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一般のみなさま
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山本 伸 会員(東京女子医科大学病院 消化器病センター)撮影
2016年4月 江戸 大櫻

更新日:2019年5月27日

(5) 進行度について

食道がんがどのくらい進んでいるかは、「進行度(Stage:ステージ)分類:0~Ⅳ」であらわされます。

がんの深さ

リンパ節への転移の有無

他の臓器への転移の有無

という3つの状況から判断します。この進行度によって推薦される治療方針が決定されます。

1)がんの深さ(壁深達度:T)

壁深達度(がんが食道のどの深さまで入り込んでいるか)はTで表記されます(T1~T4)。

早期食道がん:

粘膜固有層までのがんで、深さに応じてT1a-EP(粘膜上皮), T1a-LPM(粘膜固有層)、T1a-MM(粘膜筋板)で表記されます。T1a-EP・LMPまでは転移がほぼおこりませんが、粘膜固有層の最深部(粘膜筋板)まで入り込んでくるT1a-MMでは10%弱にリンパ節転移をおこします。早期食道がんだからといっても必ず治るわけではないことになります。

表在がん:

粘膜下層までのがんの呼称です。20%程度のリンパ節転移を起こします。T1bと表記されます。

進行がん:

筋肉層以深にがんが入り込んだもので、50%を超えるリンパ節転移をおこします。筋肉層内にとどまるものをT2、外膜に到達するものをT3、食道の外の臓器に到達(浸潤)するものをT4と表記します。

他臓器浸潤(T4):

食道は、気管・大動脈・心臓・下大静脈に密接しているために、外膜をこえてがんが進行するとすぐにそれらの臓器へがんが直接に浸潤(進行)してしまいます。これらを他臓器浸潤と呼びます。各臓器ともに、浸潤した場合は一緒に切除(摘出)することが極めて難しい臓器ばかりで、外科手術の限界とも言えます。しかしながら、手術前にこの浸潤部位を放射線・抗がん剤で治療し、縮小させることができれば、手術による完治も期待できます。

T4a: 胸膜,心膜,横隔膜,肺,胸管,奇静脈,神経 に浸潤

T4b: 大動脈(大血管),気管,気管支,肺静脈,肺動脈,椎体 に浸潤

2)リンパ節(腺)への転移の有無(リンパ節転移:N)

リンパ節転移の特徴としては、

早い時期より転移が起こる。

遠隔部位(がんの場所から遠く離れた場所)にも転移が起こる。

ことが挙げられNで表記されます(N0~4)。

リンパ節はがんに近い所から遠い所へと順に1群→2群→3群→4群と分類されます。 遠い所に転移があるほど進んでいることになります。どの群まで転移がみられるのか、リンパ節に何個の転移があるのかでNが決まります。食道がんの場合、リンパ節に転移した個数によっても再発率がかわってくると言われております。

がんの手術では、このリンパ節をどれだけ・どこまで徹底的に摘出してくるかどうかが最も重要な点で、これにより手術後の再発率が決まってしまうといっても過言ではありません。したがって、手術では食道がんの摘出だけではなく、リンパ節摘出(郭清)が重要となります。

治療前に各種の画像検査(CTスキャンなど)を駆使しても、リンパ節転移の正診率は60%程度です。言い換えれば、転移リンパ節のうち40%は術前に転移と診断することができないということです。治療方針を考えるときに、確実にリンパ節転移が陰性であれば、抗がん剤や放射線療法で局所を治療することによって治癒する可能性が考えられますが、その陰性を確実に診断する方法が現状ではありません。従って、手術でがんとともにリンパ節転移を完全に取り切る(根治手術)ことができる状態であれば、手術がもっとも確実な治療法ともいえます。

3)他の臓器への転移の有無(他臓器[遠隔]転移:M)

食道以外の臓器(肺・肝臓・骨・脳)などに転移があるかないかはMで表記されます。

(転移なし=M0,転移あり=M1)

これは、がん細胞が血管の中に入り込み、血液にのって流れていった結果です。言い換えれば、がんが局所の病気から全身病になっていることを示します。

残念ながら、この転移がある場合の完治は非常に難しく、手術適応がない状態です。抗がん剤・放射線治療が主体となりますが、転移の個数・部位によっては手術で患部を取り去ることによって治療効果が期待できることもあります。

<食道の解剖と深達度>食道の解剖と深達度
食道癌取扱い規約(第11版)(日本食道学会編 金原出版株式会社 2015年)
<食道がんの進行度分類と病期(Stage)>食道がんの進行度分類と病期(Stage)
食道癌取り扱い規約(第11版)(日本食道学会編 金原出版株式会社 2015年)