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日本臨床外科学会雑誌 第76巻1号 掲載予定論文 和文抄録


原著

速やかな緊急手術を要する虫垂炎の術前予測因子の検討

県立広島病院消化器・乳腺外科

今岡 祐輝 他

 急性虫垂炎は急性腹症の中で発生頻度の最も高い疾患である.急性虫垂炎は早期手術が治療の原則であるが,すべての症例が速やかな緊急手術の対象となるわけではない.今回、緊急手術が必要とされる穿孔性・壊疽性虫垂炎(以下複雑性虫垂炎)を判別可能にする臨床指標について検討したので報告する.2009年1月から2012年12月までの4年間に,急性虫垂炎の診断で当科で手術を行った172例を対象とした.多変量解析では,虫垂周囲液体貯留(p=0.008, Odd比=3.175),CRP 4.7 mg/dl以上(p=0.009, Odd比=3.979),受診時体温37.4℃以上(p=0.045, Odd比=2.400)の3因子が複雑性虫垂炎を術前予測する独立した因子であった.予測因子3因子すべて満たさない症例の97%がカタル性・蜂窩織炎性虫垂炎であり,手術適応であっても夜間の緊急手術は回避できると考えられた.

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腸管切除を要する絞扼性イレウスの予測

大森赤十字病院外科

佐々木 愼 他

 虚血により腸管切除を必要とする絞扼性イレウスを術前に予測することを目的とし絞扼性イレウスと診断された36例を対象に、腸管切除、非切除群間で、背景因子、バイタルサイン、血液検査、腹水・拡張腸管内容CT値について比較した。この結果、統計的に有意と判定された拡張腸管内容CT値、CRP値、Alb値の3因子を用いてロジスティック回帰分析を行い、腸管切除を要する絞扼性イレウスの判別式を求めた。本判別式に従えばsensitivityは78.6%、specificityは86.4%、正診率は83.3%であった。次に、別の絞扼性イレウス17例および他院の25例を対象に腸管切除予測と実際の結果を比較した。その結果、sensitivityは各々100、60%、specificityは80、90%、正診率は86.7、72%であった。絞扼性イレウスにおける腸管切除の必要性を予測する上で有用であることが示唆された。

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臨床経験

胃GISTに対する経腟的標本摘出を用いた腹腔鏡内視鏡合同胃切除術の経験

前橋赤十字病院外科

室谷  研 他

 腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS)と標本の経腟摘出(TVSE)で小開腹を省略し,完全腹腔鏡下手術を施行した胃GISTを2例経験したので報告する. 症例は63歳と53歳の女性. LECS;大網を胃から切離し,腫瘍を確認した. 経口内視鏡で腫瘍からmarginをとり切離予定ラインの一部を切開し穿孔させた. 穿孔部から腫瘍のmarginを確認しながら,超音波凝固切開装置で腫瘍を切除した. また胃切除中はEndo-catch®を背側に留置し,術中の腫瘍の播種を予防した. TVSE;経腟経路の作成は,婦人科用クスコで膣前壁を腹側へ拳上しながら後膣円蓋部を腹腔内から切開した. 膣切開部から切除標本をバッグに入れたまま経腟的に体外へ摘出し,膣創は直視下に縫合閉鎖した. 胃の切除部は鏡視下に縫合閉鎖した. 術後経過は2例とも良好で合併症なく退院した. 術後創痛は軽微で,術翌日より積極的に離床を進めることが可能であった.

