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日本臨床外科学会雑誌 第78巻1号 掲載予定論文 和文抄録


綜説

大腸癌肝転移に対する外科治療update

東京大学大学院医学系研究科臓器病態外科学 肝胆膵外科

長谷川 潔

 大腸がん肝転移に対する標準治療は肝切除である。安全な肝切除には術前の正確な肝機能と残肝容量の評価が必須である。再発に対する繰り返し切除を意識し、肝実質をできるだけ温存する部分切除を基本に切除計画を立てる。残肝容量が不足でも門脈塞栓術、2期的切除、ALPPS手術、肝静脈再建などを駆使し、安全かつ治癒的な肝切除が可能である。術後の高再発率は依然問題だが、再発抑制には補助化学療法が有用で、再発すれば再肝切除を考慮する。切除不能例には分子標的薬を含む強力な化学療法により、conversionを狙う治療方針が合理的である。

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臨床経験

難治性腹膜透析カテーテル閉塞に対する腹腔鏡下閉塞解除術の経験

富士市立中央病院外科

北村 博顕 他

 腹膜透析カテーテル閉塞は腹膜透析患者において高頻度に遭遇しうる合併症であり,難治性の場合は再造設や血液透析の導入が行われる.難治性のカテーテル閉塞に対する審査腹腔鏡の有用性を報告する.〈対象〉2014年1月より2015年6月までに腹膜透析カテーテル閉塞に対し当院で腹腔鏡下に閉塞解除・腹壁固定を施行した5例(平均年齢 56歳,男性 4人).〈結果〉閉塞の原因は大網及び腸間膜の巻絡が各4例,1例であった.平均手術時間は55分(36-103分),術後平均2日(1-3日)で腹膜透析が再開可能であった.1例に再閉塞を認めたが,大網の巻絡が原因で,再度腹腔鏡下に対処可能であった.〈結論〉難治性の腹膜透析カテーテル閉塞に対する審査腹腔鏡ならびに閉塞解除・腹壁固定術は,再造設や血液透析導入を回避でき,患者QOLが維持可能な有効な治療手技と考えられた.

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腹壁瘢痕ヘルニアに対する単孔式腹腔鏡手術の経験

福井県済生会病院外科

古谷 裕一郎 他

 腹壁瘢痕ヘルニアに対するメッシュの使用は2011年2月に本邦で承認され,近年本邦での腹壁瘢痕ヘルニアに対してメッシュの使用が増加している.また腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡手術が普及してきているが,施設により術式は様々である.当院では腹壁瘢痕ヘルニアに対して2014年5月より多孔式腹腔鏡手術を導入し,2014年8月より単孔式腹腔鏡手術を導入し,これまで多孔式腹腔鏡手術は7例,単孔式腹腔鏡手術は6例を施行した.腹腔鏡手術では多孔式,単孔式いずれの術式においても術後合併症や再発は認めず,術後在院日数は短縮した.単孔式腹腔鏡手術は前方アプローチ法と比較し術後合併症や再発の軽減と術後在院日数の短縮が期待でき,今後の更なる症例の観察と検討が必要ではあるが,有用な術式となり得ると考えられた.

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症例

乳癌骨転移に対するビスホスホネート長期投与による非定型大腿骨骨折の1例

安城更生病院外科

尾崎 友理 他

 症例は71歳,女性.65歳時に右乳癌に対して胸筋温存乳房切除術+腋窩リンパ節郭清術を施行し,invasive micropapillary carcinoma,luminal type,pT1bN2aM0,StageⅢAと診断した.化学療法後,letrozoleを開始した.術後11カ月の骨塩定量検査で骨密度低下を認め,アレンドロン酸の投与を開始した.術後2年1カ月に多発転移が出現し,化学療法へ変更,アレンドロン酸からゾレドロン酸に変更した.臨床的完全奏功を得て,同治療を継続していた.術後6年1カ月に左大腿外側部痛が出現した.MRIで骨転移は明らかでなく経過観察としたが,2か月後に転倒し左大腿骨転子下骨折を生じた.非定型大腿骨骨折と診断し,ビスホスホネートの長期使用との関連が疑われた.前駆症状や特徴的な画像所見などに留意し非定型骨折の可能性を考慮する必要があると考えられた.

