左卵巣に13×7.5cm大の多房性腫瘍を認め精査加療目的に当院産婦人科へ紹介受診した.CT,MRIを施行すると,左卵巣腫瘍から離れた位置に,虫垂と連続する嚢胞性病変を認め当科へ受診され合同手術を予定した.術中迅速病理検査にて左卵巣腫瘍,虫垂腫瘍はともに腺腫と診断され左付属器摘出術,虫垂切除術を施行した.術後病理標本より虫垂腫瘍は低異型度虫垂粘液性腺腫(Low-grade appendiceal mucinous neoplasm:以下LAMN)と診断され,左卵巣腫瘍はLAMNの転移と診断された.左卵巣転移を契機に発見されたLAMNの本邦報告例は認めない.今回,左卵巣転移を契機に発見されたLAMNの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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横行結腸穿破を伴った腹壁結核の1例

東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座消化器外科学分野

鳩山 恵一朗 他

 症例は67歳女性. 右下腹部痛で発症, 結腸憩室炎として保存的に加療されたが改善を認めないため, 当院に紹介された. CT検査で右傍結腸溝と右腹斜筋内に膿瘍が確認され, 内視鏡所見と合わせて結腸憩室炎の腹壁穿破と診断した. 腹壁膿瘍のドレナージを先行させた後, 腹腔鏡補助下横行結腸部分切除術, 経皮的腹壁膿瘍ドレナージ術を施行した. 病理組織診断で, 大腸粘膜に形成された潰瘍周囲の脂肪組織, 膿瘍腔, 皮下組織, 皮膚に乾酪壊死を伴う肉芽腫の形成が認められた. 術後, ツベルクリン反応とT-SPOT検査にて陽性所見が得られたが, 腸結核に特徴的な内視鏡所見を呈していなかったことから, 腹壁結核の横行結腸穿破と診断した. 結核は今日においても依然重要な感染症の一つであり, 結核の既往に関わらず, 腹壁腫瘤を認めた場合には腹壁結核も念頭に診療を進める必要があると考えられた.

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結腸穿孔を生じたsegmental absence of intestinal musculatureの1例

自衛隊札幌病院外科

米村 圭介 他

 Segmental Absence of Intestinal Musculature(SAIM)は,腸管の部分的な固有筋層欠損であり、成人では非常に稀である.症例は54歳,男性.胃バリウム検査を受けた3日後の排便後より腹痛が出現し,症状が改善しないため翌日当院を受診.来院時,38度の発熱を認め,腹部理学所見上,左側腹部を最強とする腹部全体に圧痛及び反跳痛を認めた.血液検査上炎症反応高値で,腹部造影CT検査で下行結腸近傍にfree airと脂肪織濃度の上昇を認めた.穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.下行結腸に穿孔部を認め,穿孔部含む結腸を切除し人工肛門を造設した.摘出標本で穿孔部から肛門側に向けて縦走する潰瘍を認め,病理組織学的所見では潰瘍部に一致して憩室を伴わない固有筋層の欠損を認めた.固有筋層が部分的に欠損した脆弱な部分にバリウムによる硬便が誘因となり,穿孔が生じたと考えられた.

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悪性リンパ腫の精査を機に発見された直腸悪性黒色腫の1例

仙台市立病院外科

菅野 裕樹 他

 症例は68歳, 女性. 中枢神経病変を伴う悪性リンパ腫の診断となり, FDG/PETを撮影し左側頭葉, 肝門部, 傍大動脈及び下部直腸にFDGの高集積を認めた. 下部消化管内視鏡検査では下部直腸から肛門管に黒色隆起性病変を認め, 生検で悪性黒色腫の診断となった. 悪性リンパ腫の進行による意識障害が急速に出現したため, 悪性リンパ腫に対する治療を優先し, 化学放射線療法を施行する方針とした. R-MPV療法(rituximab, methotrexate, procarbazine, vincristine)を開始した結果, 意識障害は消失し, FDG/PETでは直腸病変以外はpartial response: PRであった. 悪性リンパ腫が奏功状態となり悪性黒色腫も治療適応と考え, 腹腔鏡補助下直腸切断術を施行した. 術後15ヶ月が経過した現在, 直腸悪性黒色腫の再発はない.