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症例

長期間CRを維持しているHER2陽性局所進行乳癌の1例

兵庫県立塚口病院乳腺外科

諏訪 裕文 他

 症例は62歳の女性。右乳房と右腋窩にいずれも約10cm大で皮膚浸潤を有する腫瘤を主訴に来院した。腫瘤の針生検にて乳頭腺管癌、ER 陰性、PgR陰性、HER2 陽性と診断された。CT検査で左副腎に5cm径の転移が認められた。FEC療法4サイクルに続き、トラスツズマブ・パクリタキセル併用療法を12週行い、原発巣、腋窩リンパ節、副腎転移巣はいずれも縮小した。ラパチニブ・カペシタビン併用療法を4サイクル施行してさらに縮小がみられたため、右乳房切除術および腋窩リンパ郭清を行った。術後、ラパチニブ・カペシタビン併用療法を3サイクル継続したところ、左副腎は正常大となりCRと判断した。さらに同療法を4サイクル施行後、摘出した遺残腫瘍がER陽性であったためレトロゾール単剤投与に変更して、CR達成後二年半CRを維持している。

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救命した感染性大動脈瘤破裂・食道穿孔の1例

東海大学医学部消化器外科

山崎  康 他

 症例は58歳の女性.2012年7月中旬に腹痛,嘔吐を認め近医を受診した.血液検査所見では炎症反応の上昇を認め,上部消化管内視鏡検査では食道に壁外性の圧排による内腔狭窄を認めた.CT検査では下行大動脈からの後縦隔血腫と診断され,精査加療目的に当院転院搬送となった.当院での精査の結果,胸部仮性大動脈瘤破裂の診断となり,緊急手術を施行した.術中所見では下行大動脈に8mm大の穿孔部を認めた.穿孔部を切除すると食道との間に血栓および膿瘍を認め,食道への穿孔部を視認できた.感染性大動脈瘤破裂,食道穿孔の術中診断となり,下行大動脈人工血管置換,食道縫縮術を施行した.術後第9病日に食道縫縮部位の縫合不全と診断し胸部食道切除,頸部食道瘻,胃瘻造設術を施行した.再手術後,胸腔内の持続洗浄を施行し,第51病日に退院となった.初回手術から11ヶ月後に胸壁前経路頸部食道胃管吻合術を施行し現在外来通院中である.

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腹腔鏡補助下低位前方切除術後に発症した肺動脈血栓症と門脈血栓症の1例

岐阜大学医学部附属病院第1外科

丹羽 真佐夫 他

 症例は61歳男性,下血を主訴に当院紹介受診した.下部消化管内視鏡検査で直腸Raに1型腫瘍を認め,生検で高~中分化腺癌と診断された.直腸癌の診断で腹腔鏡補助下低位前方切除術を施行した.手術時間は4時間1分,出血量は25mlだった.術後は経過良好だったが,6PODに腹痛・炎症反応上昇を認め,CTで右内腸骨静脈血栓からの肺動脈血栓症と下腸間膜静脈血栓からの門脈血栓症と診断した.明らかな凝固系の異常は認めなかった.抗凝固療法を開始し,症状の改善と画像上の血栓の縮小を認めたため24PODに退院となった.腹腔鏡補助下手術後の肺動脈血栓症と門脈血栓症の同時発症の報告例はきわめて稀なため,自験例に文献的考察を加え報告する.

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幽門狭窄を呈した全身性アミロイドーシスの1例

JCHO横浜保土ヶ谷中央病院外科

三宅 益代 他

 症例は73歳男性.1年前から軽度心不全による胸水貯留と診断され循環器内科通院中であった.食欲不振,体重減少が出現し,消化器内科で原因不明の幽門狭窄症と診断された.バルーン拡張術を施行するも改善を認めないため,手術目的に当科紹介受診し,幽門側胃切除術を施行した.病理組織所見では,粘膜の萎縮と筋層の発達増生を認めた.悪性を示唆する所見は認めなかった.その後,心不全の増悪を認め,心臓超音波検査所見の壁内顆粒状の高輝度エコーより全身性アミロイドーシスが疑われたため,手術検体をCongo red染色し再検した.粘膜筋板,血管壁,筋層にアミロイドの沈着を確認し,全身性アミロイドーシスによる幽門狭窄症の確定診断に至った.幽門狭窄症の鑑別診断の一つにアミロイドーシスを念頭に置くべきで,生検組織にCongo red染色の追加を検討する必要があると考えられた.