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血管内治療を行った人工股関節置換術後25年目発症の外腸骨動脈仮性瘤の1例

松本協立病院心臓血管外科

谷島 義章 他

 症例は、25年前に右人工股関節置換術が施行された87歳女性。突然の腰痛と右下肢痛を自覚され救急要請。特発性右腸腰筋血腫と診断。保存的加療を開始したが軽快せず、入院2か月後に血管造影検査により、外腸骨動脈仮性動脈瘤と診断。人工股関節置換術に用いた寛骨臼蓋から突出したスクリューが外腸骨動脈に接しており、物理的刺激が原因で仮性動脈瘤が生じたものと推定された。治療は血管内治療を選択し、外腸骨動脈の細い径に合う市販のステントグラフトが入手できないため、胆道系Covered stentを代用した。術後経過は良好で、血管内閉塞なく、血腫は縮小し良好な経過を経ている。

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魚骨による食道穿孔・後縦隔炎に合併した感染性胸部大動脈瘤の1例

兵庫県立尼崎総合医療センター心臓血管外科

石道 基典 他

 症例は66歳女性. 鯛の煮付けを食べた際に, 魚骨が喉に刺さったような違和感を自覚した. 1週間後に嗄声, 全身倦怠感を自覚し, 近医を受診した. 胸部レントゲンで肺膿瘍が疑われ, 当院紹介となった. 造影CTで後縦隔炎, 感染性大動脈瘤と診断し, 緊急手術を施行した. 食道穿孔の合併を疑い, 術中に内視鏡検査を施行したが, 食道穿孔を示唆する所見はなく, 胸部下行大動脈人工血管置換術と大網充填術を行った. しかし, 経口摂取再開後に食道穿孔が確認され, 左膿胸,左広範囲無気肺を合併した. 側開胸による食道へのアプローチは困難であったため, 非開胸食道抜去術, 後縦隔経路で胃管を用いた一期的食道再建を行った. 合併症なく退院し, 術後16ヶ月後の現在, 感染の再燃なく経過している.開胸アプローチが困難な症例では非開胸食道抜去術は有用な術式の一つと考えられた.

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脱出胃の胸腔内穿孔で発症したBochdalek孔ヘルニアの1例

JCHO東京新宿メディカルセンター外科

百瀬 博一 他

 症例は63歳,女性.既往歴に直腸癌で低位前方切除術,肝転移で肝右葉切除術.残肝再発で肝外側区域部分切除術を施行している.2014年9月に左側胸部痛で他院3次救急に搬送された.胸部CT上,左胸水を多量に認め,精査目的に当院に転送された.左胸腔ドレナージを施行し,暗赤色の胸水が流出した.ドレナージ後のCTで,左胸腔内への胃の脱出が明らかになった.左横隔膜ヘルニアによる胃の嵌頓,穿孔の診断で緊急手術を施行した.手術所見で,胃穹隆部が左横隔膜背側から胸腔内に脱出しており,ヘルニア門の位置からBochdalek孔ヘルニアと診断した.胃穹窿部大弯に約1cmの穿孔部を確認し胃部分切除術,ヘルニア修復術,胸腔ドレナージ術を行った.術後遺残膿瘍を認めたがドレナージで軽快した.われわれは,脱出胃が胸腔内に穿孔したBochdalek孔ヘルニアの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

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経皮的内視鏡下胃内手術で切除した胃絨毛状腺腫(径10cm)の1例

埼玉協同病院外科

佐野 貴之 他

 稀な胃絨毛状腺腫に対して,胃内手術を行った症例を経験したので報告する.症例は78歳男性.胃噴門部の長径10cmの巨大な絨毛状腺腫に対して,内視鏡的切除試みるも困難であった.胃噴門機能を温存し,腫瘍の腹腔内散布を予防するために経皮的内視鏡下胃内手術を選択した.手術時の鉗子操作の自由度および腫瘍の取り出し口を考慮し,単孔式手術器具を用いた胃内手術とした.術後経過は良好であった。胃絨毛状腺腫は全胃ポリープ中,0.5%程度と報告される稀な疾患である.加えて癌化率が高いとされているが,本症例では幸い悪性所見を認めなかった.

