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一般のみなさま

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比企 直樹会員
(がん研有明病院 消化器外科)撮影
2015年5月  都会に咲く花
更新日:2015年6月18日

(14-2) 胃がんの治療と栄養療法

ここでいう「栄養」とは、単に栄養バランスのよい食事という意味ではありません。がん治療を乗り切り、治療後も元気に暮らすために、「栄養療法」が重要視されるようになっています。

がんが引き起こす「慢性炎症」とは

がんの患者さんがやせてしまう原因の1つは、体の中で慢性的な炎症、すなわち「慢性炎症」が起きているためです。

慢性炎症の原因は、がん細胞が、炎症を起こす物質(サイトカイン)を分泌することに加え、がん細胞に対して体が免疫反応が起こすためです。

免疫反応とは、異物を攻撃して体を守るしくみですが、そのとき体内では炎症が生じます。風邪を引いたときに熱が出るのはそのためです。

慢性炎症があると大量のエネルギーを消耗するため、疲れやすい、だるい、食欲がないなどの症状が出てきます。

手術、化学療法、放射線療法といった治療も炎症を引き起こすため、がんの患者さんの体では、いくつもの原因で絶え間なく炎症が起きているのです。

2つめの原因は、がん細胞から分泌される「筋肉の分解因子(PIF)」の影響です。PIFのせいで、がんの患者さんは筋肉からやせていく傾向があります。

やせると体力が落ち、免疫機能も低下して、場合によっては治療を続けられなくなることさえあります。

こうした状態におちいらないように、QOLを維持しながら治療を完遂するために、「栄養療法」が重要な役割を果たすのです。

栄養療法をじょうずに行うためには

炎症を抑え、摂取した栄養をきちんと体に供給することができれば、治療の効果が上がり、良好な予後につながります。そのための有効な手段として、注目されているのが栄養です。

たとえば、青魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)は、炎症を抑えるとともに、筋肉を分解するPIFの量や活動を抑制することがわかってきました。良質なたんぱく質を十分にとることも有効だとされています。筋肉をつくる、必須アミノ酸の中でも、分枝鎖アミノ酸(BCAA)といわれるバリン、ロイシン、イソロイシンは、必須アミノ酸の30~45%を占め、筋肉のタンパク質分解を抑えるといわれています。分枝鎖アミノ酸は、大豆、チーズ、マグロの赤身などに多く含まれます。

胃切除後は食事の量が限られるので、栄養機能食品や栄養補助食品も利用しながら効率よく栄養をとりましょう。

要点check炎症が体に与える影響と、じょうずな栄養管理

知っておきたいNST(栄養サポートチーム)とは

がん治療における栄養の重要性が知られるようになり、NSTを設置する病院が増えてきました。

NSTとは、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、医事科事務員など、多職種のスタッフによる栄養管理の専門チームです。

各病棟や外来と連携して、栄養状態の思わしくない患者さんを拾い上げ、病棟スタッフとともに回診やカンファレンス(検討会)を行って問題解決を図ります。