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幽門狭窄で発症した胃異所性膵原発腺癌の1例

大津市民病院外科

矢内 勢司 他

 症例は62歳、女性、嘔気を主訴に近医受診され、上部消化管内視鏡検査にて胃の器質的通過障害を疑い、当院紹介となった。上部消化管内視鏡検査では胃前庭部から幽門輪にかけて粘膜下腫瘍を疑う隆起性病変を認めたが、4度の生検にもかかわらず悪性所見はみられなかった。腹部造影CT検査では胃前庭部に淡い造影効果を有する限局性肥厚を認め、粘膜下腫瘍を疑った。胃粘膜下に浸潤する低分化型腺癌を疑い、狭窄症状の改善および確定診断目的で開腹術を施行したところ、胃前庭部に腫瘍の漿膜面への露出を認めたため、D2リンパ節郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した。摘出標本の病理組織学的検査で、胃異所性膵原発の腺癌と診断した。胃異所性膵からの癌化の報告例は稀である。本症例では術前診断が困難であった。術前診断困難な粘膜下腫瘍様の病変による幽門狭窄では胃異所性膵からの癌化も念頭におく必要がある。

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腹腔鏡内視鏡合同手術で胃局所切除を施行した胃神経鞘腫の1例

国立病院機構災害医療センター消化器乳腺外科

石橋 雄次 他

 患者は61歳女性.検診の上部消化管造影検査で胃の異常を指摘され当院紹介となった.上部内視鏡検査で体中部大弯に中心陥凹を伴う平滑な隆起性病変を認めた.ボーリング生検を施行したが確定診断は得られなかった.腹部CT検査で胃体中部に隆起性病変を認め,遠隔転移は認めなかった.以上より胃粘膜下腫瘍の診断となり,腫瘍径が約5㎝のため切除の方針とした.腹腔鏡内視鏡合同手術にて胃局所切除を施行した.病理組織学的所見は紡錘形細胞が束状増生を示し,不規則な合流や錯綜配列を示した.免疫組織染色でS-100蛋白陽性,c-kit陰性,CD34陰性,SMA陰性であった.Mib-1 indexは1%以下であった.以上より良性胃神経鞘腫の診断となった.術後経過は良好で術後9病日に退院となった.胃神経鞘腫はまれな疾患であるが,腹腔鏡内視鏡合同手術による胃局所切除は選択肢の一つになりうる.

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腹腔鏡内視鏡合同手術で胃局所切除を施行した噴門部神経内分泌腫瘍の1例

本荘第一病院消化器センター

加藤  健 他

 患者は73歳、女性。1年前に噴門部小弯前壁に隆起性病変を指摘、増大傾向があるため行った生検で神経内分泌腫瘍(NET)の診断であった。上部消化管内視鏡検査で病変は7mm大であった。腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)による胃局所切除の方針とした。病変の漿膜面においたクリップと内視鏡針状メスを人工的に穿孔させた焼灼マーキングを指標に切除線を決定し超音波凝固切開装置で全層切除を行った。内視鏡観察のもと自動縫合器で胃壁欠損部を閉鎖した。病理組織学的検査で切除断端は陰性であった。術後透視で噴門の狭窄を認めなかった。噴門部NETに対しLECSの手技を用いることで腫瘍を遺残なく切除しつつ機能を温存することが可能であった。

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幽門側胃切除Roux-en-Y再建術後に発症した胃空腸吻合部腸重積の1例

白河厚生総合病院外科

相澤  卓 他

 症例は85歳男性.胃癌の診断にて幽門側胃切除術を施行.Roux-en-Y法にて再建を行った.術後吻合部の通過障害が出現し,症状が遷延したため内視鏡検査を施行したところ,盲端側空腸が胃内に突出しており,胃空腸吻合部腸重積と診断した. 内視鏡的整復が困難であったため,24病日に再開腹を行い,重積部位を含めた吻合部切除及び再度のRoux-en-Y再建を施行した.再手術後は通過障害が改善し,35病日に退院となった.
 胃切除後の腸重積,特にRoux-en-Y再建後胃空腸吻合部腸重積の報告は少なく,術後の通過障害における鑑別疾患にあげるのは困難な疾患である.一方重積腸管は時間の経過とともに,虚血性変化が出現し,腸管壊死に至ることもあるため,迅速な対応が要求される.本疾患の対策とし,再建時に盲端が嵌入せぬよう対策をとるとともに,術後の通過障害時には本合併症も鑑別診断の一つに挙げ,内視鏡検査を用いた早期診断に努めることが重要と考える.