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術前化学療法を行い根治切除を施行した肝転移を伴う十二指腸乳頭部癌の1例

住友病院外科

田中 涼太 他

 症例は66歳の男性.体重減少を主訴に受診され、精査の結果、同時性肝転移(S3、単発)を伴う十二指腸乳頭部癌と診断された.原発巣および肝転移巣が切除可能であること、また肝転移の他に転移巣がないことより、外科切除を念頭にいれた術前化学療法を施行する方針とした.化学療法を5クール施行後、効果判定はPRであり、またPET検査で他の転移巣の出現を認めなかった.以上より、肝転移を伴う十二指腸乳頭部癌に対して亜全胃温存膵頭十二指腸切除術および肝外側区域切除術を施行した.病理組織学検査では、十二指腸乳頭部の原発巣はtub1 in ampulla of Vater, pT2, pN1であり、肝転移巣にはviableな癌細胞は認なかった.術後合併症としてGradeBの膵液瘻を認めたが、保存的に軽快し、術後44日目に軽快退院となった.退院後は術後補助療法を継続し、術後8ヶ月現在、無再発経過中である.

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腹腔鏡下手術を行った柿の種子が原因と考える小腸憩室穿孔の1例

国立病院機構相模原病院外科

近藤 泰人 他

 症例は74歳,男性.上腹部痛を主訴に当院を受診.腹部造影CT検査では下腹部正中に周囲に造影効果を伴った液体貯留と少量の遊離ガスを認めた.小腸内に16mm大の鋭利な高吸収域を認め,魚骨などの異物が考えられた.異物による小腸穿孔の診断で腹腔鏡下での緊急手術の方針とした.腹腔鏡所見では大網が穿孔部位に覆いかぶさるように存在し,周囲に膿苔の付着を認めた.小腸を腹腔外に挙上すると,穿孔部位はTreitz靭帯より20cm肛門側の小腸であった.穿孔部位の口側15cm,肛門側10cmに渡り多数の憩室を認めたため,憩室を全切除するように小腸部分切除および腹腔内洗浄ドレナージを行った.小腸内の異物は柿の種子だった.病理組織所見では仮性憩室穿孔の診断だった.今回我々は柿の種子が原因と考える小腸憩室穿孔に対して,腹腔鏡下手術を行った1例を経験したので文献的考察を加え報告した.

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腸石を有する回腸重複腸管により反復した腸閉塞の1例

信州大学医学部附属病院消化器外科

山本 悠太 他

 症例は27歳の男性.7年前,2年前,半年前に腸閉塞を発症し,保存的に軽快した.繰り返す腸閉塞の原因検索の結果,回盲弁から40cm口側の回腸に連続する嚢状腸管を認め,内部に腸石を有していた.再び腸閉塞を発症し当科外来を受診した.CT検査では,内部に腸石を有する嚢状腸管と連続する回腸から口側の腸管が拡張し,以前と同様の所見であった.胃管留置,高圧酸素療法により腸閉塞を改善させた後,手術を行った.術中所見では,嚢状腸管が他の小腸に圧排され,連続する回腸が捻れて狭窄しており,同部が繰り返す腸閉塞の原因と考えられた.嚢状腸管は腸間膜側から発生し,腸間膜を有していたことから重複腸管と診断した.嚢状腸管および連続する回腸を含め,小腸部分切除術を施行した.術後経過は良好で,術後7日目に退院した.