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原発巣切除10年後に発見された直腸GIST肝転移の1例

岩手県立久慈病院外科

藤井 仁志 他

 症例は50代男性.1999年,直腸粘膜下腫瘍に対し開腹低位前方切除術を施行した.免疫組織学的検査で直腸GIST(gastrointestinal stromal tumor)と診断された.2009年の定期腹部CT検査で肝S7に腫瘤を指摘された.GISTの肝転移が疑われ,メシル酸イマチニブ(Imatinib mesylate, IM)(400mg/日)の内服を開始した.内服後1か月の腹部CT検査で腫瘍の縮小を認め,内服を4か月継続したが,更なる腫瘍の縮小は得られず,開腹肝部分切除術を施行した.摘出標本の免疫組織学的検査ではGISTの肝転移の診断で, 現在術後7年8か月経過しているが, 無再発生存中である.GISTでは, 術後10年以上に再発が明らかになる場合があり,長期にわたる経過観察が必要である.

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画像所見の異なる肝血管筋脂肪腫の3例

北九州市立医療センター外科

岡山 卓史 他

 血管筋脂肪腫(angiomyolipoma;AML)は血管,平滑筋,脂肪の3成分から成る間質系良性腫瘍であり,構成成分の比率により異なる画像所見を示す.腎臓に好発し肝原発は比較的まれとされる.今回それぞれ画像所見が異なる3,40歳代女性の肝血管筋脂肪腫3 症例を経験した.基本的には良性腫瘍であるが,時に肝細胞癌との鑑別が困難な症例や悪性化例も認めるため,肝血管筋脂肪腫の診断や手術適応の決定には慎重な検討が必要である.

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肝左葉切除術を施行した分流手術後45年で発生した肝内胆管癌の1例

前橋赤十字病院消化器病センター外科

八木 直樹 他

 症例は64歳,男性.先天性胆道疾患で5歳時に胆嚢摘出術,19歳時に肝外胆管切除術および胆管空腸吻合術を施行した既往歴があり,38歳時にB型劇症肝炎を発症してから当院で経過観察を継続していた.2016年9月にCA19-9が軽度高値となり,同年12月にはさらに上昇した.腹部造影CTを撮影したところ,肝S2の肝内胆管癌が疑われ当科紹介となった.十二指腸腺腫および小腸の異常拡張を認めた.手術では肝左葉切除術の他,十二指腸部分切除術,拡張小腸切除術を行った.病理組織学的診断では肝内胆管癌の診断であった.術後胆汁瘻を認め,ドレーン処置を行った.近年,分流手術後に胆道癌が発生した報告は散見されるが,本症例は分流手術後に発生した肝内胆管癌例の中で、切除できたものでは最長例であるため、貴重と考えて,若干の文献的考察を加えて報告する.

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短期間に増大を認めた膵臓コレステリン肉芽腫の1例

JA岐阜厚生連中濃厚生病院外科

薮﨑 紀充 他

 症例は52歳の男性で,糖尿病にて近医に通院中であった.腹痛の精査で膵尾部に腫瘤を認め経過観察となっていたが,腫瘤の増大を認めたため当院へ紹介となった.CT, MRIでは辺縁に石灰化を伴う47mm大の腫瘤がみられ,明らかな内部の造影効果は認めなかった.画像および増大傾向を認めたことから膵癌の可能性を否定出来ず,膵体尾部切除・脾摘術を施行した.術中所見では腫瘍周囲は強固に癒着していたが,病変部以外は正常膵であった.術後の病理組織学的検査にてコレステリン空隙を伴う異物貪食マクロファージを含む炎症細胞の貯留がみられ,コレステリン肉芽腫と診断された.膵臓に発生するコレステリン肉芽腫は極めて稀である.

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腹腔鏡下手術にて診断的治療を行った副腎神経節細胞腫の1例

大阪市立大学大学院腫瘍外科学

岡崎 由季 他

 神経節細胞腫は交感神経節細胞から発生し,交感神経系腫瘍のうち,最も高分化な良性腫瘍である.臨床症状が乏しく,増大してから発見されることが多い腫瘍であるが,偶発副腎腫瘍として発見される頻度が増加している.症例は47歳女性.偶然に最大径4cmの右副腎腫瘍を指摘された.内分泌学的には異常は認められず,画像的にも悪性腫瘍は否定的で,非機能性右副腎腫瘍の診断となった.手術適応としては境界型であるが,確定診断のため摘出術を施行した.腫瘤は被膜に覆われ,明らかな浸潤性の増殖は認められなかった.病理所見でも周囲組織への浸潤は認めなかった.腫瘍細胞は紡錘形で異型に乏しく,神経節細胞腫と診断された.非機能性偶発性副腎腫瘍の術前診断は困難な場合もあり,最大径が4cmを超えている場合や画像上非特異的な像を示す場合などには,診断と治療を兼ねた腹腔鏡下副腎摘除術を選択することも許容されると考えられた.