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成人小腸重複腸管の1例

大垣市民病院外科

須磨崎 真 他

 症例は30歳男性.下腹部痛を主訴に来院した.Multi Detector-row Computed Tomography(以下MDCT)所見より病変は上腸間膜動脈により栄養され,回腸の腸間膜付着部に位置することから重複腸管を疑い,同日腹腔鏡下回腸部分切除術を施行した.回腸末端から約80cm口側の回腸に付着する嚢胞性病変を認め,体外にて病変を含めた12cmの回腸を部分切除した.病変部は回腸壁の腸管膜側に付着した6×4cm大の球形の嚢胞性病変であり,消化管内腔との交通は認めなかった.組織学的所見では小腸粘膜と粘膜下層,固有筋層よりなる嚢胞壁を有し,筋層の一部を腸管と共有していたことから回腸重複腸管と診断した.成人発症の重複腸管は比較的稀であり,臨床像も生じる部位によって様々であることから術前診断は容易ではない.本邦における成人発症の小腸重複腸管の臨床的特徴を検討する.

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腹腔鏡下手術を施行した虫垂粘液嚢腫の11例

三豊総合病院外科

宇高 徹総 他

 虫垂粘液嚢腫は稀な疾患であり,破裂することで腹膜偽粘液腫をきたす可能性があるため手術適応とされている.過去11年間に当科で腹腔鏡下手術を施行した虫垂粘液嚢腫11例を経験した.年齢は35歳〜86歳,男性3例,女性8例であった.主訴は腹痛が3人でその他の9人は無症状であった. CTで全例に虫垂に嚢胞性病変を認め,腫瘍の大きさは5.0cm〜13.8cm(平均7.8cm)であった.術前診断は全例虫垂粘液嚢腫であった.手術術式は腹腔鏡下盲腸部分切除術が1例,腹腔鏡下虫垂切除術が4例,腹腔鏡下回盲部切除術が6例であった.病理診断は全例虫垂粘液囊胞腺腫であった.術後入院期間は4〜15日間(平均9.7日間)で,術後合併症はなかった.全症例再発なく生存中である.

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虫垂切除術後12年で発症した遺残虫垂癌の1例

大阪医科大学附属病院一般・消化器外科

島  卓史 他

 遺残虫垂癌は,非常に稀な疾患であり,本邦における報告は,検索し得た限りでは13例のみであった.今回,虫垂切除術後12年で発症した遺残虫垂癌で,腺内分泌細胞癌が極めて疑われた1例を経験したので報告する.症例は51歳,男性.12年前に虫垂切除術を施行された既往がある.検診にて便潜血反応陽性を指摘されたため,近医を受診し,大腸内視鏡検査を施行された.遺残虫垂癌が疑われ,当科紹介となった.腫瘍は小腸および小腸間膜へ浸潤しており,右半結腸切除術を施行した.肉眼的に,粘膜面は比較的保たれており,腫瘍は粘膜下腫瘍様に虫垂開口部方向へ粘膜を押し上げるように存在していた. 免疫染色(chromogranin A, synaptophysin, NSE)は陰性であったがHE染色にて内分泌細胞癌が極めて疑われた.上皮性腫瘍が筋層内に発生していることと,肉眼的所見をあわせて,遺残虫垂癌の診断に至った.