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早期診断が困難であった腹膜播種を伴う回腸NETの1例

厚生連高岡病院外科

山田  翔 他

 症例は69歳, 女性. 2016年4月に下腹部痛, 嘔吐を主訴に受診. 2011年から同様の症状があり, 病院受診を繰り返していた. CTにて回腸に長径20mmの多血性腫瘍, 口側腸管の拡張, 周囲リンパ節腫大を認めた. また5年前のCTを見返すと, 同様の腫瘍, 周囲リンパ節腫大が認識できた. 小腸腫瘍に伴う通過障害が生じており, 腹腔鏡下手術の適応と判断した. 腫瘍は漿膜外浸潤をきたし, 骨盤内と横隔膜に腹膜播種病変を認めた. 周囲の腫大したリンパ節と伴に回腸部分切除を施行した. 術後病理診断は回腸NET(Neuroendocrine tumor), G2(pT4N1M1 stageⅣ)であった. 5年の経過を経て診断に至ったものの, 腹膜播種により治癒切除不能であった1例を経験したので, 若干の文献的検討を加え, 報告する.

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急性虫垂炎術後に診断された小児虫垂原発神経内分泌腫瘍の2例

安城更生病院小児外科

牧田  智 他

 今回われわれは,小児で急性虫垂炎術後に虫垂原発神経内分泌腫瘍と診断した2例を経験したので報告する.症例1:12歳,女児.心窩部痛を主訴に当院受診した.腹部超音波検査で虫垂腫大を認め急性虫垂炎と診断した.症例2:14歳,女児.右下腹部痛を主訴に当院受診した.腹部造影CT検査で糞石を伴う虫垂腫大を認め急性虫垂炎と診断した.いずれの症例も腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.肉眼所見では腫瘤性病変を認めなかったが,病理組織学的診断で粘膜下層から固有筋層にかけて腫瘍を認め,chromogranin A陽性,synaptophysin陽性であり,虫垂原発神経内分泌腫瘍 Grade 1と診断した.いずれの症例も追加切除は施行せず外来経過観察し無再発生存している.本腫瘍は術前/術中に診断することは困難である.また全年齢に発症する可能性があり,切除した虫垂の病理組織検査を全例施行する必要があると考えられた.

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虫垂神経鞘腫の1例

津島市民病院外科

大宮 康次郎 他

 症例は82歳, 男性. 黒色便と腹痛のため当院受診, 腹部造影CT検査にて虫垂体部に均一な造影効果を伴う境界明瞭な25mm大の腫瘤を認めた. 下部消化管内視鏡検査では虫垂開口部粘膜に異常を認めず, 生検では正常組織であった. 虫垂腫瘍と診断し, 腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した. 術中迅速病理診断で良性の間葉系虫垂腫瘍と診断し, 追加切除やリンパ節郭清は行わなかった. 病理組織検査では腫瘍は紡錘形細胞の充実性結節を呈しており, 核の柵状配列palisading patternを呈する典型的なVerocay bodyとAntoni A/B領域を認めた. 免疫組織染色ではS-100(++), c-kit(+/-), CD34(-), SMA(-), MIB-1(3%)であり, 虫垂神経鞘腫と診断した. 虫垂に発生する神経鞘腫は極めて稀であり, 文献的考察を加えて報告する.

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腹腔鏡補助下手術を行った横行結腸空腸瘻を合併したCrohn病の1例

東京医科歯科大学消化管外科

十倉 三千代 他

 横行結腸空腸瘻を合併した大腸型Crohn病に対し,腹腔鏡補助下結腸全摘,瘻孔切除術を施行した.症例は32歳,男性.9年前よりCrohn病に対して内科的治療を行っていた.経過観察目的の下部消化管内視鏡検査で上行結腸肝弯曲部からS状結腸にかけて活動性の縦走潰瘍,多発狭窄を認めた.また,注腸造影検査で横行結腸脾弯曲部とTreitz靭帯肛門側の空腸の間に瘻孔を認めた.内科的治療困難と判断,外科的治療目的に当科紹介となった.5ポートで鏡視下に回盲部から直腸まで授動,直腸切離を行った後,小開腹し,直視下に横行結腸空腸瘻切除と検体摘出を行った.瘻孔を合併したCrohn病の手術は,瘻孔周囲に癒着が強く瘻孔切離に難渋するものの,腹腔鏡補助下手術も選択肢の一つになると考えられた.