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腫瘤像を呈した腸間膜脂肪壊死の1例

自治医科大学附属さいたま医療センター一般消化器外科

菊地  望 他

 症例は59歳、女性。上腹部痛を主訴に前医を受診し、CT検査で小腸腫瘍を疑われ精査加療目的に当科を受診。腹部CT検査で胃背側に45mm大の内部不均一、造影効果がない腫瘍を認め、MRI検査ではT1,T2強調画像で高信号、内部に不整形の低信号域が混在していた。脂肪抑制T1強調画像では信号低下がみられた。脂肪肉腫の診断で手術を施行した。胃結腸間膜内に被膜を伴う腫瘤を認め、膵臓などの周囲臓器への浸潤は認めず、容易に剥離可能であったため腫瘍摘出術を施行した。病理組織検査所見では被膜形成を伴う脂肪壊死であった。術後1年7ヶ月再発は認めていない。腫瘤像を呈する腸間膜脂肪壊死の報告は少ないが、画像検査では脂肪肉腫との鑑別は困難である。腹腔内の炎症を惹起する誘因やその既往がある場合には、脂肪壊死の可能性を考慮して精査を進める必要がある。

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後腹膜鏡下に修復した特発性上腰ヘルニアの1例

掛川市・袋井市企業団立中東遠総合医療センター消化器外科

小出 史彦 他

 症例は69歳女性,右腰背部の有痛性腫瘤を自覚し来院した.CT,MRI,超音波検査で右腰背部の腹壁筋膜層に3㎝の欠損部を認め,腎周囲脂肪組織の脱出を認めた.特発性上腰ヘルニアと診断し,後腹膜鏡下に修復術を施行した.良好な視野のもと,第12肋骨、肋下神経側副枝,腸骨下腹神経,腸骨鼠径神経を確認し損傷することなくヘルニア門をParietexTM Optimized Composite Meshを用いてtension freeで修復した.術後4日目で退院し,その後再発や疼痛などは認めていない.上腰ヘルニアに対する後腹膜鏡下手術は、ヘルニア門と周囲の神経を確実に視認できるため安全で有用な術式と考えられた.

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Hybrid法による修復術を施行した再発鼠径ヘルニア子宮嵌頓の1例

JA北海道厚生連遠軽厚生病院外科

栗山 直也 他

 症例は80歳女性. 主訴は左鼠径部膨隆. 既往に4回の左鼠径ヘルニア手術があるが過去3回の詳細は不明. 最終手術は8年前に当科でKugel法を施行した. 2016年2月中旬, 左鼠径部膨隆を自覚し3日後に近医受診. 左鼠径ヘルニア嵌頓と診断されたが整復できず, 当科に紹介された. 造影CTで, 子宮を内容とする鼠径ヘルニア嵌頓が疑われたため, 緊急手術とした. 診断的腹腔鏡で恥骨上からの子宮脱出を確認し, 腹腔鏡下に子宮を牽引するも整復できず, 腹腔鏡補助下の鼠径部切開法 (hybrid法)へ移行した. 嵌頓整復し, 腹腔鏡下に子宮に壊死がないことを確認し, 前方からのmesh plugにて鼠径ヘルニアを修復した. 術後は合併症なく,術後15日で退院となった. 鼠径部ヘルニア子宮嵌頓症例に対し, hybrid法により安全に手術を施行しえた症例を経験した.

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同時性孤立性胸骨転移を伴う大腿脂肪肉腫の1例

奈良県立医科大学胸部・心臓血管外科

安川 元章 他

 症例は43歳男性.左大腿と前胸部の腫脹を自覚し前医を受診した.CT上,左大腿部に径21㎝の腫瘍と胸骨剣状突起を中心に径5㎝の腫瘍を認め,当院に紹介された.精査の結果,大腿悪性軟部肉腫と同時性孤立性胸骨転移の診断で手術目的に入院となった.左大腿腫瘍に対する患肢温存広範切除に次いで,胸骨腫瘍手術に移った.腫瘍から最低3cmの距離を確保し左右肋軟骨を切断.胸骨上縁は第4肋間の高さで左右内胸動静脈とともに胸骨体部を切断し,胸壁を全層で摘出した.右大腿筋皮弁を遊離し,左内胸動静脈と端々吻合し胸壁再建を行った.術後経過良好で胸郭動揺や皮弁の血流障害を認めなかった.病理組織学検査で大腿粘液/円形細胞型脂肪肉腫と胸骨転移の診断であった.術後3週間目から化学療法を開始したが,術後1ヵ月後に多発脊椎転移を認めた.今回,我々は粘液/円形細胞型脂肪肉腫の同時性孤立性胸骨転移の1例を経験したので報告する.

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