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後腹膜気腫を伴う特発性下行結腸後腹膜穿孔の1例

JA北海道厚生連旭川厚生病院外科

豊島 雄二郎 他

 症例は79歳,男性.2013年10月に左下肢痛が出現し,その後背部痛を自覚したため,当院へ救急搬送された.その後体動困難になり精査目的に整形外科に入院した.入院3日目の腹部CTでは,後腹膜腔に膿瘍形成があり,同側の腸骨筋から脊柱起立筋筋膜表面へと連続する広範な気腫を認めた.膿瘍形成部の下行結腸には,以前より虚血性腸炎を指摘されていたため,下行結腸虚血性腸炎の後腹膜穿孔による後腹膜膿瘍および気腫を疑った.まず,経皮的にドレナージチューブを留置したが改善なく,入院5日目に試験開腹を施行した.開腹所見では腹腔内に汚染腹水や膿瘍は認めず,下行結腸切除および下行結腸ストマ造設を施行した.摘出標本では切除された下行結腸に小穿孔を認め,組織所見では,悪性所見は認めなかった.術後はICUでの全身重症管理および計2回の経皮ドレナージ・入れ替えを要したが,保存的に軽快し,術後55日目に退院した.

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経皮経肝的静脈瘤塞栓術が奏効した人工肛門静脈瘤出血の1例

富山県立中央病院外科

寺井 志郎 他

 症例は49歳,女性.多発肝転移,肺転移,腹膜転移を伴ったS状結腸癌に対してS状結腸切除術,人工肛門造設術を施行後,化学療法を継続されていた.術後9ヶ月時に人工肛門からの出血に伴う出血性ショックを合併し,腹部造影CT検査にて人工肛門静脈瘤出血と診断された.止血に難渋し,保存的加療は困難であり,静脈瘤塞栓術の適応と判断した.経皮経肝的門脈造影では,下腸間膜静脈から流入し,左浅腹壁静脈へ流出する静脈瘤が確認されたため,流出静脈を塞栓後,バルーン閉塞下に静脈瘤も塞栓した.塞栓後は速やかに止血が得られ,塞栓後第5病日に退院となり,早期に化学療法の再開が可能となった.人工肛門静脈瘤は門脈圧亢進症を呈した人工肛門造設患者にみられる比較的まれな合併症である.我々は出血コントロール困難な人工肛門静脈瘤出血に対して,経皮経肝的静脈瘤塞栓術が奏効した1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.

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術後1年6カ月目に鼠径ヘルニア嚢転移をきたした盲腸癌の1例

昭和大学消化器・一般外科

藤井 智徳 他

 67歳女性. 2011年盲腸癌に伴う腸重積に対して腹腔鏡補助下回盲部切除を施行. 腹水, 腹膜播種, 遠隔転移は認めず, 病理診断は中分化腺癌, se, med, n2, ly2, v0, INFa, StageⅢbであった. 術後補助化学療法としてmFOLFOX6を計12クール施行した.その後明らかな再発は認めなかったが,1年6か月後に右鼠径部腫瘤を主訴に来院し, 鼠径部のリンパ節転移を疑い腫瘤摘出術を施行した. 手術では鼠径管内の3cm大の腫瘤を切除した. 腫瘤は鼠径管後壁から膨隆するⅡ型ヘルニアの形態であり, 病理組織学的検索では腹膜に浸潤する中分化腺癌であった.免疫組織学的検索ではCK7陰性, CK20陽性, CEA陽性, cdx2陽性, D2-40陰性であり, ヘルニア嚢内に浸潤増殖を来した盲腸癌の腹膜転移と最終診断した. 術後15か月が経過する現在まで再発なく外来通院中である.

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肝に発生したchronic expanding hematomaの1例

東京医科歯科大学医学部附属病院肝胆膵・総合外科

中尾 圭介 他

 症例は68歳男性.10年前から6cm大の肝腫瘤を健康診断で指摘され血管腫の疑いとして経過観察されていた.2011年7月,腹部超音波検査で腫瘤に増大傾向を認めたことから腹部CT検査施行し,肝S6に充実成分を有する7.4 cm大の嚢胞性腫瘍を認めた.当科に紹介され,胆管内乳頭状腫瘍などの悪性疾患を否定できないため,同年10月に肝S6部分切除術を施行した.切除標本は肝実質から隆起した腫瘤で,割面は充実性部分と赤褐色の漿液を貯留した蜂巣状の嚢胞成分と一部に出血を認めた.病理組織学的には嚢胞内腔は古いものから比較的新鮮なものまで混在する血腫で,腫瘍性病変は認めず,臨床経過と総合して肝から発生したchronic expanding hematoma(以下CEHと略記)と診断した.CEHは1ヶ月以上かけ緩徐に増大する血腫に対し提唱された臨床的疾患概念で,検索した限りで肝原発のCEHの報告はない.