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挿入ステントが1年後に下行・S状結腸境界部へ逸脱した上行結腸癌の1例

足利赤十字病院外科

山田  暢 他

 症例は86歳の女性.貧血・腹満のため当院を紹介受診した。精査を行い、結腸癌 A circ cType2 cT4aN3M0 cStageⅢbと診断された.根治手術を勧めるも本人手術を希望されず,大腸ステント(22x60mm WallflexTM Colonic Stent)を挿入した. 12か月後の腹部単純X線写真でステントの左下腹部への逸脱を認めた.ステント再挿入の方針とし,下部消化管内視鏡検査施行したところ,SD junction部に逸脱したステントを認めた.ステントの口側縁の粘膜が炎症により狭窄を伴う著明な浮腫をきたしており,内視鏡の通過が不能であった.腫瘍による腸閉塞およびステント部の穿孔などのリスクを考慮し回腸双孔式人工肛門造設術を施行した.

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術前化学療法が奏効した痔瘻転移と肝転移を合併したS状結腸癌の1例

鹿児島大学大学院腫瘍学講座消化器・乳腺甲状腺外科

鶴田 祐介 他

 59歳の男性.2015年2月,下血を主訴に前医を受診した.肛門6時方向の皮下腫瘤とS状結腸に2型病変を認め,それぞれ分化型腺癌であった.さらに肝S2,S4,S5に転移性肝癌の所見を認め,S状結腸癌,Type2, cT4a(SE), cN0, cH1, cP0, cM1(転移性痔瘻癌), cStageIVと診断した.化学療法を先行する方針とし,SOX+Bevacizumab療法を6コース施行した.原発巣,肝転移巣の縮小,さらに転移性痔瘻癌の消失を認め,腹腔鏡補助下Mile’s手術を施行後,二期的に開腹肝外側区域切除,肝S4,S5の部分切除術を行った.原発巣の組織学的評価はGrade1b,痔瘻および肝に関してはcomplete responseが得られた.転移性痔瘻癌および転移性肝癌を伴う大腸癌に対するSOX+Bevacizumab療法による術前化学療法が著効した1例を経験したので報告する.

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内痔核に対するPPH後に生じた傍直腸嚢胞の1例

国立病院機構水戸医療センター外科

小林 仁存 他

 症例は48歳の男性で,他院にてPPHを施行された既往がある.肛門痛・排尿困難感を主訴に前医を受診.直腸腹側,PPHのステイプルに接して嚢胞性病変を認め,症状の原因と考えられた.経直腸的嚢胞穿刺による減圧処置で一時症状の軽減が得られたものの,短期間で再燃したため当科紹介となった.嚢胞内容はゼリー状~粘液性であり,細胞診にて悪性所見を認めなかった.開腹下に経腹腔的嚢胞ドレナージ・嚢胞壁焼灼・大網充填術を施行したが,術後同部に嚢胞性病変が再燃.症状増悪したため,初回手術の8ヵ月後に経肛門的嚢胞切除術を施行した.腸管の器械吻合後に稀に報告されるimplantation cystに類似した病態が疑われたが,これまでPPH後に嚢胞病変を生じた報告は少なく,稀な1例と考えられたため,文献的考察を加えて報告する.

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感染を契機にKasabach-Merritt症候群を発症した肝血管腫(40cm)の1例

東京都立墨東病院外科

西原 悠樹 他

 症例は48歳,女性.以前より他院にて巨大肝血管腫を指摘されていたが無症状であり経過観察されていた.今回発熱を主訴に救急外来を受診し,精査にて尿路感染症による敗血症と播種性血管内凝固症候群と診断された.腹部CT像では右肝から骨盤に達する40×15㎝の巨大肝血管腫があり,感染を契機にKasabach-Merritt症候群を発症したと考えられた.尿路感染の治療後に,待機的に拡大右肝切除を施行した.術後すみやかに凝固異常は著明に改善し、経過良好にて術後7日目に退院した.現在外来にて経過観察中であるが,術後2年の時点で血液検査は正常化している.

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術前に肝内胆管癌と考えられた肝IgG4関連炎症性偽腫瘍の1例

豊橋市民病院一般外科

小池 佳勇 他

 症例は74歳男性. 腹部エコーで左肝内胆管拡張を認め精査を行い, MRCP/ERCPにて肝内胆管外側枝の狭窄を認めた. 細胞診では診断はつかなかったが, 画像所見から肝外側区の肝内胆管癌を疑い肝左葉切除を施行した. 切除標本では, 左肝管に境界明瞭な充実性腫瘤を認めたが, 病理学的にIgG4関連炎症性偽腫瘍と診断された. IgG4関連疾患は全身の諸臓器に発生し, 肝胆膵領域では自己免疫性膵炎や硬化性胆管炎との関連が知られているが, 肝臓のIgG4関連炎症性偽腫瘍は稀な疾患である. 今回, 肝IgG4関連炎症性偽腫瘍を経験したため文献的考察を加え報告する.

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術前DIC-CTにて低位合流肝管を伴う肝外胆管走向異常と診断した2例

JCHO可児とうのう病院外科

川合 亮佑 他

 今回われわれは,術前に肝外胆管走向異常を正確に診断し,安全に手術しえた2例を経験したので報告する.症例1は76歳の女性で,穿孔性虫垂炎術後に急性胆石胆嚢炎を発症した.症例2は59歳の男性で,健診で胆嚢腺筋症を指摘され当院に受診された.2例とも術前DIC-CTで左右肝管低位合流部に胆嚢管が合流する肝外胆管走向異常と診断され,腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された.術中胆管損傷の予防の為に順行性胆嚢摘出術を施行し,術中・術後合併症は認めなかった.
 胆嚢摘出術における術中胆管損傷は比較的稀な合併症ではあるが,胆道系には様々な走向異常があるため,術前の画像診断による胆管像の把握は重要である.DIC-CTは簡便かつ非侵襲的な検査であり,腹腔鏡下胆嚢摘出術の術前検査として非常に有用であった.

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2カ所の転移巣が異なる肉眼形態を呈した腎細胞癌胆嚢転移の1例

館林厚生病院外科

室谷  研 他

 症例は72歳男性. 健診の胸部レントゲン検査で異常を指摘された. 胸腹部CT検査にて多発肺腫瘍及び右腎腫瘍, 胆嚢腫瘍を認め当院紹介. 右腎細胞癌の多発肺転移, 胆嚢癌合併と診断し, 右腎摘除及び胆嚢摘出術を行った. 胆嚢内には有茎性の腫瘍とポリープ様の粘膜下腫瘍を認めた. 組織学的に右腎は淡明細胞癌であり, 胆嚢内の両腫瘍にも淡明細胞癌を認めたため腎細胞癌の胆嚢転移と診断した. 腎細胞癌は肺,肝,骨への転移が多いとされ, 胆嚢転移は非常に稀である. さらに本症例は胆嚢内に形態の異なる転移性腫瘍を認め, 胆嚢への転移形成後の形態変化について興味深い症例と思われたので文献的考察を含め報告する.

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脾悪性リンパ腫を疑い腹腔鏡下脾摘術を施行した脾サルコイドーシスの1例

神戸大学大学院肝胆膵外科学

水本 拓也 他

 症例は69歳女性.関節リウマチに対しメトトレキサートにて加療中にメトトレキサート関連悪性リンパ腫を発症しメトトレキサート中止にて寛解を維持していた.経過観察のため施行したPET-CTにて脾腫の出現とともに脾臓に強い集積の出現を認め,悪性リンパ腫の再発を疑われ当科紹介となった.診断目的に腹腔鏡下脾摘術を施行,病理組織所見にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め脾サルコイドーシスと診断された.サルコイドーシスはしばしば脾病変を有し,画像上脾悪性リンパ腫とは鑑別困難なため診断的脾摘を要することが多い.著明な脾腫を伴わない病変に対しては,低侵襲な腹腔鏡下脾臓摘出術が診断的脾摘に有用である.