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肝切除を2回施行した肺転移を伴った肝類上皮血管内皮腫の1例

大阪大学大学院消化器外科学

細田 洋平 他

 類上皮血管内皮腫(EHE)は血管内皮由来の比較的稀な低悪性度の非上皮性腫瘍である.今回,主病変および再発病変を手術にて切除し得た,肺転移を伴った肝原発EHEの1例を経験したので報告する.症例は61歳,男性.腹痛を主訴に受診し,多発肝腫瘍を指摘され,肝腫瘍生検にてEHEと診断された.両肺に多発肺転移を認めたが,増大傾向を認めなかったため,肝原発EHE(10個)に対して肝部分切除術(6か所)を施行した.術後,単発の肝転移を認めた.多発肺転移は依然増大傾向を認めない状態であったため,肝転移に対して残肝右葉切除術を施行した.病理組織検査では,いずれの切除標本においても豊富な線維性間質を伴う異型を有する上皮様細胞の増殖を認め,免疫組織化学染色ではCD31,CD34陽性であり,EHEとして合致する所見であった.再肝切除から6か月経過した現在,新たな再発の兆候を認めず,外来通院中である.

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静脈血栓が原因と考えられた漏出性胆汁性腹膜炎の1例

埼玉県厚生連久喜総合病院外科

中野  明 他

 症例は92歳,女性.上腹部痛にて当科を受診.腹部超音波にて胆嚢に結石認めず,腹部CTで胆嚢は虚脱し胆囊頚部に血腫と思われる高濃度領域と胆嚢周囲から右側腹部,右横隔膜下に腹水を認めた.胆囊の循環障害に起因する急性胆嚢炎,胆囊穿孔を疑い同日緊急手術を施行した.開腹すると右上腹部を中心に胆汁の漏出を認めた.胆嚢は頸部に血腫と底部から体部に一部壊死を認めたが穿孔は認めず,胆囊以外に胆汁漏出の原因となる病変は認めず胆囊摘出術を施行した.摘出標本肉眼所見でも穿孔は認めず胆囊頚部に血腫と血栓と思われる結節を認めた.病理組織検査では胆囊壁に出血壊死と静脈内に血栓が認められたため,静脈血栓による壊死性胆嚢炎と診断された.胆囊の静脈血栓が原因と考えられた漏出性胆汁性腹膜炎症例は自験例を含めこれまで本邦で4例報告されており,極めて稀な症例であったため,若干の文献的考察を加え報告した.

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CorletteⅡ型とCsendesⅢ型を呈したMirizzi症候群の1例

中通総合病院消化器外科

石塚 純平 他

 症例は65歳女性.1カ月前からの黄疸と皮膚掻痒感を主訴に当院を受診した.血液検査で肝胆道系酵素と直接ビリルビンの上昇,腹部造影CT検査で肝門部付近の結石を認めるが,胆嚢内か胆管内かの判別は困難であった.内視鏡的逆行性胆管造影にて,結石による胆管狭窄を認め,ERBDチューブを留置した.胆嚢頸部の結石嵌頓によるMirizzi症候群と診断し,胆嚢摘出術の方針とした.術中,拡張した総肝管前面に萎縮胆嚢を認め,胆嚢管は同定できなかった.胆嚢底部を切開し,2cm大の結石を摘出すると,ERBDチューブを目視できた.胆嚢管は認めず,胆嚢胆管瘻を形成している(CorletteⅡ型)ことがわかった.胆管の半周が瘻孔となっていた(CsendesⅢ型)ため,上部胆管切除,胆管空腸吻合を施行した.胆嚢胆管瘻を伴ったMirizzi症候群は稀であり,ここに報告する.