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治療前に診断した放射線照射後膀胱自然破裂の1例

自治医科大学附属病院消化器・一般外科

青木 裕一 他

 症例は35歳女性。5年前子宮頸癌に対し広汎子宮全摘術を施行し術後放射線照射歴があった。突然発症の下腹部痛を主訴に救急搬送され、下腹部の反跳痛と炎症反応上昇、Cr値高値を認めた。CTでは左腎周囲と骨盤内に大量の腹水を認めた。病歴から漏出尿による腹膜炎を疑い造影CT撮像30分後に単純CTを再検し造影剤の腹腔内漏出を確認した。膀胱造影および膀胱鏡で膀胱自然破裂と確診し、腹腔内貯留尿のドレナージおよび膀胱カテーテル留置を行った。術後症状は速やかに改善し術後14日目に膀胱カテーテルを抜去し術後19日目に退院となった。
 放射線照射後膀胱自然破裂の診断精度は低く、確定診断に至らないまま加療されている症例が少なくない。今回CTを再検したことにより治療前に診断した膀胱自然破裂の1例を経験した。骨盤内放射線照射歴のある症例においては、漏出尿を原因とする腹膜炎の可能性があることを考慮して診療を行うことが重要である。

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回腸新膀胱穿孔による汎発性腹膜炎の1例

JA愛知厚生連豊田厚生病院外科

渡邉 裕樹 他

 症例は67才の男性.4年前に膀胱癌に対して膀胱全摘,回腸新膀胱造設術を受け,無再発で経過していた.飲酒後から徐々に増強する腹痛と嘔気のため当院に救急搬送された.腹部CTで肝表面から脾周囲にかけて中等量の腹水を認め,汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を行った.開腹すると,回腸新膀胱の頭側前壁に径2mmの穿孔部を認め,回腸新膀胱穿孔による汎発性腹膜炎と診断した.穿孔部辺縁を切除し縫合閉鎖した.
 回腸新膀胱造設術後の穿孔は稀な病態で,原因として過伸展,周囲との癒着,間欠自己導尿操作,感染などが挙げられる.本症例は間欠自己導尿操作に加え,間欠自己導尿の管理不良による過伸展が原因と考えられた.新膀胱造設の既往のある腹膜炎症例においては,本疾患の可能性も念頭に置いて診断する必要がある.

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A群溶連菌を起因菌とした原発性腹膜炎の1例

大崎市民病院

進藤 晴彦 他

 症例は37歳女性.心窩部痛を主訴に救急来院した.腹部は膨満し,腹部全体に強い圧痛と反跳痛を認めた.腹部造影CTでは大量の腹水貯留と,回盲部から上行結腸にかけて腸管拡張と造影不良を認め,消化管壊死による汎発性腹膜炎と診断し緊急手術の方針とした.開腹時腹腔内に多量の膿汁を認めたが消化管穿孔などの明らかな原因は認めず,腹腔内洗浄ドレナージのみを施行した.術後Tazobactam/Piperacillinの投与を開始した.術後2日目に腹腔内白苔の培養よりA群溶連菌(Streptococcus pyogenes)が検出され,A群溶連菌を起因菌とした原発性腹膜炎と診断した.抗生剤をCeftriaxoneとClindamycinに変更した.全身状態と炎症反応の改善を認め,術後19日目に退院した.明らかな腹膜炎の原因がない場合,A群溶連菌による原発性腹膜炎の可能性を念頭に入れ,早期に手術を行う必要がある.

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尿路感染症が原因と考えられる門脈ガス血症を伴う急性汎発性腹膜炎の1例

足利赤十字病院外科

萩原 千恵 他

 症例は74歳男性.約10日前から自覚していた下腹部痛が急激に増悪し救急搬送された.腹部は板状硬で筋性防御を認め,血液検査では炎症反応高値,血小板数減少,急性腎不全を伴っていた.CT検査では骨盤腔に内部にガスを伴う液体貯留を認め,腹腔内遊離ガスと門脈ガス血症を伴っていた.以上より下部消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎を疑い緊急開腹手術を施行した.膀胱背側の腹膜外腔には壊死組織と凝血が貯留していたが,観察範囲内では明らかな消化管穿孔や膀胱穿孔は認めなかった.洗浄ドレナージ後に下行結腸に人工肛門を造設した.患者は約1か月前に尿路感染症にて入院加療歴があり,後日,当院での血液・尿,手術時の腹水培養全てから前医での尿路感染症の原因であったCitrobacter Koseriを検出した.以上より尿路感染症が原因で急性汎発性腹膜炎および門脈ガス血症を呈したと考えられた.

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鼠径部除圧下腹臥位CTで診断しTAPP法で修復した膀胱ヘルニアの1例

健生会奈良大腸肛門病センター

久下 博之 他

 症例は74歳男性.右鼠径部膨隆を主訴に来院した.初診時鼠径部膨隆を認めず,腹部単純CT(仰臥位)でも鼠径部ヘルニアを確認出来なかったため経過観察が指示された.5ヶ月後,症状が持続するため再診,鼠径部除圧下腹臥位CT検査を行ったところ下腹壁動静脈内側から膀胱脱出を認め,膀胱ヘルニアと診断した.手術所見:右下腹壁動静脈内側にヘルニア門を認め,paraperitoneal type(腹膜側型)と術中診断した.膀胱損傷に注意しつつ横筋筋膜と膀胱周囲脂肪を剥離して腹直筋正中白線まで露出した.膀胱壁は目視されないまま剥離が終了した. JHS II-3型ヘルニア門が確認できた.Bard® 3D Max Lightを用いて修復した.まとめ:膀胱ヘルニアに対してTAPP(transabdominal preperitoneal repair)法を行った報告は少数で鼠径部除圧腹臥位CTの有用性とともに報告する.

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腹腔鏡下に診断・修復した鼠径ヘルニアを伴うSpigelianヘルニアの1例

大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学

柳澤 公紀 他

 症例は65歳女性。主訴は左鼠径部の膨隆。腹部CTにて腹直筋左外縁に脂肪組織の脱出を認め、左Spigelianヘルニアと診断し、腹膜前到達法(totally extra peritoneal approach;TEP法)による鏡視下ヘルニア修復術を施行した。術中に左内鼠径ヘルニアの合併を認め、2つのヘルニア門をメッシュを用いて同時修復した。腹壁の脆弱性を伴うSpigelianヘルニアは他のヘルニアを合併することもあり、鏡視下手術は審査腹腔鏡と治療を同時に行える点が有用と考えられた。

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腹腔鏡下ヘルニア修復術と虫垂切除術を併施した虫垂嵌頓大腿ヘルニアの1例

田川市立病院外科

吉田 倫太郎 他

 症例は72歳女性。右鼡径部の腫瘤を主訴に来院し、腹部CTにて虫垂嵌頓右大腿ヘルニアの診断となった。当初より疼痛や腸閉塞などの症状は認めず、炎症所見も認めないことから待機的に手術を行った。腹腔鏡にて観察すると右大腿輪に虫垂が嵌頓していたが、膿瘍の形成は認めなかった。体外からの圧迫と愛護的な牽引を併施し、虫垂嵌頓を解除した。虫垂に明らかな壊死所見は認めず、腹膜前腔は汚染されていなかった。腹膜前腔を生食で洗浄し、ヘルニア修復をTAPP法にて行った。続いて、同一視野で腹腔鏡下虫垂切除術を行った。術後は感染兆候なく経過良好であった。虫垂嵌頓大腿ヘルニア症例において、感染予防と再発率軽減の観点から術式を検討する必要がある。虫垂の状態を考慮して十分な感染予防対策を行うことで、同一視野でTAPP法と腹腔鏡下虫垂切除術が併施でき、より低侵襲な治療が可能と考えられた。

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