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劇症型敗血症の経過を辿った開腹胆嚢摘出術後のAeromonas sobriaの1例

尾道市立総合医療センター公立みつぎ総合病院外科

河毛 利顕 他

 開腹胆嚢摘出術後に急激な経過を呈したAeromonas sobria感染の1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.落下結石性胆管炎に対して内視鏡的乳頭筋切開(EST)術を施行し,再発予防のため胆嚢摘出の適応となった.術中,胆汁滲出による軽度の汚染があったが,通常通り術野を洗浄し終了した.術後35時間頃突然,ショック状態となった.CTで創部の筋層・皮下にガスを認めたため,筋膜縫合部まで開放したところ腐敗臭を伴う排液を認めた.血液,創,便より本菌が検出された.創洗浄,広域抗生剤投与,循環呼吸管理さらに血液浄化を施したが,敗血症による多臓器不全のため死亡した.本例は井戸水を常飲しており,自然水中に広く分布する本菌が保菌状態にあり,ESTが影響して胆道に潜伏していたと推定した.本属菌の創傷感染は急激に重篤化する特徴を有するため,消化器術前における井戸水飲用の問診に対して注意が喚起された.

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DNA ploidy patternが診断に有用であった胆管癌と膵頭部癌による衝突癌の1例

東京慈恵会医科大学外科学講座消化器外科

伊藤 隆介 他

 衝突腫瘍とは2つの悪性新生物が同時期に境界をもって相接する状態であり,膵頭部領域の衝突腫瘍は極めて稀である.症例は60歳代,男性.前医にて膵頭部腫瘤を指摘され紹介となった.CT/MRIでは原発性膵癌が,ERCP/EUSでは下部胆管癌が最も疑われ膵頭十二指腸切除を施行したが術前検査では両者の鑑別は困難であった.腫瘍割面はくびれたひょうたん型であり衝突癌が疑われた.組織学的には全体に腺癌を認め,くびれ部分で細胞移行像を認めた.各種免疫組織染色では胆管部と膵頭部で相同性があり2つの腫瘍に区別できなかった.DNA ploidy patternは胆管部はaneuploid pattern,膵頭部はdiploid patternであり両者に差異を認め,下部胆管癌と膵頭部癌の衝突癌と診断した.今回われわれは術前画像,術後病理検査共に診断に難渋した胆管癌と膵頭部癌の衝突癌の1切除例を経験したので報告する.

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腹腔鏡下に切除したIgG4関連脾炎症性偽腫瘍の1例

大垣市民病院外科

大塚 新平 他

 症例は63歳女性.近医でフォローアップ中の脾嚢胞性病変が増大傾向のため当院を紹介受診した.自覚症状は認めず,腹部は平坦で軟、腫瘤は触知しなかった.血液生化学検査では特記すべき異常は認めなかった.造影CTで脾蔵に3.5×4cmの膨張性発育を呈し内部が不均一に造影される腫瘤を認めた.PET-CTではSUVmax9.41と強い集積を認めた.MRIではdynamic studyで経時的な濃染の明瞭化を認めた.悪性リンパ腫を疑い腹腔鏡下脾臓摘出術を行なった.腫瘍の大きさは3.5×4cm,病理組織学的検査では悪性所見はなく,広範な形質細胞とリンパ球の浸潤および線維化を呈していた.免疫染色にてIgG4染色で多数の陽性細胞を認め,IgG4関連の炎症性偽腫瘍と診断された.

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後腹膜に発生した長径22cmの黄色肉芽腫様嚢胞性腫瘤の1例

愛知厚生連海南病院外科

富家 由美 他

 症例は71歳, 女性. 10年前から腹部腫瘤を指摘, 無症状であり画像上変化を認めないため, 経過観察となっていた. 1ヶ月前より腹部膨満感が出現. 腹部CTにて左側腹部に22×15cm大の腫瘤と左水腎症を認め, 腫瘤増大傾向のため精査・加療目的で当科紹介. 腫瘤は左腎, 左尿管を腹側に圧排し, 内部に隔壁を持つ多房性の腫瘤であり, 後腹膜嚢胞性腫瘤の診断で手術となった. 腫瘤は小児頭大で, S状結腸間膜背側から左側腹部, 左横隔膜下まで多房性に連なっており, 後腹膜腫瘤摘出術を施行. 腫瘤内部は褐色混濁の液貯留を認め, 腫瘤壁は壊死様であった. 術後病理検査では異型細胞は認めず, 黄色肉芽腫性炎症反応を示す腫瘤性病変との診断であった. 術後半年経過した現在, 再発所見は認めていない.

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TAPP法にて修復した外傷性腹壁ヘルニアの1例

井野口病院外科

艮 雄一郎 他

 症例は71歳、男性。交通事故による外傷性S状結腸穿孔にて他院でS状結腸切除術を施行された。術後数ヶ月経過した頃より右側腹部膨隆を自覚し当院外来を受診された。同部にソフトボール大の膨隆を認め、腹部CT検査で同部腹斜筋の断絶と欠損部から回腸の脱出を認め外傷性腹壁ヘルニアと診断した。初回手術から約11ヶ月後にTAPP法による腹腔鏡下ヘルニア修復術を施行した。術後経過は良好で、術後8日目に退院し、現在のところヘルニアの再発を認めていない。今回、我々は稀な外傷性腹壁ヘルニアの1例を経験したので報告する。

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盲腸が嵌頓したRichter型大腿ヘルニアの1例

新潟県立坂町病院外科

須藤  翔 他

 盲腸がRichter型に嵌頓した稀な大腿ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は78歳,男性.右鼠径部の膨隆と疼痛を自覚し,発症翌日に当科を受診した.右鼠径靭帯尾側に径3cmの膨隆を認め,CT検査所見から右大腿ヘルニア嵌頓と診断したが,腸閉塞所見は認めなかった.鼠径法で緊急手術を施行した.ヘルニア嚢内には大網とRichter型に嵌頓した盲腸を認め,盲腸壁の壊死が疑われた.下腹部正中切開を追加し盲腸を部分切除した後,鼠径部創からPROLENE hernia systemを用いたtension-free法を施行した.術後に正中創感染を認めたが,鼠径部創感染やメッシュ感染は認めず,術後20病日目に退院した.本症例のように腸閉塞を伴わないRichter型ヘルニアでは,早期診断が困難な場合がある.腸管切除を伴う大腿ヘルニア嵌頓症例に対するメッシュ使用の可否に関しては,更なる検討が必要である.

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散弾銃による胸腹部損傷の1例

東海大学医学部外科学系呼吸器外科

加藤 暢介 他

 散弾銃損傷に対し重症度から腹部の緊急手術と胸部の待機手術に分けて施行し良好な経過を得た症例を経験した。症例は60歳男性。キジ狩り中に誤射を受け被弾した。胸部単純X線写真で左側胸腹部に計39個の散弾を確認した。胸部CT写真は銃弾の軌道に沿った左肺挫創と左血気胸を認めた。左胸腔ドレーン挿入時に一過性の気瘻と100 mlの血性排液を認め、消化管損傷の可能性を優先し、緊急試験開腹手術を施行した。胸部37個の弾丸のうち合計23個が残ったが、血中鉛濃度の上昇を認めたため、18病日に肺内、心嚢内、左胸部皮下脂肪層・筋層内の銃弾を摘出した。血中鉛濃度は17病日に12.0 ug/dlまで上昇したが、以後下降し受傷1か月後は9.9 ug/dlとなり以後低値となった。散弾銃は、銃創による臓器損傷と体内遺残散弾による鉛中毒に注意が必要である。出血や重篤な臓器損傷がなければ鉛中毒予防のため散弾除去は待機手術で良い。

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